お墓から初めまして。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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お墓だー!

 

 

穏やかな春を伝える風が輝く緑の中を幼子のように駆け回る。淀んだ空気が洗い流され、揺れる木々の合間から包み込むような日差しが少し湿った大地に降り注ぐ。

 

木々の合間を避けるように走る風は、やがて一つの場所へとたどり着く。地面を覆うように並ぶ木々が開け、太陽の光が降り注ぐ場所。森の奥深くに出来上がった珍しい陽だまり、そこにはぽつんと大きな石が置かれている。

 

元は奇麗な鉱石だったのかもしれないが、今では単に大きな石ころ。大人の背丈よりは小さく、子供の背伸びよりは大きい。そんな石だ。

 

 

 

森の奥地、少しだけ開けた場所、そこに置かれる大きな石。人はそこに墓の意を見出すかもしれない。

 

 

 

森の小さな生き物たちはこの石の近くに集まり、陽の光に包まれたり、木の実を主食にするものは石を使って硬い殻の中身を手に入れたりもする。今日も石の硬さを頼りにしたのか、数匹のリスのような生物が近くに来ている。冬が来る前に埋めておいた硬い木の実を掘り出し、中身を取り出しに来たのであろう。

 

そして小さきものが近づき、彼が唯一知る石の使い方を思い出そうとした時、彼は自分の足元が少し揺れていることに気が付くだろう。警戒し、耳を澄ます。あたりをゆっくりと見渡し、自身の身に危機が襲い掛かったとき、すぐに逃げ出せるように。

 

感じる足元の揺れがさらに大きくなり、彼の緊張が限界点に達した時。脅威はちょうど真下から訪れた。

 

 

 

 ギギ、ギギギギギ………

 

 

「お? おおお?」

 

 

ちょうど大きな石の目の前、その地面が大きく隆起する。小さきものは驚き、訳も分からずただ自分の身を守るためだけに逃げ出した。

 

 

「ま、っぶし~~! 初めまして太陽! お久しぶり新鮮な空気! 明るすぎて何も見えんけどシャバの空気がうめぇ!!」

 

 

地面から響く声は少女の声、隆起した地面の下には分厚く大きな石の板。太陽の光が徐々に暗室を照らし

そこから出て来たのは下着姿に手袋を付けた銀髪の少女。

 

 

「いやはや、そこまで地面深くに埋まってなくて助かった。……にしてもここ、どこだ?」

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

ながく、ながく、とってもながく。

 

しらないひとからみたらとってもふこうなおんなのこ。

 

りゅうのおうさまにうまれるまえからきにいられたおんなのこ。

 

 

 

とってもながくねましたね。

 

そろそろあさのおじかんです。

 

おねむのまぶたをあけましょう。

 

 

 

ぷれぜんとのおしごとはおしまいです。

 

こんどはかわりにねかせましょう。

 

こんどもたくさんはたらいてね?

 

 

 

 

 

 

とても久しぶりに、心臓の鼓動を聞いた気がする。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

目が覚めるとそこは真っ暗でした。

 

 

うん? なんで? いやそもそもここどこ??? なんか真っ暗ですし、体動きませんし、そもそも私誰? ここどこ? 昨日の記憶ない???

 

 

いや、落ち着け? 落ち着け私!? 名前解らんけども! とりあえず現状把握!

 

 

目の前! 真っ暗! 手足! 感触アリ! どうやら五体満足のようです少佐ァ! ですが本官全く持ってここにいる理由が解りません! というかここで目が覚める以前の記憶がまっさらであります!

 

それ以外に特筆すべき点といたしましては! おそらくなんか硬い材質のところに寝かさられていたのだと思います! しかしながら光源が全くないので天井とか今いる場所の把握も全くできませんであります!

 

 

「……あ、あ。うん、声は出るな、私。」

 

 

体の調子は特に問題なし、寝かされてる場所が石みたいに硬い所だったせいか背中が少々痛むけどそれ以外は痛いところもない。

 

 

「とりあえず、起き上がってみる? というか天井の高さは……大丈夫だな。」

 

 

両手両足を使いながら自分が今いる場所の把握を試みてみると、天井は高め。私が寝ていたのはおそらく台の上だということ、その台の大きさは人一人寝られるぐらいだということぐらい。なお台の下は普通に怖いので足を出したり手を出したりはしてません。だって虫とかいたら怖いしばっちいですし……

 

 

「今着てる服の感触は……、肌触りはいいのか? ちょっとざらざらしてる気がするけど服の品質はいい気がする。あとなんだこの服の装飾?」

 

 

今色々手探りで体調べてるけどいかに人間が視覚に頼り切っているかを痛感してしまいますねぇ……、なんか目が見えないせいか耳とか鼻が敏感になってきた気もしますし。あ、これ音の響きかた的に結構広めの密室っぽい? 

 

 

「とりあえずお座りしましてっと、正味自分の名前すら解りませんし古来より伝わる方法で……、というかなんで記憶まっさらなキャンパスなのに知識とかは普通に残ってるんだ? 何も覚えてなかったら普通言語すら喋れなくない? ……まぁ考えても仕方ないか。“ステータス”」

 

 

“ステータス”。その言葉に反応して私の目の前に青い板のようなモノが現れる。そこに映し出されるのはこの世界に住むすべての人が見ることのできる『自分のステータス』。たしかこの現れる板は神様がなんやかんやした魔法的な板だったはずだからこの暗闇でも見える。まぁ光源にはなりませんけど。

 

 

 

【名前】なし

 

【種族】人h源

 

【職業】なし

 

Lv:1 SP:100

 

HP:5/5

MP:2/2

 

STR:2

VIT:1

DEX:1

INT:4

LUK:2

 

 

 

「Oh……、これはツッコミ待ちですかい?」

 

 

まずお名前がなしって……、わたしゃあ名無しの権兵衛ですか? 記憶ないからステータスが頼りだったんですけど。というかこのステータスの名前って魂に刻まれた名前だから普通消えないはずでは???

 

しかも種族の人間のところは“人h源”ってなってますし。神様~~! 誤字ってますよぉ! 早く直して! 私記憶なくなる前なんの神様信仰してたか分からないけど助けて! 私人間にしてくれよぉ! 記憶ないなった上に『実はもう人間じゃありませぇ~ん!』なんかイヤだからね、ホント!

 

あと何か言うとすればスキルポイント、SPがステータスに比べるとなんかめちゃ多くない? その代わりにスキル何も持ってないですし……。

 

 

「いやまぁ種族のところはなんか誤字ってるということにして私の精神を安定させよう、納得大事。……あとはまぁスキルポイント使って必要そうなスキル取りますか。」

 

 

このスキルポイント、SPって言うのはその名前の通りスキルを習得するのに必要なポイント。もちろん訓練したり勉強することでスキルは手に入れることができるんだけど、このポイントを使って手に入れることもできる。まぁレベル上がった時に数ポイント手に入るものなのでレベル1の私が三桁所有しているのはおかしい。……でもまぁ今はとにかくここがどこなのか把握したい。

 

 

「えぇっと、確かステータス板のSP欄をクリックしましてそこから欲しいスキルを選ぶ感じ……、よし。あったあった。『暗視』を習得っと!」

 

 

 

【『暗視』を10P支払い入手しますか? Y/N】

 

 

 

「イィエッス!」

 

 

 

【『暗視』を入手しました。】

 

 

 

瞬間、ただ真っ暗だった視界に少しだけ光が戻ってくる。

 

 

「おぉ! やっぱりスキルはありがたいありがたい、しかも『暗視』は安価で助かる助かる。……して、見た感じ石で作られた部屋か?」

 

 

ぐるっと辺りを見渡すと子供が両手で抱えればギリギリ持てる? ってぐらいの石を積み上げて作った壁があるのが解る。部屋の中にあるのは私が寝ていた石の台みたいなのとこの部屋を支えるための柱四つ。あとなんか上に続く階段みたいなのもある。

 

 

「あとプラスで台の頭のところに祭壇みたいのがある感じ。」

 

 

風化しているせいか細かな意匠や、どんな宗教の祭壇か判別することはできないけどちょうど中央のところに手のひらに収まるくらいの球体三つ。まぁ『暗視』っていっても暗い場所がお昼の外みたいに見えるわけじゃないからなんの球体かは手に取ってみないとわからんね。

 

 

「つまり手に取って詳しく確認するんですけど。」

 

 

ためらいもなく球体を手に取って目に近づけてみる。透き通ったガラスのようなものの中に何かが浮かんでいる。

 

 

「これは……、スキルオーブかな?」

 

 

たしかこのオーブを使うことでスキルが手に入る超貴重アイテムだった気がしますねぇ! というかなんでこんな場所に置いてあるので?

 

 

「まぁ私『鑑定』とか持ってないので何のスキルが宿ってるとか解りませんし、高いと言っても外れスキルだと値段下がるんだっけ? それでも家買えるぐらい高価だっけ? まぁいいやとりあえず全部使っちゃえ、私寝てたところに置いてあると言うことは私のだろ。」

 

 

これで私のものじゃなかったら一生奴隷行きだなぁとか思いながら順にオーブを使用していく。なんかレアスキルとか入ってればありがたいねぇ。ま、入ってなくても残り90Pあれば何かしら取れそうだけど。んじゃ確認のための“ステータス”!

 

 

 

【名前】ナナシ

 

【種族】人間

 

【職業】なし

 

Lv:1 SP:90

 

HP:5/5

MP:2/2

 

STR:2

VIT:1

DEX:1

INT:4

LUK:2

 

『暗視』

『ショップ』

『アイテムボックス』

『スキル鑑定』

 

 

 

「あぁ!! 名前ナナシになってる!? ナナシになってる!? ナンデ! いや権兵衛じゃないのは優しさだし人間にちゃんとなってるけど!? 名前! それ名前じゃない!!」

 

 

あ~、もう滅茶苦茶だよ! というか神様私の呟き聞いてたのかよ! 仕事早くて助かるけど違うのォ! それ名前じゃないのォ! FoooOOOO~~~!!

 

 

「ふぅ、落ち着いた。」

 

 

ある程度脳内で叫びまわったおかげで落ち着いたのでスキルを確認します、はい。

 

上から『暗視』『ショップ』『アイテムボックス』『スキル鑑定』ですね。『暗視』はさっきポイントで入手したものですから置いとくとして、スキルオーブで手に入ったのは後ろ三つのようですな。

 

まぁ案の定といいますか、上から“聞いたことない”“滅茶レア”“これで食べてける”のヤバめスキルですね……、記憶失う前の私はどうやってこれを手に入れたんだ? というかなんで私が寝ている部屋のとこに? 特に『アイテムボックス』のスキルオーブとか国宝レベルなんだけど……。これ他人の持ち物だった場合お先真っ暗ですね、笑える。

 

 

「まぁ使っちゃったものは仕方ないし、早速使ってみるとしましょうか。『スキル鑑定』はその名の通り個人の所有するスキルを詳しく確認できるとかで……、まぁいいや! 『スキル鑑定』使用! 対象はミーの『暗視』ネー!」

 

 

 

〇『暗視』Lv:1 所有者:ナナシ

暗い場所で視界を得ることができるスキル、Lv上限10。

 

 

 

ほうほう、確かスキル鑑定士って職業はこういうスキルレベルとかあとどれぐらいそのスキルを修練すればレベル上がるとかそういうの判別するお仕事だったはずだけど……、なんか経験値とかそういうの見えませんね。これ自体のレベルが低いんかな? まぁいいや他のも見よ。

 

 

 

〇『ショップ』 所有者:ナナシ

契約した店舗にいつでも転移できるスキル、行動中使用不可。Lv上限なし。

 

〇『アイテムボックス』Lv:1 所有者:ナナシ

亜空間に物品を収納するスキル、1×1個収容可能。Lv上限100。

 

〇『スキル鑑定』Lv:1 所有者:ナナシ

スキルを鑑定するスキル、レベル上昇で説明文増加。Lv上限10。

 

 

 

へぇ~、ふぅ~ん、そうなんや。……いやアイテムボックスヤバいな。これ上限まで行ったら一万個の物品運べるんか……、輸送とかそういうの崩壊しそう……。まぁ重さ制限とか大きさの制限とか色々ありそうだけどそれはまだ分からない感じね。でもスキル鑑定のレベル上がればそれも解ると。便利だなぁ。

 

それとなんだけどこのショップってなんぞ? 契約した店舗? そも契約とはなんぞ?

 

 

「とりあえずこのスキルって使えるんですかね?」

 

 

 

【ショップに入店しますか? Y/N】

 

 

 

「あ、なんか使えそ。もちろん答えはYES!」

 

 

 

【ショップに入店します、10秒後に転移開始。】

 

 

 

あ、よくよく考えたのならこれ脱出じゃね? 私が寝ていた場所の探索とかそういうの全然してなかったじゃん。おぅ、ナナシちゃん! 痛恨のプレイミスですネー!

 

そんなバカなことを考えながら、私は光に包まれていくのでした……。

 

 

 

 

 





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