「帰ってきましたナナシちゃん! もう一度挑戦ナリ!!」
階段の途中、目の前には巨大な石。というか岩。
それに対するは片手にドリル、耳にはイヤリング。そして下着姿の女の子。
ちわっすみなさん! ナナシ(偽名?)ちゃんだよ!
あ、ちなみに下着。上は無くて下はカボチャパンツでした。まぁ私の乳はデカくないどころかまな板一歩手前なんで記憶がなくなる前の私は必要性を感じなかったんでしょうね。……え? 店主? あの人は普通にお胸ありましたね、はい。
「じゃ、いつ空気なくなるかわからんけん。さっさとドリルで掘っていくとしますか。」
イヤリングがいつ光るかわからんし、早速作業初めて行きまする。ちなみにイヤリングは針を刺すタイプじゃなくて圧力で止める奴でした。安心安全ですね。
ボタンをぽちっとしますとキュイキュイ言いながら回転するドリル。これを岩の面に当てますと、ドガガガと激しい音が響きながらどんどん削れて行きます。……なんかこれスゲェ楽しくない?
「ヒィヤホォォオオオ!!! ドリルの時間だァ!!!」
楽しいねぇ! 楽しいねぇ! 少しずつ削っていく感覚が楽しいねぇ!
岩を削る間に粉塵が凄くて喋りながらやると口に粉が入る、正確には最初に叫んだ時に入ったので黙って石を削る。でも心は叫び放題、もしかしたら私はドリルと結婚するために産まれて来たのかもしれない。
ガコッ!
まぁ何事にも終わりがあるわけで、長く楽しんでいたドリルタイムも岩が破壊されたことで終わりを迎えた。かなちぃ……。
「……あ、これもしかしたら崩落して死ぬ可能性あったのか。……ま、いいや! ドリルと共に天に召されるのなら本望! それに結果論だけど何もなかったしね! 先には階段の続きアリ!」
私はまたドリルで破壊できるものがないかと思いながら、暗視でも先が見えない長い階段を上っていくのだった……。
◇◆◇◆◇
まぁ、なんやかんやで外に出れたわけですよ。最後に蓋のようになっていた石の板みたいなのをパワーグローブ装着でひっくり返して脱出したわけです。
あの大きな石を破壊してからずっと階段だけ、階段を上がり過ぎてまた体力が尽き掛けましたけどまぁ何とか地上に出ることが出来ました。とっても残念だったのはドリルを使えそうな場所というか機会がなかったことですね。ま、イヤリングも使う機会がなかったのはいいことなのかもしれませんが。
にしてもここどこだ?
ここだけ開けた場所ですけど、少し歩けば暗視でも見えないぐらい暗い森が広がってますねぇ。
「ちょっとお腹もすいてきましたし、階段で死にかけたんで水とかほしいんですけどねぇ……。」
ぐぅ、となりそうなお腹を抱えながら。下しか布を纏っていないせいで汗だくの体を抱えながらあたりを見渡しても何も変わりません。あるのは私がひっくり返した石の板とちょうどその前にあった謎の岩。
肌で感じる気温的に春かもしくはこの辺りが元々温暖な気候のおかげで体温は保ててますけど、私今汗だく少女ですからね? つゆだくとかじゃなくて汗だく。川か湖で汗を流したいと思うのが人情です。
「この岩もなんなんでしょ? わざわざこんなに長い階段を地下に作るぐらいですし、その出口の先に目印の岩があることですから何らかの意図があるんでしょうけど……、特に岩に文字が書かれてるとかそういうのはないですね。つるつるしてますし、雨とかで削られた可能性ありますけど。」
ま、そうしたら私が地下にいたの何年だ? ということになりますけどね。正直ひっくり返した石の上が普通に土で植物も生えてましたから長期間地下にいたんでしょうけども。……ホントに記憶戻る前の私は何してたんでしょ?
「あと地下&この大きな岩を見てるとお墓みたいで笑える。どうも! 生き返ったナナシちゃんです!」
……案外間違ってないのかもしれんね。最初ステータス見た時、種族名がバグってたし。
「ま、難しいこと考えるのは面倒ですしとにかく今は生き残ること考えましょ。お腹空いて喉が渇いてるのは生きている証拠。過去の事より今のことを考えよう!」
じゃあ打開策を考えていく訳ですけども。……使えそうなのはステータス見た時に余ってたスキルポイントですかね? あんまり『ショップ』のスキル、店長さんにお世話になり続けるのも悪いし。
「この借りてる道具とかも、せめて木の実とか見つけた後に返すことにしましょうか。お礼にその木の実とかプレゼントする感じ。……決してドリルから手を離したいわけじゃないんだからね!!」
必要もないのにずっとドリルを右手に装着しているナナシちゃんは何かを振り払うようにステータスを開きます。もちろんドリルは持ったままです。
【名前】ナナシ
【種族】人間
【職業】なし
Lv:1 SP:90
HP:5/5
MP:2/2
STR:2
VIT:2
DEX:1
INT:4
LUK:2
『暗視』
『ショップ』
『アイテムボックス』
『スキル鑑定』
……ん? おぉ! VITが1から2に上がってる! 最弱から抜け出したぞ私の体力が! これは階段のおかげか? おかげだよな!? クッソきつかったけどこれなら許せるぞ!
スキルの方は……、うん。『スキル鑑定』で見たけど上がってないな。まぁ『暗視』ぐらいしか使ってないししゃあないか。そんなにすぐに上がったら世界のパワーバランスがインフレしちゃうもんね。仕方ないね。
「ポイント使ってレベル上げることもできるけど今みたいに何かを打開するときのために置いておきたいから残しておくとして……。あ、そうだ。アイテムボックス使ってなかったからこのひっくり返した石でも入れとこ。」
スキルを発動し、私の体くらいの大きさがあった石が消えてなくなる。厚さも結構あったし、グローブがなかったらどうにもならなかった石板がこうである。便利便利。アイテムボックスも使っていくうちにレベル上がるだろうし、この石板も何かに使えるでしょ。
え? 手に持ってるドリルしまえって? これをしまうなんてもったいない!
「じゃあとりあえず使えそうなスキルでも探すとしますか……」
欲しいのは水と食料。そうなるとやっぱり『探知』とかかな? あれ確か周りに何があるか判別できたわけだし。レベルが低い時は探せる範囲も狭いらしいけどそこは残ってるスキルポイント払えばいいや。危ない魔物とかの奇襲も防げそうだしいいんじゃね?
「んじゃまとりあえず『探知』ください!」
【『探知』を30P支払い入手しますか? Y/N】
あ、やっぱ高い……。これはレベル上げにポイント使うのなしやね、使い続けてレベル上げよ。でも選択はYESで! 必要なものは必要!
【名前】ナナシ
【種族】人間
【職業】なし
Lv:1 SP:60
HP:5/5
MP:2/2
STR:2
VIT:2
DEX:1
INT:4
LUK:2
『暗視』
『探知』
『ショップ』
『アイテムボックス』
『スキル鑑定』
あ、そこに来るのね。『スキル鑑定』先生! 確認お願いします!
〇『探知』Lv:1 所有者:ナナシ
辺りの状況を把握する、現在自身のいる場所から半径10m。Lv上限10。
なるほどね、10mか……。それぐらいだったらまぁレベル上げポイントでしなくてもいいか? でもちょうど今いるこの開けた場所しかわからない感じか……。
「何か武器でも使って探索するべきかな? あと使ってるうちにスキルレベルが上がることを夢見て使い続けるしかあるまい。たぶん『スキル鑑定』のレベル上がったら私の知らないスキルの説明とか見えるようになるだろ。」
というわけで思いついたら即行動、酸素の問題がなくなったら今度は水&食料の問題。しかし私ナナシちゃん、そんなことではへこたれません
開けた場所の端、その近くの木から太めの枝を拝借。パワーグローブのおかげで普通なら折れない枝もほらぽっきり。これをSTR2×10=20で振れば……、まぁ弱めの魔物なら撃退できるだろ。
ナナシ、探索始めます!
実はかなり時間空いてから気が付いたんですけど、この時結構喉カラカラでお腹も空いてしんどかったんですが、水だけはスキルで『水魔法』か何かを取ればすぐに解決してたはずなんですよ。MPが2しかなくても水出すだけなら消費1で事足りますし。
ま、どんな状況でも立ち止まって色々考えるべきってわけですね。私みたいに思い出して顔赤面&道の真ん中で転がり回るという愚行を起こしたくなければ、って奴です。羞恥。
ということで現在探索中でっす。一応目印代わりに棒を引きずって線を作り、目印代わりを作ってまうす! にしてもマジでここ木しかねぇな。背が高い木のおかげで私の目線があるところは真っ暗、いくら暗視スキルがあると言ってもレベル1だし視界はやっぱりすぐれない。正直ほんのり見える、ってだけだもんね。
探知スキルも一応起動してはいるけど何か引っかかるようなモノもなし。いやあると言ったらあるのよ? この高い木の上に小動物みたいな反応は。でも木の種類的にまっすぐ生えてる奴だから木登りなんて無理ですねぇ……。手にはパワーグローブあるけど脚は素足ですしお寿司。足元へんなの踏まないか結構ドキドキしてるナナシちゃんには落っこちて死ぬ可能性がある木登りは無理でしゅ。
「探知で水源か木の実って思ってたけど……、現実は優しくないか。」
都合よく果樹とかあるわけないのね……。
一応水分と食料だけ手に入れる、その目的を簡単に達成できる方法はあるにはあるのだ。
そう、『ショップ』で店主に物乞いするという方法。
あの店主さんの性格及びお店の方針的に『出世払いでいいよ?』と言ってくれそうではあるのだ。お客が凄い久しぶりと言ってたからたぶん私ぐらいしか買い物できる人物がいないのであろう、それゆえにお客を大事にしてくれるのは分かるのだ。
でもやっぱある程度自分で何とかせねばならないじゃん。
出世払いって言ってるけどその内情教えてもらってないし、どれだけ吹っ掛けられるかわからんのもあるのよ。しかも私が知ってる金銭、マニーとあの店で使えるポイントなるものとの交換比率も解らない。私が今お借りしてるこの魔道具も(記憶失ってるから正確な情報ではない)見たことがない。……つまりかなり高いものだと推察される。効果も凄いし、今使ってるパワーグローブだってSTR10倍よ? チートじゃん。絶対高いじゃん。
ま、ってな感じであんまり頼りたくはないのだ。とてつもなく便利&頼りになるお店ではあるんだけどね。
「このドリルは何とかして買い取りたいけど、絶対高いよねぇ。……ん?」
立ち止まり、自身の利き手に収まる魔道ドリルを愛おしく見つめるために立ち止まったとき。私の耳に何かの音がやってきた。ちなみに今のナナシちゃんはカボチャパンツオンリーに手袋(パワーグローブ)を装着。右に魔道ドリル、左に太めの木の棒である。……不審者?
「いや私が不審者なのはいいのよ! 元からだし! とりあえず耳を澄ませば!」
風の音に紛れてサラサラと何かが流れる音! もしかしかしてこれ川の音じゃね? 見つけたんじゃね!? いやそうと決まれば早速行動じゃ!
「このまま木の棒引きずりながら突撃ー!」
さっきまでは恐る恐るの歩行だったけど水が近くにありそうならばもう走るしかねぇ! 木の棒を引きずりながら走ったせいで体勢が可笑しいけどそんなこと知るか! 水だ水! 命の水だ!
気が付けばただ高く聳え立つ木々の植生が低い木々へと変化していた。踏みしめる大地の感覚も湿気を感じる土から優しく足裏を支える草に変わる。もう少し探索すれば果樹も見つかりそうな感じ! でも今は水! 近づけば近づくほどに水の流れる音がする! 川だ!
「KA☆WAだ~~~~!!!」
水! 飛び込まずにはいられない! 今なら服を脱ぐ必要もない! だって唯一のカボチャパンツだって汗まみれ! ついでに洗濯だぁ! ……あ、魔道ドリルは水に濡れたらマズそうだし置いとく……、いやアイテムボックスだな。石の板と入れ替えて魔道ドリルしまおう。というわけでダイブ!
「うひゃ! ちべたい! でも気持ちィ! 浅瀬だから寝ながら吸水できるぜぇ! がぼぼぼぼ!!」
川の底にない胸を当てて顎を上げる、こうすることで体に付着した汗を流しながら水を飲むことができるのだ! さすがナナシちゃん! かしこい! 学者レベル! 王様に表彰されちゃうぜぇ!
「ッ! ごはぁ! ごぼ! ごぼ! かふぇッ!!」
はい、案の定むせました。