懐かしき日々へ(デルフィニア戦記・暁の天使たち他)   作:shellfish

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第三十四話:宴の前

 人間の理解力には、限界がある。

 無論、個人の知性の差によって大きさも違えば深さも違うし、器の形も、中に入れることの出来る知識の質にも違いが出る。

 しかし総じて言えることは、どれほど優秀な人間であっても突然に津波のような驚きを正面からぶつけられては、それを全て飲み込むのは不可能だということ。

 この場合のケリー・クーアと、その妻であるジャスミン・クーアの置かれた状況が、正しくそういう状況であった。

 共和宇宙でも最高水準の知性と肝の太さを誇るこの二人が、グラスの中で氷の溶ける音もどこか遠くの有様で、茫然と目の前の少女を眺めるしか出来なかったのだ。

 もっとも、ケリーにとっては正しく目の前の少女であったが、ジャスミンにとっては自分の膝の上にちょこんと座った少女の後ろ姿であった。

 

「……と、いうわけだ。どうして俺がここにいるか、理解して貰えただろうか」

 

 仕事を終えた語り部は、氷が溶け出して若干薄くなった美酒でもって、乾いたその喉を潤した。

 ぐびりと動く細い喉が、妙に艶めかしかった。

 酒を嗜むに相応しい年齢には見えない、少女である。

 化粧を施しても隠しきれない、瑞々しい若さ。というよりは幼さ。

 光が映り込むような黒絹の髪。

 意志の強そうな黒真珠が如き瞳と、卵形に整った輪郭、愛らしい鼻梁と唇。

 酒場特有の薄暗い照明の下でも、その少女の美には些かの綻びも見られない。遠目夜目傘のうちというが、本物の美しさには、それらが傘として役に立たないのだと分かってしまう。

 男性が見ても女性が見ても、保護欲と、父性あるいは母性を刺激してやまない、少女。

 フィナ・ヴァレンタイン。

 しかし、ケリーとジャスミンの思考能力を奪うに至ったのは、彼女の可憐さではありえない。美しい云々の話で言えば、ケリーは同性が見ても溜息しかでないような二枚目であるし、ジャスミンは大輪の薔薇が如き豪奢な美人である。それに、二人の知り合いには正しく天使の現し身としか思えない少年が、四人ほどもいる。

 だから、二人の口から言葉を奪ったのは、全く別の事柄であった。

 つまり、少女の身の上話が原因である。

 目を白黒させていたケリーとジャスミンだったが、いつまでもそのままというわけにはいかない。勇気、あるいは好奇心を振り絞って、なんとか唇を開いた。

 

「その……フィナ嬢、いや、やはりウォルと呼んだ方がいいのか?」

「どちらでも構わない。どちらも、誇るべき俺の名前だ」

「ではウォル。いくつか質問を……というよりも、確認をさせてもらいたい」

 

 ジャスミンが、ややしゃちほこばった調子で言った。

 ウィルは首を後ろに捻り、ジャスミンの顔を見上げるような姿勢で答えた。その拍子に、ウォルの頭に設えられた可愛らしい兎の耳がジャスミンの頬を叩いたのだが、ジャスミンはそのことにすら気がつかない様子である。

 

「うむ、ジャスミン殿。どうぞご存分に」

「先ほどの話からすると、きみはその、ヴィッキー・ヴァレンタインの……きみの呼び方で言うならば、リィの、お嫁さんということになるのだろうか?」

「いやいや、それが何とも複雑な話なのだがな。俺は確かにあいつの伴侶だが、それはあくまで夫としての話だ。だから今の俺は何かと問われれば、リィの同盟者であり、そして夫であり、かつ婚約者である、ということになる」

「うん、それはよく分かる」

 

 黒髪の少女の話に、ジャスミンは相づちを打ちながら頷いた。

 破天荒な身の上ならば、ジャスミンも相当なものだ。

 致命的な遺伝子疾患を抱えた身でありながら軍隊に入隊し、誰にも負けない戦果を残した。幼少の頃に出会った少年の面影を追って配偶者を捜し、ようやくお眼鏡に適う相手を見つけて戦闘機で鬼ごっこをしてみれば正しくその少年だった。ついに病で倒れ自分は死んだと思っていたら、四十年後の未来に若返った姿で蘇った。

 そこらのラブロマンス小説を探しても、あまりに突拍子もなさ過ぎて、そんなストーリーは見つからないだろう身の上である。

 その彼女をして、ウォルの身の上話は、上には上がいるものだと実感させるに足る突拍子もないものだったのだ。

 それでもその話をよく分かると瞬時に納得できるあたり、ジャスミンの器は大きいのか底が抜けているのか、どちらかに違いなかった。

 

「俺はあちらの世界で一度命数を使い果たし、天に召された。そして天の国……こちらの世界にて再び命を得て、新しい身体を借り受け、今ここにいる。何の因果か、少女の身体でな」

「それは違うぜ、ウォル。少女じゃなくて、飛びっ切りの美少女だ」

 

 ケリーが大真面目に指摘した。

 ケリーのほうに向き直ったウォルも、少しだって笑うこともなく、真剣な調子で、

 

「うん。俺もそう思う。この子は、俺が見てきた女の子の中でも最高に可愛らしい。肩を並べれるのは、そうだな、あいつと……あとは俺のもう一人の奥さんと、娘が二人くらいのものだろうか」

 

 腕を組んで考え込んでしまったウォルである。

 無論、『あいつ』とはこの美少女の妻である、少女であった少年のことだ。それはケリーとジャスミンも理解できたが、残りの部分については完全にウォルの記憶の中にしか答えを求めることが出来ない。

 そこに身内の贔屓目、あるいは惚れた弱みがあったかどうかは神のみぞ知ることである。

 重々しく頷く少女を見ながら、眉を顰めたジャスミンが再び問うた。

 

「確かきみはリィと結婚したのだと理解しているのだが、他の奥さんがいるとはおかしな話だ。まさかとは思うが、きみは重婚していたのか?」

「重婚と言われると身も蓋もないのだがなぁ……。俺と奥さん――ポーラは、公的な関係でいえば国王とその愛妾ということになるのだが、しかしその呼び方がどうにもしっくりこない。では妻かといえば、あなたの妻でありデルフィニア王妃でもあるのはリィだけだと当人に泣いて怒られる。なので、極々身内の間でだけは奥さんと呼ぶことに決めて、必死の説得の末にポーラからも何とか了承を得たのだが……おかしいかな?」

 

 首を傾げた少女である。

 おかしいかと問われれば、全てがおかしい。

 おかしすぎて、一つ一つの怪異にいちいち驚くのが馬鹿馬鹿しく思える程だ。

 ケリーの肩は爆笑を堪えてひくひくと揺れていたのだが、ジャスミンはやはり生真面目に、

 

「そういう事情ならば仕方ないな。それに、国王なら妾の一人も持たない方がかえって不自然というものだ。詮の無いことを言ってしまった。許してほしい」

 

 ぺこりと頭を下げてから、語調をあらためて、

 

「しかし、きみは言ったな。いや、きみという呼び方おかしいか。なにせ貴方は、我々より遙かに長い時間を生きた人生の先達であり、国王陛下なのだから。やはり陛下とお呼びした方がよろしいか?」

 

 バニー姿の、どこからどう見ても元国王には見えない少女は、顔の前でぶんぶんと手を振りながら、慌てた調子で言った。

 

「それは勘弁してくれ。ようやく重たい王冠を脱ぎ捨て、どう説得したって傅こうとする家来たちの厳しい目からも逃れることが出来たのだ。今更陛下などと呼ばれてはこの細首の上に重たい何かが乗っかっている気がして、肩が凝って仕方なくなる。今までどおりウォルと呼んでいただければ有難い」

 

 目がかなり真剣である。どうやら、本当に王様扱いされることに辟易としているらしい。

 しかしそれを言うならば、依然ジャスミンの膝の上にすっぽりと収まった少女は、やはりはどこからどう見ても王様の威厳の欠片も無い姿であった。精々、年の離れたお姉ちゃん、もしくは年の近い先生に甘える、舌っ足らずな女の子といった風情でしかないのだ。

 その二人を離れた位置から見ることのできるケリーなどは、どうやって堪えようとしても堪えきれない笑いを端正な頬に浮かべていた。まったく、黄金狼の知己には一人だって退屈な人間がいないなと、自分のことを蚊帳の外に置きながら美味い酒を楽しんでいた。

 

「了解した。ではウォルと呼ばせてもらうが……君はあちらの世界で、既にリィと夫婦の関係だった。それがどういう意図で結ばれたかは別にして、だ。なら、こちらの世界でわざわざ婚約して、妻としてリィと結ばれる必要はないのではないか?別に書類上の確たる関係が欲しいというわけではないのだろう?」

「うーむ、なかなか痛いところを突いてくれる。確かに、あらためて夫婦の契りを神に誓う必要があるかと問われればそういうわけではないのだし、あちらの世界でだってリィには迷惑をかけっぱなしだったのだし……これ以上借りを作るのは何とも心苦しい話なのだがなぁ……」

「いや、彼はそんなこと、ちっとも気にしていないと思うぞ。だいたい、きみのような可愛らしい女の子に迫られて嬉しく思わないなど、男の風上にも置けない不届き者だ。リィは男の中の男だから、そんなことは言わないと思うが」

 

 リィの容姿を知る、例えば彼の学友などが聞けば首を傾げざるを得ない台詞であったが、リィの中身を知る極少数の人間にしてみればジャスミンの言葉はどこまでも正鵠を射ていた。

 然り、ウォルはしきりに頷き、

 

「ジャスミン殿の仰る通り、あれは正しく男の中の男だ。しかし、だからこそ怖くもなる。確かにリィは俺のプロポーズを受けてくれたが、しかし本当は迷惑に思っていたのではないか、俺を助けるために無理をしてくれたのではないかとな」

「それはお門違いの心配ってもんだぜ」

 

 行儀悪くカウンターに頬杖をつきながら、不敵な笑いを浮かべたケリーが言った。

 

「黄金狼はな、自分が嫌だと思ったことは間違いなく嫌だと、この上なくはっきり言う男だ。もちろん時と場合ってやつはしっかりと弁えてはいるがな。あんたのプロポーズが本当に嫌なら、下手な未練を残さないようきっぱり断ってるだろう。そうしないと、結局はお互いがもっと嫌な思いをすることになるんだからな。それを受けたってことは、あいつだってあんたのことを憎からず思ってるのさ」

 

 それは、ウォル自身が思っていることでもあった。

 だが、ウォルはケリーの言葉を有難いものと思った。自分の考えを他人が後押ししてくれるのは単純に心強いし、何よりリィのことをこれほどに理解してくれる人間が、自分以外にもこの世界にいることが嬉しかった。

 

「ケリー殿にそう言っていただけると、安心できるな」

「それによ、万が一黄金狼に振られたら、俺のところに来るといいぜ。今のまんまじゃちょっぴり小振りすぎるが、あと十年もしたら間違いなく俺の守備範囲のど真ん中だ。ベッドの中で優しく慰めてやるさ」

 

 果たして本当にそういう事態になったときに、元々が男であるウォルをケリーが抱こうとするのかどうかは疑わしいところであるが、なんとも剛胆な、それとも野方図な台詞である。

 ウォルは目を丸くして、ジャスミンを見上げながら問うた。

 

「ジャスミン殿。あなたの夫がこんなことを言っているが、いいのか?」

 

 先ほどのケリーの台詞は、どう考えても未来のウォルに対するラブコールである。夫が妻の前で話す内容として適切か否か、議論の分かれるところだろう。

 ジャスミンは、少し驚いた様子の少女を優しい視線で愛でながら、

 

「夫がわたしの前で他の女性を口説くなどいつものことだぞ?それどころか、わたしのいないところで浮気をしたらしっかりと事後報告をする不届きな男だからな。まぁ確かに、今のきみをベッドに誘おうとしたならば大いに問題はある。そして、夫の責任は妻であるわたしの責任にもなりかねないからな、これとは一度腹を割って話し合わなければならないかもしれない。だが、十年後のきみを十年後のこれが口説く分には大人と大人のやり取りだ。わたしはどこぞの過保護な母親ではないのだから、口を出す筋合いではないだろう」

 

 この言葉には、苦笑したケリーが噛み付いた。

 無論それは、じゃれ合いの域を到底出ることの出来ない、甘噛みでしかなかったのだが。

 

「ひでえな女王。仮にも自分の夫を『これ』扱いかよ。第一俺のことを不届きとか言うが、あんたなんか自分が浮気をしたことに気がつきさえしなかったじゃねえか。まったくあの時はあんたのキャンセルしたパーティに睡眠時間を削って出席しなけりゃならないわ、出席したらしたで奥様はどうされたのですかと質問攻めに遭うわ、踏んだり蹴ったりだったんだからな」

「あの時のことは済まなかったと思っているさ。だから、きちんと謝ったじゃないか。一度かたのついた昔の過ちを引き合いに出すなど、それこそ男の風上にも置けないぞ、海賊」

「それを言うなら、まだ起きてもいない未来の児童淫行罪で夫を『これ』扱いする妻もどうかと思うぜ?」

  

 売り言葉と買い言葉。頭上で交わされる、まるで熟練の鍛冶屋が振るう槌のようにぽんぽんと交わされる夫婦の会話を、ウォルは唖然としながら聞いていた。

 これでもう少し言葉に険というものが含まれていれば、夫婦の絆の一大事、ウォルも慌てて取りなすところなのだが、二人ともなんとも楽しげに、酒の肴を味わいながらやりあっているので、流石のデルフィニア元国王も口を挟む隙間がない。

 ひとしきり、罵り合いともじゃれ合いとも受け取れる不可思議な会話が繰り広げられた後、怪獣夫婦は共に腹を抱えながら笑い(ケリーは真実腹を抱えて笑い、ジャスミンをウォルを抱き締めながら笑った)、一息ついたところで、再びジャスミンはウォルに視線を戻して、問うた。

 

「すまない、話が盛大に横道に逸れた。えっと、わたしは何を聞いていたんだろうか」

「確か、なぜわざわざあらためて婚約などする必要があったのか、というくだりではなかったかな?」

「ああ、確かそうだったな。ではあらためて尋ねるが、ウォル、きみは何故、わざわざ妻としてリィと婚約などをしようとしたのだ?」

「言葉にするのは難しいのだが、やはりけじめだと思う。今までは夫としてあいつと夫婦だったのだからこそ、今度は妻として収まるのならばその旨をはっきり伝えておきたかった」

 

 その回答は一応の筋が通っているように思えたが、それはそれでもう一つの質問を促すものでもあった。

 ジャスミンはやはり真剣な調子で質問した。

 

「ではもう一つ。そもそも君は、何故リィの妻になりたいなどと思ったのだ?もとは男だったのなら、それは一大決心がいることだったと思うのだが、違うか?」

 

 ジャスミンの言葉に、ケリーもうんうんと頷いた。

 

「俺もそう思うぜ女王。俺だって今さら女の身体に着替えさせられて、同じように男の身体に着替えさせられたあんたに抱かれるとなったら……んん?別にそれはそれで構わねえ気もするな」

「……やはりお前はどこかおかしいぞ、海賊」

「いや、確かに違和感はあるがよ。俺とあんたは今だって夫婦なんだぜ?その男と女の役割が変わったところで、何か問題があるかね?」

「そう言われると答えに困る。なにせわたしはお前を一度ならず押し倒しているからな。初めての夫婦の営みの時からしてそうだったんだから、そういう意味で言えば、男と女の役割が逆だったのは今に始まったことじゃあない。だが……果たしてそういう問題なのか、これは?」

「今度は俺があんたを押し倒して銜え込むだけだろう?なんも問題なんかねえじゃねえか」

「何か、何か大事なことを決定的に間違えている気がするのだが……わたしの勘違いだろうか?」

 

 勘違いではないとウォルは思った。

 そして、目の前の夫婦は、どう考えても自分達夫婦よりもずれていると確信した。

 しかし、それとは別に、自分の心情というものははっきり伝えておく必要がある。

 なにせ、夫婦の間であればお互いの性別が逆転しても問題は無いという、とんでもない結論が生まれつつあるのだ。このままでは自分のことを、夫婦の契りを結んでおきながら夫に身体を委ねることが出来ない、初心な花嫁とでも誤解されてしまうかも知れない。

 

「ケリー殿。ケリー殿の仰ることはよく分かるのだが……」

「よく分かるのかい?いや、俺自身もよく分かってねえんだが……」

「そういうことではなくてだな。あなた方のような……その、何と言ったらいいか、何というべきか……」

 

 結局ウォルは何も言えず、うーんと考え込んでしまった。

 果たしてそれを気の毒と思ったのか思わなかったのか、苦笑したジャスミンが一応の助け船を出した。

 

「正直に言ってくれて構わないぞ」

 

 ジャスミンの言葉を聞いて、ウォルは控えめに、しかしはっきりと、

 

「うむ、では遠慮無く。あなた方のような、そう、例え天と地がひっくり返っても『ああ驚いた』の一言で済ませてしまうような正真正銘の変わり者同士の夫婦ならば、男と女の役割がひっくりかえても、やはり『ああ驚いた』で済ませられるのかも知れん」

「まぁ、確かにあんたは変わり者だな女王」

「うん、確かにお前は変わり者だ海賊」

 

 お互いを鏡として深く頷きあった怪獣夫婦である。

 ウォルは変わり者二人を意識して無視しながら、

 

「だがな、考えてもみてほしい。性別が変わっても正気でいられるのは、それが元から性別の異なる夫婦の間だからだ。……無論、普通の夫婦であればどう考えても正気でいられるとは思わないのだが……。まぁとにかく。こういう場合はどうだろう。あなた方の同性で仲の良い友人がいるとして、自分の性別が逆転したときに、だ。その友人に容易く抱かれていいと、それとも抱いてやろうと、お二人は思うだろうか?」

 

 ケリーは、海賊時代に仲の良かった幾人かの顔や、それとも仕事の同僚や部下だった男性のうち比較的親密だった何人かの顔を思い浮かべ、その彼らにベッドの中で抱かれる自分を想像してみた。

 そして、口の端を引き攣らせながら青ざめてしまった。

 ジャスミンは、自分が冷凍睡眠する前から今に至るまでほんの少しだって年を取ったようには見えない、銀幕の奇跡、もしくは芸能界の妖怪とも呼ばれる自身の親友を思い浮かべ、その女性を抱く自分を想像してみた。

 そして、どうにも想が像を結ばず、難しい顔で固まってしまった。

 

「……すまん、ウォル。俺はとんでもない勘違いをしていたみてえだ。あんたが黄金狼に抱かれるのは、どう考えても一大事。俺にはとても真似できねえよ」

「……そうだな、海賊。確かに、この少女の決心は、我々がどうこう論評していいことではなかったようだ」

「……そこまで神妙になられるとは何とも複雑な心境だが、ご理解を賜れたようでなによりだ」

 

 三人は同時に重たい溜息を吐き出した。その溜息に如何なる感情が乗せられていたかは、当人以外はまったく分からなかった。

 

「では、きみは何故、そこまでの覚悟をもってリィの妻になると決心したのだ?」

「そうだぜ。俺があんたの立場だったら、間違えても黄金狼とだけは番おうとは思わねえがな」

 

 ウォルはいくつかの理由を思い浮かべた。

 例えばウォルの宿る少女――ウォルフィーナが、リィと同じ生き物であるということ。

 彼女の体を幸せにする義務が、自分にはあるということ。

 リィと自分とは、剣と戦士としての魂に誓った相棒同士であるということ。

 他にもいくつも理由はあったのだが、しかしそれらは結婚相手としてリィが望ましいという理由であり、女としての結婚をウォルが望んだ理由にはならない。

 だからウォルは、言葉を選びながら自分の心持ちを口にした。

 

「理由はいくつかあるのだが……一番大きいのは、子供が欲しいということだろうか」

「子供が欲しい?」

 

 ケリーとジャスミンが思わず視線を交わらせてしまった。

 無理もない。その理由は、自分達があれほど破天荒な結婚をやらかしてしまった、その事情と全く同じものだったからだ。

 しかし、彼らに挟まれたかたちのこの少女は、子供を欲しがるにはあまりに幼すぎる。どう考えても第二次性徴が完了しているとは思えないのだ。子供を為すには早すぎるし、子供を欲しがること自体が時期尚早な気がする。無論、中に宿っている人格は別にして、だが。

 では、どうして子供を欲しがるのか。

 ケリーが興味深そうな様子で尋ねた。

 

「それは、やっぱり女の子の身体になると、母性本能ってやつに目覚めて自分の赤ん坊が抱きたくなったとか、そういうことか?」

「いや、そういうわけではない。確かに赤ん坊は可愛いが、我が子が抱きたいがために子供が産みたいと思ったことはないぞ。だから、突然母性本能に目覚めたということもない……と思うのだが、どうだろうなぁ」

 

 自分のことだから余計にわからないと、ウォルは考え込んでしまった。

 そんな彼女をやはりすっぽりと抱きながら、次にジャスミンが尋ねた。

 

「では、自分がこの世に生きた証を残したいとか、そういうことだろうか」

 

 それは正しくジャスミンが我が子を切望した事情そのものである。

 不治の病により三十年の命を宣告された彼女が、残された僅かな余命を自分の望むように生きたいと切望し、成し遂げ、最後に欲したのが自分の生きた証、即ちとしての我が子であったのだ。

 ジャスミンを本当の意味で知る人が聞けば少しだけ首を傾げてしまう、ジャスミン本人ですらが自分らしくないと呆れてしまう事情であった。

 が、やはりウォルは首を横に振り、

 

「そういう意味で言うならば、俺は自分の子供を既に何人も授かっている。彼らは彼らでたくさんの孫の顔を見せてくれた。もう十分というわけではないのだが、これ以上は望みすぎという気がするな」

「じゃあどうして子供を欲しがる?あれは、生半可な気持で産んでいいものではないし、産めるものでもないぞ?」

「……やはり痛いのか?」

 

 黒髪の少女が恐る恐ると尋ねれば、

 

「痛い。とんでもなく痛い。あの苦しみに耐えるその一事をもって、世の女性は男性よりも偉大だと確信できるほどに痛い。わたしは女に生まれた我が身を嘆いたことなど一度も無かったし、今でも無いのだが、あの瞬間だけは種を撒くだけで全てが済んでしまう男連中が羨ましく思ったほどだ」

 

 赤毛の経験者は語る、である。

 苦い顔で記憶を辿るジャスミンの前で、ケリーも深く頷いた。

 ジャスミンの出産には諸事情から立ち会えなかったケリーも、後から出産時の妻の状況を人伝で聞いて、神妙な顔つきで唸り声を上げたものだ。

 なにせ、『あの』女王が、極度に疲弊した顔で『いやはや、子供を産むということがこれほどの大仕事とは思わなかった』とぼやいたのだ。

 弱音やら愚痴やらとは、この共和宇宙に生きるどんな生き物よりも縁遠い『あの』女王が、である。

 それでも出産直後に酒を所望したあたりは彼女らしいと言えるが、ケリーなどからすればジャスミンは平気の平左な顔をして子供を産むものだと思っていただけに、その反動は大きい。

 どうやら出産とは本当に大変なものなのだなぁと、ケリーもその時点で初めて実感を伴って理解したのだ。

 同じように厳しい顔をした夫婦の前で、ウォルは項垂れて、

 

「そうかぁ、やはり痛いかぁ。俺は、あまり痛いのは好きではないのだがなぁ……。そういえばポーラも、俺の前では平気を装っていたが、産みの苦しみは相当なものだったと聞いたし……」

 

 ぶつぶつと、我が身の不幸を嘆くように言った。

 ただ、今のウォルは年端もいかない少女の外見であるだけに、どうにも滑稽というか、微笑ましい様子ではあった。まるで学校の教室の片隅で、友人と肩を合わせてひそひそ声で『将来はどんな男性と結婚したい』だとか『何人の子供が欲しい』だとか、泡色の未来図面を語る少女のようであったからだ。

 しかしウォルは完全に本気である。なにせ、既に婚約まで済ませてしまっているのだ。彼女の覚悟さえ決まったならば、出産という人生の一大イベントが待ち受けているのは今日から一年先のことであっても不思議ではない。正しく迫り来る危機である。

 苦しげに唸り声をあげるバニーガールを前にして、ジャスミンは怪訝な声で、

 

「差し出がましいとは承知で言うのだが、ウォル、そんなに嫌なら、何故子供が欲しいからリィと結婚したいという結論になるのか、わたしにはそこが不思議に思えるのだが」

 

 確かに、とケリーも思った。

 ケリーも、おそらくはジャスミンも、子供を残すことが人の義務だとは思っていない。むしろ、きちんと親になることの出来ない甘えた人間が子供を作ることなど、罪悪に等しいと思っているくらいだ。

 だから、嫌なら子供を設ける必要などどこにも無いのである。

 ならばどうして。

 そう思ったときだ。

 ケリーが、声を低めながら言った。

 

「あのよ、ウォル。お前、まさかとは思うが、黄金狼の子供を産んでやりたいがためにあいつと婚約したとか、そんな馬鹿なことは言わねえよな?あいつが、放って置いたら誰とも番わず子供を残すこともなく死んでいくかも知れねえから、それが可哀想で、自分が産んでやらないといけないと思ったとか、そんな思い上がったことを言うつもりはねえよな?」

 

 口元は笑っているし、喋り方も冗談めいたものでものではあったが、眼光には剣呑なものが籠もっていた。

 だが、それを聞いた黒髪の少女の眼光の険しさに比べれば、ケリーの眼光はまだ穏健と呼べるものであった。その眼光を向けられたケリーは勿論、少女を抱きかかえていただけのジャスミンですらが、背中に冷たいものを感じるほどに、少女の眼光は鋭く、迸る怒気は更に鋭かった。

 

「ケリー殿。一度だけだ。一度だけ、その無礼な物言いは聞き流そう。だが、もう一度同じことを口にすれば、それは俺の名誉と、あなたが黄金狼と呼ぶ戦士の名誉に泥を塗るものと判断し、俺は相応の行動をする。それでもいいのだろうか?」

 

 喉元に切っ先を突き付けられたような心地のケリーは、静かに頭を下げた。

 目の前にいるのがただの少女などではなくて、あの恐るべき戦士が同盟者と認めた存在なのだと、あらためて認識した。

 

「……悪かった。お前さんと黄金狼を侮辱したことを詫びさせて欲しい」

「わたしもだ。わたしも夫と同じく、まさかとは思いつつも、きみがそういう意図でリィと婚約したのではないかと疑った。わたしも、君達を侮辱した。許して欲しい」

 

 見上げる程に大柄で、歳の頃も一回り以上は違うように見える男女が、幼い少女に頭を下げているのだ。それに気付いた周りの人間は、一体何事があったのかと奇異の視線で三人を見た。

 ウォルは一度頷き、そして言った。

 

「頭を上げてくれ。そして、俺も卿らに謝罪したい。卿らの心根が何処にあるのかを俺は知っていたのだ。知っていながら、しかしああ言わざるを得なかった。もう少し上手な言い様もあっただろうにな。七十年以上生きておいて、何とも不器用だと自分でも恥ずかしく思う」

 

 苦笑しながら、本当に気恥ずかしそうな調子の声である。

 ケリーもジャスミンも、それを和解の印だと受け取った。そして互いに手にしたグラスに新たな酒を注ぎ、打ち合わせることでこの一事を水に流すことに決めたのだ。

 

「じゃあよ、ウォル。それだけ子を産むことを嫌がっておきながら、どうして子供が欲しいなんて言うんだ?」

「いや、子供を産むのが嫌なのではないぞ?ただ、痛いのが嫌というか、なんというか……」

「そこらへんはどうだっていいさ。とにかくお前さんは子供が欲しいと言っている。で、結局のところ、どうしてそんなに子供が欲しいんだい?」

 

 畳み掛けるようなケリーの質問である。

 若干気圧されたようなウォルは、慎重に言葉を選びながら、自分の思いを口にしようとして、その時はじめて気がついた。

 目の前の、自分を興味深げに見つめる美丈夫の右眼が、どうにもおかしいのだ。

 何がおかしい、というわけではない。焦点がずれているというわけでもないし、眼球の動きも自然なものだ。

 しかし、何かがおかしい。言葉にはし難い何かであったが、ウォルの魂に染み付いた何かが不自然だと告げている。

 ウォルは、思わず首を傾げてしまった。

 

「どうした、そんなに見惚れてよ。俺が男前過ぎたか?」

「うむ。確かに卿は、男の俺でも嫉妬してしまうほどの男ぶりだが、そうではなくて、その右眼が、だな、なんというか……」

「右眼がどうした?」

 

 ケリーは手にしたグラスを弄びながら尋ねた。

 口元は、耐えきれない喜びで笑みの形を作っている。まるで、我が子がなぞなぞを解くのを待ち侘びる、父親のような表情だ。

 それに答えるように、ウォルが口を開き、言った。

 

「気を悪くされたら謝る。その右眼は、卿自身のものだろうか?」

「ビンゴ!」

 

 ケリーが突然大声をあげたので、ウォルの小さな体がビクリと跳ね上がった。

 義眼の海賊という渾名を持つ色男は、不敵な笑みを浮かべながら、右眼の前までグラスを掲げてウォルの観察眼に敬意を表した。

 

「いやぁ、たいしたもんだ!この眼は最近新調したばかりなんだが、一発で見抜かれるとはな!驚き入ったぜ!昔なじみだって細胞培養義眼に代えたのかって驚くくらいなんだがな!」

 

 言わずもがな、ケリーの右眼は義眼である。それもただの義眼ではない。赤外線や紫外線等、肉眼では捕らえきれない光線を認知し、それを利用して物体透過視までも可能とした超高機能のスパイ・アイである。

 ただし、やはりそれは機械の目であって、どうしてもいわゆる普通の眼とは異なる点が出てくる。ケリーの義眼の場合は、機能を使用した際に、僅かに瞳の色が、本来の琥珀色から赤色に変わるという特徴があった。

 だからいって不都合があるわけではない。この宇宙には、眼はもちろんのこと、四肢や内臓、はては脳の一部までを機械化した人間が数多くいるのだ。片目が義眼であることが他人にばれたところで何の害もないのである。無論、それが超高性能なスパイ・アイであることがばれれば、風紀上、そして防犯上の理由から、苦情が殺到するかも知れないが。

 ならば何故わざわざケリーが義眼を新調したかといえば、それは完全な趣味である。確かに愛船《パラス・アテナ》の進歩具合に比べるとやや機能的に見劣りしてきたので、悔しさ半分で改造しようとしたというのは否めない。だが、それは以上に、眼を新しくすることで周りの人間がどう反応するのかを見たかったというのがケリーの本音だろう。

 そして新調した最新型義眼は、各種機能のバージョンアップは勿論のこと、その外観も一新していた。具体的に言うと、ケリーの左眼――肉眼とまったく見分けがつかないような外見にしたのである。機能を使用したとしても以前のように瞳色が変わることもないし、当然のことではあるが、焦点の合わせ方や視線の向け方も左眼と完全に同調してある。

 ケリー自慢の右眼であった。

 それを、ウォルは一発で義眼であると見破ったのだ。ケリーはそのことが嬉しくてたまらなかった。

 

「ではそれは、機械の眼なのか」

 

 ほぉぉ、と、感心しきった様子のウォルが、ケリーの顔を覗き込む。

 自然、ケリーの目の前には絶世の美少女の顔が来ることになったのだが、流石はケリーというべきか、この男はほんの少しの動揺もしなかった。それどころか、ウォルの小さな体をジャスミンの膝の上からひょいと抱え上げ、自分の膝の上に座らせてしまったのである。

 

「これでよく見えるだろ」

 

 可愛らしいバニーさんが、不敵な笑みを浮かべた色男の膝の上に乗っているというのは、なんとも微笑ましげで、しかしどこか妖艶で、一言で評すれば物凄く絵になる光景であった。ウォルを横取りされたかたちのジャスミンも、思わず見とれてしまった程だ。

 今度はケリーの膝の上からその顔を見上げたウォルは、やはり驚きと感動の入り混じった表情で、

 

「その眼は、当然ものが見えるのだな?」

「もちろんだ。ウォルの可愛らしいバニーさん姿がよく見えてるぜ」

「いや、それはあまり見ないでいただけるとありがたいのだが……」

 

 揶揄するようなケリーの言葉に、ウォルは少しだけ傷ついたようだった。

 しかし気を取り直して、ケリーの右眼の更に横に自分の左手を伸ばし、指を三本立てた。

 そこは、どうしても左眼では見えない、右眼でしか見ることのできない場所である。

 

「これは何本?」

「三本だな」

「これは?」

「Vサイン」

「ではこれは?」

「ジャンケンならグーに勝てるがチョキには負けだ……これじゃあまるでKOパンチを食らったボクサーだな」

 

 苦笑したケリーである。

 そしてウォルは、大きく開いた己の左手をまじまじと見ながら感嘆の吐息を吐き出した。

 

「いや、リィとシェラから話としては聞いていたのだが、この時代では失われた視力までも機械で補うことが出来るのか。なんとも羨ましい。俺の生きた時代にも同じ技術があれば、どれほどの戦傷者が救われたか……」

 

 しみじみとした調子で言った。

 ウォルが王を務めた時代のデルフィニアでは、戦争が起きれば多くの死者と、それ以上の怪我人が出た。パラスト・タンガの両大国との戦火が絶えた後でも国境付近の小競り合いは尽きることがなかったし、どれほど小規模であっても戦が起きれば必ず怪我人は生まれた。

 そして多くの場合、その怪我人は名誉の負傷を讃えられながら、しかしそれからの長い人生を大きなハンデを抱えて生きていかなければならなかったのだ。それは、平和に過ごすことが出来たならば負う必要の無かった余分な荷物である

 ウォルはそういった者達に可能な限りの援助を惜しまなかった。だが、ものには限界というものがある。全ての戦傷者が何不自由なく、というわけにはいかなかった。

 以前、リィやシェラとの問答でも議題にあがったところではあったが、ウォルにしてみればこの時代があまりに羨ましく思えてしまうのだ。この世界に、そしてこの時代に生を得ていれば、失われなかった命や救われた命のなんと多いこと。

 既に玉座とは何の関係もないはずのウォルがそんな葛藤を覚えていると知れば、リィなどは同盟者を痛ましく思いつつも、しかし表情には出さずに冷やかしたであろう。『だからお前は苦労性の熊なんだ』、と。

 そこまでの事情は聞かされていないケリーであったが、しかし少女の落ち込んだ声を励ますような調子で言った。

 

「聞いて驚けよ、ウォル。これはな、ただものを見るだけじゃないんだぜ。その気になれば建物の外から中の様子を伺うことも出来るし、蛇みたいに相手の体温で居場所を探すことも出来る」

「ほう、では月や星の無い夜でも、自在に動けるということか!それでは夜襲がし放題だな!」

 

 目を輝かせながらそんなことを言った。

 このあたり、どうにも少女の発想ではない。

 当然のことと言えば当然なのだが、端から聞いているジャスミンなども、未だ慣れない違和感であった。

 

「当たり前だ、それにな、こいつは俺の自慢の相棒とも繋がってるのさ」

 

 ケリーの相棒と言えば、愛船《パラス・アテナ》のことであり、もっと突き詰めて言えばその感応頭脳である《クレイジー・ダイアン》こと、ダイアナを指す。

 ケリーの義眼が取得した映像・音声などの各種情報は、ケリーが断りを入れない限り、あるいはダイアナが気を利かせない限り(繰り返すが彼女は感応頭脳のはずである)、各種通信によってダイアナの知るところとなる。その機能によってケリーは実際にいくつもの危地を乗り越えることが出来たのだし、使われることこそ無かったものの、彼の蘇生装置の根幹となる彼の記録もそうして積み上げた歴史そのものであった。

 当然、今だってケリーの右眼を通じて全ての情報がダイアナの人工知能へと伝わっている。映像はおろか、ウォルとケリー、ジャスミンの交わしている会話も余すところなく、だ。

 ということは、ケリーの右眼を上目遣いに覗き込むウォルの顔だってダイアナは正しく見ているのであり、そのあどけない表情はダイアナの母性本能(……)を強烈に刺激していた。

 先ほどからケリーの左手首に巻いた通信装置がけたたましい電子音を鳴らしているのもそのせいだろう。差し詰め『わたしにもその子と話させなさい!』と言いたいに違いない。

 ケリーは無情にもそれを無視していた。

 そんな事情は露知らず、ウォルは小首を傾げると、

 

「相棒?それは、確かリィの話していた、船の女神様のことか?」

 

 電子音のけたたましさが更にランクアップした。

 ダイアナの心を代弁するならば『女神様!女神様ですって!ちょっと聞いたケリー!やっぱりこの子可愛らしいわ!だから、さっさと通信を繋いでわたしと話させなさいよ!』とでもなるのかも知れなかったが、やはりケリーは無視した。

 半笑いで無視した。

 通信機の電源も落としてしまった。

 

「どうかしたのか、ケリー殿?」

「いんや、別に。ただ、可愛い女に意地悪するのはこんなに楽しいもんなんだなって再認識してただけだぜ」

「趣味が悪いぞ、海賊」

 

 だいたいの事情を察していたジャスミンが、若干呆れながら呟いた。

 耳聡いケリーがまたしても言葉を返そうとした、その時である。

 

「ケリー殿。一つよろしいか?」

「ん、どうした?」

「リィは卿の相棒のことを、まるで魔法使いみたいに機械のことなら万能だ、と評していたのだが、それは事実だろうか?」

 

 相棒のことを褒められたケリーは、まったく嫌な気がしない。

 鼻高々の様子で、誇らしげに言った。

 

「魔法使いってやつには残念ながら出会ったことはねえし、天使連中に比べれば出鱈目度合いも色あせるってもんだが、ダイアンから不可能って言葉を聞いたことは、あんまりねえな」

 

 その言葉に目を輝かしたウォルは、

 

「では、一つ頼みたいことがあるのだが、いいだろうか!?」

「ああ、いいぜ。俺とダイアンに叶えられることなら、何だって叶えてやるさ。言ってみな」

 

 ケリーは、目の前の兎耳の生えた頭を撫でながらそう答えた。

 まるきり、年端もいかない少女の扱いである。

 頭を撫でられると前髪が目に入りそうになるのか、目をぎゅっと閉じたウォルが、口を尖らせるような口調で言った。

 

「……ケリー殿。別に頭を撫でられるのが嫌というわけではないが、俺は男だぞ。それに、齢七十を過ぎる老人だ。それに対して、この扱いはどうだろうか」

「お、奇遇だな。俺も実は七十を超えるお爺さんなのさ。それが一度くたばって、天使にこの体をプレゼントしてもらったんだ。だがな、ウォル。やっぱり人間ってやつは度し難いもんで、どうしたってまずは相手の見た目を重視しちまう。そして、今のあんたを見ていると、どうしてもこういうことをしたくなっちまうんだ。諦めてくれ」

 

 からからと笑うケリーにやられ放題で、なんとも苦い顔のウォルである。

 しかし、とりあえず話を先に進めることにしたらしい。溜息を一つ吐き、それから、おずおずとした口調で頼み込んだ。

 

「先ほども話したことなのだが、俺が今この星にいることを、リィにまだ伝えられていないのだ。だから、もし卿の相棒に頼んで可能ならば、リィに俺が無事であること、そしてこの星にいることを伝えていただきたい。お願いできるか?」

「なるほど、そいつはもっともなお願いだ。確か、この星に向かってるのは間違いないんだったよな?」

「うむ、それはそうなのだが……」

「なら、どの船で向かってるかなんて考えるまでもねえな。ダイアン、聞こえるか?」

 

 左手の通信機の電源を入れ、通信スイッチも入れたケリーはそう呼びかけたが、返答はなかった。

 

「ダイアン、ダイアン、聞こえてるんだろ?返事をしろ」

「……」

「拗ねるなよダイアン。さっきは悪かった。ちょっと意地悪してみたくなっただけじゃねえか。そんなに可愛らしく反応されたら、俺はもっとお前にいかれちまうぜ」

 

 まるきり女たらしの台詞に、通信機から重たい溜息が聞こえた。

 

「……さっきはわたしがどんなに呼びかけても無視したくせに、男って本当に勝手だわ」

 

 それは、ウォルの初めて聞く声だった。

 ややアルトの音域の、甘い声。そして、本来であれば深い知性と教養を感じさせる魅力的な声のなずなのだが、今は若干の湿り気と恨みがましい重たさを帯びている。

 それでも、ウォルはその声の持ち主が、きっと魅力的な人物に違いないと思った。

 

「悪かった。ほんの軽い冗談のつもりだったんだ。だからあんまり怒るなよ。俺の他愛ない悪戯に拗ねるお前を可愛がりたかっただけじゃねえか」

「その台詞を吐いたすぐ後に恋人に刺された男の人を、わたしは三桁以上知ってるわ。調べたらもう一桁は間違いなく増えるでしょうね。今すぐにリストアップして送りつけてあげましょうか?」

「おお怖え。まぁ一回死んだ身だ、もう一度死ぬのは別に構わねえんだが、どうせ死ぬならお前に抱かれながら死にてえな。俺を刺したその手で、優しく抱き締めてくれるかい?」

「医療用ロボットの冷たいアームで思い切り抱き締めてあげるわ、消毒液の涙を流しながらね。それで、通信を切ったり入れたり、何の用?ようやくわたしもその子と話させてくれるのかしら?」

「悪いがそいつは後回しにしてくれ。聞いてたかと思うが、この子、ウォルはのっぴきならない事情でこの星にいるんだがそのことを黄金狼は知らねえらしい。で、この子の無事を黄金狼に伝えたいんだが、《ピグマリオンⅡ》と連絡は取れるか?」

「黄金狼って、金の天使さんね?そしてその子は彼の将来の奥様。それで間違いない?」

「ああ、そのとおりだが……どうした?」

 

 ケリーが思わず尋ねてしまうほどに、ダイアナの口調はおかしかった。

 彼女はいわゆる人間ではないが、人間以上に感情豊かであり、無論のこと賢い。その彼女の今の口調に名前をつけるならば、『呆れている』というのが相応しかっただろう。

 問題は、どうして彼女が呆れているのか、ということである。

 

「はぁ……。あなたたち人間って、ときどきびっくりするくらいに賢いのに、ときどきびっくりするくらいに鈍いわ。あのね、ケリー。機械であるわたしが言うのもなんだけど、こういう時ってまず言うべきことがあるんじゃないの?」

 

 ケリーは首を傾げた。

 目で、ジャスミンに何事かを問いかけたが、ジャスミンも小首を傾げてしまっている。

 もう一度、通信機から盛大な溜息が聞こえて、

 

「貴方達の友人であり、そして恩人でもある金の天使さんが、なんと婚約をしたのよ。そして、その婚約者さんが目の前にいるんだわ。なら、お祝いの一言ぐらい送るのが礼儀ってものじゃなくて?」

 

 あ、とケリーは固まってしまった。それはジャスミンも同じだった。

 彼らを責めるのは酷というものだろう。なにせ、彼らの聡い知性をしてフリーズさせるような、突拍子もない話を連続して聞かされたのだ。

 異世界の国王が女の子に転生して、その妻だった少年を追いかけてきた。その少年は自分達も大恩ある金色天使のことで、しかもその天使はどう考えても結婚やら恋人やらとは縁遠い人物である。なのにこの少女は、その少年と婚約したのだという。子供が欲しいという。

 それらの事実を何とか飲み込んだだけでも賞賛に値することなのだ。これがいわゆる一般人であれば最初から笑い飛ばして耳を傾けないだろうし、もう少し事情の知っている一般人――例えばこの怪獣夫妻の長男など――であれば脳のシナプスをシャットダウンさせて回線がショートするのを防いだだろう。 

 だから、二人に責任は無い。

 だが、大いに慌てた。慌てて、何か気の利いたことを言うべきだと考えて、ウォルのにこやかな笑顔を見て何も言えず。

 最後に全てを諦めて、二人も一緒に微笑み、そして言った。

 

「あのな、ウォル。俺達夫婦は、黄金狼に大きな恩があるんだ。ただの恩じゃない。言葉では表せない、とてつもなくでかい恩ってやつだ」

「わたし達がここで息をしているのは、リィのおかげだとっても過言ではない。そればかりではく、わたし達の息子も、孫までも、何度となく彼に助けられた。なのにわたし達が恩を返そうとしても、一向に受け取ってくれる気配がない。『あれはおれの好きでやったことだからジャスミン達が恩を感じる必要なんてないんだ』などと、つれないことを平気な顔で言う。まったくひどい少年だとは思わないか?」

 

 ウォルは苦笑しながら頷いた。

 

「ああ、その気持はよく分かる。俺も、あいつの恩の押し売りには常々まいっていた。なにせ、こちらが心の底から助けを欲している時にふらりと現れ、到底返しきれないような恩を売りつけては、一向にそれを返させてくれんのだ。それも一度や二度ではない。ことあるごとに、数え切れない程にだ。そんなことをされては、一生あいつに頭が上がらんではないか」

「なのにこちらが申し訳ない顔をするのを、彼は何よりも嫌がる」

「黄金狼の悪い癖だな。非の打ち所のないいい男だが、そこだけがちっとばかり不味い。恩ってやつは、巡り巡ってこそ人を幸せにするんだ。情けは人のためならずってやつだな」

 

 年齢も、そして性別もばらばらな三人が、悪童のような表情を付き合わせて微笑っていた。

 手には、美酒の注がれたグラス。言葉に乗るのは、黄金の毛並みをした狼のことばかり。

 これではまるで西離宮のようではないかと、ウォルは思った。

 

「だからよ。お前さんがあいつの奥さんになったら、そこらへんは真っ先に矯正してやってくれ」

 

 その言葉を聞いて、ウォルは大いに慌てた。

 ビックリしてケリーのほうを振り向いたから、グラスから酒が飛び散ってしまうほどだった。

 

「ちょっと待ってくれ。俺があいつを矯正するのか?そんな大それたこと、神様だって出来んと思うぞ」

「ああ、だからお前さんに頼んでるんだ。なにせお前さん、闘神の現し身って呼ばれた王様なんだろ?ならどう考えても、黄金狼を矯正できるのはお前だけだぜ」

「……そんな話、誰から聞いた?」

 

 二分の一だ。金色の髪をした天使か、それとも銀色の髪をした天使か。

 もしくはその両方から、という可能性もある。

 

「そこらへんは想像にお任せするぜ。しかし事実なんだろう?」

「しかしなぁ……」

 

 どこまでも渋い顔をするウォルに、ジャスミンが笑いかける。

 

「大丈夫だ、ウォル。この世で一番強い人間というのはな、この世で一番強い男の妻なのだそうだぞ。どれほど腕っ節が強く頑固な男でも、妻にだけは頭が上がらないものらしい。だから、きみさえしっかりしていれば、リィの手綱を握るのは不可能ではないさ」

 

 それは自分達のことも含んでいるのだろうかと、手綱を握られている自覚のないケリーは思った。しかし結婚に至った過程なども含めて考えると、赤の他人が見れば、自分が尻に敷かれているのだと言われても反論する材料が乏しいだけに、ケリーの表情も渋い。

 そんなケリーを横目に、ウォルは真剣に悩んでしまった。

 リィの手綱を握る。

 あの、リィの手綱を。

 どう控えめに考えても、不可能事にしかウォルには思えなかった。

 自分がリィの手綱を握ることと比べれば、馬の『う』の字も知らない農民がロアの黒主を農耕馬として従える方が、まだ現実味があるというものではないか。

 

「まぁ、そこは将来への課題ということでお茶を濁してもらえると嬉しいのだが、いけないか?」

 

 苦み走った顔の少女を見て、ケリーとジャスミンは盛大に吹き出してしまった。

 これほど愉快なことも昨今無いなというくらいに面白かった。

 そして、自分達の言うべきことをようやく見つけて、言ったのだ。

 

「おめでとう、ウォル。心の底から祝福するぜ」

「きみとリィの結婚式には、必ず招待して欲しい。宇宙の果てにいても、必ず飛んでいく。そして、両手では抱えきれないほどの祝いの品を送りつけてやるから、覚悟しておいてくれ」

「もし招待状を送り忘れたりしたら、冗談抜きで一生恨むからな。幽霊の恨みは怖いんだぜ、死んだって化けて出てやる」

 

 もう、言葉もないウォルである。

 しかし、その柔らかな頬には、極上の笑みが浮かんでいた。

 自分達の婚約を、ルウも、そしてシェラも喜んでくれたが、こういうものは何度あっても嬉しいものだ。

 

「ああ、いい笑顔だわ。ほんとう、金の天使さんに嫉妬しちゃうくらいに良い笑顔。これは、未来の旦那さんにも送ってあげないとね」

 

 通信機から、そんな声がした。

 

「ダイアン、《ピグマリオンⅡ》と連絡が取れたのか?」

「うーん、これを連絡が取れたと言って良いものかわからないけど……。今《ピグマリオンⅡ》は通常のヴェロニカ航路を大きく外れた場所で停泊してるわ。原因は大規模な宇宙嵐。これを避けるために大きく迂回した航路を取ったんでしょうけど、そっちはそっちで別の宇宙嵐が発生してたみたい。これじゃあまるで、神様が運命の二人を遠ざけようとしてるみたいね」

「へえ、お前には詩の才能もあったのか」

「冷やかさないでよ。でも、本当にそんな感じなの。運がないっていうか何ていうか。だから、通信の方も、行ったり来たりは難しいわね。わたしなら《ピグマリオンⅡ》まで正確に通信を飛ばせるけど、あちらがわたしまできちんと通信を飛ばせるかどうかは分からないわ。それでもいい?」

「と、船の女神様は申しておりますが、如何いたしますか陛下?」

 

 冗談めかしてケリーが言った。

 ウォルは苦笑して、

 

「それで十分過ぎるほどだ。まずは俺の無事をリィ達に伝えて貰えれば、あとは時間の問題なのだからな」

「だ、そうだ。ダイアン、よろしく頼むぜ」

「分かったわ。じゃあ、花嫁さんの元気な様子も一緒に、花婿さんまでお手紙届けておくわね。早く来ないと可愛い奥さんが悪い狼の餌食になっちゃうわよって」

「おい、ダイアン。その悪い狼ってまさか俺のことじゃないだろうな」

「さぁ?そこらへんは、ケリー、あなたの常日頃の女性に対する態度から決まってくるんじゃなくて?」

「ちょっと待て、いくらなんでも俺は黄金狼の奥さんの間男になるつもりはねえぞ!おい、ダイアン……くそ、通信を切りやがった。何て感応頭脳だ、まったく……」

 

 口を尖らせたケリーだったが、ジャスミンはお似合いだと苦笑した。

 そしてウォルも同じようなことを思っていたのだが、先ほどの会話の中で気になる点があったことを思い出した。

 ぞくりと、背筋を不吉なものが走り抜ける。

 

 ――まさか。

 

 ――ありえない。

 

 ――いや、そこまでは……

 

 僅かに青ざめた表情の少女が、片頬を引き攣らせながらケリーに尋ねた。

 

「あの、ケリー殿?」

「うん?どうした、顔色が悪いぜ?」

「つかぬことを伺うのだが、先ほど卿の相棒の言っていた『花嫁さんの元気な様子も一緒に』とは、一体どういう意味だろうか?」

 

 不思議そうな顔をしたケリーが、どうしてそんな分かりきったことを聞くのかと、訝しげな口調で答える。

 

「そりゃあ、今のあんたの元気な様子を、手紙と一緒に送るってことさ。そのほうが黄金狼も安心するだろう?」

「……それはつまり、その、今の俺の姿が、あいつに伝わるということか?」

「まあ、映像としてか、それとも静止画としてかはわからねえが、そういうことだろうな」

 

 ウォルの全身から、一気に血の気が下りていく。

 それも無理はないだろう。なにせ今の彼女は、男であれば誰もが鼻の下を伸ばすバニーガールなのだ。

 頭には可愛らしい兎耳がついているし、体を覆うレオタードは股間の切れ込みもきついセクシーなものだし、妖しげな色気を醸し出す網タイツまで装備している。化粧だってしているのだ。

 どこからどう見ても、王としての、あるいは戦士としての威厳など欠片も無い、色街の女そのものの姿である。

 一週間前、ウォルがこの格好をした自分を鏡で見て、最初に強く決心したことがある。

 あちらの世界での自分を知る極少数の人間には、絶対にこの姿を見せてはならないということだ。

 その禁を犯したならば、自分の男としての誇りは、木っ端微塵に砕け散るだろう。

 そう、確信していた。

 そして、彼女の予想しうる、最悪の事態が、今、起きようとしているのだ。

 

「け、ケリー殿!今すぐ、今すぐ船の女神殿を呼び出してくれ!」

「お、おう、ちょっと待ってくれ。ダイアン、ダイアン、聞こえるか?」

 

 通信機からの反応はすぐであった。

 

「どうしたのケリー?そんなに慌てて、何かあった?」

「船の女神殿!先ほどの、リィへの手紙はどうされた!?」

「はじめましてウォル。わたしはダイアナ。ケリーの相棒をやってるわ。それで、手紙ってさっきの通信のことでしょ?しっかり送っておいたわよ?貴女の可愛らしい姿も勿論一緒にね。絶対にあの子、惚れ直すに決まってるわ。それくらい、さっきの貴女の笑顔は可愛らしかったんだもの!」

「くっ、遅かったか!ではダイアナ殿、その通信とやらの回収を頼む!」

「通信の回収?変なことを言うのね、初めて聞いたわそんな言葉。無理よ、そんなこと。恒星間通信は、ショウ駆動機関理論を応用して、光よりも早いのがウリなんですからね。もうあっちに着いてる頃じゃないかしら?」

 

 もうあっちに着いてる、もうあっちに着いてる、もうあっちに着いてる……。

 

 残酷な台詞が、ウォルの耳道の中でこだました。

 黒髪の少女は、この世の終わりのような表情のまま、がくりと崩れ落ちる。

 それを心配した二人が口々に労りの言葉を投げかけるが、バニーさんの耳には届かない。

 床に四つん這いになった少女は、項垂れながら、力無く笑い続けた。

 

「ふ、ふふふ、おわった、もう、いま、ウォル・グリーク・ロウ・デルフィンは死んだ……。父上、母上、申し訳ありませんでした……。あなた方の息子は、もはや息子を名乗る資格を失ってしまったのです……これからは、正真正銘の女として、一生懸命生きていきますから、天の彼方より見守っていて下さい……」

 

 少女の虚ろな声が、酒場の喧噪の中に溶けて消えた。

 

 

「ここか」

「ああ、間違いない」

「今も店の中にいるのか?」

「協力者の情報を信じるならな」

「出入り口を封鎖しろ。裏口には、特に重点的に人員を配置しておくこと」

「どうせ奴さんは袋のネズミだ。焦ることはない。落ち着いて、粛々と行こう」

「了解。しかし、この女の子を捕まえるために、本当にこれだけの人員が必要だったのか?」

「油断するなよ。可愛い見た目をして、魔女か獣だって噂だ」

「ふん、まぁいいさ。魔女だろうが獣だろうが、俺達は任務を遂行するだけだからな」

「ああ。可哀想だが、この子は三十分後には檻の中だ」

 

 ネオンに彩られた闇の中を、完全武装の人影が慌ただしく動き回っていた。

 彼らの腕には、ヴェロニカ共和国軍の特殊工作部隊であることを示す腕章が、大きく縫い止められていた。

 

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