懐かしき日々へ(デルフィニア戦記・暁の天使たち他)   作:shellfish

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第七十一話:前夜

 白い壁に囲まれた廊下が、遠近感を狂わすほど真っ直ぐに伸びていた。

 私はそこを歩いている。

 綺麗に掃除の行き届いた、美しい道だ。人間的と言い換える事も出来るかも知れない。そして、私が今身に纏っている衣服も、少々質素に過ぎるとはいえ清潔で十分人間的な代物だ。

 夢のようだと思う。地下深く、かび臭さと人間の饐えた体臭に満ちたあの部屋から、私はついに解き放たれたのだ。

 もう二度と生きては出られないのだと思っていた。男達の慰み者になり、媚びを売り、偽りの嬌声を上げながら股を開くことでしか生きられないあの部屋で、一生を終えるのだと思っていた。

 毎日のように部屋から誰かが連れ出され、半死半生の態で戻ってくる。闇夜でも分かる虚ろな視線、体中に残された狂宴の残滓。股間から垂れ落ちる体液を拭うこともなく、粗末な寝台に倒れ込む。啜り泣く声はしばらく続き、やがて悪夢に魘された呻き声に変わる。時には、部屋を出る時には万全であったはずの四肢を欠損させて戻される子もいた。それがどうして明日の自分の姿ではないと言い切れるだろう。

 地獄だった。地獄に自分達は堕とされたのだと思った。

 そして、私たちは地獄から助け出された。

 周りに、あの地獄をともに生きた、友人達の笑い声が聞こえる。どれも、顔に生気が戻っている。あの地下で見た、幽霊と見間違えてしまうような重々しさ、虚ろさはない。それは、きっと私も。

 忌まわしい記憶は消えない。これからの人生で忘れることなど出来るはずもない。それでも、悪夢が夢として消え去ったならば、喜ばないほうがどうかしている。そして、喜ぶことすら出来ず呆けた様子で歩く子も、少数ではなく存在した。

 お坊さんのような格好をした人が数人、私たちを先導している。優しそうな顔をしている。あの人達が、私たちを助け出してくれたのだ。そして暖かい食事と清潔な衣服、男達の獣臭い吐息の存在しない寝台をくれた。そして、これから私たちを故郷のパパとママに会わせてくれるらしい。

 もう、私は汚されてしまった。きっと元の私には二度と戻れない。それを知ってなお、パパとママは私を愛してくれるだろうか。彼らと顔を合わせる瞬間を思うと、足下が竦むようだ。

 そう言えば、あの子はどうしたのだろう。二週間ほども前に、あの部屋に連れてこられた少女。

 意志の強そうな、子だった。美しさよりも、それが一番印象深い。裸で両手両足を縛られて、大人だって泣き叫んで許しを乞うような暴力を振るわれて、なお強く折れなかった瞳の色。

 私を、ローラと呼んでくれた。もう、私自身ですら忘れかけていた名前を、呼んでくれた。

 あの子も、助け出されたのだろうか。だとすれば、私はあの子に謝らないといけない。私はあの子に酷いことをしたのだ。麻薬の詰まった注射器を、何度も何度も腕に刺し、苦しむあの子をただ見続けた。

 でも、最後に部屋から連れ出される時に、彼女は微笑んでいた。男達に引きずられ、私であれば絶望と恐怖で口もきけないような状況に置かれて、なお柔らかく笑いながら片目でウィンクすらしてみせていた。

 薬に冒された虚ろな笑みではない。この部屋に連れてこられた時のあの子の表情で。

 それを見て私は全てを理解した。あの子に麻薬は効いていなかったのだ、と。全ては連中を騙すためのふりだったのだと。思わず笑ってしまった。後から考えると、それが原因で彼女の演技がばれなかったか、ひやひやものだったが。

 ならば、あの子はきっと無事だ。いや、もしかしたら、今私たちが助け出されたのも、全てはあの子のおかげなのではないか。事実、あの子が連れ出された後、男達は部屋を訪れなくなった。

 多分、違う。私より幼い少女に、そんな夢みたいなことは出来はしない。でも、夢みたいなことが現実に起こるなら、少し素敵だと思う。

 そんなことを考えながら歩いていたら、私たちは大きな扉の前にいた。観音開きの、豪奢で大きな扉。そのまま大きな象だって通れそうな、大きな扉。

 ここまで先導してくれたお坊さんみたいな人達は、私たちのほうを振り返り、にこにこと優しそうな笑顔を振りまいている。

 

「私達の役目はここで終わりだ。さぁ、ここから先は君たちだけで行きなさい」

 

 扉が開かれる。その先にある、広く、清潔な部屋。その奥には、優しい色調のテーブルと椅子が置かれていた。そしてさらに奥に、ちょうど今開いたのと同じような扉が設えられている。

 

「あちらから君たちのご両親が迎えに来られる。少し、この部屋で待っているように」

 

 それならば否やはない。私たちはすぐに部屋に入った。

 テーブルの上には、湯気の立つ薫り高いお茶。あの暗い地下では喉が締め付けられるほどに渇望した、色取り取りのお菓子。美しい香気を振りまく鮮やかな花。

 私たちは吸い寄せられるようにテーブルに向かい、貪るように菓子を口にした。

 焼きたてのクッキーやケーキ、柔らかなキャラメル、塩気の訊いたスナック菓子……。

 乾いた喉を茶で潤し、香しい花の匂いを胸一杯に吸い込んだ。故郷のことをおしゃべりし、きっと落ち着いた頃にはお互いの連絡を取ろうとみんなで誓い合った。

 それはそれは、楽しい時間だった。宝石のような時間だった。

 そして時間は過ぎ。

 

「ねぇ……ちょっと変じゃない?」

 

 誰かがそう言った。

 そういえばそうだ。もう、私たちがこの部屋に入ってから、ずいぶんと時間が経つ。テーブルのお菓子はすっかり姿を消し、お茶は湯気を立てるのを止めてしまっている。

 なのに、反対側の扉は閉ざされたままで、パパやママはおろか、あのお坊さんみたいな人達も姿を現さない。何か事情があって迎えが遅れているなら、それを知らせるぐらいはするだろうに。

 扉は、音沙汰もなく、静かに閉じられたままだ。

 

「私、ちょっとあの人達を呼んでくる。いつまで待っていればいいのか、パパやママはいつになったら会いに来てくれるのか、訊いておかないと」

 

 誰かが腰を上げて、元来た方の扉に手をかけた。ドアノブを握り、回そうとする。

 がちん。

 硬質な金属の音が、冷たい調子で部屋を満たした。

 

「あれ……?」

 

 誰かが、もう一度取っ手を回す。しかし、やはり固い音を立ててドアノブは止まってしまう。

 がちん。がちん。がちん。

 もう、誰も口を開かない。それとも、開いたままの口を閉じようとしない。

 人形がそうするように、呆然とした瞳を誰かさんの背中に向けていた。

 

「あれ、あれ……おかしいな。どうして開かないんだろう……?」

 

 何故、鍵がかかっているのか。

 両親が迎えに来るのが反対側の扉だとして、どうしてこちらの扉に鍵をかける必要があるのか。

 必要があるとするならば……。

 

 がちん。

 がちんがちんがちんがちんがちん。

 がちんがちんがちんがちんがちんがちんがちん。

 がちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがちがち。

 

 何度も何度もドアノブを回そうとする。

 それは、ドアを開けようとしているのではなく、鋼鉄製のドアノブそのものを破壊しようとしているようですらあった。

 もう、みんな分かっていたのだ。ただ、その言葉を口にするのが恐ろしかっただけ。そして、後は誰がその言葉を口にするのか、時間の問題であるということも、理解していた。

 

「閉じ込められた……?」

 

 ぽつりとした呟き。

 ぞっと、冷たい感触が背筋を滑り落ちる。それは、死に神の吐息と同じ温度を持っていた。

 何故。何故、私たちばかりがこんな目に。

 涙は、もうこぼれ落ちない。怒りが胸を焼くこともない。それよりもなお深くなお重たい、納得と諦観があった。

 どうせ、こんなことではないかと思っていた。これもきっと、あの連中のお遊戯の一つなのだ。

 きっと、自分達の喜んだ様子は隠しカメラか何かで撮られていて、希望に満ちた顔を見ながら男達は嘲笑っていたのだろう。そして、私たちはなお暗く辛辣な地獄に堕とされる。

 どうやって謝ろうか。土下座をすれば許してくれるだろうか。ご主人様、私は決してあなた達から逃げようとしたのではありません。私は一生、あなた達の雌奴隷でございます……。

 そうやって、心にもない言葉を口にして、泥を啜りながら生きなければならないのか。

 もう、嫌だ。それならばいっそのこと……。

 

「違うわ!こっちの扉は鍵がかかっていない!」

 

 喜び勇んだ声が聞こえる。

 ならば、閉じ込められたわけではないのか。私たちは、やはり地獄から助け出されたのか。この扉の向こう側には、きっと豪華なパーティー会場が用意されていて、無数のカメラフラッシュを背景にして、お父さんとお母さんの暖かい笑顔がそこにある。

 その場にいたほぼ全員の顔が、安堵に染まった。ほう、と重々しい溜息が幾重にも重なり、部屋の空気が震えた。

 そして、聞こえた。

 

 こつり。

 

 こつり、こつり。

 

 こつり、こつり、こつり。

 

 扉を、叩いている。優しい調子で、ノックをしている。

 誰かが、ここを開いて欲しいと、あちら側から言っているのだ。

 

「お、脅かさないでよ。ほら、早くそこを開けてよ。その先に、お父さんとお母さんが待っているんだから」

 

 やはり名前も知らない誰かが、まるで自分を納得させるかのように早口で呟いて、巨大な扉に手をかけ、一気に開いた。

 そして、そこには。

 

「……えっ?」

 

 闇。一向に先を見渡せない、濃密な闇。

 

 だけではなくて。

 

 手。

 

 手。

 

 手。手。手。手。手。手。手。手。手。手。手。手。手。手。手。

 

 闇の向こう側から、吐き気を催すほど濃密な腐臭とともに。

 

 無数の手が、無数の手が、無数の手が。

 

「……なによ、これ?」

 

 誰かさんは、扉の前に立ち尽くしたまま、ぽつりと呟いた。

 そしてそれは、この場にいた全ての人間の声だった。

 なんだろう。この手は、無数の手は、緑色の粘液を滴らせながら私たちに向けて伸ばされた手は、何だろう。

 人の手のかたち。なのに、闇の奥から伸びるそれは、長く長く伸びていて、終わりが見えない。いったい誰の伸ばした腕なのか。そも、それは腕なのか。

 ただ、一つだけ理解出来たこと。それは、この場に私たちを連れてきた誰かは、決して私たちを助けようとしていたのではなく。

 

「ちょ、ちょっと、冗談でしょう?」

 

 誰かさんが、呟いた。

 その声に、ぴくりと、手の群れが反応する。

 無数の手は、少女の頭を、腕を、身体を、足を、一斉に掴み。

 

「何するのよ!離してよ、離して、離してったら!」

 

 ぐい、と一気に、闇の奥へと引きずり込んだ。

 誰かの身体が、まるで手品のように、姿を消して。

 声が、闇の奥に消えていく声が、びりびりと空気を震わしながら。

 

「止めて、離してよ!誰か、誰か助けて!痛い!助けて!」

 

 開け放たれた扉は、惨劇を隠してくれない。そして誰一人、扉に近づける者はいなかった。悲痛な声は、途切れることなくこだましている。

 ただ、闇の深さだけが、現実離れをした光景を隠してくれている。

 誰も動けない。みんな、理解しているのだろう。今一歩でも動けば、次の獲物が自分になることを。きっと闇の奥にいる誰か──それとも何かは、あの少女を贄にしている今だって、私たちのことを見ている。

 遠く、遠い闇の奥から、びりびりと布の裂ける音が聞こえる。

 そして絶え間ない悲鳴。

 

「いやぁぁぁぁ!助けて、お父さん、お母さん!たすけてぇぇぇぇ!」

 

 にちゃにちゃと、湿った音が聞こえ始める。

 

「やめてやめて食べないで食べないで食べないで!」

 

 ごきり。何かを断ち割る重たい音と。

 

「いぎゃあぁぁぁ!」

 

 闇の中から、狂った獣のような、叫び声が。

 

「かえしてよう、わたしの足、食べないでよう……!」

 

 少しずつ、少しずつ小さくなり。

 

「どうして……どうして、まだ、いきているの……なんで、しねないの……」

 

 時折、笑い声が混じりだし。

 

「うふふ、おかあさん、たすけて、おかあさん、わたしいま、ばけものに、たべられてるの……もういたみもかんじない……」

 

 やがて、声は消えて無くなった。

 静寂に支配された部屋。

 扉の向こうから、また、手が伸びてくる。

 緑色の粘液で覆われた無数の手が、鮮やかな朱で染まっている。

 その手は、扉の傍に立っていた、名前も知らない少女を見つけて、やはり闇の奥に引きずり込んだ。

 

「なんで、なんでわたしだけ、こんな目に……」

 

 名前も知らないその子は、ぼんやりとそう呟いて、闇の奥へと連れ去られた。

 そして、絶叫が響く。人間味を失った、獣のような叫び声。きっと、あの子が人間として話した最後の言葉は、先ほどの悲しげな呟きだったのだろう。

 化け物の晩餐は終わらない。それは、私たちの最後の一人がいなくなるまで。

 私は唐突に理解した。

 悪夢は、まだ終わっていなかったんだ。今から終わるんだ。

 そして、それは思ったよりも先のことではなかった。今、私の腕を掴んでいる冷たい感触は、誰のものだろう。確かめるのが怖い。闇から一直線に伸ばされた緑色の腕が、私に向かって一直線に伸ばされているのだとしても、確かめるまではそれは事実ではないのだから。

 闇の奥から、先ほどよりも濃厚な朱に染まった無数の手が浮かび上がり、そのほとんどが、私の方に向けて突き出されて。

 全身を掴まれる感触。足の裏が、地面から離れる。横向きに重力を感じた瞬間、自分の周囲が闇に包まれる。

 

『あ゛ あ ゛あ゛……』

 

 まるで人間のような、声がした。私は、その声を、どこかで聞いたことがあるような気がした。

 最後に思い浮かべたのが、パパやママの顔ではなくて、名前も知らないあの少女の笑みだったのが、少し不思議だった。

 さぁ、断末魔の叫びを上げる、心の準備を。

 

 

 誰かが、自分を呼んだだろうか。

 ウォルは、ふと小さい窓の向こうに浮かんだ月を見上げた。

 月。

 気味が悪い程に肥え太った月が、夜空を背景に浮かんでいる。

 この牢屋に入れられて、二度目の満月だった。一度目の満月に自分は処刑されるのだと聞かされていたから、なんだか不思議な気がしてしまう。

 あの時は地獄の獄卒のように自分を責め苛んでいた、下腹部の痛みはもう無い。身体の各部は十分に動く。握りしめた拳は木の実のように小さく頼りない有様だが、それがあの小さく誇り高い戦士と同種のものであると知れば、これ以上頼りになる存在もまたとない。

 

 ──さて、リィもそろそろこの星に着いた頃だろうか。

 

 星を見上げながらウォルはそう独りごちた。

 思えば、自分がこのようなかたちで虜囚となるのは二度目のことだ。あの時も、あいつには大きな借りを作ってしまった。それが二度目になれば、もう二度と頭が上がらない気がする。

 夫婦になると誓いは立てたが、しかし何よりもまず、あいつと俺は無二の同盟者であるべきだし、そうありたいと思っている。ならば、いくらこの体が少女のそれに転じたとはいえ──あいつの体が少年のそれに転じたとはいえ、助けられてばかりは如何にも不味い。

 少女の口から軽やかな調子で溜息が漏れだした。そこには、自分の命が風前の灯火であるという悲壮感など欠片も含まれていない。ただ弱ったなと、厄介な恋愛相談を友人に持ちかけられた年頃の乙女のように、少女は眉根を寄せていた。

 それに、あの少年。

 インユェ。

 きっと今頃、絶望に打ちひしがれているだろうと思う。それを思って、少女の美貌は陰った。

 仕方の無かったことだ。あの時彼の暴走を許せば、若い命は意味もなく散らされていた。それは無駄死にと呼ぶ以外、如何なる呼び方も出来ない死に様だったはずだ。

 だがきっと、あの少年は今も死を選びたくなるような罪悪感と戦っているはずだ。もしも自分があの少年の立場なら、間違いなくそうだろうとウォルは思った。

 申し訳ないことをした。自分のことなど忘れて、年相応の女の子と恋をして欲しいと思う。

 もう一度吐き出した溜息は、無力感に満ちていた。その拍子に首輪から伸びた鎖が、じゃらりと重たい音を立てた。

 ゆっくりと室内を見回す。月明かりに照らされた牢の内部は質素ではあるが荒廃しているという風情ではない。それは、自分が罪人ではなく、あくまで儀式において人類の罪を背負って天に召される巫女だからだという。

 食事も、肉っけがない点に辟易とさせられるが、それ以外に苦情を言うつもりもない。

 そういう意味においては、あちらの世界で似たような目に遭わされた時よりは幾分ましかと、ウォルは苦い笑みを浮かべた。

 

「何かご不自由はありませんか、我らが巫女よ」

 

 鉄格子の向こうから、乾いた声をかけられた。

 禿頭の男が、ぼんやりとした様子で立っていた。この牢屋にウォルが繋がれて以来、彼女の世話を担当している僧だった。

 

「この様が不自由でないと思えるのか?」

 

 もう何度も言ったことだったが、ウォルは自分の首を指さしながら言った。

 首には犬猫のように無骨な首輪が巻かれ、呆れるほどに太い鎖が首輪と壁とを繋いでいる。何度か引き千切ろうと試みたが、リィと同種であるウォルフィーナの膂力をもってしてもびくともしないほどに、その鎖は頑丈であった。

 ウォルの不快そうな顔を見て、しかし僧は顔色の一つも変えず、

 

「もうしばしのご辛抱を。それほど長くご不便をおかけすることも御座いますまい」

 

 硬質な調子でそう言った。

 ともすれば聞き流してしまいそうなその言葉の意味を履き違えるウォルではなかった。

 

「俺の処刑が決まったか」

「処刑ではございません。あなたは我らヴェロニカ教徒の罪を背負い、自然の循環の中に立ち戻られるのです。これほど崇高な使命は他にございますまい」

 

 僧の無機質な顔に、僅かな朱と強ばりが浮かぶ。短い言葉の端々を震わせているのは、宗教的な感動からだろう。

 そして宗教的な感動ほどに、無関係な他者の魂を冷えさせるものはこの世に存在しない。

 然り、ウォルは冷ややかな笑みを浮かべてその僧の顔を一瞥した。

 

「崇高だというならそれは結構なことだ。何なら貴様にその役を譲ってやってもいいが?」

 

 これはウォルにしてみれば完全な皮肉であったのだが、

 

「有り難い申し出なれどそれをお受けするわけには参りません。この役目は聖女ヴェロニカと同じく穢れなき乙女にのみ許された秘儀であり、私が如き下賤な者に勤まる役目ではございませぬ故」

 

 丁重な調子でそう返されてしまうと、もはやウォルとしても言葉を切り返す気力も無い。

 ああそうか勝手にしろと無碍に呟きたくなるのを必死で我慢した。

 

「で、俺はどうやって処刑されるのだ?火炙りか?磔か?それともひとおもいに斬首してくれるのか?」

「繰り返しますが、あなた様は決して罪人として処刑されるのではなく、聖なる巫女として天に召されるのです。そのように野卑な扱いがどうして出来るでしょうか」

 

 死ぬならば罪人として処刑されようが聖なる巫女とやらとして天に召されようが同じである。

 しかしそれを一々言っていては話が前に進まない。ウォルはウンザリとした顔色こそ隠そうとはしなかったものの、とりあえず黙っていた。

 

「あなた様が背負われるのは人類全ての罪。そしてあなたの血肉は自然へと捧げられた供物。あなたはその身をもって我らの罪を購って頂かなくてはなりません。つまり……」

「なるほど、野獣の生け贄になれと、そういうことか」

 

 僧は何も答えない。つまり沈黙は雄弁な答えということだ。

 またか、とウォルは頭を抱えたくなった。虜囚の身に落とされたのがこれで二度目なら、馬鹿馬鹿しい出し物の主役として野獣に追いかけ回されるのも二度目である。

 これは前世で何か悪業をしでかした報いかと、本気でウォルは思った。

 

「まさかとは思うが、俺を自然の循環とやらに戻してくれる生き物は、獅子ではあるまいな?」

 

 だとすればあまりにも出来過ぎだ。出来過ぎていて神の悪意を信じたくなるくらいに。

 そんなウォルの内心を読んだわけではあるまいが、僧は首を横に振った。

 

「この星には野生の獅子はおりません。あなたを天に届けるのは、神話の中で聖女ヴェロニカの魂を天に運んだ神獣でもある狼たちの仕事ということになります」

 

 狼か。

 それはそれで因果なことだとウォルは思った。何せ、彼女の伴侶は黄金の狼の化身とでもいうべき少年であり、しかもウォル自身が今間借りしている少女の体もそれと同種の生き物なのである。

 果たして自分が喰い殺されれば、あの黄金の狼はどのようにして不運な狼たちを叱りつけるのか。その様を思い起こして、ウォルの口元には微苦笑が浮かんだ。

 

「好むと好まざるにかかわらず、あなたは明日、この世を離れるべく運命を負った身。この上はどうか心安らかに過ごされますよう……」

 

 僧は、無機質な表情を崩さぬままにそう言って、牢から立ち去った。

 再び静寂が訪れる。その静寂を破って、覗き窓の向こう側から狼の遠吠えが響く。その声はまるで、生け贄の血肉を一刻も早く寄越せと強請っているようにも聞こえた。

 普通の少女であれば、我が身に降りかかった悪夢のような災難に対して為す術もなく、絶望し、混乱し、泣き喚いていただろう。父の名を呼び母の名に縋り、神の名を呪っていたに違いない。

 しかしウォルはそうではなかった。一抹の絶望も感じさせない凜とした表情のまま、静かに足を伸ばし、そのまま上体を折った。

 ゆっくりと息を吐きながら上体を足にぴたりと付ける。そうすると、凝り固まった腰の筋肉が、足の裏側の筋肉が、徐々に伸ばされていく。

 次は腕の筋肉を、次は首の筋肉を、時間をかけてほぐしていく。まるで、自分の体に一言一言語りかけ、その会話を楽しむかのように。それは、戦場に送られた兵士が自らの銃を分解調整する様子に似ていた。

 ウォルにとって、明日執り行われるのは、自分を生け贄に捧げるための儀式などではない。黙って狼共の供物になってやるつもりなど、微塵もない。

 既に一度死んだ身である。再び生を得ることがどれほどの幸運の上にあるのかは十分に心得ているし、無様にしがみつくつもりもない。

 だが、それをむざむざ溝に捨てるつもりはさらさらない。この体の本来の持ち主には、この体を幸福にすることを誓ったのだ。そして、同盟者と呼んだ伴侶はこの世界でも自分を伴侶に迎えてくれると誓ってくれたのだ。

 ならば生きなければならない。少なくとも、生き残るためにありとあらゆる努力を惜しむべきではないはずだ。

 もしも明日、手足を鎖で縛られて狼の前に転がされるのならば、このようなことをしても無駄でしかないかも知れない。それでも、もしかしたら足は自由かも知れない。手は自由かも知れない。それならば、戦える。そして戦うつもりならば、体は万全の調子に整えておくべきだ。

 やがて全ての筋肉を伸ばし終えたウォルは、部屋の隅の石壁を背にして座り込んだ。

 静かに闇の向こうを睨み付ける鋭い眼光。小さな体は、まるで闇夜の潜む狼のように微動だにしなかった。

 

 

 夜。

 空に、丸々と肥え太った月が浮かんでいる。

 縁が僅かに欠けているが、ほとんど満月に近い。故郷の星では確か十三夜と呼んだか。それとも小望月と呼ぶくらいか。

 いずれにせよ、月相の遷移が早いこの惑星ならば、明日の夜には月は満ちるだろう。その時、自分を何度も助けてくれたあの少女は儀式の生け贄に捧げられるのだ。

 

「ウォル……」

 

 灯りの消した室内は、まるで陽光の様な月の光で照らし出されていた。

 寝台に腰掛けたインユェは、月を睨み付けながら呟いた。睨み付ければ月が満ちるのを止められると思い込んでいるかのように。

 その呟きを聞いたわけではあるまいが、部屋のドアがこつこつとノックされた。

 何とも不思議な感覚だと、インユェは思った。姉は死に、後見人であった老人はいずこかへと去り、あの少女もいなくなって、もう自分はこの世にたった一人だと思い込んでいた。そして、もう二度と他人と深く関わることなどないのだと。

 それが、たった二週間。たったそれだけの時間が経てば、自分はまた人の輪の中にいる。その内の一人は、最も愛した少女の婚約者だ。例えあの少女を助けるための一時的な協力関係だとはいえ、まさかそのような場所に自分がいるなど、昨日は考えもつかなかった。

 或いは、この奇天烈な縁を紡いでいるのも、自分が銀色の月とやならなのだろうかと思い、インユェは曖昧な吐息を吐き出した。

 

「どうぞ、開いてるよ」

 

 ぶっきらぼうなその声に応じるように、ドアが静かに開く。

 きしり、と蝶番の軋む音が奇妙に大きく聞こえる。

 闇の向こうから姿を現したのは、闇の化身のように漆黒の髪をもった、淑やかな青年だった。

 

「あんたかよ」

「ごめんね、寝るところだった?」

 

 ルウの問いかけに、インユェは苦笑とともに首を振った。

 

「情けねえ話だが、寝られそうにはねぇな。ほら、見てくれよ」

 

 インユェはルウの眼前に手を差し出した。

 少年の年相応に小さなその手は、かたかたと小刻みに震えていた。

 

「怖いんだ」

「怖い?」

「ああ。怖くて怖くてたまらねえんだよ」

 

 少年は、震える自らの手を掻き抱いた。

 

「死ぬのなんか微塵も怖くねえ。どうせこの世に未練があるわけじゃねえし、今更惜しむ命でもねえ。生き恥だってこれでもかってくらいに晒したんだしな」

 

 そう言うインユェの声に、ルウは応えない。

 

「だがよ、それでも怖いことはいくらでもあるんだ。もしもまたあいつを助けられなかったら。いざというときに俺がまた逃げ出しちまったら。俺のへまのせいであいつが死ぬことになったら。そう考えると、怖くて怖くて瞼も下ろせねえんだ」

「分かるよ」

 

 ルウは優しく頷いた。

 インユェはルウの顔を凝視した。にこやかに細められた瞳には、ただの気遣いや同情ではない、真剣な色が含まれている。

 

「きみは、きっと自分のことが大嫌いなんだねぇ」

 

 インユェの頭に、ルウの暖かな掌が載せられた。

 その拍子に、表情を空白にしたインユェの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。

 

 ──自分のことが、大嫌い

 

 そうだ。その通りだ。

 嫌いだ。

 嫌いで嫌いで、いつだって殺してやりたかった。

 どうして、この自分を好きになることが出来るだろう。

 父親の形見でもある宇宙船を手放さざるを得ないような、莫大な借金を拵えたのは自分。

 姉にいじめられ、後見人に溜息を吐かれ、それでも独り立ち出来ないのも自分。

 あの酒場で一番大好きだった少女に助けられ、彼女の命を危険に晒したのも自分。

 姉を殺したと高らかに嘲笑い、少女の首に縄をかけて連れ去ったあの男に、復讐すら出来ないのも、やはり自分。

 自分、自分、自分。

 その単語のどこにも、誇れるものがない。

 だからインユェは悔し涙を流した。

 

「う、ぐぅ……ふぅぅ……」

「つらかっただろう。頑張ったね。よく、今日まで生きてきたじゃないか」

 

 ルウは、インユェの小さな体を抱き締めてやった。

 

「ぼくも、昔はぼくの事が大嫌いだったんだ。あの子もそうだ。あの子も、昔は自分のことが大嫌いだった」

 

 自分の胸に縋り泣き続けるインユェの背を、ルウは優しく撫でてやった。しゃくり上げる呼吸のリズムに合わせて、優しく、何度も。

 

「ぼくは昔仲間を殺してしまった。仲間はみんな、ぼくを呪われた者だという。生まれるべきではなかったという。ぼくを見る仲間の目は、化け物や死に神を見るよりも恐れと侮蔑に満ちていた。それでもぼくは生きていかなきゃいけない。いつか会う、あの子のために」

「……」

「あの子は、自分の目の前で恋人だった狼を殺された。小さな弟を守るために、父親がなぶり殺しにされる姿をただ見守るしか出来なかった。その度に、あの子は自分の命を絶とうとした」

 

 目を赤く腫らしたインユェが、ルウの顔を見上げた。

 

「みんなそうだよ。自分のことが嫌いで嫌いで仕方なかった。そんな自分と戦ってきた。そして、少しずつ自分のことを好きになれたんだ」

 

 少年の嗚咽は、少しずつ収まっていった。

 

「だからインユェくん、きみも戦いなさい。戦って、自分の好きな自分を勝ち取りなさい。それはきみの義務じゃなくて、権利なんだ。誰だって、自分のために戦うことが許される。自分のために戦う権利だけは、誰も奪うことが出来ない……」

 

 ぐすりと、盛大に鼻を啜りあげる音が部屋に響いた。

 

「あいつも、なのかな……」

 

 不安定な調子で、インユェが呟いた。

 ルウは、にこりと笑って、インユェの頭にもう一度掌を落とした。

 銀色の頭髪が少し靡いて、白い光の粒子が部屋に散った。

 

「そうだね。きっときみの大好きなあの子も、そうやって自分を好きになったはずだよ」

「……俺みたいにせこい人間からするとさ、あいつは眩し過ぎるんだよ。きっと、ウォルは生まれた時からああいうふうに何でも出来て、俺なんかとは違う場所に立っていたんだって思っちまう。リィもそうだ。あいつは選ばれた人間で、俺はその他大勢なんだって。そんなこと、あるはずねえのにな。そういうふうに見えるなら、あいつらが俺の何倍も努力して生きてきたからそう見えるだけのはずなのにな。分かってるんだ。分かってて、どうしてもそういうせこい物の考え方しか出来ないのさ」

「そして、そんな自分が大嫌いだ。そうでしょう?」

 

 インユェは苦笑を溢した。まったくもって反論の余地がない。こういうときは、笑って誤魔化す以外の手段がないものだ。

 

「悪かったな、ルウさん。気を遣わせちまった。思い切り泣いたら少し眠くなってきたよ」

 

 ルウは頷いた。

 

「朝は早いよ。何せ、明日がタイムリミットなんだから。でも、ほんの少しだけでも睡眠を取っているのと全く取っていないのとでは大違いだ。明日はあの子にいいところを見せないといけないんだから、今は無理してでも寝ておいてね」

「ああ」

「それとぼくのことはルウでいいよ。『さん』付けされると背中の辺りがむず痒くなるんだ」

「なら俺のことはインユェでいい」

 

 ルウは寝台から立ち上がった。

 そのまま部屋から立ち去ろうとして、ふと足を止め振り返った。

 

「ねぇ、インユェ。一つだけ質問していい?」

「ああ、いいぜ」

「少し意地悪な質問だよ。それでもいいかな?」

「いいって言ってるじゃねえかよ」

 

 ルウは、少し寂しそうに笑った。

 

「インユェ、きみはどうしてウォルのことが好きになったの?」

 

 一瞬唖然としたインユェが、片頬を歪めて笑った。その拍子に、安ベッドのスプリングがきしりと鳴いた。

 

「そんな細かいこたぁ知らねえよ。気が付いたときには惚れてたんだ。何に惚れたっていうなら、顔にも惚れてるし心意気にも惚れてる。すんなりとした体つきだって最高だ。頭だって良いし気っぷも申し分ねぇ。だから惚れたんだよ。悪いかい?」

 

 ルウは静かに首を振った。

 

「じゃあ、あの子が本当は男だってことは知ってるよね。どうしてそれでも好きになれるの?」

 

 今度はインユェが首を振った。

 

「ルウ、そいつは違うぜ。本当は男なんじゃねえ。前世は男だったってだけだろうがよ。そんで、俺が知ってるあいつは女なんだ。そして俺は男なんだ。なら何の問題があるっていうんだよ」

「じゃあ、もしもだよ。もしもあの子が、男の姿に戻ったらどうするの?」

 

 インユェは、にやりと不敵な笑みを浮かべ、一瞬の躊躇もなくこう答えた。

 

「その時は、最愛の連れ合いが最高の相棒になるだけじゃねえかよ。何の問題もねえさ」

 

 でも、それまでにガキの一人でも拵えておきたいな、と少年は笑った。

 ルウはインユェの部屋を出て、自分に割り当てられた部屋に戻った。

 部屋には、簡素なベッドと、小さな木製のデスクが設えられている。そのデスクから椅子を引き、腰掛ける。

 ルウは、柔らかに笑っていた。今日はこんなにも騒がしく、明日は今日以上に騒がしいに違いないはずなのに、それでも楽しかった。

 

 ──ああ、この世はこんなにも、綺麗なもので満ちあふれている……。

 

 目を閉じ、そんなことを思う。それは、黄金の砂時計にも似た、至福の時間だった。

 しばらくそうしてから、ふと気になって手荷物の中を探った。

 そういえば、インユェが話してくれた今までの事件の経緯を聞いて、一つ不思議に思っていたことがあったのだ。

 

 ──どうして、敵はウォルのことを、ああも容易く知ることが出来たのか。

 

 元々、ウォルをはじめとした一向はこの星に不法入国をしている。

 それが、僅かに一月ほども前の話。

 そしてその間、彼らは場末の酒場で働きながら各地の憂国ヴェロニカ聖騎士団の支部を攻撃して回っていたが、そちらから捕捉された可能性は極めて薄い、とのこと。第一、各地でテロ行為をして暴れる不法者が、どうして惑星ベルトランの州知事の娘であるなどと想像出来ようか。

 にも関わらず、敵はウォルを最初から標的にしていた。凶悪なテロリスト一味を標的にするわけではなく、である。

 ならば、そこに何らかの意図があったのではないか。無論、宗教的な儀式の生け贄などという浮世離れした理由ではない、もっと世俗の垢と脂に塗れた理由が。

 加えて、その後、ウォルが拉致されるに至った経緯にも不審な点が多い。

 まず、酒場が襲撃されたのはいい。そこにウォル達が潜伏していることは、時間と人手をかければ十分に把握しうるだろう。

 だが、その後は?

 秘密の地下道を通って隠れ家に潜伏した時。

 そして一度敵の本拠地から脱出し、森に隠れ潜んだ時。

 

「早すぎる……」

 

 そうだ。あまりにも、敵の行動が早すぎる。

 隠れ家に潜んだ時は、地下道を追跡してきた敵は全てインユェの姉が撃退しているという。にも関わらず、まるで隠れ家が最初から把握されていたかのように別部隊が出動し、結果としてウォルは囚われの身になった。

 森に潜んだ時もそうだ。普通、捕虜が逃げ出し森に逃げ込んだとなれば、大規模な山狩りが行われるのが常である。空には監視用の飛行機を飛ばし、ヘリや軍用犬やらで辺りは騒々しさを極めるに違いない。しかし、インユェの話によればそんなことは一切無かったという。

 監視衛星でウォルの動きを逐一把握していた、というのはこの場合考えにくい。何故なら、隠れ家に潜んだ時はともかく、森の時はダイアナが敵の監視網を完全に掌握していたのだ。であれば、その網にウォルが引っかかってしまったという可能性は最初から排除するべきである。

 では、何故か。

 そう考えたルウの手には、手札が握られていた。

 無論、今、この場所においては効果が極めて薄いことも承知の上である。その結果を無闇に信用して行動すれば、身の破滅をもたらしかねないことも。

 それでもルウは手札を繰った。

 狭いデスクいっぱいに裏返ったカードを広げ、彼だけが知る法則に従ってめくっていく。

 そして出た結果は──

 

「……招かれる危機。罠。巨象。信頼すべき仲間、もしくは上司。そして──」

 

 最後にめくられたカードには、にたにたと不快な笑みを浮かべる悪魔の姿。

 その意味は……

 

「裏切り」

 

 ルウは、背もたれに体重を預けなら天井を仰いだ。

 そうだ。その可能性は、最初から認識していた。

 象、そして仲間。これが誰を指し示すのか、考えるまでもない。

 加えて、ヴォルフがウォルに仕込んだという、特殊な発信機。惑星を跨いでもその居場所を把握出来るその装置ならば、行方知れずになった標的の居場所を把握するのにこれ以上の情報源はない。

 ヴォルフは、自分達がこの星に到着する前、宇宙嵐を避けるために停滞を余儀なくされていたあの時期に、いずこかと何度も連絡を取り合っていた。それがもしもウォルの居場所を伝えるためのものだとしたら……。

 

「彼の存在は、トロイの木馬だ」

 

 いや、この場合は木象か。そう思ってルウは苦笑を浮かべた。

 ゆっくりと首を巡らし、窓の外を眺める。

 丸々と肥え太った月が、自分を嘲笑うかのようにそこに在った。

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