仮面ライダー555 SPIRITS   作:bassher

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エピソード6 ラッキークローバー

 

 

 

 

 日曜日。そろそろ日も暮れようという下北沢。

 

「あれは、サイガ。第三のベルトだ。」

 

「海堂さん!そんな、ボクのために、」

 

 既に青く燃え始めた海堂は、震える唇でサイガと言った。勇治は海堂に押し倒され泥に塗れた顔でそれを眺めている。

 

『3・・・・2・・・・1・・time out』

 

 白いスーツに青いフォトンブラットが駆け巡るサイガ。そのスーツが光と共に消失。赤主体のカラフルなシャツを牛革のベルトから出し、皮の上着を羽織った青年が姿を顕す。淡白な美形だが、銀縁の眼鏡が嫌味な印象を与える。

 

「我々、ラッキークローバーにベルトを返還してもらいます。序に、命も頂戴いたします。オルフェノク最強となった琢磨逸郎の手にかかってね。」

 

 琢磨逸郎25歳B型は、第一印象通りの嫌味な高笑いをあげた。その男の背後から現れる女が一人。

 

「琢磨君、最大の難関である海堂を始末したからと言って油断しないでね。その子、しぶといんだから。」

 

 琢磨逸郎の影から現れた女性を見て勇治はなにもかも忘れて放心した。

 

「千恵・・・・・」

 

 その女性は黒いビキニの金属片を鏤めたボンテージに身を包み、化粧は原色系で濃く、髪の毛は軽くウェーブをかけているが、確かに木場勇治の元彼女、あのオルフェノクとなって劣情のまま殺してしまったはずの森下千恵が立っていた。

 

「勇治、おひさしぶり。」これ以上ない蔑んだ眼差しを向ける森下千恵24歳O型。「琢磨君。私はこの子をヤるわ。あっちに回って。貴方カイザに恨みがあるんでしょ。」

 

「分かりましたよ。冴子さん。」琢磨逸郎は軽く笑みを浮かべ、草加雅人の方へと歩いていった。

 

 放心した勇治に悠然と歩み寄る森下千恵。

 

「くそ、こんなにすぐ渡さねばならんとは・・・・・・」

 

 投擲っ!

 

 海堂である。既にくすんできた肉体を揺り動かし、海堂はあるモノを森下千恵に投げつけた。

 

 片手で弾く、

 

「なんのつもり。死に体が。」

 

 投げつけられたそれを、反射的に森下千恵は片手で掃い飛ばし、雅人が悶えているすぐ近くへ転がっていった。

 

「カイザフォンだよ。ちゅーか、木場くん、」既に炎は鎮火し、ボロボロと体が崩れはじめていく。「逃げなさい。いいか。戦おうと思うな。ベルトの力を使って逃げるんだ。ラッキークローバーはまだ君等の手に余る。」

 

 そして一気に崩れ去る海堂の肉体であった。

 

「勇治、さあこれで二人きり。ゆっくり楽しみましょう。」

 

 起き上がろうとする勇治の髪の毛を掴み、無理矢理顔へ引き寄せる森下千恵。見詰め合う二人の男女には全ての記憶が走馬灯のように流れた。

 

『千恵もまた自分が極度のストレスを与えた為に男性依存に陥ったか、元々浅薄な情緒だったのだろうと納得するようになった。』

 

 勇治にとってそれは全て罪悪の色で彩られた記憶だった。

 

「私を殺した気分はどうだった?」森下千恵の記憶は果たして何色であろう。「気持ちよかったでしょ。あの時の貴方の目、私を侮辱してたわ。私に全部擦り付けたのよね?」

 

 森下千恵は勇治に唇を重ねた。下品な程艶々とした赤い口紅が勇治の唇にも残る。

 

「どうして生きてる・・・・」

 

 人が疑問句で語りかける時は、本当に疑問に思っているか、現実を認めたくない時のいずれかである。

 

「貴方知らないのね、貴方のように本当に死から甦ったオリジナルの因子は高い確率で殺した相手をオルフェノクにするって。」

 

 森下千恵の像がついに変化する。それはエビ。甲殻に身を包んだロブスターオルフェノク。

 

「僕が・・・・」

 

「ありがとう。そうそう、私人間だった頃の名前も捨てたの。ダサい名前だったから。今は、影山冴子。」

 

 ロブスターはフェンシングで用いるサーベルのごとき武器を具現化し、その刃を宙に立てる。

 

「僕が千恵を・・・、オルフェノクにしてしまった・・・」

 

 突っ!

 

 ぁ、

 

 勇治の胸を突き抜くサーベル。押し飛ばされる勇治。声にならない声を上げ、宙を舞っていたのはどのくらいの間だっただろう。千恵との記憶が毒々しいまでの刃となって勇治の胸を痛めつけた。だがまだ終わらない。宙に浮く勇治のうつろな眼に映ったものは、既に勇治が落ちてくるのを先回りし、サーベルを構えるロブスターだった。

 

 横薙ぎ!

 

「勇治、本当にありがとう。私をこんな強いオルフェノクにしてくれて。」

 

 再び宙を舞う。己の業の全てを具現化した千恵の全存在に、勇治は打ちのめされた。

 

 

 

「新手、か」

 

 木場と海堂の前に現れたサイガを見て無理に上体を起き上がらせようとする草加雅人。

 

「隠れてるんだ、俺が、この俺がなんとかする、いいな真理。」

 

 真理は新たなる敵の出現で、海堂と勇治の名を叫び、海堂の最期に取り乱した。

 

「ごめんなさい、私、ごめんなさい、草加君までこんなに危ないめに、ホントにごめんなさいっ」

 

 オルフェノクに襲われる事が、身近な人間の喪失に繋がる事を今更思い出す真理。そんな真理の両肩に手を置く雅人。

 

「いいか真理、この戦いは俺の戦いだ。」我ながら機転が利く事を実感した雅人。「オルフェノクを倒し、人間を護る事を俺は俺自身に課した。今日呼んだのは確かに君だ。だが俺自身からは君に何も求めはしない。」

 

「草加くん、貴方、あの草加くんなの、」

 

 あのいじめられっ子だった流星塾の頃の雅人が、記憶の中で香ばしいものに変わっていく真理だった。

 その時である。海堂が投げたカイザフォンが雅人の数メートル手前に転がったのは。

 

「いや今でも俺はあの時のままの弱い男さ。あの時の、君に護ってもらうだけのな。さ、隠れてるんだ。」

 

 雅人がカイザフォンと真理の交互に神経を集中している間に、既に琢磨逸郎が近づいてきていた。カイザフォンを手に取る琢磨逸郎。

 

「いつぞやは大変世話になりました。」

 

 像を変貌させていく琢磨逸郎。それはムカデ。片手に鞭を浮かび上がらせ実体化するセンチピードオルフェノク。

 

「そうか、あの時俺に伸されたヤツか。」

 

「もはやカイザフォンはこちらのモノ。残りのギアも渡してもらいましょう。」

 

「フン、カイザになっていたらキサマごとき。」

 

 琢磨逸郎と雅人がにらみ合っているちょうどその中間に、影山冴子に良いようにあしらわれた勇治が跳ばされてくる。

 

「う・・・・、君は・・・」

 

 そんな勇治を気にも留めない琢磨逸郎。彼にとっては一人も二人ももはや関係ない。だが雅人は違う。状況を好転させる為なら汚物だろうが利用する。雅人は勇治を抱き上げる。

 

「先程はすまなかったな。」目線はセンチピードに固定している。「俺はオルフェノクが許せない。それだけだ。取り敢えず、この状況だけはなんとかする。話はその後にしよう。」

 

 並び立つ雅人と勇治。

 

「カイザになっていたら、どうだと言うんです。」

 

「ダメよ。琢磨君。」

 

 一方、センチピードの背後からはロブスターが歩み寄っていた。

 

「何がですか。」

 

「カイザフォンを渡そうとしたでしょ。」

 

 だがロブスターはセンチピードを通り過ぎ、勇治達を警戒しながら回り込んでいく。ゆっくりと。

 

「いいじゃないですか。僕が変身すれば、こいつらが二人掛りになっても適うはずはない。」

 

「私はね、万が一は必ず警戒してここまで昇ってきたの。」

 

 だが琢磨逸郎は聞いていない。聞いていないどころか、カイザフォンを雅人の方へ放り投げた。

 

「手が滑った。」

 

「琢磨君!」

 

 ロブスターが叱りつけた時には、もう雅人が含み笑みを浮かべながらカイザフォンを手にしていた。

 

「阿呆が。」

 

 センチピードは鞭を撓らせた。

 

「いいじゃないですか。このガキ共を殺ってしまえば同じですよ。」

 

「守りなさいね。幹部会に報告するかどうかはそれから決めます。」

 

 既にロブスターはセンチピードと勇治達を挟み撃ちする位置にあった。

 背中合わせで雅人はセンチピードを、勇治はロブスターをそれぞれ警戒する。

 

「いいか、生身で撃つ時は両手持ちにして反動を堪えろ。」語りかけたのは雅人である。

 

「え?」勇治は何を言ってるのか呑み込めなかった。「そうか。」しかしそれも一瞬だけである。

 

 それぞれのフォンを取り出し展開、それぞれのブラスターへ。それは奇襲となる。

 

 三連射に三連射、

 

「く、また同じ、」

 

 雅人がカイザフォンブラスターで狙ったのはセンチピードの左脚。センチピードは動きを封じられた。

 

「勇治、貴方、」

 

 勇治がファイズフォンブラスターで狙ったのはロブスターの眼。ロブスターは一瞬全てを見失う。

 

「変身っ!」

 

「変身っ!」

 

『complete』

 

 雅人と勇治、二人の体が同時に光を放つ。変身するカイザとファイズ。

 

「いくぞオルフェノク共!」

 

「やぁ!」

 

 それぞれ正対する敵に突進するカイザとファイズ。

 

「キサマ、卑怯な!」

 

 センチピードは前屈みに足を抑えて取り乱す。そこへ既にブレイガンを振り翳したカイザが詰め寄ってくる。

 

 一撃っ!

 

「ガキかっ」カイザは賭けに勝った事を自覚した。「ちょっと挑発すりゃ乗ってきやがって。あの時も同じだったな。脚を撃ち抜いて村上を人質に取ったら、もう手も足も出なかった、そうだろ。え?」

 

 一撃を受けたセンチピードは、辛うじて鞭を張って盾としカイザのブレードを逸らし続けた。

 

「ふ、不意撃ちとは、卑怯じゃないですか。わ、私はちゃんと貴方の望み通り正々堂々と、」

 

「誰が正々堂々と言ったっ!」

 

 千切れる鞭、

 

「ひゃぁ」

 

 左に右にブレードを逸らし続けた鞭がついに切断される。うろたえるセンチピードを脚で踏みつけるカイザ。

 

「ラッキークローバーと言えば、村上が結成した最強オルフェノクの側近四人なんだろ。」

 

「あ、貴方には私の足技を披露する事ができなくて残念ですよ。」

 

 カイザはこの期に及んでゆとりを見せ始めたセンチピードを一瞬だが訝しんだ。

 

「噂程じゃなかったな。それともアンタ一人がヘタレなのか。」

 

『exceed charge』

 

 だがかまわずブレードにチャージを掛け両手持ちになり刺そうとする。

 

「やはり、冴子さんの言う事を聞いて正解でしたよ。ほら左です。」

 

 掴む、

 

「しまっ」

 

 伏兵。カイザを襲う第三のオルフェノク。それはミミズの像を持つワームオルフェノク。センチピードは伏兵を配していた。頚椎が軋む程に首を掴まれセンチピードから引き離されるカイザ。

 

「全く、この程度の伏兵に気づかないようではまだまだガキですね。」

 

 立ち上がる琢磨逸郎。既に像は人間のそれに戻っている。胸元からハンカチを取り出し、スーツから埃を掃う。掃ってからフォンを取り出す。ファイズと同じく中折れ式ケータイのそれに3、1、5と入力。

 

『complete』

 

 ベルトへフォンを差し込むと、琢磨逸郎全身を青く光る格子が包み、眼が眩むほどの発光を輝かせたかと思いきや、外界を一切遮断したスーツとなる。基本カラーはホワイト。心持ファイズやカイザのそれよりスーツの厚みが無い。顔面の文様はψ。デルタ、カイザに続き、3番目に作られたベルト、サイガである。先程海堂を襲った時はただスーツのみであったが、今度は背中になにやら機械を抱えている。

 

「これから本当の私を見せてさしあげよう。」

 

 

 

「いくぞオルフェノク共!」

 

「やぁ!」

 

 勇治、ファイズも影山冴子、ロブスターオルフェノクめがけて突進した。

 

「勇治、貴方、やってくれるわね」

 

 ファイズは左腰からデジカメを取り出す。それはカイザのそれと同じナックル。《ファイズショット》。

 

『exceed charge』

 

「僕の業ならば、僕の手で片を付ける!」

 

 右胸!

 

「・・・・・、なにこれ、」

 

 確かにロブスターの右胸にファイズショットを放っている。しかし、

 

「効かない?!」

 

「私を殺したあの時とは比べ物にならないわね!」

 

 サーベルを振り上げるロブスター、

 

「そんなバカな、」

 

 返り討ちに遭うファイズ。

 

「立派になった私を見てっ!」

 

 一閃、

 

「私は貴方に殺されてから一生懸命オルフェノクになったわ!」

 

 さらに一閃、

 

「たくさんの人間をオルフェノクにしてきたわ!」

 

 もう一閃、

 

「だってそれがオルフェノクとして当たり前の事でしょ!私はごく普通に当たり前に生きてるだけなのよっ!」

 

 一閃、

 

「一彰の時もそう。彼が求めた事をやってあげてただけ、人間として普通じゃない!」

 

 一閃、

 

「なぜ?ねえなぜ?なぜ貴方は私を拒絶するのよ!」

 

 滅多撃ちにされたファイズだったが、右腕はフォンを入力している。

 

「千恵、オルフェノクにするって事は人を殺すよりも残酷な事なんだ。」

 

 バジン!

 

 横から先の変形メカオートバジンがロブスターに突進、

 

「ふん」

 

 だがロブスターは咄嗟に身を翻し、一旦ファイズと距離を置く。間に入って静止するバジン。そのバジンからエッジを引き抜くファイズ。

 

「僕は君を止めなければならない。」

 

「勝手な事言わないでっ!」

 

 静止するバジンを通り越して切り掛かるファイズ。ファイズエッジをサーベルで受け止めるロブスター。

 

「いったい何人の人間を殺したっ!」

 

「私はオルフェノクとしてごく普通に生きただけよ!」

 

 一合、ファイズは渾身の力を叩きつけた。しかしロブスターは、受け止めたか受けないかという瞬きする一瞬で背後に回り込んでいた。

 

「速いっ」

 

「認めなさいっ!」

 

 ファイズには互いの太刀を合わせた感触すらあった。それなのにロブスターは回り込んで、サーベルを浴びせてくる。

 

 一閃っ!

 

「強い、今までのオルフェノクとはまるで違う。」

 

「私は素直に生きただけ。女としても。オルフェノクとしても。それを認めない貴方がいびつなのよ!」

 

 地に叩きつけられるファイズ。それでもエッジを支えにしてなんとか立ち上がろうとする。

 

「それだけ人を殺したという事なのか・・・・・千恵!」

 

『exceed charge』

 

 ファイズエッジをアンダーで振りかぶる。

 

「勇治っ!」

 

 ファイズが起死回生に放った紅い閃光に捕まってしまうロブスター。サークル上からの噴流で宙を浮きもがく。

 

「でやぁっ!」

 

 叩きつけるっ!

 

 きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 叩き飛ばされるロブスター。夜のアスファルトに撃ち付けられ、あまりの激痛に像が千恵へ戻る。

 

「千恵、愛している今でも。」

 

「・・・・勇治、また・・・・殺される・・・・」だが燐光は放たない。体がくすむ事もない。「かと思ったじゃないの。」

 

「まだなのか、」

 

 あまりに強力な影山冴子に絶句するファイズ。しかし驚いているゆとりはなかった。

 

 横から鉄球!

 

「やはり万全を配しておいて良かった。」影山冴子は直様像をロブスターへ立て直す。

 

「うぁ」

 

 横合いから襲われるファイズ。襲ったのは小型の棘付の鉄球、鎖に繋がれ、それは短い棒に行き着く。そのフレイルを持つ者もやはりオルフェノク。蠍の像を持つスコーピオンオルフェノク。

 

「大野木君、ありがとう。後で可愛がって上げる。始末して。」

 

 大野木と呼ばれたスコーピオンは、怯むファイズに向かってフレイルを振り被った。

 

「今の一撃で分かった。千恵程じゃない。」

 

 だがファイズは既にフォンブラスターを抜いている。

 

 三連射っ!

 

 怯むのは今度はスコーピオンの方。

 

『exceed charge』

 

 ロブスターのように拘束しない、そのまま突進、

 

 斬!

 

 ファイズエッジで斬り飛ばすとスコーピオンは宙に浮き上がったまま灰となって四散、もはや爆発であった。宙を浮かぶΦマーク。

 

「勇治っ」

 

 だが息つく暇はない。既にロブスターが再びサーベルを突き立ててくる。

 

「千恵。大分慣れてきたよ。」

 

 半ば死角からの攻撃に、それでもファイズはサーベルを首ひとつかわしてロブスターの腕を掴む。

 

「離してよっ」

 

「君の動きは速過ぎるけど、ようやく鈍ってきたみたいだね。もう逃がさない。」

 

『exceed charge』

 

 今日何度目かのチャージ。今度は脚部。既にファイズポインターを装着し、膝を曲げて蹴り込み様、ポインターマーカーを発射。

 

「貴方はっっっっっ」

 

 マーカーの杭が展開しつつロブスターを数メートル圧し跳ばす。

 

「今度こそ眠ってくれ!」

 

 ファイズは35メートルの飛翔をした。

 

 

 

 斬撃っ!

 

 ワームオルフェノクの突然の奇襲に戸惑ったが、即座に立て直し、秒単位で処理するカイザ。

 

「これから本当の私を見せてさしあげよう。」

 

 そのカイザに立ちはだかるのは既にサイガへ変身を遂げた琢磨逸郎。

 

「いかん!」

 

 事態を一瞬で把握したカイザは即座にカイザブレイガンを向けた。

 

 一斉射、

 

「このサイガギアは、デルタ、カイザよりもさらに後から開発されました。つまり3本の中でもっとも優秀なギアなんですよ。」

 

 その光弾を胸で平然と受けるサイガ。ダメージがまるで見られない。怯む様子すらない。

 

「バカな。カイザブレイガンなんだぞ。」

 

 カイザの攻撃力の厚みはカイザブレイガンに集約される。動揺するカイザを尻目にゆっくりとフォンを抜き出し銃の形状にするサイガ。

 

 一発、

 

「そんなっ!」

 

 たかだかフォンブラスターの一発に体ごと持っていかれるカイザ。

 

「装甲も攻撃力も完全に旧作を上回るんですよ。」

 

 三連射をカイザの足元に撃ち続け威嚇するサイガ。

 

「なぜだ。なぜこうも差が。」

 

「このギアのフォトンブラッドは青、なんでも第七のクォークを添加する事で、フォトンの密度を紅並に抑えつつ、白銀のそれに匹敵するエネルギー準位を確保したとか。つまりこの私こそが村上や海堂を抑えて最強なんですよ。」

 

 一方的な攻撃を受けるカイザであったがしかし、今度は彼もフォンブラスターを抜く。カイザブレイガンと共に2丁で構える。

 

 連射連射連射、

 

「これはさすがに、」

 

 カイザブレイガンとフォンブラスターの連射攻撃に、多少後退りするサイガ。

 

「いまだ」

 

『exceed charge』

 

 伸びるブレード、放つ拘束弾、

 

「うっ、動けん」

 

 たちまちイエローラインの網目に絡まれるサイガ。

 

「死ねオルフェノクっ!」

 

 突進するカイザ、しかし、

 

「動けん・・・・なんてね」

 

 カイザが透過しようとするその寸前、あっさり拘束を振り解くサイガ。同時に背部バックパックが唸りを上げる。中央スラスターが白煙を吹いた。その名も《フライングアタッカー》。

 

「飛んだだと、」

 

 サイガ飛翔、

 

「確実に段階を置いて詰めて差し上げますよ。」

 

「遊ぶな!」

 

 2丁の銃で対空要撃するカイザ。だがあざ笑うサイガは自在に宙を舞って弾幕をかわす。

 

「もう遊びは一切ナシですよっ」

 

 カイザを見下ろすサイガは、ホバリングしながらフライングアタッカーを変形、背中に2機あった姿勢制御スラスターが、腰元にスライドして2門の砲となる。《ブースターライフルモード》。

 

 速射速射速射速射、

 

「くそっ」

 

 サイガの一斉射は弾幕の密度からして違う。先ほどのフォンブラスターの威力を忘れていないカイザは、右に左にともはや回避に専念する以外なかった。

 

「カイザはやはり遅いですね。」

 

 直撃、

 

 しかし胸元に直撃を受けるカイザ、瞬発力に欠けるボディは格好の的となる。

 

「たかだか銃撃にこれほどのダメージを。」

 

 胸元を見て愕然とするカイザ。その黒い胸板に数条皹が入っている。やはりエネルギーのレベルが違い過ぎる。

 

『exceed charge』

 

 それはサイガ、既にカイザの直上にあって急降下、右腕にはチャージがかかっている。

 

「スカぁイインパクトっっっ!」

 

 抉るアスファルト、飛び散る破片、地面にクレーターを作るサイガ。マンホールの蓋が本多劇場の壁に突き刺さっている。

 

「なんて奴だ・・・」

 

 だがカイザは粉々になっていない。辛うじて躱し、数メートル離れた地面に伏していた。右腕はベルトのフォンを入力している。

 

「全く、いい加減にしなさい。こっちはもう詰めに入っているのに。」

 

 悠然とカイザの方向を見やり、敢えてスローモーに立ち上がるサイガ。

 

「詰め?単に威嚇してキメ技カマしただけじゃないか。なんのひねりもない。それより背後を見てみな。」

 

「ふ、何をそんなテ」

 

 轟音、

 

 幾重にも不連続に重なった轟音が背後から。否応無しに振り返るサイガが見たそれは数機ミサイル。

 

「ほらほらにげようにげよう」

 

 それはカイザが仕掛けたミサイルのジェット噴流。合計6機。全てが蛇行しながらサイガを狙う。雅人が乗るサイドカーはスマートブレイ社がカイザのサポートの為に製作した戦闘ビークルである。排気管に擬装した6基のミサイル管より遠隔操作で発射され、熱誘導で標的を捕捉する。

 

「ひゃ!」

 

 フライングアタッカーを起動し、やや中空へ飛び上がるサイガ。だがそのアタッカーの熱量自体がミサイルを呼び込む。

 

 直撃っ!

 

 6機のミイサルを全弾くらうサイガは爆炎と硝酸噴流に塗れながら落下。

 

「限りある装備をこんなヤツに。」

 

 襟元を正し、落下点に向かっていくカイザ。その脚には既にカイザポインターが。

 

『exceed charge』

 

「・・・・ブースターが、壊れたじゃ、」

 

 あのミサイルを食らってなお五体に煙を吹く程度のサイガ。よろけながら立ち上がる。そのサイガに構わず蹴りを食らわすカイザ。

 

「あのオルフェノクからは良い事を教えてもらった。」

 

 腹部にまとも食らうサイガ。

 

「っ、なんのことだ、」

 

 雅人はこのような状況に遭いながらもまだ、見えていたのである。

 

「あの馬のヤツだよ。確かに、跳ぶ前にポインターを放った方が、より実戦的だ。」

 

 ポインターマーカーの光、

 

「なんの話だっ!」

 

 そのまま黄色い杭に圧されるサイガ。

 

「詰めはオレの方だっ!」

 

 カイザも又30メートルの跳躍をした。

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