【悲報】清楚系で売っていた底辺配信者、うっかり配信を切り忘れたままSS級モンスターを拳で殴り飛ばしてしまう 《書籍化&コミカライズ、書籍1巻8/29より発売開始!》   作:アトハ

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第四十八話 雑談配信(2)〜千佳との馴れ初め〜

「私からの千佳の第一印象は……、お金なくて困ってたら貸してくれる優しい人?」

 

"え……?"

"【悲報】レイナちゃん、紐だった"

"マネちゃんは出会ったときからレイナちゃんのお世話してたのか・・・(困惑)"

"どんな出会い方したらそうなるのw"

"てぇ……てぇ?"

 

「ちょっ、言い方!?」

 

 のほほんと笑う私に、

 

「レイナは、ちゃんと自分のものは自分で買う良い子やからな! なんなら今は、ウチの方がおんぶに抱っこやからな!?」

 

 千佳が、そう慌てたようにフォローした。

 

「というかダンジョン素材って、あんなに良い値段になるんやな。振り込み金額見てさすがに震えたで」

「ほえー」

「……なんで、あんたが把握してないんや」

 

 学生は素材の換金不可という制限があり、今までは放置していたダンジョン素材。

 カニ鍋――じゃなかった最前線へのアタックを見ていた探索者組合の働きかけもあり、ついに私たちダンジョンイーターズは、素材を換金する許可を手にしたのである。

 

(でも、なんか分厚い契約書が来て……)

(ついつい条件反射で、千佳に丸投げしちゃったんだよね)

 

 

"無頓着すぎるw"

"熟練夫婦かな?"

"あー、奥さんが家計を管理するやつw"

"お世話されっぱなしのレイナちゃん!"

"てぇ……てぇ?"

 

 食べられないものは、等しく無価値。

 一応、食材さんたちのアドバイスを元に、素材を持ち帰るようにはしている。

 それでも、それがどうなったかは、あまり把握していない私であった。

 

「だいたいですね、私みたいな小心者が、いきなり大金持っても困っちゃいますって。

 その点、千佳に預けておけば、きっと悪いようにはならないと思うんです!」

「相変わらず信頼が重いな!? でも、まあ……、後悔はさせないって自信はあるで」

 

"これはてぇてぇ"

"いやこれ、レイナちゃんは面倒事丸投げしただけだw"

"流石にかなりの信頼関係ないと無理よ"

"てか馴れ初めエピソードは!?"

 

 

「はっ。しまった、ついつい話が脇道に!」

「ならここは、ウチから話すで。といっても、大した話やないんやけどな――」

 

 そう言って話し始めたのは、さっき私が口走ったあの日のことだ。

 千佳目線で話を聞くのは、新鮮だった。

 

 

「あの日は、大きな実験で大失敗してな。もともと不可能だって理解もされへん研究で。

 テーマをもっと楽なものに変えるか、どうしようって悩んで、食堂で頭を抱えてるところにな――」

 

 千佳は、何かを懐かしむように、

 

「この子が現れたんや」

「食堂で頭を抑えて苦しそうに唸ってたから。その……、お腹空いたのかなって」

 

"マネちゃんとレイナちゃんの温度差よw"

"てか天才マネちゃんでも、失敗して悩むことあるんやな"

"確かに失敗なんて気にせず我が道を行ってるのかと思ってた"

"うん。レイナちゃんの話聞いてたら、ひたすら真っ直ぐ突き進んでそうなイメージあった"

 

「レイナは、ウチの事を普段は何て言ってるんや……?」

 

"不眠不休で1週間研究する妖怪"

"不眠不休で1週間研究する妖怪"

"草"

 

「レイナ〜〜!?」

「わーわー、ごめんなさい〜!?」

 

 千佳が、私の頬をむにーんと引っ張った。

 

「そんなこと言う悪い子は……、こうや!」

「あっはっはっはっ、やめっ!」

 

 そのまま押し倒されてお腹をくすぐられたので、私も負けじと応戦する。

 そんなじゃれ合いをしていたので、

 

"いつか歴史を変える天才"

"1番信頼してる人"

 

 ――なんて小っ恥ずかしいコメントは、千佳の視線に入ることはなかったのである。

 

 

「って、こんなことしてる場合じゃない! 千佳、続き続き!」

「ああ、そうやった!

 えっと……、のほほーんとした顔で、カレーを勧めてきたレイナは……。そのまま、十皿カレーを空にしたんや!」

 

"レイナちゃんww"

"めっちゃ幸せそうな顔で食べてそう"

"ギャラリーできてそう()"

 

「あらかた食べ終わったころに、ハッとした顔でカバンひっくり返して、何か探し出したんよ」

「確認したら、財布の中に何も入ってなくて――」

 

"それは真っ青になるw"

"わりと最悪の出会い方してて草"

"お金がなくて困ってたって、そういう!?"

 

 あの時は、本当に焦ったなあ。

 

「それでまあレイナに貸しつつ……。ぽけーっとしてたから、つい言ってしもうたんや。

 悩み無さそうで羨ましいなあって。そしたら――」

「むっ。悩みあるよ、いっぱい!

 今日のお昼は、カツカレーにするか野菜カレーにしようか、とか! 今日の夜は、何にしようか、とか!」

「そうそう。そんな答えが返ってきてな!」

 

"草"

"その時のやらかしじゃないんかい!!"

"レイナちゃんらしいけどww"

"本人、大真面目に悩んでそう……"

 

「そんなことで、むむむむ〜って悩んでるレイナを見てたら――なんかウチが悩んでることも、割と、どうでも良い気がしてきてな」

「うんうん。悩んでるなんて千佳らしくないよ」

「今思うとホンマにそうやなあ。

 よくよく考えたら、失敗したっちゅうことは予想外に出会えたってことや。こんなに楽しいことは無いで!」

 

 あの日の千佳も、そう楽しそうに笑ったっけ。

 ――1週間不眠不休で、研究に没頭する妖怪が生まれた瞬間である。

 

 

「馴れ初めっちゅうか……、それがウチとレイナの出会いやな!」

 

 そう締めくくる千佳。

 

「あっ、そういえば私がダンチューバー始めたのも、千佳の後押しがあったからだよね!」

 

"ふぁっ!?"

"明かされる驚愕の新事実!"

"奇跡の邂逅やんけ"

"マネちゃん、グッジョブ過ぎる!"

 

「だってこの子、ダンチューバーに憧れて専門学校入ったのに、いざ入学したら、私なんかにダンチューバーは似合わない〜〜っなんて尻込みしとったんやで」

「だって私が見てた先輩たちは、あんなにキラキラしてたし……」

 

 割と目標と正反対の方向に、突き進んでいる私である。

 もっとも、それで食材さんが楽しんでくれてるなら、何も文句は無いのだけど。

 

「大食い系ユーチューバーか、癒し系ダンチューバーか。千佳に提案された2つは、究極の選択だったよ」

「あ、あれはダンチューバーを選ばせるための言葉の綾っていうか。まったく、ダンチューバー選んでくれて、本当に良かったで……」

 

"大食い配信も、ちょっと見てみたいw"

"↑↑いつもしてるやんけ!"

"ダンジョンで食べてる量も、大概なんだよなぁ"

"《望月雪乃》いっぱい食べるレイナちゃん。見守りたい……"

"ゆきのん、なんか駄目なお姉さんっぽい発言で草"

 

 

「まあ、潜ってすぐ第一地区のフロアボス倒して帰ってきたのには驚いたなあ。

 それなのに本人は、返り血浴びながらにっこにこで癒し系配信やりたい言うとるし……」

 

"いきなり強すぎて草"

"期待の新人すぎるw"

"いや、それは無鉄砲すぎ!?"

"よく生きてたな(定期)"

 

 危なくなったら無理せず引き返せとは言われたが、クリア出来てしまったものは仕方ない。

 

 そんなこんなでダンチューバーを始め、千佳に攻略速度を驚かれた私。

 その翌週、ブルーマスカットにかぶり付き、病院に緊急搬送されることになるのだが――それはまた別の話。

 

 

「それじゃあ時間もちょうど良いし、今日の配信はここまで。

 本日も視聴いただきありがとうございました! また次の食卓でお会いしましょう」

 

"乙〜"

"おつレイナ〜"

"おつかれさまー"

"この後はマネちゃんと一緒に寝るんですね!"

 

「はい、今日は千佳と一緒に寝る予定です!」

 

"ガタッ"

"ガタッ!"

"おまいら落ち着けw"

"《望月雪乃》レイナちゃんの寝顔、見守りたい・・・"

 

「夜も遅いから泊まってくってだけやから! レイナも変な言い方せんといて!?」

「ふえっ!?」

 

(食材さんたちも、千佳も、あんなに慌ててどうしたんだろう……?)

 

 

 こてりと私は首を傾げて、配信を切るのだった。

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