【悲報】清楚系で売っていた底辺配信者、うっかり配信を切り忘れたままSS級モンスターを拳で殴り飛ばしてしまう 《書籍化&コミカライズ、書籍1巻8/29より発売開始!》   作:アトハ

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第五十八話 絶対に癒やしをお届けする配信(2)

 美味しいモンスターを探して、深層を徘徊する私とミライちゃん。

 しばらく歩き、やがてのっそりのっそりと歩くイノシシ型モンスターを発見する━━名前は、クレイジービックボアと言ったはずだ。

 

「ちゃんと目と耳を塞いで下さいね!」

 

"ヒャッハー! 狩りの時間だァ!"

"なんで耳もw!?"

"お腹すいたからね。仕方ないね"

 

 私が飛びかかろうとした時、ミライちゃんが、

 

「レイナ様! ここは私がやってみたいッス!」

 

 そんなことを言いながら、身を乗り出した。

 

 

「ミライちゃん? ここ、深層だよ? 大丈夫……?」

「はいっス! 任せて欲しいッス!」

 

 ミライちゃんは、自信満々にモンスターの前に飛び出すと、

 

「そのお肉! 大人しくレイナ様に献上するッス!」

 

 そう声を張り上げた。

 

 ブモゥゥゥ!

 クレイジービッグボアは、怒り狂った様子でこちらを見ると、脇目も振らずにミライちゃんに飛びかかる。

 ミライちゃんは、回避する素振りすら見せずにクレイジービッグボアを迎え撃ち、

 

 ━━そのまま凄い勢いで吹っ飛ばされた!

 

 

「ぇええええ!? ミライちゃん、大丈夫!?!?」

 

(いざとなったら割って入って仕留めつつ!)

(エリクサー、エリクサー……!)

 

 慌てる私をよそに、ミライちゃんはムクリと起き上がり、

 

 

「痛いッス〜!?  レイナ様、活きがいい獲物ッスよ!」

 

 テンション高そうに、そんなことをのたまった。

 

 驚くことにピンピンしている。

 さらには次の攻撃は軽やかに回避。ポンと飛び上がり、モンスターが姿を見失ったところに、上からかかと落としを決めてみせる。

 

 

 ブ、ブモゥゥゥ!

 怒り狂ったクレイジービッグボアは、やがては動きに精彩さを欠いていく。

 数分かかったものの、最終的に、ミライちゃんは危うげない勝利を収めてみせた。

 

「パチパチパチ! ミライちゃん、また強くなった!?」

「えへへ、でもレイナ様に比べたらまだまだッス!」

「最初に攻撃を受けたのは?」

「えへへ。なんか攻撃を喰らってみると、スキルが生えてくる可能性が高い気がしたっす! だからとりあえず、未知のモンスター見つけたら試してみてるッスよ!」

 

(な、なるほど……!)

 

 先手必勝を常にしている私では、とても思いつかないトレーニング方法である。

 

「なるほど! ミライちゃん、天才! たしかに攻撃なんて、もらおうと思わないともらわないもんね!」

 

 私はミライちゃんの頭を、撫でまわす。

 

"撫でられて気持ちよさそうなミライちゃん!"

"ドヤ顔かわいい!"

"攻撃なんてもらおうと思わないともらわないwww"

"【朗報】新たなトレーニング法、見つかる"

 

 

「でも、危なくない? 」

「へ?」

「だって、深層モンスターの攻撃をまともに喰らって無傷ですむわけが……。あれぇ」

「この程度なら余裕ッス!」

 

 ドヤドヤドヤっと胸を張るミライちゃん。

 

 

「打撃耐性特大に、対獣相手の有利スキル。あと、初撃ブースター(hp満タン時に防御400パーセントアップ)で、あ、常時スーパーガード状態になる、亀神の心得も便利ッス!」

「……へ?」

 

 やだ、どうしよう。

 うちの弟子、強すぎ?

 

"なになに、どうしたの?(英語)"

"《英検一級はクソゲー》なんかレイナちゃんの弟子も人間やめてた。防御系の激レアスキルが大量に生えてる"

"そんなに人間卒業したやつが現れてたまるか! いい加減にしろ!!"

"《英検一級はクソゲー》ぶわっ(´;ω;`)"

 

 

「レイナ様、スキルって忘れられるッスかね? たとえば、これ━━肉厚脂肪ガードナーとか、持ってるだけで太りそうで嫌ッス!」

 

"悩みだけは乙女ッ!"

"若者の人間離れ"

"これにはレイナちゃんもニッコリ"

"ミライちゃん、ちゃんとダンジョンイーターズだったんやなって"

"↑↑ダンジョンイーターズを非常識集団みたいに呼ぶのやめれww"

 

「どうしましょう!  なんか気が付いたら、ギルドメンバーが人間やめてたんですが!?」

 

"おまいう!"

"おまいう!"

"おまいう!"

 

 ……あれえ?

 

 

 気を取り直して閑話休題。

 ミライちゃんが人間をやめてたり、心躍る新種のモンスターを見つけたり、色々なことがあったけど……、

 今日のメインは、癒やし配信なのである!!(強調)

 

「あ、そろそろ目を開けて下さい!」

 

"草"

"さっきまで会話しとったやろ!"

"今見たもんは忘れろって圧やぞ!"

 

 

 私は、ラクラク・ハコベールに向かって呼びかける。

 

「おもちくん! 何食べましょう!?」

 

 どうして忘れていたのだろう。

 本来、真っ先に聞くべき相手なのに。

 

(栄えあるグルメ案内人!)

 

 私の呼びかけに答えるように、おもちくんは、すごすごとラクラク・ハコベールから出てきた。

 

「そう言えば、えのきのこ採れました! 毒泉であげると美味しいんですよね、一緒に食べましょう!」

「エッ……? イヤ、チョット、オナカのチョウシが……」

 

 ぷるぷる震えるおもちくん。

 

"滝汗w"

"毒殺(未遂)"

"痛烈なカウンター草"

"まずはブルーマスカットから始めよ?"

 

 一方、ミライちゃんはマイペースに「本当に美味しそうッスねえ」などとヨダレを垂らす。

 

 

(本当に試したいのは、フェニックス使ったお料理だけど……、さすがにまだ無理!)

(もっと戦力拡大を測りたいところではあるけれど、今は目の前の料理配信を成功させないと!)

 

 その後も私は、おもちくんに珍味を聞こうと試みる。

 しかしおもちくんは、ぷるぷると震えるだけで、なかなか答えてくれる様子がない。

 

 

(そんなにお腹痛いのかな……?)

 

 結局、私はあり合わせのもので済ませることにする。

 

 

(えのきのこの毒泉揚げは、試してみたかったのでやるとして……!)

 

「レッツ、クッキング!」

 

 久々の料理配信!

 

"レイナちゃん、鍋爆破しちゃ駄目だからね?"

"レイナちゃん、奇声あげちゃ駄目だからね?"

"レイナちゃん、おもちくんうっかり食べたら駄目だからね?"

 

「…………レッツ、クッキング!!!」

 

 悪ノリしたコメント欄に、ちょっぴり出鼻をくじかれつつ。

 私は、意気揚々と料理配信に取りかかるのだった。

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