【悲報】清楚系で売っていた底辺配信者、うっかり配信を切り忘れたままSS級モンスターを拳で殴り飛ばしてしまう 《書籍化&コミカライズ、書籍1巻8/29より発売開始!》   作:アトハ

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六十一話 トレーニング配信(1)

 ある日のこと。

 私は、久しぶりに自室で配信を立ち上げる。

 

「食材の皆さん、こんレイナ〜!」

 

 今日の予定は、雑談配信だ。

 一時期は、ダンジョンに潜りながら雑談配信をしていたのだが、食材さんからヒヤヒヤするからやめて欲しいと懇願されてしまったので、今は自宅からするようにしている。

 食材さんたちは、過保護で心配性なのだ。

 

 私は、配信を立ち上げるなり、

 

「最近、どうしても食べたいものがありまして━━私、フェニックスが食べたいんです!」

 

 ━━キリッとした顔で、そう宣言した。

 

 

"?????"

"なんかやべえこと言い出したww"

"正気に戻ってw?"

"平常運転やぞ"

 

「フェニックス、鶏肉の王様って呼べるぐらい美味しいらしいんです。

 焼き鳥にすると、最高のおツマミになるらしくて━━お酒は飲めませんが、焼き鳥だけでも食べたいなって!」

 

 フェニックスの焼き鳥を想像し、うっとりとした声を漏らす私。

 

"でもフェニックスいる場所って、完全な未踏破領域よな。さすがに無理ゲー臭いような・・・"

"つURL 【未踏破領域のボスを、闇鍋配信で蹴散らすレイナちゃん】"

"Oh・・・"

"よー分からんが、レイナちゃんの食にかける熱い思いは伝ったw"

 

 久々にアホの子を見る視線を感じる。

 それでも私はめげずに、配信の目的を説明していく。

 

 

「今の私は、フェニックスに挑めるほどは強くないと思うんです!

 おもちくんが言うには、今の実力でフェニックスに挑んだら、瞬殺されてしまうとのことで……」

 

"ま?"

"あのレイナちゃんを瞬殺??"

"もうそれダンジョンの最終兵器やろ"

 

 驚いた様子のコメント欄。

 思えばダンジョン配信の反応を見て、私も少しは強くなったかもしれない、なんて勘違いしていた。けれども、おもちくんの言葉によれば、深層の奥深くには想像もできないバケモノが生息しているようで……、 

 

 

「私、もっと強くなりたいんです。

 そう。すべては、美味しいフェニックスの焼き鳥のために!」

 

"前提も目的も何もかもがおかしいww"

"世界一の捕食者を目指すレイナちゃん!"

"なになに、今日はなんの時間?(英語)"

"《英検1級はクソゲー》レイナちゃん、強くなるためのトレーニング法を模索中!(英語)"

"《英検1級はクソゲー》このまま進むとレイナちゃんの強さじゃ瞬殺されるらしい(英語)"

"レイナちゃんを瞬殺できるモンスターが、この世にいるわけないだろ。いい加減にしろ!"

"《英検1級はクソゲー》ぶわっ(´;ω;`)"

"《英検1級はクソゲー》でも、わいも同意や・・・(´;ω;`)"

"いや、ジャパニーズダンジョンやばすぎぃ!(英語)"

 

 

「というわけで、最効率のトレーニングを考えてまして。

 私、これから毎日ダンジョンでモンスターをお腹いっぱい食べようと思うんです!」

「……((((;゚Д゚))))」

 

 肩の上でおもちくんが、白目を剥きながらぷるぷるしていた。

 

"なんだ、平常運転だな()"

"この子、まだ強くなるのか・・・"

"おもちくん可愛い、ヤッター!"

"今日も生存確認!"

 

 おもちくんの愛らしさは、食材さんたちからも大人気だ。

 一部の人からは、ダンジョンイーターズの真の癒し枠などと呼ばれているらしい。

 

(私も、真の癒し枠って呼ばれたい……!)

 

 そんなことを考える私をよそに、コメント欄に食材さんたちが好き勝手に書き込んでいく。

 

 

"また気まぐれに最前線アタックが始まるのか・・・"

"フェニックスか……。喰った傍から回復していきそう、実質食べ放題!"

"↑↑天才か??"

"【悲報】フェニックスくん、捕食者に目をつけられる"

 

 食材さんたちの中で、どうやら私の呼び名は捕食者で落ち着きつつあるらしい。解せぬ。

 そんなやり取りを見ながら、私は、今日の配信を開くにきっかけとなったおもちくんとの雑談を思い出していた。

 

 

 ――それはフェニックスの炎を使えば、デュラハンも美味しく食べられるよ、とおもちくんに熱くオススメされた時のこと。

 せっかく使うのなら、やっぱり本体も食べてみたい! と感じるのは、ごくごく自然な人情というものだろう。何より、おもちくんがふとした拍子にこぼしたフェニックスのレシピ―――

 

(熱々の串焼きにしてかぶりつく。……ああ、そんなの絶対に美味しいやつ!)

 

 よだれを垂らす私を見て、おもちくんはぷるぷる震えながら言ったのだ。

 今の私の実力では、下手すると瞬殺されてしまうと。だから、ダンジョンに潜るのは辞めたほうが良い。むしろ頼むから辞めて下さい、なんて懇願されてしまい――

 

(さすがダンジョンイーターズのグルメ担当)

(たしかに、こっちが食べられちゃったら本末転倒だもんね!)

 

 おもちくんの警告を、無駄にしてはいけない。

 そんな訳で私は、ひたすら安全な場所でレベルを上げようと決意したのだった。

 

 ――もちろん、おもちくんが心配していたのはフェニックスの方である。

 フェニックスの召喚コストは、実にデュラハンの10倍相当(たぶん美味しさは10000倍ぐらい)

 パクパク、うまうま。「焼き鳥食べ放題~♪」とかされたら、大赤字待ったなし。

 だから挑む気にもならないように脅かし、かの邪智暴虐なる捕食者のダンジョン侵攻を食い止めようと試みたわけだが、結果は大失敗。

 怖がるどころかフェニックスを食べるため、本腰を入れてトレーニングする決意を固める始末。

 その食欲は不可侵にして、何者にも止めることなど不可能――そう学び、再び絶望したおもちくんであった。

 

 

 回想終了。

 私は、さっそく本題に入る。

 

「――というわけで報告すると、これからはトレーニング配信が増えます。

 とりあえずは深層のお野菜食べ放題……、じゃなかった。モンスターハウスでレベルを上げようと思います。目標はレベル5000です!」

 

"草"

"5000ww"

"な、何と戦ってるんだ・・・"

 

「マ、マダ、ツヨくなるの!?」

 

 飛び上がるおもちくん。

 

"おもちくん慌てて草"

"今日も美味しそう"

"↑↑食材が食材食べるのヤメロ!"

"おもちくん黒幕説好き"

 

「おもちくん黒幕説?」

 

"掲示板で噂になってるやつ"

"あ~、正攻法で勝てないから暗殺狙い、って例の噂ね"

"ずっと毒を勧めまくってるからなw"

 

 毒ごときで、私がどうにかなるはずがないのに。

 食材さんたちも、面白い冗談を言うものだ。

 

「まっさかぁ。こんなに美味しそうで可愛いおもちくんが、そんな恐ろしいこと考えるわけないじゃないですか。ね、おもちくん?」

「ソ、ソダネー……」

 

 ぷるぷるぷるぷる。

 いわれのない誹謗中傷に、ショックを受けてぷるんぷるん震えるおもちくん。

 今日も美味しそう……、じゃなくて可愛い。

 

「ねえ、おもちくん。やっぱり、先っぽ。先っぽだけ――エリクサー食べて良いから!」

「――シテ、ユルシテ……」

 

 おもちくんは、真っ青になって震えていた。

 ただの冗談なのに。

 

 

「デモ、レベルをアゲル、ノハ、ゲンカイが、アルとオモう。

 ベツの、ホウホウ、カンガえるベキ!」

「なるほど、さすがはグルメ案内人!」

 

 ……とはいえ他の方法なんて、私に浮かぶはずもなく。

 名案を求めて、私は思い切って食材さんたちに質問してみることにした。

 

 

"すべてのモンスターの攻撃を喰らってみる!"

 

「それはミライちゃんがもう試しました!」

 

"倒したものは、とりあえず食べてみる?"

 

「いつもやってます!」

 

"冗談のようなトレーニング法、すでに経験済みなの恐ろしすぎる・・・"

"さすがはダンジョンイーターズのツートップ・・・"

 

 

 一方、おもちくんは考え込んでいたが、

 

「ベ、ベツのダンジョンにエンセイする、トカ!」

 

 ぷるんぷるんと、そう切り出した!

 

「ダッテ、ココにコダワル、ヒツヨウも、ナイ!

 ゼンコクの、ダンジョンを、メグろう!」

 

 全国グルメダンジョン、食い倒れツアー。

 いつか、やってみたいとは思うけど……、

 

「う〜ん、私、学生ですし。休みも終わっちゃったので遠征は難しいですね」

「ソ、ソンナ……」

「それに……、私、新宿ダンジョンが大好きなんです。

 美味しいごはんに、食べ放題のモンスターたち。

 たとえ余所のダンジョンで訓練したとしても、私、絶対に新宿ダンジョンに戻って来ます!」

 

 ぷるぷるぷるぷる。

 ……あれ? 何やら、おもちくんが血の涙を流してる。

 いったい、どうしたのだろう?




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