其れではどうぞ
猫と青愛は未来を追いかけたその後、翼と奏と合流して響と未来の事を相談し合いつつ、本人たちにも了解を取った上、一度二人の間に距離を取らせることにした。
今の二人では、お互いへの慕情と、寮の相部屋で同居している環境も込みで、すれ違いと傷つけ合いを深めてしまう。
のだが猫達は悩んだ
猫と青愛はどちらが響と未来と入れ替わっても寮の何処かで鉢合わせしてしまい気まずくなる
では奏の方は如何だろうと言ったらそれも微妙である
奏は翼とライブユニットとツヴァイウィングで学園内では有名人である
其の為迂闊に奏もしくは翼の部屋に入れると目撃した他の生徒が根の葉も無い噂を流してしまう可能性がある
そもそも翼の所は定期的に緒川と奏が手入れがないと、あっと言う間に汚部屋になってしまう
だからと言っても弦さんの屋敷内の翼の自室に立ち入らせるわけにはいかない
なので響の方を二課本部内の宿泊室で寝泊まりさせる事にした
決まったら響は着替えも寮から二課本部内の宿泊室に持ち込んだ
翌日
朝から雨が降っていた。
テレビのニュースの天気予報によれば、午後からは晴れてくるそうなんだけど、逆を言えば午前中一杯はこの本降りの雨が続くと意味している
猫と青愛はビニール傘をさして雨をしのぎながらリディアン高等科の校舎の昇降口の前に到着して校内に入ろうとすると。
響
「はぁ~~はぁ~~ギリギリセーフ……」
背後から響の声が響き猫と青愛が振り返ると
青愛
「それだけ濡れてたらギリギリでもアウトだ、響」
猫
「そうそう、せめて合羽を着なさい」
どうも一晩泊まった二課本部を出てから昇降口前まで、傘を差すどころか持ちもせず、雨がやんでいる間の隙を突こうと全力疾走してきたらしい響だった。
濡れ鼠なくらいびしょびしょとまではいかないものの、ひな鳥の羽毛を浮かばせる癖っ毛も、リディアンの中間服にも、雨の水っ気がしみ込んでいた。幸い学生鞄は中身の教科書やノートまで濡れてはなさそうだけど。
響
「あ、猫ちゃんと青愛ちゃん?
あはは、やっぱり?」
猫、青愛
「「そう、やっぱり」」
無意識の産物である響の処世術な愛想笑いのものではない笑みに、猫と青愛の笑みを投げ返す。
様子を見る限り、響も昨日より、大分精神の温度は上がって落ち着きを取り戻しているようだ。
昨日奏から翼と響が話し合っていたようで多分相談したんだと思う
これなら、なまじ相互依存でお互いに近寄り過ぎてしまった余り、シンフォギアの存在を中心とした因果をきっかけに大きくすれ違って、離れてしまった二人の距離が、良い具合に縮まりそうだと猫と青愛は期待が沸いてきた。
3人は校舎に入り、下駄箱の前での履き替え、教室へ向かう為に廊下を通って階段に差し掛かったところで、横並びに歩いていた響が立ち止まり、少しよそよそしい雰囲気で
響
「あ、あのね」
さっそく本題に入り込んできた。
猫
「未来なら、私が起きる前に先に学校に行った」
猫達も響と顔を合わせた時点で本題に真っ先に入る気でいたので、まず先に通学して行ったことと
青愛
「多分心配ないと思う
少なくとも響と面と向かって、腹を割って話す為に私達よりも先に起きて外を見て回っているから」
未来の方も、涙とともに響に拒絶の言葉を突きつけてしまうほどの不安定で揺れ動いてた心は、大分安穏を取り戻せていると思うと伝える
響
「えぇ~分からないの」
猫
「御免まさか未来があんな早く起きてもう通学して居ると思って居なかったから」
と仲良く三人で話していると
[~~~]
私達、猫の〔スパイダーフォン〕と青愛と響のスマートフォンが、一度に
周囲を確認し、三人は鞄からスマートフォンを取り出して
三人共〔スパイダーフォン〕とスマートフォンを確認する
国家最重要機密に関わり、その〝秘匿〟を義務づけられている身ゆえ、当然ながら学生たちが行き交う校内及び公共の場の真っただ中で、機密を駄々漏らすも同然に堂々と本部と連絡し合うわけにはいかない。
その為青愛と響のスマートフォンは二課から支給されているスマートフォンである
このスマートフォンは二課に所属する人員に与えられている一見一般普及されているのとそん色ないスマホは電波を受信した際に、周辺の環境をスキャンし、その場所が通信に適した場所でなかった場合、予め特殊なアプリをダウンロードしてあるスマートフォンとリンクして、メールやSNSの通知の体裁で私たちに報せてくれる仕組みとなっている。
青愛は響の手を掴んで
猫
「ついてきて」
響
「うん!」
小声でやり取りした私達はまず人気のない場所へと移動し始めた。
通信場所に選んだのは、屋上のペントハウス。
扉の向こうの外はまだ本降りの雨なので、わざわざ利用する生徒は誰もいない、猫達を除けばだが、状況が状況じゃなければ、暫く雨と建物が彩る演奏と風情を、五感の全てで味わっていたところだけど。
青愛はスマートフォンを確認する
スマートフォンの画面を確認すると、赤い色合いから緑に変わり、ここならば通信に適していると私たちに報せていた。
猫
「お待たせしました司令、ノイズですか?」
弦十郎
『そうだ』
青愛はスマートフォンを操作して、受信を応じ、通信相手である弦十郎は現在車内にいるらしいく弦十郎の顔が表示された立体モニターが現れる。
弦十郎
『市街地第五区域に、ノイズの反応が検知されてな、朝未明だったこともあり、人的被害こそ出なかったのは幸いだったんだが……』
案の定、通信の理由はノイズが出現したと言うものだった。
だが報せはそれだけではないと言うことを、猫は通信が来た時間帯、弦十郎の声と表情のニュアンスから読み取り
猫
「雪音クリスとの交戦の痕跡が見つかった――ですね」
弦十郎の様子を洞察して、最も正解に近い事柄を見いだした猫は、それを弦十郎に伝える。
〝豪胆〟の一言が似合う精悍な面持ちに陰が差し込んだ表情を更に曇らせる弦十郎は、粛々と頷き返して、〔
弦十郎のその顔と陰を私が目にするのは、何度かある
弦十郎
『猫君の察しの通り、出現地点から〔
仮に兵器として見做した場合、ノイズ殲滅に特化した〔シンフォギア〕とたとえソロモンの杖による完全制御下にあってもノイズは、ギアの歌がノイズの特性を悉く無効化させてしまう根っこから天敵同士なゆえに、同時運用には全く向かない。
この両者が一時同じ場所に存在していたとなれば、交戦があったと考えるのが自然だ。
後は先日の戦闘の流れを思い返せば………何を示しているか、おのずと組み上がる。
弦十郎との通信が終わった直後、
響
「猫ちゃん……」
何か言いたげな響の声音を聞こえ。
猫
「やっぱり………〝怒ってる〟の?」
端末を見下ろしていた顔を上げて、
猫
「え?
何が?」
響
「その……クリスちゃんって、女の子のこと」
一見唐突な響の質問だったが、別段猫は不思議に思ってはいなかった。
響なりに、私と雪音クリスとの戦闘を目の当たりにして、思うところがあったのだと、容易に想像できたからである。
猫
「う~ん………怒って居ると言えば怒っているかな」
響のその問いかけを、私は肯定する。
だって、それは事実だからだ。
猫は今も、雪音クリスと言う少女に対し、少なからず怒りの感情を抱いている。
響に助けられた時の態度と言葉を思い返せば……彼女は、いや私たちより一歳年上だから、一見攻撃的で直情過ぎるあの人の心根は、幼き日に最愛の肉親を失い、長年いつ死ぬかも分からぬ内戦下の渦中で、過酷で痛ましく、惨たらしくて悲しく、最悪女性としての貞操も奪われていてもおかしくはない、人間の尊厳を奪い尽くされた奴隷に落とされた地獄に浸かり続け、人としての生を狂わされ続けられてもても尚、心優しく慈悲深い人となりの持ち主だ。
本人は人の世の流れに巣食い続ける争いを心から憎み、根絶したいと言う願望を持っているのだが
猫
「今のクリスは、自分が抱く願いを、自分で足蹴にして、己が憎むものを、逆にまき散らしてしまっている………」
なまじあの人の気質を汲み取っていたからこそ、私は怒りを覚えずにはいられなかった。
未来と子どもたちを、巻き添えにしたと言うのも……少なからずあるけど。
口の中に広がっていく苦味。
歌で以て戦うシンフォギア装者としての形で、再び地球から災厄に立ち向かう力を手にしたけれど………それでもその力は、万能ではない。
猫
「了子さんも言っていたでしょ?
アームドギアは装者の心象も反映されると」
響
「うん」
猫
「現代兵器の形をしたクリスのアームドギアは、争いを憎む気持ちそのものなんだ」
響達が使う〔シンフォギア〕の〔アームドギア〕は本来、元となった〔聖遺物〕に準拠した形態、つまり〔
装者の心象――潜在意識の影響を強く受けるギアの特性を踏まえれば……自身の人生を狂わせた忌まわしい戦争の一部である現代兵器がアームドギアとなってしまうほどに、悪夢として住み着いていると。
なのに……雪音クリスがフィーネと言う終わりの名を持つ者の指示の下で行ってきた行為は、あの人自身が最も忌々しく憎み、その心に影として染みつき、今も尚苦しめている筈の地獄を、自分と同じ境遇に晒された命をこれ以上生み出したくない自らの想いに反して、逆に生み出している側に立っているに他ならなかったのだ。
響と対峙している中、その響からの言葉で逆上して拒絶した姿など、人と人が起こす争いの縮図以外の何者でもない。
それも……よりにもよって〝特異災害〟をも利用して……怒りが沸かない方が、猫には無理な話だった。
けど…かと言って単純に、それこそ響の身も心もボロボロにした生存者狩りに加担した連中も同然に、あの人達を糾弾することはできない。
身も心も疲弊して、追い込まれた人々は、時として極端な思考、思想に呑み込まれ、濁流にも等しいそれらに流されて過激な行動に移ってしまい、悲劇に繋げてしまうことがあるのは…歴史が証明している。
雪音クリスも、国連軍によるバル・ベルデ共和国の紛争介入で地獄の奈落からようやく解放された後も、その胸の内には、戦争と、その地獄を生み出し、己を同じ人と思わず虐げてきた大人達への不信と憎悪、音楽で人と人を繋ぐ様を見せたかった親心が裏目となり、結果として戦禍の中に放り込むこととなってしまった肉親への愛憎が混濁した想いで渦巻き、荒んでいたと想像できる。
響
「でも……」
自分が怒りの理由の諸々を表した直後、響はその一言を口したが、その次に繋げる表現が上手く湧かないようで、俯いて口を閉じてしまう。
いだったのは、私は響が何を言いたかったのか、ある程度汲み取ってはいたので。
青愛
「まあ私達もできることなら、響がしたように言葉で、何とかしてあがったけど……」
と、彼女に返してあげた。
あれで三度目となった雪音クリスと対峙した際、響は未来を戦闘に巻き込んだ相手でもあるあの人に、言葉で以て説得しとうとしていた。
既に一戦交え、戦場の中で響があの選択を取ったのは、元より争いごとを好まない気質と………やはりあの……人の悪意に呑み込まれた経験の影響もあるだろう。
ただ響の影を知らなければ、響のあの姿勢と言葉は、現実を知らない甘ちゃんが振りかざす綺麗言、戯言だと一蹴されてしまうものだ。
現にあの時の雪音クリスの聴覚と思考からは理想論にしか聞こえず、図らずも逆鱗に刺激を受け逆上してしまう格好となった。
私が激情で平静ではいられなくなったあの人を叩きのめし、銃口を向ける荒いやり方を取ったのも、響への憤怒をこちらに向けさせつつ、敢えて私がその矛盾を写す鏡となってどうにか収める意図もあった。
実際、響の言い方は………少々勢い任せの一方通行気味で、拙さがあったのは否めない。
響
「けど………言葉が通じる事と、話が通じる事は、同じようで違う」
それでも、響のそのひた向きさを、否定したくはなかった。
猫
「どちらも通じ合わせる為に努力し続けなければならないところは、一緒ではあるんだけどね」
普段は女性的過ぎず、かと言って男性的過ぎない中庸なものになりがちな口調を、少し女性向にして、そう付け加える。
闘争が人間の本質の一つであるのは、どう足掻こうと否と叫ぼうと、否定することはできない真実
どこかにいるあの人の頭上にも流れている雨空を見上げる。
朝起きたばかりの時よりも、雨雲の密度も勢いも、段々と和らいで、雲の向こうにある青空が見えかけていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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