其れではどうぞ
戦いが終わって落ち着いたころ、辺りはすっかり暗くなって夜になっており、上空では満月が輝いている。
今回のノイズとの戦いは、以下の通りの結果に収まった。
翼×奏のペアと猫と青愛のペアが組んでノイズの殲滅に当たったが今回出て来たノイズの目的が雪音クリスが狙いだったためか、ノイズの大半を蹴散らしたのはクリスの〔
ともあれ響もタコ型ノイズも倒し、今回の一件は甚大な被害になる事なく収まった。
響、未来、翼、奏、猫、青愛は市街地の真ん中、事後処理をしている弦十郎と慎次の元へ招集がかけられ、集まっていた。
辺りでは二課や自衛隊が犠牲者、及び建物の被害確認や、倒されたり自壊した事で発生したノイズの炭を吸引機で吸ったりしている。
さて、弦十郎の元へ集まった前線のメンバー達はお互いに労をねぎらったりしていた。
奏
「それにしても……響、酷い姿してるな」
響の格好は相変わらず酷い。結局、身だしなみを整える事もできずに招集がかかってしまったのだ。
一応猫と青愛と協力して土を払ったが制服が土まみれな以上、風呂にでも入らなければいけないわけだが。
響
「あ、いやぁ、これは……」
後頭部を掻いて苦笑いの響から、翼はその隣の人物へと視線を移した。
その子も響と同じく、土を払っているが制服が土を被って寝癖全開みたいな髪型で酷い事になっている。
髪を結ぶ為に付けているリボンの細かい部分が土まみれだ。
翼
「響
隣の子は?」
未来
「あ、初めまして
小日向未来です
いつも響、猫、青愛がお世話になっています」
響への質問には、自己紹介という形で未来が答える。
自己紹介の言葉と雰囲気を見た翼と奏の未来への第一印象は、真面目そうな子、だった。
翼
「響の友達とは思えないくらいしっかりしてる子に見えるな」
奏
「確かに言えてるな」
ストレートに口に出してしまた翼と奏である。
響
「私どういう目で見られてるの」
と動揺する響に
猫、青愛
「「!」」
猫と青愛は何か思いついて
さらに
猫
「相変わらず勘が良いですね翼さん」
青愛
「翼さんの言う通りで、未来は響の数倍まともです」
そこに追い打ちをかけたのだ
響
「私がまともじゃないみたいな言い方しないでくださいよぉ!?」
不服を提言する響だが、猫と青愛の言葉に翼は
翼
「そうなのか」
と真顔で頷いてしまっている。
奏はそのやり取りを見を見て腹を抱えながら笑うのを堪えていた
未来がしっかりした子と思われるのはともかく、引き合いに出されて変な子扱いされている響は助けを求めるかのように親友を見る。
が、未来もやり取りにクスクスと笑っており。
未来
「やっぱり、皆さんの目からも響は変な子って写ってるんですね」
響
「未来?
私達友達だよね?
親友だよね?」
全方向からおかしな子認定されてしまった響は、頼みの綱であった親友の裏切りにあいガックリと肩を落とした。
そんな響の肩を
未来
「ごめんごめん」
と軽く叩いた
軽い談笑のような事をしているうちに、被害報告や現場指揮が一旦落ち着いたのか、忙しそうにしていた弦十郎が前線のメンバーが集まっている場所へ顔を出してきた。
隣には慎次もいる。
慎次は両手で鞄を抱えていた。
響と未来には見覚えのある、リディアンの鞄。
彼は未来の前にまで赴くと、優しい印象を受ける笑みを向けた。
慎次
「小日向未来さん、ですよね」
未来
「はい、そうです」
慎次
「良かった。
鞄をふらわーさんから回収しておきました」
未来へ鞄を手渡す慎次。
そう言えば逃げるのとクリスの事に必死で、鞄を忘れてきてしまったのをそこで未来は思い出す。
ペコリと頭を下げた後、未来は鞄を受け取った。
中身を確認してみて間違いなく自分の鞄である事を確認し、改めて未来はお礼を口にする。
未来
「ありがとうございます」
慎次
「どういたしまして。
それから、ふらわーの店主さんも無事ですよ」
笑みを絶やさずに行われた慎次の追加報告に2人は胸を撫で下ろす。
響はともかく未来はふらわーのおばちゃんがどうなったのかを知らない。
勿論、響が助けてくれたのであろう事は分かっていたが、やはりちゃんと聞かないと心配なものは心配だった。
さて、心配事や懸念は大体片付いたわけだが、響は弦十郎を前にして何かを思い出したように、突然申し訳なさそうな、気まずそうな表情に変わった。
響
「あのぅ、師匠……」
弦十郎
「何だ?」
響
「この子に、また戦ってるところをじっくりばっちり目の当たりにされてしまって……」
そう、シンフォギアというものは秘匿情報である。
目撃した者には発言の制限がかけられるし、そうでなくとも『シンフォギアを知っている』というだけでその力を狙う誰かに狙われかねないものだ。
おいそれと人前で使ってはいけないものなのだが、未来には二度も見られてしまった。
怒られる事も十分に覚悟している響は下を向いて縮こまってしまっている。
未来
「違うんです!
私が、首を突っ込んでしまったから……」
自分から巻き込まれにいったも同然だと、未来は響を弁護した。
自分の為に親友が怒られるのは本意ではない。
なら、自分を責めてほしいと。
奏は困った表情で後ろ髪を掻く弦十郎を見て
翼
「……奏?」
翼が少しばかりに心配してしまう位の意地の悪い笑みを向けた。
奏
「どうする弦十郎の旦那
罰金、懲役、それか死刑か?」
弦十郎
「冗談言うな」
いつも通りな奏を弦十郎真顔で止める
罪状をつらつらと述べたのは、かつてとあるドラマで刑事ドラマに出演した影響だろうか
一瞬、二課の組織がどういうものなのかを知らない未来は何か罰は避けられないんだと、奏の言葉を鵜呑みにしかかっていたが、
弦十郎
「奏君の言葉は置いておこう。
詳細は、後で報告書の形で聞く。
まあ不可抗力というやつだろう。
それに、人命救助の立役者に煩い小言は言えないだろうよ」
弦十郎が即座に放たれた言葉にホッとしていた
2人を安心させるような笑顔は、実質的なお咎めなしを意味していた。
無罪決定な響と未来は満面の笑みでハイタッチ。その光景に猫と青愛も笑みを浮かべ、奏は鼻を鳴らすだけだった。
と、そこに一台の車が凶悪なスピードで走り込み、凶悪なドリフトで曲がり角を曲がった。
車に見覚えのない未来は驚き、車に見覚えのある響達はまたかと溜息をつく。
警察がいたら捕まりそうな運転で入ってきた車は停車し、勢いよくドアを開けて運転手が現場へと足を踏み入れた。
了子
「主役は遅れて登場よ!」
車から降りた了子は眼鏡をクイッと上げて辺りを見渡した了子は、ウキウキとした様子で現場指揮をてきぱきと進めていく。
彼女の指揮の元、現場作業員達は炭や瓦礫処理、その他諸々の作業に取り掛かった。
弦十郎が司令官という立場上、現場指揮を長く行うわけにはいかないので、了子が現場指揮を引き継ぐという形だ。
彼女の役目は二課本部や聖遺物関係の技術管理以外にも現場処理など、その職務は多岐にわたる。
責任者にして司令官である弦十郎が最高指揮官だとすれば、了子は副官と言ったところか。
それを見て、何故にハイテンションなんだと呆れる翼と猫、笑う青愛と奏、苦笑いな響と未来。という風に三者三様十人十色な反応の中で、未来は1つ思い出した事を響へ尋ねた。
未来
「そういえば響。
私を助けてくれた時、『クリスちゃん』って叫んでたけど……」
未来
「えっ? あ、いや、ええっとね……」
クリスの事を何と説明したものかと困り、言葉に詰まる響。
だが、それに対する未来の言葉は予想外のものだった。
未来
「もしかして、それって雪音クリス?
クリスも戦ってるの?」
響
「え……?
未来、何でクリスちゃんの事……」
未来
「実は、今日会ったんだ。凄く弱ってて……」
まるで知り合いであるかのようにクリスの事を語る親友に驚く響。
未来が見たクリスは、ちょっと強くて乱暴な口調ではあったけれど、その姿は弱々しかった。
身体的に弱っていたという事もあるだろうが、それ以上に心が弱っているような。
心配だった。ノイズの元へ向かって行ってしまった事が、何処か思い詰めた様子の彼女が。
未来
「ねぇ響、猫、青愛。
クリスは仲間じゃないの?」
響
「……うん」
青愛
「と言うか私たちが所属している組織の敵対している組織の人間だったけど」
猫
「未来の言い分だとその組織を抜けていると思うんだよね」
猫と青愛はそう言って響はまだ碌に話し合えてもいない。
けれど、今日助けてくれたクリスが悪人だとはどうしても思えない。
話し合おうと言った事に嘘は無いが、今日を除けば最後に会ったのは2日前。イチイバルを初めて見た時だ。
今日だって会ったとはいえ一言言葉を交わしただけ。話したわけじゃない。
皆と分かり合えた。未来とも仲直りできた。
だったらきっとクリスとだって。
そう信じたかった。
そしてそれを後押しするかのように、クリスの名を聞きつけて近づいてきた弦十郎が響の頭に手を置いた。
弦十郎
「心配すんなって、クリスとも仲間になれる!
気持ちをぶつけりゃ、何とかなるもんだ
なっ」
と未来の方にも元気な笑顔を見せる弦十郎
気休めでも焦りが募るよりはいいし、空元気だって元気のうちだ。気持ちが沈むよりかは余程良い。
2人は元気に笑う弦十郎の顔と言葉に気持ちを明るくさせた。
そして長かった今日は終わる
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