ブルアカの恋愛いろいろ   作:安藤公正

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 ユウカ、誕生日おめでとう。
 こんな話書いてごめん。


ユウカEX1:先生「ユウカって100㎏あるの?」

「……ねえユウカ」

「な、なんですか……? そんないつになく真剣に……」

「さっきたまたま小耳にはさんで……いや、別に本当でも気にしないんだけど、でも確かめとこうかなって……」

 

 私の曖昧な口調に、ユウカはいよいよ困惑を隠しきれない様子だったが。

 

「ユウカって体重百kgあるの?」

「は? ……はああぁああ!!!?」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ミレニアムサイエンススクール。

 

 セミナーからの仕事の依頼で、私はそこを訪れていた。今はユウカが最終的な処理を行っていて、私には手伝えない。それが終わればユウカと過ごす予定なのだが、その前にミレニアムの中を回ってみることにした。

 設備はおおよそ把握している。何度も訪れていて、今さら新鮮味を感じるものなど一つもないはずだが、例えば他の学校と頭の中で比較してみるなどの楽しみを見つけることは出来た。

 

 他のどの学校と比べてもミレニアムサイエンススクールの内装は無機質だ。調度品一つとっても機能性を重視しており、三大勢力として数えられるゲヘナやトリニティと比較して、余裕がない。とはいっても、その余裕のなさはあえて作っていないだけのもの。装飾にこだわるのではなく、機能性と発展に割いた結果のものだった。

 

 私はこの空気をこそ愛した。歴史が深い場所にある特有の、荘厳さと空気に溶け込んだ伝統の生み出す暗さがない。纏わりついてくるような湿り気も、高尚さに交じる独特な埃っぽさもない。平坦な空気が続く。

 それでいて軽い感じがない。それぞれの生徒が、実績重視の校風も相まってか、自らが得意とする分野を持ち、実感を伴った自信に溢れ、やはりそう言ったものが空気から感じられる。

 

 こういったものを感じるたびに、学校を直接訪れた甲斐があったと思う。

 

 それぞれの学校の魅力というものが、非科学的かもしれないが、未知の物質としてその場所の空気の分子の中に入り込んでいるみたいだ。

 

 

 

 

 

「あ、そうそう知ってる?」

 

 一通り見て回って、ロビーでユウカを待ていると、ミレニアムの生徒たちの声が聞こえてきた。先生として多くの生徒に接してきたからか、声色と口調から噂話をしているのだと即座に理解できたのが、我ながら面白かった。

 

「セミナーの会計の話?」

「そうそう!」

 

 思わず顔をゆがめそうになった。

 この学校でユウカが、冷酷な算術使いだのと陰で――意外と正面からも言われていた気がする――言われているのは知っている。セミナーの会計として、私が知っている限りでもゲーム部の時のように、どうしても憎まれ役にならざるを得ない時があるのだ。

 

 陰口なんて聞きたくはない。それもユウカを悪く言うものならばなおさら。

 

 咳払いでもして、中断させようと思うより先に、

 

「体重百kgだってね! 冷酷な算術使いなんて言われてるのに、カロリー計算は出来ないのね!」

「へぇ? そうは見えないのにね……」

「なんでも『痩せている状態のイメージ』をホログラムで身体の上から映しているらしいわ。どれだけ早く動いてもぶれない高性能なものだと推測される、って誰かが言ってた」

 

 

 え?

 

 と、しばらく困惑している間に、いつの間にやら私の前を横切ろうとしていた、噂をしていた生徒たちが気まずそうに会釈をして。

 そんなことがあり得るのだろうかと疑問を抱くも、ミレニアムの技術ならばあり得るかとも考え――

 

 

 

 ☆

 

 

 

「あり得ませんよ!! 体重百kgもあるわけないじゃないですかぁ!!!」

 

 鼓膜がおかしくなりそうなほどの絶叫をして、ユウカが私に詰め寄った。

 

「大体、ほら、そんな体重があったらこんなに近づけませんよ」

「それも何らかの技術力で――」

「だから! そんなものを開発する時間があったら運動してます!」

「いや、なんかもうすでにそれくらいの技術在りそうだし」

 

 

 そんな風な言い合いを続けているうちに、ユウカが勢いのままに。

 

 

「それなら、ほら! 触ってみたらいいじゃないですか!」

「え? ちょ、ちょっと……!」

「先生が信じてくれないので仕方ありません! ほら、ぎゅーっと」

 

 頬を朱に染めながら、先ほどとは異なって照れをごまかすような大声で言うユウカに、私は慌てて謝る。

 

「ご、ごめんユウカ。分かったから。だから別にそこまでしなくても」

「いいえ。ちゃんと先生に納得してもらうまでは、私も引けません!」

「納得しているから!」

 

 ユウカに尋ねるまではもしかしたら本当にそういうこともあるのかもしれないとは思っていた。どういう経緯で広まった噂なのかは知らないが、その数字が大きすぎるところに却って信憑性があるような気がした。ミレニアムの技術で誤魔化せるというのも、あり得る話だ。

 だが、確かにいま改めて考えてみれば、ユウカの性格から、そこまでの体重になる前に運動をするなり食事をコントロールするなりしているはず。

 

「だから、ユウカは見た目通りで、体重は――知らないけれど普通だってわかるから!」

「いいえ、完璧に証明しなければ、先生がこの先『ユウカってもしかしたら激太りしているかもしれないんだよな』なんて考えて……!」

「その疑いはもうないってば!」

「もう! これで証明できますよね!?」

 

 と、しびれを切らしたらしいユウカの方から抱き着いてきた。

 羽織っている厚い制服のごわごわとした感触がはじめにあった。制服の厚みの中に、想像していたよりもずっと華奢な身体があり、私の方からも反射的に抱きしめていることに気が付く。

 胴の真ん中あたりに特別柔らかい感触と熱を感じる。お互いの服が間にあるのに体温を感じられるはずがない。それを理解していながらも、ユウカの熱が伝わってくるような感じがした。

 女性らしい柔らかさは服の上からでもわかる。抱きしめれば見かけ以上に細い身体には、肉など少しもついていないようにも思えるのに、力を籠めればそのまま沈み込んでしまいそうなほどに柔らかい。

 これまでだってユウカの事を一人の女性として扱ってきたつもりだったが、充分でなかった。ユウカの中の女が、服を通り抜けて肌に触れ、浸透し、血を巡り、私の全身を犯している。脳がぐずぐずに溶けていく音が響いて、それでも激しい性欲は生まれずに、このままの瞬間が続くことを祈った。

 

「せ、先生、痛いです……」

 

 気づけば、絶対に離さないとばかりに力を入れて抱きしめている。

 

「あ、ご、ごめん。ユウカ……その……」

 

 私が何を言えばいいのかわからないでいると、ユウカが私の胸に顔をうずめて。

 

「体重、百kgもないですからね」

「う、うん。それは分かったから。ちょっと離れた方がいいんじゃ」

「………今は顔を見られたくないので」

 

 そう言うユウカを抱きしめたいと思ったが、今はわずかに触れ合っているだけの、感じられないはずの体温を感じている方が心地いいと思った。

 

 

 

 

 

 後日、セミナーの役員がシャーレの先生と場所を憚らず抱き合っていたという噂が流れたが、今度ばかりはデマではなく、セミナーの会計の力をもってしても火消しは不可能だった。




 前回でノアは書かないかもみたいなこと言いましたが、書けそうなんで書きます。


 次はハレかノアかまた別の誰かか。他の小説執筆の合間にちょこちょこ書く感じになると思うので、だいぶ先に。
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