ブルースはキュアホークとクゥクゥの目の前で消滅してしまった。目の前には壊された商店街の風景が未だ広がっている。
変身が解けてもなお、マリナは現実を受け止めきれずにいた。
「なんなのよ…わけわかんないわよ! 一体何がどうなってんの!? 夢なら早く覚めなさいよ!」
クゥクゥを掴んで振り回しながらパニック気味に質問を浴びせる。
「お、落ち着いてクゥ~!」
「これが落ち着いてられないわよ! さっきの奴らは何なのよ! プリキュアって何なのよ! 全部教えるまで返さないからね!」
「ク、クゥ~…」
「それは僕がお教えしましょう」
クゥクゥが気絶しそうになったタイミングで、若い少年の声が割り込んできた。視線を向けると、マントが付いた黒いスーツを着た礼儀正しそうな少年が歩いてくるのが見えた。
「誰よ、あんた」
「僕はアレン。アレン・キロプテラと申します。よろしくお願いします」
「あ…アレン様!」
アレンの顔を見たクゥクゥが反応する。
「何よ、知り合い?」
「知り合いも何も、アレン様は…」
「僕もそこにいるクゥクゥと同じで、天空界から来たんです。知ってて当然ですよ」
「天空界? ちょっと待って、プリキュアだのデストロイだの天空界だのいっぺんに言わないで。頭が混乱してきたわ」
「まあ、おいおいお話することになるでしょうから、お気になさらず」
「はあ…ん? 待って、今何時よ」
時計を見ると、いつの間にか時刻は18時を回っていた。
「ヤバ! 早く帰って晩御飯作らないと! 今日父さん帰ってくる日なのに! じゃあ、悪いけどここで!」
そう言ってマリナは、無意識にスピリットキーとドリーミーパクトを鞄にしまい込むと、一目散に駈け出していった。
「あっ…行っちゃったクゥ」
「構いませんよ。どうせすぐまた会えるんですから」
アレンはふっと微笑みながら、彼女の後姿を見送った。
**********
翌日、いつもと同じ時間に起床したマリナは、ふと思い出し鞄の中を開く。そこにはスピリットキーとドリーミーパクトがちゃんと入っていた。
「…やっぱり夢じゃないわよねえ」
まだ昨日の出来事を受け入れられないままマリナは朝食の支度に向かった。
『ここ阿澄町商店街では昨日夕方建物の多くが倒壊し、現在普及作業が急がれています。原因についてSNSでは地震やテロリストによるものといった説がささやかれていますが、いずれも専門家によると可能性としては低いとのことです。また、現場に居合わせた人からは「巨大な怪物を見た」という情報もありますが、こちらも真偽は定かではないようです。以上、現場から益子がお伝えしました』
朝のニュース番組では、昨日の事件が早速報道されていた。さすがにあのアレンと言う少年が言ってた、プリキュアやデストロイといった単語は見られない。
「阿澄町って隣町じゃねえか。なんか物騒な話だな」
スクランブルエッグを平らげながら、譲二が神妙な面持ちで呟く。
「そういやお前、昨日あの辺に行ってたんだろ。大丈夫だったのか?」
「えっ? う、うん…私は別に何も…」
「そうか。何にせよ、こういう事件は早く無くなってほしいもんだな」
「…」
自分があの場にいて、更に事態の収束に一役買ったとはとても言えないマリナであった。と、その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「ん? はーい」
譲二がインターホンに向かう。
「はい?」
「おはようございます。今日からお隣に住むことになったので、ご挨拶に伺いました」
「あ、わかりました。今行きますね」ピッ
「誰?」
「隣の空き家に新しい人が越してきたみたいだ。随分若い声だったけど、学生さんかな?」
「…?」
マリナは気になって譲二と共に玄関に向かった。ドアを開けるとそこには、予期せぬ顔が立っていた。
「はじめまして。小森アレンと申します」
名前は違うが、その顔は紛れもなく昨日会ったアレンと言う少年のものであった。
「あーっ!!」
「やあ、また会えましたね」
「なんだ、知り合いか? じゃあ話が早いな。アレン君か。これからよろしくな」
「はい。あ、これつまらないものですが」
アレンがそこまで言ったところで、マリナは彼の手を引いて元は空き家だった隣の家へと駆けこんだ。
「どういうつもりよアンタ!」
「こういうつもりです。君とはこれから長い付き合いになりますし、いつでも気軽に連絡が取れる状況にいた方が都合がいいでしょう」
「どんな都合よ! まさか、アレもいるんじゃないでしょうね?」
「クゥクゥを呼んだクゥ?」
「やっぱり!」
クゥクゥはリビングの中を気楽そうに飛び回っていた。
「改めて、これからよろしくお願いします。大空マリナさん」
「まさかとは思うけど…これのことじゃないでようね」
ポケットからスピリットキーとドリーミーパクトを取り出してアレンに突きつける。
「そうですよ。それ以外に何があるんですか」
「やっぱり…嫌な予感がしたのよね。で、アタシに何をしてもらおうって言うのよ」
「率直に言います。君にはこれからプリキュアとして、デストロイの連中と戦ってもらいたいのです」
「はあ?」
「奴らはこの1年で着実に力をつけ、遂に兼ねてから企んでいた人間界の制圧に本腰を入れ始めました。昨日はほんの挨拶代わりに過ぎません。すぐまた次の攻撃を仕掛けてくるでしょう。ですが、伝説の戦士プリキュアの力があれば怖くありません。奴らの出現を事前に予知することは出来ませんが、応戦するくらいは出来ます。僕と手を組んで、奴らの野望を…」
「嫌よ」
マリナの強い口調でアレンの言葉は遮られた。
「…」
「アタシがプリキュア? あんな奴らとこれからずっと戦えって? 冗談じゃないわよ! いきなり巻き込まれて、訳も分からずプリキュアにされて、挙句の果てにこれからよろしくですって? アタシには世界で活躍するスーパーモデルになるって大切な夢があんのよ! それをプリキュアなんて子供騙しのヒーローに費やしてる暇なんてないの! 悪いけど他をあたってくれる!?」
「でも、マリナは選ばれし戦士なんだクゥ! これはマリナがやらなきゃいけないことなんだクゥ! お願いクゥ! ブルース様のためにも力を貸してほしいクゥ!」
「やらなきゃいけないことって…アタシのやることはアタシが決めるものよ! あんたたちに決める権利なんてないわ! 人の人生を何だと思ってんのよ!」
マリナは怒りに任せてスピリットキーとドリーミーパクトを床にたたきつける。
「もうこれ以上アタシに関わらないで!」
そう言ってマリナはアレンの家を後にしようとする。
「どちらへ?」
「今日はこれから撮影の打ち合わせがあるのよ。プリキュアになるよりも大事な仕事がね!」
怒り心頭のままマリナは自宅へと帰っていった。
「クゥ…」
落ち込むクゥクゥをアレンが優しく抱える。
「大丈夫ですよ。きっとその内分かってくれます」
**********
マリナの住む夢ノ国町からバスで10分程度のところにある大型のショッピングモール。その中にある喫茶店で、マリナは雑誌社の担当と来月の雑誌に載せる写真の撮影に関する打ち合わせを行っていた。
「…では、明後日の夕方、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
打ち合わせは何事もなく終了し、雑誌社の担当と別れたマリナは時間が余ったので館内を適当に見て回ることにした。
「…」
その途中で、ふと先程のアレンとのやりとりを思い出して立ち止まる。
「頼む、俺に代わって…デストロイの連中を……」
そして脳裏には、自分に後を託して消滅したブルースの顔が浮かぶ。しかし、マリナはすぐに首を振ってそれをかき消した。
「何考えてんのよ! ヒーローなんて仮面〇イダーにでも任せときゃいいのよ。アタシはアタシだけの人生を生きるんだから、プリキュアやってる暇なんてないのよ」
そう言ってレストランの前を通りかかった時、とある母娘の会話が聞こえてきた。
「なんで!? みくの誕生日はお家で一緒にお祝いしてくれるって言ったじゃん!」
「ごめんね。ママどうしてもお仕事にいかなきゃいけなくって…その代わり、今日こうやって美味しい物食べにきたんじゃないの」
「うう…ママの嘘つき! ママはみくよりお仕事の方が大事なの!?」
「そうじゃないのよ…! お願い、わかってちょうだい…!」
「もういい! ママの馬鹿! ママなんか大っ嫌い!」
みくと呼ばれた少女は泣きながら母親の元を走り去ってしまった。
「みく!」
当然母親もそれを追いかける。子供と仕事との間で板挟みになっている母親の姿を見ていたマリナは、先の一件もあって他人事のように思えなかった。
「って、何考えてるのよ。アタシにはプリキュアなんて、やらなくてもいいことじゃない」
すぐに忘れて、再び歩こうとしたとき、誰かに声をかけられた。
「ねえ、貴方、大空マリナさんじゃない?」
「え? はい、そうですが…ああーっ! 如月カレ…」
「しーっ! 声が大きいわよ」
そこにいたのは、テレビや雑誌で活躍する人気モデルでマリナが尊敬する人物でもある如月カレンであった。帽子と眼鏡で変装してはいるが、大ファンであるマリナには一目でわかった。
「す、すみません…! でも、どうしてこんなところに…?」
如月カレン『モデル』
「さっき近くのお店で取材があってね。で、それが終わってここに来てみたら貴方が雑誌社の人と話してるのが見えて、声をかけさせてもらったの」
「え、アタシのこと知ってるんですか?」
「ええ、大空美星さんの娘さんでしょ? 美星さんとは前に一度だけお会いしたことがあって、その時に貴方のこと聞かせてもらったの。これから注目のとっておきのタマゴがいるってね」
「いや、そんな…アタシは…」
「この後時間あるかしら? お茶でもしながら貴方や美星さんのこと色々教えてほしいのだけど…」
「い、いいんですか?」
憧れのカレンに声をかけられたのもあってマリナはすっかり上機嫌になり、プリキュアのことも忘れかけていた。
「ううっ…ふええん…」
その頃、みくは非常階段に腰を下ろしながら一人泣き続けていた。
「ぐすっ…ママなんて…大っ嫌い…」
「素晴らしい…!」
「えっ…?」
みくが顔を上げるとそこには、不気味に笑いながら彼女を見下ろすバルファの姿があった。
「母親を憎む極上のマイナスエネルギー…是非我々のために役立てていただきましょう…!」
「い…いやっ!」
逃げようとるみくであったが、バルファに肩を掴まれてその場に押さえつけられてしまう。
「怯えることはありません。痛みは一瞬です」
『ライノス!』
バルファはスピリットキーを起動すると、みくの胸に差し込むように押し付け、ガチャリと回した。
「いやあああああああっ!!」
みくの胸に黒い鍵穴が出現し、そこから巨大なサイの姿をしたホロビナーが飛び出した。
ライノス・ホロビナー
「ホロビナー!」
「行きなさい、ホロビナー。地上の人間共を恐怖で支配するのです」
**********
館内はホロビナーの出現によりパニックになっていた。
「ホロビナー!」
ライノス・ホロビナーは咆哮を上げながら近くの店に手当たり次第に突進してはめちゃくちゃに荒らしていく。
「うわああああっ!!」
「きゃああああっ!!」
人々は悲鳴を上げながら館内から脱出しようと走っていく。誰もが我先にと走るせいで、避難は思うように進まない。
「皆さん落ち着いて!」
「順番に、押さないで!」
マリナとカレンは外に出ようとしたところでこの事態に遭遇し、警備員たちと協力して人々を避難させようと試みる。
「みくー! どこなの、みくー!」
マリナの目に先程の母親の姿が飛び込んできた。どうやらあの後別れたまままだ再会できていないようだ。
「行かせてください! まだ娘が中にいるんです!」
「駄目です! この先は危険です!」
警備員に止められる母親の姿を見て居ても立ってもいられなくなったマリナは、カレンにその場を任せることにした。
「カレンさん! 皆さんの避難をお願いします!」
「貴方はどうするの?」
「あいつの注意を引いて、少しでも時間を稼ぎます!」
「ちょっ…大空さん!?」
カレンが止めるのも聞かず、マリナは消火器を片手にホロビナーの方へと向かっていった。
「怪物! 何処見てんの!? こっちよ!」
消火器を噴射しながら、ライノス・ホロビナーの注意を引いてなるべく出入り口に向かわせないようにする。
「ホロビナアアアアアアアア!!」
ライノス・ホロビナーが雄たけびを上げながらマリナめがけて突進してきた。
「うわっ!?」
すぐさま危険を察知してその場から離脱すると、瓦礫の陰に座り込んで泣いているみくを発見した。
「みくちゃん!」
「うう…怖いよう~…」
「大丈夫。絶対ママに会わせてあげるから」
しかしそうしてる間にもホロビナーは我が物顔で館内を蹂躙する。マリナはその中に、バルファの姿を見つけた。
「ふふふ、いい調子です」
「あいつは昨日の…!」
すると、向こうもマリナに気が付いたようで目線を彼女に向ける。
「おやおや、先日は邪魔をしていただいてどうも。ですがもう遅いですよ。我々は最早誰にも止めることは出来ません」
「あんたたち! なんでこんなことするのよ! 昨日といい今日といい、みんながそれぞれ自分の人生を一生懸命生きてるのに、なんで滅茶苦茶にされなきゃいけないのよ!」
「何故ですって…? ふっ、わかりきったことを。それが我々の使命だからです。そうするために我々は存在するのです。我々はただ、地上の人間共をつまらない夢などから解放させてやるだけですよ。これで満足ですか?」
「つまらない夢ですって…ふざんけんじゃないわよ!」
「ならどうするというのです。昨日のように叩くというのであれば、お相手しますが」
「っ……」
「おや、その意思は無いというわけですか。では、遠慮なく」
バルファはそう言ってホロビナーに再び指示を出し、ショッピングモールの外に向かわせようとする。このままでは皆が危ないが、今のマリナにはそれを止める術はない。
「わかっていただけましたか。これが奴らのやり方です」
マリナが苦虫を噛んでいると、いつの間にいたのかアレンが横に立っていた。
「あんた…」
「理屈が通じる相手ではありません。奴らの頭にあるのは、人間界を力で制圧すること。ただそれだけです」
そう言ってアレンはちらっとマリナと、彼女に抱きかかえられたみくを見る。みくはいつの間にか気を失っていた。
「戦うか戦わないは、勿論君の自由です。ですが、君が戦わずに誰が奴らと戦えますか?」
「……」
「その子を見捨てることが、君に出来るんですか?」
「…出来るわけないでしょうが!」
マリナはかっと目の前の敵を睨みつけると、アレンが持っていたドリーミーパクトを奪い取る。
「…もういいわよ。アタシにしか出来ないってんなら、やってやるわ! この先がどうとか、そんなのはどうでもいい。ただ、今は…あいつを一発ぶん殴りたい!」
マリナは続けてアレンからスピリットキーを受け取ると、代わりに気を失ったままのみくをアレンに預けた。
「その子は任せたから、絶対に守りなさいよ」
「ええ、勿論です」
アレンにそれだけ忠告し、マリナはドリーミーパクトとスピリットキーを構える。
『ホーク!』
「プリキュア! ドリーミングチャージ!」
スピリットキーを起動してドリーミーパクトに差し込み、ガチャリと回す。ドリーミーパクトが開いて中からピンク色の鷹を模したオーラが放たれ、やがてマリナの身体を包み込む。
『スタイルアップ! フライ・トゥー・ザ・スカイ! プリッキュア~! ホーク!』
「大空の勇者! キュアホーク!」
決めポーズを取り、高らかに名乗りを上げるキュアホーク。
「はあああああああっ!!」
ホークはまず真っ先にバルファの元へと飛びかかり、右手でストレートのパンチを放つ。
「…!」
バルファはこれを難なくかわす。
「でやあっ!」
そこに間髪を入れずホークが左足で蹴りをお見舞いしてきた。すかさず左腕でこれを防ぐが、僅かに反応が遅れたことで怯んでしまった。
「ふんっ!」
「ぐわっ!」
一瞬のスキを見逃さずホークの放ったアッパーカットが炸裂し、バルファの身体を持ち上げた。バルファはそのまま地面へと落下する。
「ざまあみなさい!」
バルファに一撃与えたホークはすぐにライノス・ホロビナーとの戦闘に移る。出入口へ向かおうとするライノス・ホロビナーの正面へと飛びながら移動し、その角に右手で渾身のパンチを放つ。
「はあああああっ!!」
ホークのパンチでライノス・ホロビナーは止まった。
「ホロビナアアアアアアアア!!」
…かに見えたが咆哮と共にライノス・ホロビナーは角に力を込めてホークの身体を逆に吹っ飛ばした。
「うわあっ!」
「ホロビナー!」
そのままライノス・ホロビナーはホークめがけて突進してきた。
「っ! このっ…!」
ホークはやむを得ず正面から受け止めた。互いに力を込めて押し合うが、徐々にホークの方が押されていく。
「ホロビナアアアアアアアア!!」
「うわあああああああ!!」
次の瞬間、ライノス・ホロビナーはホークと拮抗したまま角をかち上げて彼女の身体を遥か後方へと投げ飛ばした。
「イタタ…」
衝撃でダメージを負うホークの元に、アレンがやって来た。
「ちょっと、このままじゃキツいわよ! なんか手はないの!?」
「…ありますよ」
するとアレンは、別のスピリットキーを取り出した。
「キーを変えればいいのです。向こうが一本角なら、こちらは二本角で対抗しましょう」
「あんたね…そういうのは先に渡しなさいよ」
「君がやる気を出してくれるのを待ってたんです。仕方ありません」
「ったく…」
不満を垂れながらも、ホークはアレンから受け取ったスピリットキーを起動する。
『ゴート!』
起動したキーをホークスピリットキーの時と同様ドリーミーパクトに差し込み、回転させる。
『スタイルアップ! レディー! ゴー! ゴー! ゴート!』
ドリーミーパクトが開き、そこからピンク色のヤギを模したオーラが放たれ、ホークの周りを飛び跳ね回る。やがてオーラはホークの身体を包み込み、その姿を変化させる。手袋とブーツ、そして胸のリボンだけはそのままに、襟の立ったジャケット風のシンプルな衣装。髪は色はそのままにシンプルなロングヘアとなり、その一部がリング状に束ねられてまるでヤギの角の様に見える。
『大いなる二本の角!』
キュアホーク・ゴートスタイル
「…あんたを倒すこと! 決定!」
キュアホークはパワー自慢の戦闘形態、ゴートスタイルへとチェンジした。ライノス・ホロビナーを指さしながら決め台詞を吐き、再び敵の正面に回る。
「ホロビナー!」
ライノス・ホロビナーは先ほどと同様に力任せに突進してくるが、パワーが上昇したホークはこれを難なく受け止める。
「ぐっ……おらあっ!」
ライノス・ホロビナーの顔面に力強く膝蹴りを決め、その衝撃で角をへし折ることに成功した。
「ホロビナアアアアア!!」
角を折られたライノス・ホロビナーはその場でもだえ苦しむが、ホークは攻撃の手を止めない。両腕に力を込めてその巨体を持ち上げると、勢いよく放り投げた。
「ホロ…ビナー…!!」
完全にグロッキーなライノス・ホロビナーにとどめの一撃を決める。
『ゴート! スペシャルチャージ!』
ドリーミーパクトにゴートスピリットキーを刺したままボタンを押すことで必殺技を発動する。ジャンプして一旦上空へ跳び、頭部と両腕にエネルギーを込めると、そのままホロビナーめがけて勢いよく降下していった。
「ゴート・ドリームフィニッシュ!!」
「ホロビナアアアアアアアアッ!!」
力を込めた体当たりが炸裂し、ホロビナーは断末魔と共に爆散した。
「おのれ、またしても…」
ホロビナーの敗北を見届けたバルファは悔しそうに拳を握り締める。
「キュアホーク、ですか…どうやらこれからは、貴方の存在も視野にいれて動かねばならないようですね…」
そう言ってバルファはその場から逃げるように立ち去って行った。
「あ~あ…どうすんのよ、これ…」
ホロビナーのせいでめちゃくちゃになった館内を見てホークが呟く。
「心配いりません。我々だって何の対策も講じてないわけではありませんよ」
『プラナリア!』
そう言うとアレンは、スピリットキーを起動して小型の銃に差し込んだ。そして彼が引き金を引くと、水色のオーラが辺り一面に放たれ、壊されたものがあっという間に元に戻っていった。
「これでここは明日からも普通に営業できますよ」
「今どきは便利なものがあるのね…」
呆気にとられるホーク。そんな彼女を陰から見つめる何者かの陰があった。
「キュアホーク、ね…」
カレンであった。ホークの姿をじっと見つめると、彼女はマリナに気づかれる前にその場を後にした。
「ママ!」
「みく!」
戦いが終わって、マリナはみくを無事母親の元に返すことが出来た。
「ママ…ごめんなさい~!」
「ううん…ママの方こそごめんね…! お仕事早く終わらせて、お家でみくのお誕生日一緒にお祝いしてあげるから…!」
「うん…!」
そして母親はマリナに申し訳なさそうに一礼し、みくと一緒に帰っていった。
「お姉ちゃん、ありがとう! バイバーイ!」
「バイバイ。もうママのこと嫌いなんて言っちゃ駄目よ」
「うん!」
みくに笑顔で手を振るマリナの顔はとても満足そうであった。
**********
「行ってきまーす」
「おう。そういやアレン君に挨拶しないのか?」
「別にいいでしょ。そんな特別仲がいいってほどでもないんだし」
翌日、いつものように家を出て登校するマリナ。鞄の中にはドリーミーパクトとスピリットキーが入っていた。
「ま、学校にいけばアレンと会うこともないし、むしろ学校の方がプリキュアのことなんか忘れて、気楽に過ごせるかもね。」
そして教室に着くと、クラスメイト達が何やら盛り上がっていた。
「あ、マリナ! 今日このクラスに転校生が来るんだって!」
陽子が興奮気味に駆け寄ってくる。
「転校生? また随分と変な時期に来たわね」
「そうなんだよねえ。受験とか大丈夫なのかな」
「ま、男だろうと女だろうとアタシの美貌に戦々恐々させてやるわよ」
「もう、マリナったら…あ、来たみたい」
担任が入ってきて、朝のホームルームが始まる。
「はい、既に聞いてると思いますが、今日からこのクラスに転校生が入ります。卒業までの短い間になりますが、仲良くしてあげてくださいね。じゃあ、入って」
扉が開き、転校生が入ってくる。その顔を見た女生徒たちは次々にざわつきだす。
「なになに、結構カッコいいじゃん。マリナと並んだら美男美女でいい画に…マリナ!?」
「………」
陽子が振り返ると、後ろの席でマリナは魂が抜けたような顔で気絶していた
「マリナ!? マリナってば!」
「…最悪………」
そんな彼女を尻目に、転校生が黒板に名前を書く。
「小森アレンです。皆さん、よろしくお願いします」
制服に身を包んだアレンはそう言ってにっこり笑った。
**********
マリナ
「マリナの、スピリットキー大分析! このコーナーでは、スピリットキーについて勉強するわよ!」
アレン
「今日は何の解説ですか?」
「今日紹介するのは、これよ!」
『ゴート!』
「ゴートスピリットキー。ヤギの力が宿ったスピリットキーよ。ゴートスタイルに変身するのに使うわ。ゴートスタイルはパワーが格段に上がって、巨大な敵も軽々と投げ飛ばすわよ」
「脳筋な君にはピッタリの能力ですね」
「顔面殴るわよ?」
「冗談ですよ」
「あんたねえ…」
「では、また」
-次回予告-
「なんでこうなるのよ~!?」
「やはり君には、戦士の宿命が付いて回るみたいですね」
夢見中学校にアレンとクゥクゥがやってきた。マリナの波乱の生活が幕を開ける。
次回、夢に向かって!ドリーミープリキュア『勇者立つ』
お楽しみに!