目には目を"刃には刃を"   作:おもちぴん様

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王都北街道 1

 ──早朝の王都ギルド、人は疎らで受付も暇そうにしている。

その静かなギルドに騒がしいのが1名やって来た。

 

「北街道の件!俺にやらせろ!」

「カウンさん、うるさいですよ。」

「良いから良いから!姉ちゃん来ないうちにさあ」

「うるせえぞガキ、朝くらい静かにせんか」

「おやっさん!」

 

 おやっさんと呼ばれた男はギルドマスターだ。

気さくな人柄と腕っぷしで王都の荒くれ……冒険者達の信頼も厚い。

その男の最近の悩みの種は早朝から元気一杯のこの少女だ。

 

 何処かアウトローな感じのギルドが明るく華やいだのは良いが、とにかく騒がしい。

毎回部屋まで騒ぎが聞こえてきて作業の邪魔になっていた。

 

「で、朝っぱらから何の用だ?」

 ギルドマスターは騒がしいカウンに問い掛けた。

「北街道だよ!北街道!モンスター出たんだろ!俺にやらせろ!」

「静かに喋れ!大きな声で喋らんでも分かるわ!北街道のやつか……昨日の夜にきたグループ依頼だな。10人以上集まるまで待て」

「俺が十人分の働きするからさあ!」

「駄目なものは駄目!あっちでジュースでも飲んでろ!」

「へーい」

 

 渋々といった体(てい)でカウンは席に付きジュースを飲み始めた。

果汁100%の酸っぱいやつを。

飲む度にカウンの目が☓(バツ)になっており見ている分には面白い。

そんなカウンに話し掛ける者がいた。

 

「おうおう!口悪!いつも通り変な顔だな!」

「ああん?脳筋が人の言葉使うなよ!」

 彼女の名前はスト・ライカ。

職業は拳闘士の腕っぷしの強い少女だ。

二人は幼馴染で幼少の頃から顔を会わせれば喧嘩をしている。

うるさい二人が揃ったのを見て、ギルドマスターが話し掛けた。

 

「お前ら、ギルド内で互いに半径2m以内に近づくの禁止な。」

「「分かった!」」

 

 それを聞いて、きっちり2m離れた二人は、聞くに耐えない口喧嘩をし始めた。

殴り合いをされるよりもマシというギルドマスターの判断だ。

二人の頭は悪くないが語彙力が壊滅的なため、傍から聞いているとまるで幼子の喧嘩である。

しかし、声は綺麗なのでそれを音楽に朝から酒を飲む者がいるくらいだ。

 

 二人が終わりのない低レベルな口喧嘩をしていると、大分時間が経ったのか、ぼちぼち冒険者が集まってきた。

依頼を確認する者、食事を摂る者、喧嘩を観戦する者……。

 

 冒険者が集まってきた事を確認したギルドマスターは、ギルドに来ている者に

聞こえるように大きな声で、北街道の事を話し始めた。

 

「お前ら!緊急クエストだ!腕に覚えのある奴は集まれ!」

「待ってました!」

「口悪!喧嘩の途中だぞ!」

「うるせえ脳筋!」

「お前ら少し黙ってろ!」

「「はい!」」

 

 ギルドマスターの言う事は絶対。

意外と二人は行儀が良かった。

 

 二人を黙らせたギルドマスターは続きを話す。

「昨夜、北街道で商隊が壊滅。護衛の生き残りがほうほうのていで王都に到着した。生き残りが言うにはゴブリン共にやられたそうだ」

「質問、本当にゴブリンですか?」

「多分チャンピオンとかがいたんじゃねえかって話だ」

「チャンピオンか……なるほど」

「さっぱり分かんねえ!チャンピオンって何だ?」

「そんなことも分かんねえのか口悪!」

「何だあ?今ここでやるか?」

「お前ら!」

「「はい!」」

「また依頼だが、悪いが3パーティ、10人以上で受けて貰うことになる。報酬の分配は参加する奴らで相談してくれ」

「参加する!」

「俺も!」

「よし、参加するならお前らでパーティ組め!命令だ!」

「「それは嫌だ!」」

「じゃあ参加するな」

「「じゃあ組む!」」

「良し!まずは1パーティ、二人だな」

 

 二人が参加するのを見たからかは分からないが、続々と参加者が名乗り出てきた。

数分ほどで4パーティ、15人(2人+4人+4人+5人)が揃い、ギルドマスターも満足気な表情だ。

揃ったパーティ達は軽い自己紹介と文句を言い始めた。

 

「こいつら二人いるか?邪魔だぜ」

「ああん?ここでぶち殺してやろうか?」

「待て脳筋。町中の殺人は犯罪だぞ。依頼中に殺そう」

「頭良いな口悪!お前覚えとけよ!」

「お前ら本当にやるなよ」

「「善処します!」」

 

 無事にパーティ間の自己紹介が終わったところで、一行は北街道に向かった。

情報では王都から3,4時間ほど進んだところで襲われたという話だ。

1時間ほど歩いたところでカウンが口を開いた。

 

「俺たち以外の往来がねえな」

「ホントだ!口悪はよく見てるな!」

「そうだろ、そうだろ」

「ちっ、お気楽野郎どもが……」

「「あ?やんのか?」」

「はい!ストップ!無駄な体力使わないの!」

「「姐さん了解です!」」

 

 三人(二人?)を止めたのは魔術師の女だ。

緊急クエスト参加者の中で一番ランクが高い。

意外や意外、二人は縦社会で生きてきたので目上の者には従順だ。

気に入らない者は別であるが……。

 

 喧嘩が止められて暫くしてから、カウンが言った"往来が無い"事について各自が話し始める。

 

「カウンさんが言うように妙ですね。街道に巣でも出来たのでしょうか?」

「街道にか?そうなる前に誰か気づくだろ」

「くそー!人殴りてえ!特にあいつ!」

「はあ?俺が先に殴るからな!」

 

 一行は各自で考えをまとめて街道を進む。

喧嘩をしたり、話をしながら一行はひたすら進んだ。

更に2時間ほど進んだところで血の匂いが漂ってきた。

 

「血の匂いだ!ゴブリンか?」

「早く殴らせろ!」

「あっ!二人とも待って!」

 

 静止も何のその、二人は血の匂いが濃くなる方向に突撃する。

そこには人の物と思われる四肢や腸が散乱していた。

生き残りは……いないようだ。

二人は死体を気にせず獲物を探す。

そんな二人に近づく大きな影が一つ。

 

「後ろだ口悪!」

「分かってんだよ!脳筋!」

「グオオオオオオ!」

 

 後ろを振り返った二人の前には、ゴブリンチャンピオンがいた。

二人の感想は"デカイゴブリンだな"程度である。

 

 先に仕掛けたのはライカだ。

自身の拳をチャンピオンの腹に打ち込む。

 

「硬え!何だこいつ?!」

「どいてろ脳筋!おらあ!」

 

 続いてカウンのメイスが腹に直撃する。

硬いものを叩いた時の衝撃がカウンの手に伝わった。

 

 ファンタジーに於いてゴブリンは舐められガチであるがチャンピオンになると、

その戦闘力は侮れない。

強敵を前に二人は戦意を漲らせた。

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