さしすの先輩聡人くん!   作:コトバノ

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第13話 『破』破れたり

 

 

 カラリとした、秋の曇り空の下。

 

 新宿のビジネス街に並ぶ、1つのビルの屋上で。

 

 駅前のマ○ドナルドで買ってきた、ホカホカのハンバーガーをかじりながら、俺は。

 

 遠くに見える、他のと比べてやや薄汚れたビルを眺めていた。

 

 「……あれが呪詛師集団『(やぶり)』のアジトと……ふーむ……てりやきチキンフィレオうっま……これ、期間限定ってマジ……?買い占めないと……」

 「アホなこと言ってる場合じゃねぇよ、これからあそこを攻めるんだぞ?もっと気張れ、怪我でもされたら俺が面倒なことになる。……ポテトちょっと貰っていい?」

 「日下部さんは真面目やなぁ……あ、いいっスよ、Lサイズだから」

 「おっしゃ」

 

 パクパク、パクパク。

 

 隣の日下部さんと、マ○ドナルドの素晴らしき商品たちに舌鼓を打ちつつ、今回の任務内容を頭の中で確認していく。

 

 今回の任務は、呪詛師集団『破』の殲滅だ。

 

 呪詛師──呪いを自らの欲望のままに扱い、社会の理を乱す、呪術界の犯罪者。

 

 それが、呪詛師という存在だ。

 

 その中で、一般社会において法の裁きを受けることのない呪殺を商売として用いることで、金を荒稼ぎしているのが、呪詛師集団『破』だった。

 

 構成員は、71人。呪言師や、式神使い、降霊術師など、層は厚めらしい。

 

 そんな悪ーいヤツらを捕まえるために、俺は、日曜日だというのに新宿まで出張ることとなっていた。クソがっ。

 

 ちなみにだが、この殲滅戦には、結構な人数が参加していたりもする。

 

 俺と日下部さんの他に、知り合いで言えば、悟に傑、冥さんなどだ。あと補助監督さんたちも。……いやこの人たち、いつも居るな……休み、あんのかな……?可哀想……。

 

 「お、墓之瀬。連絡来たぞ。もうすぐ作戦の本段階を始めるみてぇだ」

 「マジか」

 

 補助監督さんたちに憐憫の念を抱いていると、日下部さんから作戦がいよいよ大詰めに入ったことを通達される。同時に下ろされる帳。

 

 まぁ一口に作戦とは言っても、冥さん他数名が索敵してる間に、補助監督さんたちが周りの建物から一般人を避難させ、それが完了したら俺と悟と傑他数名がビルに突っ込み、日下部さん他数名が取り逃しを片付けるっていう、バカ簡単なものだけどな。でも、無いよりは当然マシ。

 

 「あとどんくらいで始まりそうスか?」

 「あー……や、もう始まってるらしいな。各々勝手に突入して良いって、メールに書いてある」

 「投げやりすぎんか???」

 

 尋ねると、耳を疑うような答えが返ってくる。たしかに今さっき、無いよりはマシって言ったけどさぁ……ガバすぎやろ……。

 

 「おら、じゃあとっとと行って来い。ポテトは俺が片付けといてやるから」

 「えぇ……?まぁ良いっスけど……じゃあ俺のゴミもちゃんと捨てといてくださいね?」

 「おー」

 

 食べ終わったハンバーガーの包装紙とドリンク、手を拭いたペーパーをぶち込んだ紙袋を、ポテトを摘まんでる日下部さんに渡し、後処理を任せる。不法投棄、ダメ、ゼッタイ。

 

 「んじゃー、行くかー……ってうわっ、ビルの入り口爆発してる……絶対あれ、悟と傑の仕業だろ」

 

 ひとりごちつ、視線をアジトだというビルに向けながら、身体に呪力を通していき──地を蹴る。

 

 屋上の柵を越え、宙を飛び、次の建物の屋上へ。

 

 駆ける、駆ける、駆ける。

 

 ぐんぐんと、遠かったビルとの距離が縮まっていく。

 

 風圧に長ランがはためく中、俺は鞘から刀を抜き、左の腰だめに構えて振り抜く。

 

 青黒の、大砲のような斬撃が空間を裂き──響く轟音、セメントの外壁が放射状に砕け、窓ガラスがキラキラと舞い散った。

 

 かくして4、5階辺りに大きく開いたその穴に、俺は勢いのままに飛び込む。

 

 移り変わる視界、ビルの内装は普通のオフィスと相違なかった。

 

 パソコンの置かれたデスクと回転チェアが規則正しく配列され、遠くには観葉植物まで見える。

 

 ……え、俺、突入する場所間違えてないよな???

 

 不安がっていると、身構えていた黒服の男たちが、次々と声を上げる。

 

 「な、何じゃワレェッ!!」

 「誰だテメェコラァッ!!」

 「さっきから何じゃい!!」

 「ブッ殺すぞ!!」

 「うわ、ガラわっる……絶対『破』の人で合ってるわ……少なくとも、カタギではないことは確実……」

 

 厳つさにちょっと引きつつ、やりすぎになっちゃうので抜き身だった刀を戻し。

 

 自然体になって、『破』の呪詛師たちに答えてあげる。

 

 「……で、俺が誰かだっけ?この服見て分かんない?」

 「……そのボタン……テメェ高専のガキかッ!!」

 「いぇーす、墓之瀬聡人と言います。あ、覚えなくていいよ?どーせアンタらはお縄につくから、もう会わなくなるだろうし」

 「抜かせッ、ガキがッ!!会わなくなんのはテメェが死ぬからだッ!!」

 

 顔中に血管を浮き上がらせて。

 

 呪詛師たちが襲いかかってくる。

 

 最初に肉薄してきたのは禿頭の男だった。

 

 筋骨隆々の身体から、大きく振りかぶられた左の拳が放たれる。

 

 それが届く前に俺は、宙を跳びながら旋回、後ろ廻し蹴りを顔面に叩き込む。

 

 禿頭の男は、もんどり打って、並ぶデスクを巻き込んで地面を転がり、やがて動かなくなった。

 

 間を置かずに。

 

 新しく2人の呪詛師が接近してくる。

 

 今度は片や短刀、片やサバイバルナイフと、得物持ちだ。呪力も籠められている。って言っても、呪具の類なわけじゃねぇみたいだし……呪具だとしても、使い手が使い手だしな。怖くはない。

 

 「くたばれガキがッ!」

 「死ねッ!」

 「嫌っスー」

 

 突き出された短刀、それを持つ腕に手を添え逸らす。ほぼ同じタイミングで振られたサバイバルナイフは、軽く上体を反らすことで躱した。

 

 斬り付ける対象を失ったことで、得物の主たちはそれぞれバランスを崩す。

 

 がら空きになった2人の胴に、殴打を1発ずつ入れて──彼らは地面へと沈んだ。

 

 ……ふーむ……この感じ、1人0. 2歌姫先輩 (単位) といったところか。そこそこやね。ちなみに悟とか傑は300歌姫先輩くらい。うーん……え、300の歌姫先輩に囲まれてみたい……何そこ楽園じゃん……でもやらかしたときのお叱り、めちゃくちゃヤバそう。

 

 「くッ……!囲め囲めッ!一斉にかかるぞッ!」

 「相手はガキ1人ッ、数じゃこっちのが有利だッ!」

 

 楽園を妄想していると、ゾロゾロと黒服の呪詛師たちが、周りを取り囲んでくる。ざっと10人くらいだろうか。もっとも──。

 

 「──雑兵だな」

 

 口端を吊り上げ、呟く。

 

 瞬間、押し寄せてくる呪詛師たち。

 

 その拳を払って顎を打ち、刀を折ってわき腹を蹴り、短剣を避けて胴を殴り、迫る手を捻って投げ飛ばし──。

 

 「──ふぅ……」

 

 僅かして。

 

 死屍累々の光景が辺りに広がる。

 

 折り重なって、積まれる呪詛師たち。

 

 それをバックに、取り出したケータイで自撮りをしようとして──気配。

 

 「ありゃ、取りこぼしてたか……」

 

 首だけ振り向いて、気配の方を確認すれば、そこには、数珠を握り怯える黒服の男の姿。

 

 「……あれ?その顔……もしかして、アンタ、降霊術の人?」

 「く、来るんじゃねぇッ!殺すぞッ!」

 「……んー……ねぇ、アンタ。俺、降霊術見たことないからさ、見せてよ」

 「は、はぁっ!?」

 

 戸惑いの表情を浮かべる男。

 

 俺は積まれた呪詛師たちの上に、足を組んで腰かけ、その彼に再度笑顔で頼む。

 

 「ほら、やって見せてよ。大丈夫、アンタが降霊術やってる間は待っててあげるから」

 「な、何言って……」

 「──早くしろ」

 「ッ……!!クソがッ!!」

 

 冷たく催促すると、彼は吐き捨て、数珠を手に文言を唱え始める。

 

 いやぁ、楽しみだなぁ……ワクワクする。霊、降ろせるって、スゴすぎでしょ。織田信長の霊降ろしてほしいわ……本能寺の変の真相を知りたい。あ、でも坂本龍馬もありだなぁ……誰に暗殺されたんやろ。ヤバい、楽しみすぎる……このウキウキは、もうコールで発散するしかないな!

 

 「──兄やんのぉっ、ちょっと良いとこ見てみたぁいっ!ほっら、降霊っ、降霊っ!信長降霊っ!降霊っ、降霊っ!龍馬も降霊っ!」

 「……ッ!クソガキがぁッ……!舐め腐りよってッ……!」

 

 手拍子に乗せてコールしてると、顔をひきつらせた男が、そんな言葉を絞り出し。

 

 内ポケットから取り出したナニかを飲み込む。

 

 ……えっ、ナニかって何……???もしやドラッグですか……???ダ、ダメだぞお前、それは条例違反だぞ……?……あ、よく考えたらそもそも俺が銃刀法違反だったわ。

 

 うっかりうっかりと、額を叩いていると──跳ね上がる、男の呪力。

 

 顔つきもドロドロと変化していき、見知らぬ者の……まるで、戦乱の世の武将のような顔つきになる。

 

 「わーお……いいね、カッコよくなったな」

 「……死ねッ!」

 

 男は数珠を投げ捨てて、床に落ちていた刀を取り迫って来る。

 

 合わせて俺も、呪詛師たちの山を発ち、刀を抜いて迎え撃つ。

 

 鋼と鋼のぶつかる、甲高く硬質な音。

 

 橙の鉄の火花と、青黒の呪力の火花が、宙空に散りばめられる。

 

 「やるじゃん……5.3歌姫先輩くらいはありそう」

 「何だそれはぁッ……!」

 

 鍔迫り合い。

 

 膠着状態の中、感想を漏らすと、問いかけが返される。

 

 「何だそれはって……単位だよ単位。1歌姫先輩=歌姫先輩と同じ実力ってことを表してる。だから1.1歌姫先輩あれば、歌姫先輩には勝てるって感じだな。でも俺は歌姫先輩と戦うことになったら不戦敗を選ぶ」

 「意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞッ!!」

 

 叫びと共に。

 

 押し込まれてくる刀、俺は抵抗せず、脇へと逸らすようにその力を受け流し。

 

 伴って前へと出てくる男の頭部、そのこめかみに左の掌底を打つ。

 

 揺れる男の目は、やがて裏返り、意識を失う。

 

 刀は手から滑り、床へと落ちて。

 

 顔つきは、元のモノへと戻っていった。

 

 「──よーし、終わりだな……記念写真でも撮っとこ!」

 

 その男の身体を乱雑に掴むと、呪詛師の山へと放る。

 

 それを背景に、今度こそ俺は、取り出したケータイを構え──シャッターを切る。ポーズは顎の前での裏ピース。小顔になっちゃうぜ。

 

 撮れた写真を、呪詛師の山にまた腰かけながら、冥さんと日下部さんに送る。

 

 すぐさま来る返信、冥さんは、「制圧完了ということかな?流石だね、墓之瀬くん」と、こちらを賞賛するような内容。オトナのお姉さんの対応だ……!

 

 日下部さんは、「オマエ、何やってんの?観光でもしてんのか?」と来ていたので、「マ○ドナルドのゴミはちゃんと捨てましたか?」と、文脈ガン無視で新しく送っといた。不法投棄、ダメ、ゼッタイ。

 

 他にも歌姫先輩や硝子ちゃんに写真を送っていたところ、入り口の方のドアが、デスクや観葉植物を纏って吹っ飛んでくる。

 

 何事かと視線を送れば。

 

 「──あ、聡人じゃん」

 「なんだ、ここももう制圧済みだったんですか」

 

 生意気後輩コンビ、悟と傑が居て。

 

 「おー、2人ともお疲れー!ほら、ここ!隣座りな、隣!」

 「居酒屋に遅れて来たヤツを呼ぶノリで、呪詛師たちの山に座らせようとすんなや。座るけど」

 「いや、悟、座るなよ……」

 

 誘いに応じて、悟が横に腰かける。傑は呆れ顔で寄って来るも、座りはせずに、立ったままだ。

 

 「で、2人とも、どうだった?苦戦とかした?」

 「ぜーんぜん。ザコばっかだよ。相手になんねぇ」

 「正直、戦力過多だった気もしますよ。これなら私1人でも充分だった」

 「お、言うなぁ……」

 「実際聡人も退屈だっただろ?」

 「いや、降霊術見れたから、別にそこまで退屈じゃなかったよ」

 「ああ、幹部の。強かったですか?」

 「5.3歌姫先輩くらい」

 「「なんだ、弱いのか」」

 

 おい、今、歌姫先輩のこと、バカにしたか……??? (新手の誘導尋問)

 

 「ちなみにソイツには術式使った?」

 「いや?腕が鈍るから、基本使わないようにしてんの」

 「……腕が鈍る、ねぇ……マジで聡人の術式って、何なの?」

 「出会ってからもう4ヶ月ほどが過ぎてるんです。そろそろ教えてもらっても良いと思うんですけどね」

 「えぇー……?」

 

 悟は、サングラスのツルから覗かせた、蒼の瞳を向けて。

 

 また傑は、微笑を浮かべながらも笑っていない瞳を向けて。

 

 尋ねてくる。

 

 ……しかしどうしたものか……。あんまり人に教えたくねぇんだよなぁ……2人の人柄は問題なさそうだけど、イロイロと危険だし。いくら2人が強くても、呪術界の上層部の権力には逆らえな……逆らえ……逆らえそうだなコイツら……。ウチの1年生、全員傍若無人の極みだし。それにいい加減、毎度毎度こうやって尋問されんのもメンドいからな……うん、もう言っちゃうか。

 

 「……秘密だぞ?誰にも言うなよ?俺と夜蛾先生しか、俺の術式の存在は知らないんだから」

 「……!ああ、もちろん。もし俺が口を滑らせたら、傑が責任を取るから安心しろ」

 「どうして私が???……はぁ……じゃあ、もし私が口を滑らせたら、悟が責任を取るということで」

 

 えぇ……コイツら、責任を擦り付け合ってるぅ……安心できる要素が、1個も無い……。

 

 2人の様子に俺は、不安を覚えて溜め息を1つ吐き。

 

 人差し指を立てて、口を開いた。

 

 「──俺の術式は、『呪限無』。呪いを制限ないし無力化する。ちなみにこの呪いってのは、呪霊も指すし、呪力も指すし、術式も指すし……ま、大体の呪いに関するモノは阻害できるんだ」

 「……それ、マジ?そんな術式、聞いたこと無いんだけど……」

 「にわかには信じ難い話ですね……だってそれは、あまりにも……」

 「ねー。俺も、我ながら面妖な能力だとは思ってるよ。……でも、事実だ」

 

 告げると2人は、眉をひそめて訝しむ。それでもなお言い募って、嘘ではないことを伝えれば、彼らはなんとか納得の顔を見せた。

 

 「……ま、こんな場面で俺らを騙す意味も無ぇか……」

 「だね。……しかし、ふむ……呪限無、面白い術式ですね。使い道も、幅広い」

 「だけど、使い過ぎると戦いが楽になっちゃうからね。多用はできないんだ」

 「ほーん……」

 「なるほど……」

 「あと──と、よく考えたら、今任務中だったな……もしかして、雑談してる場合じゃ、ない?」

 

 ある程度話したところで、ふと我に返る。一応15人くらいは倒してるから、怒られはしないだろうが……。

 

 「大丈夫じゃない?俺たちで、もう40人くらいは倒して来たし」 

 「こうしている間も、私は呪霊を放ったままですからね。最悪取り逃しても、冥さんたちもいますし」

 「あー、ね、たしかに。なら大丈夫か。じゃ、呪詛師共の見張りがてら、もちょっと喋ってるか」

 

 手を頭の後ろで組み、足をぷらぷらと放り出して、そう提案する。

 

 2人はそれに、笑んで承諾し──雑談は、回収班たる補助監督さんたちが来るまで続いた。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 「──お疲れ、墓之瀬くんに五条くん、夏油くん。素晴らしい働きだったよ。大人顔負けだ」

 「ほんとですかっ!?えへっ、えへへえへえへへ」

 「うわ聡人、キッモ……」

 「呪霊かと思って、危うく取り込むところだった……」

 「よし、喧嘩がお望みというわけだな?まとめてかかってこいや1年ども、ボコボコにしてやるよ」

 

 事が終わって、夕時、アジトだったビルのエントランスで。

 

 美人なお姉さんの冥さんに褒められて有頂天になっていたところに冷や水を浴びせられた俺は、悟と傑に対して臨戦態勢を取っていた。

 

 オマエほんま、キモいは駄目やろ……!!傑は傑で、めちゃめちゃなこと言ってやがるしよぉ……!!表に出ろっ!!

 

 「おらっ、やめろガキども。ビルが壊れるだろうが、仕事を増やそうとすんな」

 「いてっ」

 

 コツンと。

 

 そんな俺の頭を、背後から現れた日下部さんが、刀の柄で打ってくる。

 

 「日下部さん……でもアイツら、俺が冥さんにデレデレしてたら、キモいとか言ってきたんですよ!?」

 「そりゃデレデレしてるオマエ、キモいからな……仕方ねぇよ」

 「なー」

 「日下部さんは分かってますね」

 「よし、3人まとめてかかってこい」

 

 敵しか居ないことを認識した俺は、再び臨戦態勢を取る。

 

 まだまだ元気いっぱいの身体に呪力をみなぎらせ、3人に向けてファイティングポーズを取り──。

 

 「──ダメだよ、墓之瀬くん」

 

 そっと、その腕に、冥さんの手が置かれる。

 

 振り向こうとすれば、頬をくすぐる髪に、仄かな熱。

 

 くっついてしまいそうな距離にまで顔を寄せてきた冥さんは、俺の耳元に囁く。

 

 「彼らはまだ子どもなんだ……君がオトナにならないと。ね、墓之瀬くん」

 「オ、オトナ……?」

 「そう、オトナだよ。一緒に私と……オトナになろうか」

 「なります。超なります」

 

 柔らかく諭された俺は、構えを解く。

 

 ヤバい、色香で頭がクラクラする……オト、オトナ……オトナか……。そうか、オトナか……。オトナ、すごい……。

 

 「フフッ、良い子だね」

 「ねぇあれ、あそこで顔赤くしてボーっとしてるのが俺たちの先輩ってマジ?」

 「信じたくないね……」

 「オマエらも可哀想に……」

 

 ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ。

 

 男衆が好き勝手言う中、暫し意識をオトナという言葉にやられてた俺は、やがて我に返る。

 

 「……ハッ、危ない危ない、ボーっとしてた……と、それより冥さん!この後時間あったら、みんなでご飯に行きませんか!?」

 「ん、ご飯に?そうだね……ちなみに誰が来る予定なのかな?」

 

 誘うと、首を傾けて疑問を示す冥さん。動きに合わせて、淡い水色の髪も揺れる。

 

 「とりあえず、俺と悟と傑は決定してますね。あ、日下部さんも来ます?」

 「タダ飯なら行くぜ」

 「学生にタカるって、正気か???いやまぁ全然奢りますけど」

 「ふむ……その面子だったら、うん、是非とも行かせてもらおうかな」

 「本当ですか!?」

 

 質問に答えていけば、嬉しい答えが返ってくる。

 

 やったぜ、冥さんとご飯に行くの、何気に初めてだ……!

 

 「ちなみに場所は、もう決まってたりするのかな?まだなら、適当なお店を紹介するけど」

 「あ、オナシャス!」

 「うん、良いよ。了解だ」

 

 冥さんは頷いて、頼みを受けてくれる。

 

 そして、彼女の案内のもと。

 

 俺たちは、新宿の街を、美食を求めて行くのだった。

 

 

 

 ……余談だが、冥さんが紹介してくれて、最終的に俺が全員分奢ることとなったお店……めっちゃお値段高くて、終始彼女はホクホク顔をしてたんだけど……なんか、お店と癒着してたりとか……してないよな???

 

 

 






 感想に高評価ありがとう!やる気出る!

 感想はちゃんと読んでによによしてるけど、時間ないので返せないっス……!ごめ!
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