メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>   作:桜の宿

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二章四話 「この勝負、勝つぞ!」

 

 

 「サリート!なんで助けに行かねぇんだ!!それどころか」

 

 

 音を殺して森の中を駆ける二人は、それぞれ対極の考えを持っていた。まず、トウガはすぐにでも助けに向かいたかった。もし勝てなくても三人で逃げるすべはいくらでもあるはずだと。だが、それは無知ゆえの想像である。

 

 

 「お前の位置からは見えなかっただろうが、迎え撃つなんて次元ではない。百は優に超えた団体が明確な殺意を持って行動に移したのだ。」

 

 

 サリートは見えていた。統率のとれた軍隊が、不自然にも都市の周辺部で現れた。それも魚人の運送中に。

 

 

 「噂が現実味を帯びてきたな。」

 

 

 近ごろ小さく聞こえてきたこの情報に、信憑性などなかった。D級冒険者に協力を依頼する程度の脅威としかとらえられていなかった。

 

 

 

 「噂・・・じゃああいつらは。」

 

 

 

 「都市の壊滅を狙う計画犯だ。」

 

 

 すでに距離をとったのか、威圧感による重さはない。だが、確かに肌で感じた。あの場の三人が立ち向かったところで、敵方の被害はゼロで終わるのが関の山だ。

 

 

 

 「それでも、、逃げるくらいなら」

 

 

 どこかで納得が行っていないのだろう。敵に背を向けたことに悔いているのだろうか。自分が彼を見捨てたとでも思っているのだろうか。どちらにしろアメルはそれを望んではいない。

 

 

 「本当か?ここまで計画を小さな噂程度にしか晒していないやつらから、本気で逃げられると思っているのか?」

 

 

 「ッ・・・」

 

 

 たじろぎ、拳を握りしめている。炎天下も相まって、お互い普通以上に汗が流れ出る。

 

 

 

 

 「・・・甘くなったな。トウガ。」

 

 

 「・・・!なんだと!?」

 

 

 「昔のお前なら、目的のためであれば犠牲さえ厭わない。そういう男だったはずだ。」

 

 

 

 

 ーーーー夜。記録的な豪雨が起き、植木も何本か倒れた日のこと。

 

 

 それは数年前。サリートが長めの髪を後ろに縛っていた頃。

 

 

 相も変わらず仕事をこなしていた。いわゆる汚れ仕事というもので、密輸者や密猟人など、冒険者や騎士であれば生け捕りにするような相手でも、指令があれば首を落とす。歴は長い方ではなかったため、この悪天候の中でも駆り出された。

 

 

 暗器が血にぬれ服が血にまみれ、気持ちが慣れ始めたところで直面したのは自分の技術の無さ。体の成長とともに動きの勝手が分からなくなる。荒れた戦地で対象が数人おり、今から連れて行かなくてはならない。

 

 

 目の前に男が立っていた。緑の肌をしており、白の髪が血の色を目立たせる。足元には倒れ伏す商人と思しき人が一人、悪天候と闇夜に紛れて逃げられる寸前であったらしい。

 

 

 

 

 確実な間合いを読んで距離を詰める。相手は帯刀しているため、慎重にことを進める必要があった。

 

 

 こちらに向けられる男の目は動揺の一つも見せない。今にも首を掻っ切られる状況であっても死を恐れていない。完全に血が流される。

 

 

 「・・・ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 ・・・・」

 

 

 「心境の変化ならそれでもいい。だが無駄死にするようなやつとは、もう一緒にいるつもりはない。助けに行くなら勝手に行け。」

 

 

 友とはいえ運命共同体ではないのだ。

 

 

 「・・俺は俺を変えたつもりはない。犠牲が出ても後悔しない。・・・あいつは、犠牲にするには惜しいだけだ。」

 

 

 

 これ以上説得する意味はない。初対面にはわからないが、目の前の男にとってアメルはそれほどまで大事らしい。

 

 

 だが、本音を言えば協力者が欲しかった。

 

 

 思わず舌打ちがこぼれて背中を向ける。追いつかれたら何もかも終わりの状況で、足止めを食らっている暇はないからだ。都市エトカルディスは滅ぼされるわけにはいかない。

 

 

 走り出す手前、待てとの声が聞こえる。

 

 

 

 「俺にできることを教えてくれ。二手に分かれた方が効率的だろ?」

 

 

 同じ"目"をしている。豪雨の中、全身で息をしていたその体とは打って変わって、芯のある目。

 

 

 

 「なんて顔してんだよ!・・・頭なら冷やした。俺らがバレなかったのも、あいつが隠したからだろ。それなのに俺が戻ったら、本末転倒だ。」

 

 

 急ごうぜとせかすように、先を越して歩き始める。

 

 

 「ただサリート。あくまで俺の優先事項はアメルを救出することだ。選びたい方を選ばせてもらう。」

 

 

 「・・・・まずは助けを求める他ない。俺は宮殿へ向かうから、お前は冒険者ギルドへ向かえ。信用を得られる可能性は無いに等しいが、少しでも協力者を募れれば勝ちにつながる。」

 

 

 

 実力はそう変わらないのに、なぜこうも信用を置いてしまうのか。俺が暗殺業から離れたのも、あの時のこいつがきっかけだった。

 

 

 

 「この勝負、勝つぞ!サリート!」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 「ぎ…ひっひっひ。殺しちまわなくてよかったんですかい?旦那ぁ。」

 

 

 惨状を前にして不敵な笑みを浮かべる犬獣人。そこには、遠方まで木々や地面を抉り、先ほどまで動き回っていた少年が白目をむいて血を流す光景があった。気絶したその少年は、生きていること自体奇跡に近い。

 

 

 腕一振りでこれを起こしたゴブリンに、人員の多くは自然と後ずさる。適切な瞬間に"上の威厳"を見せつけるその姿に敬意を表す男は、むしろ目を輝かせてとどめまでも所望する。

 

 

 

 「必要ない。贄や人質に使える可能性もある。ひとまず本拠地へ連れて行くとともに今後の方向性を決めようか。」

 

 

 

 合図をせずとも気絶した体の足を持ち上げる巨体の鬼は、地面に引きずるすれすれの高さで雑に運ぶ。

 

 

 ソワソワしていたもう一方の犬獣人は、みな忘れかけていそうな魚人らを指さす。

 

 

 「あ、、あいつらこそ殺した方がいいんじゃねえかぁ?調子乗った結果こんな雑魚にボコされるなんて恥だろ恥!!ゲヒヒヒ!」

 

 

 「それもだめだ。利用価値は十分にある。連れていき手当を施せ。」

 

 

 その言葉を引き金に、一般兵士のゴブリンや獣人などが魚人を引きずる。持ち上げるのは大変なため、個体によっては二人以上で担当していた。ボスに至っては四人態勢だ。

 

 

 隊が方向変換して拠点を目指す中、気に召さない人物が一人。魔人の女性は怒りの対象全てに睨みを効かせて、聞こえるように大きく舌打ちをする。

 

 

 

 「所詮ゴブリン程度に従う馬鹿な醜態を、一体いつまで見させられるんだ。ねちっこく策を練らなければ生き残れない下等どもが。」

 

 

 

 一瞬のうちにヘイトを集める女性は、気にせずその場を離れようとする。同じく角の生えた集団は漏れなくついていった。紫色をした魔術師ゴブリンがその顔色を強める。

 

 

 「ボスの考えに意見があるのか!?貴様は新参のくせにいつまでもその態度・・・!」

 

 

 「利害の一致だと言っているだろう。雑魚に従う道理はない。」

 

 

 「合意の上でしょう!?ボスの作戦通りにことが進めば、あなたの野望も叶う。なにを意地張っているのか。。おい!まだ話は」

 

 

 顔に熱を持ち始める女性を無視して、魔人の集団は歩き去ってしまう。もうよい、と抑制の言葉が出てようやく落ち着いたのか、一歩下がり頭を冷やす。

 

 

 

 

 「気がはやるのも仕方がない。翌日は、数年にも及ぶ計画の集大成だ。彼女は態度は悪いが頭は悪くない。計画の通り動くだろう。それに・・・」

 

 

 

 行かせておいてもよい。それも織り込み済みで計画を組んでいた。失敗は許されない。

 

 

 

 「平和の都市、エトカルディス。破滅まであと一歩だ。」

 

 

 

 

 

 

 






サブ連載 < 魔人っ子の平和(?)な散歩道 >

十二話 「魔人っ子の特別(?)なペット」


 「そいつの名は"フクイバシ"。小さな虫等を食うのは通常種と変わらぬが、それに加えて腐敗したものを食うことでも有名だな。ここらでは見かけん。」


 どうやらドリ〇ウズはもぐらじゃなくて変なもぐらだったようです。要するにゾンビ特攻ってこと?


 「良い誤算だ。その動物がいれば多少なりとも作業が捗るぞ。」

 「作業?」

 まだ何を手伝えばいいのか聞いてないのですよ。早く早く。


 「あぁ。今回貴様に手伝ってもらうのは、この村の復興作業だ。」


 ほう?いまいちわからない。

 「見ての通り廃村と化したこの場所を、人が訪れる程度に戻したい。」

 「できるの?こんなやべーところ。」

 村の中は見回したけど、触れば崩れそうなオンボロしかない。臭いも無臭とは言えないし、汚いの象徴まで湧いている始末。


 「簡単にできるのであれば私一人で十分だろう。難しいゆえに手伝いを頼んだのだ。」

 なんとまぁ。思ったより重い役割任されますかね。


 「あと、タイトル名が平和(?)な散歩道なんですけど、詐欺にならないですか?」

 一か所に留まることを散歩とは言わない。

 「心配するな。復興されていく村を見回ることも、ある種の散歩という。」

 「さすが姐さん。汚ぇぜ!」


 システムの穴なんて突いてなんぼのその姿!そこに痺れる憧れるぅ!!


 「そも、人を集めるために人を呼び込まなければならないだろう。他にも外へ出向く口実などいくらでもある。貴様の心配するところではないゆえ、そろそろメタ発言を控えろ。嫌われるぞ。」


 「うす。」


 クールな姐さんに言われちゃしょうがねぇ。切り替えていこう。


 「その姐さん呼びもいつまで続ける?なぜ始まった?」


 「だって姐御肌ありそうだったから・・・。」


 そこそこの人情がありそうだし、誰かに何かを教えてそうだし。私自身は教えてもらってないから師匠はおかしいので、姐さんか姐御で通そうと思ってる。


 「それとも子分の盃でも交わさねぇと、姐御には付いてっちゃいけねぇんですかい?」

 「・・・・。まったく。愛くるしい顔をしておいて中身は変な娘よ。」


 呆れてる?ドリュ〇ズ以外にも呆れられたら悲しくなる。ロソロちゃんも半分呆れてたか。

 でも今回は人のこと言えないと思う。だって。


 「触り心地も赤ん坊のようであるのになぁ。」

 「・・・・・ほっぺぷにぷにしないでください。」


 馬鹿にされるならともかく、そういう意味で子ども扱いされると困ってしまう。いや、私だけじゃなくて、女性すべてにこれやってるかもしれない。子ども扱いではないのかもしれない。


 「お菓子食べるか?」

 「もう許さねぇぞぉ。」


 子どもじゃないやい。こちとら十代の還暦はとっくに過ぎてんだよ。あと、このチョコの部分をもうちょっと増やしてくれますか?


 ・・・・十代の還暦ってなに?


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