メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>   作:桜の宿

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二章十六話 「反撃の狼煙」

 

 

 俺は今、暗くて何も見えない場所に幽閉されている。感触で手足が縛られていることがわかるが、実際どうなっているのかはわからない。

 

 

 「・・・誰か!!いませんか!!?」

 

 

 自分なりに精一杯もがこうと考えるも、大声を出して外に伝えることしかできない。

 

 

 

 「っ助けてください!!!」

 

 

 声がかすれてきている。何度も何度も叫んだため、カラオケの現象に囚われていた。力で引きちぎれないかと模索したが、紐が体に食い込んで痛いだけだった。

 

 

 薄く聞こえていた。都市を襲撃するだの、作戦はどうだの。叫んでも反応がないことから、ここ近辺はもぬけの殻になったらしい。人質になりそうな俺を置いて?

 

 

 

 ここで待つしかないのだろうか。全てが終わるまで。どんな結果になろうとも後悔しか見えない。

 

 

 

 バゴオオオォォォン!!

 

 

 

 すると、久方ぶりに目の前に日差しが差し込む。誰かが助けてくれたのだろうか。一体誰が。

 

 

 目が次第に慣れてくる。助けてくれた張本人の姿が映し出される。影から見るに一人だ。

 

 

 

 

 いいや、一匹だ。

 

 

 「・・・スライ、ム?」

 

 

 

 大きめの猫くらいの大きさがそこにあった。丸みを帯びたその体は青色で、向こう側が透けて見えることから液体だとわかる。とても生物とは思えないが、付き添いがいないことから助けてくれた張本人だと思うしかない。さながらスライムだ。

 

 

 ビシッ!バシュッ!!

 

 

 俺を縛る紐が、スライムの繰り出す風魔法により切られ、悲しい牢獄から助け出された。気が休まる瞬間がなく、一日以上眠れていない。手と膝を地に着けたまましばらく動けなくなり、自分の体力の限界を感じ取った。

 

 

 

 こんなことをしている場合ではない。無理にでも呼吸を整えて前へ進もう。

 

 

 

 「俺の声、うるさかったか?」

 

 

 うんともすんとも言わない。体がぷるぷると振動しているため言葉を理解はしているのだろうが、それ以上の反応がないため、喋れないようだ。それはそうだ。液体がどうやって言葉を話すのだろうか。聞き取れるだけで儲けである。

 

 

 

 「・・・・・そっか、喋れないんか。・・・迷惑かけたならごめんな。後、ありがとう。」

 

 

 

 上下に震えるスライムの横を通り過ぎ、都市のある方向へ歩き出す。連れてこられたため道は完全には把握していないが、声の遠のく方角は前後左右でなんとなくわかっていた。

 

 

 

 「・・・・・。・・・・どうした?俺の後ろついてきて。一緒に行きたいのか?」

 

 

 地をスライドしてスライムが追いかけてきた。ペットを連れている感覚になって、ひょいと持ち上げてしまう。思っていたより触り心地がいい。特に嫌がりを見せたり暴れたりはせず、じっと待っている。丸い物体のはずなのに、可愛く見えてきた。

 

 

 

 「・・・・じゃあ、来るか!さっき魔法使ってたし、手伝ってくれるやつは多いに越したことないだろうしな!」

 

 

 何かを伝えたいのか、またしても振動している。同意の意だろうか。

 

 

 

 「んー。スライムって呼ぶのもあれだな。・・・・"ミウ"。ミウって呼ぶぞ。大丈夫そうか?」

 

 

 反発の素振りはない。おとなしく抱かれたままだ。

 

 

 「よし。・・・・じゃあ、行くか。」

 

 

 遠くからでもわかるような、戦争の煙が立ち込める戦地へと。

 

 

 

 

 

 

 

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 ここは都市の中央東寄り、巨体通しの戦闘は、その体格に付随するように規模も増していった。オーガの体中に、いくら弾丸を打ち込んでも倒れやしない。向こうとしても、幾度となく物理的ダメージを与えたシュガードが未だ倒れぬ姿を見て良い気分ではないだろう。

 

 

 

 「・・・ハァ・・・ハァ・・・あなた、随分と元の元気がなくなったじゃない。寝たいときは寝ていいのよ。」

 

 

 「オオォォ・・・・フー・・フー・・・」

 

 

 

 お互いに血だらけであり、デストの体に至っては赤色の皮膚でも隠し切れぬほどの量の血が流れ出ている。言葉がわからない弊害もあって、正確な体力残量が予測できない。

 

 

 痛がっているなど当たり前だ。こちらも骨は何本かイっている。一対一に集中せざるを得なくなり、目の前の、助けることができたはずの市民さえもこぼしてしまう自分に腹が立ち、それによる精神的疲労も積もっていた。

 

 

 

 「シュガードさ、、ん・・・!たす、、け、」

 

 

 

 

 

 

 距離の離れた位置に、数十人ばかしが待機している。万が一こちらが勝てたとしても、討てる機会は逃さない。徹底的に勝ちに来ていた。

 

 

 

 「始めから・・・・負けていたのかしらね。」

 

 

 

 思い返せば、冒険者らの動きが鈍すぎた。人数を集めようにも皆散り散りで、圧倒的に足りないこの規模でさえも苦労を強いられた。最近にして遠方の依頼が増え、軒並み中~高難易度のため、最低でもC級冒険者に出張ってもらわなければならなかった。依頼詐欺の件で動きも制限され、騎士団長さえも動かす始末。

 

 

 敵側の工作員が短くない時間をかけて、じっくりと弱らせたのだ。平和であるはずの都市を。昨日に気づいた時点で、すでに負けていたのだ。

 

 

 

 「せめてもの償いよ。ギルド長である私が、この身命を賭す・・・!!」

 

 

 

 銃を構えてデストの心臓に狙いを定める。自分を引き換えにして、多くの道連れを作ることこそ最後の使命であるから。

 

 

 

 

 

 「ーーーー申し訳ない、待たせてしまったね。・・・シュガード。」

 

 

 

 

 ・・・いつもそうだった。いつも英雄は遅れてやってくる。戦える身であるため、あなたのせいでと文句も言えない。己の弱さを差し置いて、彼に責任があると思ってしまった自分が憎い。守る立場が守られるという屈辱が、光に見えてたまらない。

 

 

 「オ・・・?フー!!・・・オオオオオオォォォォォ!!!!」

 

 

 男を捉えたオーガ、デストが猪突猛進する。獣丸出しの行動でも、勝てる力があるから恐ろしい。

 

 

 齢は少なくとも30は超えているが、感じさせないほどの美を保ち続ける、赤の混じった黒髪の男性。そんな男が騎士剣を抜く。天へと掲げるそれは徐々に光り輝き、神の祝福を目視したかのようであった。獣に染まったデストはなおも直進し、全力でかまそうとする。光る刀身は、嫌に照らされた世界を浄化する、小さな太陽のよう。

 

 

 

 「栄光を掴ませし刀剣よ・・・。我、行く道の灯となりて皆を誘うことを誓わん・・・!!」

 

 

 光が濃縮される。もはや剣を直視することが恐れ多く感じてしまう。

 

 

 

 「栄華の行進(シャイン・ブレイマーチ)・・・・!!!」

 

 

 

 

 ザン!!!

 

 

 

 「オォ・・・!?グゥ・・ォォ・・・」

 

 

 一撃により地に伏した。傷口が光り輝いており、まるで血に慣れていない市民への気遣いも無意識に行ってしまう。次元が違っていた。

 

 

 「き、、来てくれた・・・!エトカルディスの騎士団長にして、"英傑"の一人。"フューザック・レイペンド"様が!!!」

 

 

 

 「さあみんな!!苦しいかもしれないが、今一度!勇気を振り絞って欲しい!!」

 

 

 

 騒ぎ慌てていた民衆が、洗脳されたかのように押し黙る。否定ではない。全力の肯定だ。だからこそ、彼の言葉を一言一句逃さず聞き取りたい。

 

 

 

 「悪によって荒らされてしまったこの都市、エトカルディスを!!我らの手に取り戻すために!!!」

 

 

 

 地が揺れるほどの声が上がった。優勢なはずの敵側が(ひる)み、(おび)える。ここ数年で最大の、反撃の狼煙が上がっていた。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 都市全体が震えていた。歓喜の震えだ。だが、そんなもの聞こえやしない。それ以上に聞きたい声が。いや、聞きたくない声が聞こえていたから。

 

 

 

 「うぅ・・・・ひぐっ・・・!・・・」

 

 

 

 子どもの泣く声。顔の向く先にも子供がいて、ぴくりとも動かない。血が出ていることから、手にかけられたのだろう。側に一人の女性もいて、泣いている子どもを手でなだめようとするが、自らが涙を流していた。

 

 

 

 「・・・・ぁ・・・。」

 

 

 

 遠くから見える敵兵の姿。それを視認した子どもは、泣き顔をぎゅっと我慢して立ち上がり、向かおうとした。その顔はひどく怒りに満ちている。止めるべき立場の女性は声が出ず、行かせてしまう。

 

 

 もう、いやだ。大切な存在が、次々と目の前から零れ落ちていく様を見届けるのは。誰でもいいから、助けて欲しい。

 

 

 

 

 

 ドン・・・!

 

 

 

 一直線に進む子どもの体に、誰かがぶつかる。涙で前の見えていないその子は、彼の姿を見ると、さらに涙を流してしまった。

 

 

 

 「・・・どこ行くんだ。タロ。」

 

 

 

 金髪で、右ほほにやけど痕が残っている青年が、立ちふさがっていた。

 

 

 

 「・・・っ!!・・・どけよ!!もう、お前らになんか頼らないんだ!!!約束したのに・・・!守ってくれるって約束したのに!!誰も守ってくれやしないじゃないか!!!」

 

 

 

 意地でもどく気はない。

 

 

 

 「だからおれが!あいつらの大事なものを返してもらうんだ!!あいつらの・・・!・・・大事な、、ものだったんだ・・・。・・・!」

 

 

 

 声の力が弱っていく。同時に体の力が弱っていき、後ろに倒れようとする少年の体を、倒れないように抱き寄せた。

 

 

 

 「カイも、あいも。他にも何人も。死んじゃったんだよ・・・。」

 

 

 

 俺の服で涙をふくも、勢いは増すばかり。

 

 

 

 「おれが、、、。おれが本当に医者だったら。助けること、できたのかなぁ。」

 

 

 

 タロの夢は医者だ。おそらく、これからもずっと。

 

 

 

 「俺が最強の医者だったら!!今もみんな、笑ってたのかなぁ・・・・!!」

 

 

 

 顔に、涙が一筋垂れた。

 

 

 

 「おれたちのだいすきなみんなが・・・!!ずっと、笑ってたのかなあ・・・!!!」

 

 

 

 情けない顔は見せられない。

 

 

 

 「・・・ごめんで済むわけないし、俺ができることなんてたかが知れてるけど。」

 

 

 

 しゃがんで目線を合わせる。精一杯の笑顔で、できる限り不安を紛らわせたい。疲れが顔に出ていないだろうか。

 

 

 

 「最強の約束をしよう!破ったら、俺が何でもしてやる!!」

 

 

 「さいきょうの、、やくそく?」

 

 

 

 「あぁ、そうだ。最強だ!!」

 

 

 小指を立てる。この世界でこの作法を知っているかはわからないが、返してくれなくてもいい。

 

 

 

 「カイとあいが、みんなが笑わせるはずだった人たちを、俺が全力を持って笑わせる・・・!!誰もが思いきり笑えるような、そんな方法を俺が絶対に編み出してやる!!だから・・・」

 

 

 

 励ましになるかはわからない。また、俺の自己満足かもしれない。

 

 

 

 「タロもいつか、タロの好きなみんなを、全員笑わせてやろう!!医者でもなんでもいい。やりたいことやって、どんなやつでも笑わせて、嫌な連中を見返してやろうぜ!!・・・・・どうだ?」

 

 

 

 ゆっくりとタロの小指が、弱く、強く、握り返した。

 

 

 

 「うん・・・!約束する!!最強の約束!!!」

 

 

 

 笑顔が戻った。すごく強い子だ。

 

 

 「そういえば、大事なものってどんなやつだ?」

 

 

 「すごくきれいな首飾りで、あいがつけてたやつ!・・・・え。」

 

 

 

 その場から離れようとする俺に、不安そうな声を出す。寂しいからではなく、心配しているのだろう。本当に優しくて強い子だ。

 

 

 

 「大丈夫。約束だ・・・!!」

 

 

 

 後ろにいるであろうタロに向けて、腕を横に伸ばし、小指を見せて歩いていく。大丈夫。死ぬつもりなど毛頭ない。

 

 

 

 反撃は始まっていた。啖呵を吐いたが、行く当てもない。ならばまずは、あそこへ行こう。

 

 

 

 

 この世界を気持ち悪く照らす、太陽へ。

 

 

 

 

 

 

 






サブ連載 < 魔人っ子の平和(?)な散歩道 >

二十四話 「魔人っ子の変(?)なペットちゃん」


 キュー・・・。


 「貴様も避難できたようだな。」

 姐さんの服の下から、〇リュウズがこそこそと出てきた。いつの間に。


 キュー!!
 キュ~

 きゅぅぅぅ・・・。
 キュッ!


 「?その子の声が、そこかしこから・・・。」


 「なるほどな。」

 一回り小さいドリュウ〇や、逆に一回り大きいドリュ〇ズが土の壁からどんどん出てきた。


 「ここらでは見かけないわけだ。目の届かぬ地中に、最高の餌場があるのだからな。」


 数十年経っても、なぜか白骨化しない不思議な場所。ド〇ュウズの種族にとっての楽園。今もむしゃむしゃと食べている。


 キュー!!


 ドリ〇ウズも一緒になって食べ始めた。


 「う”・・・!」

 シララちゃんには、耐性がない。


 「エトシアさん・・・!!なんで、なんでこんな可愛らしい見た目をした生物が・・・!こんな変な生態を・・・!!」


 「そのカテゴリーに限った話で言えば、そう珍しくもないが・・・。フクイバシは本来、地中に巣を作るような生物ではない。腐を食すその生態でさえ、発見されたのは最近のことでな。」


 爆発によって今はもうない、骨の方を見ている。


 「奴には奴なりの、本人にしか知らぬ"何か"があったのやもしれんな。」


 死体をいじくる悪人だからこそ思う何かが。研究するに至った何かが。


 「さて。メイラには何と言ったものか・・・。」


 周りの気も知らず、幸せそうに食事をする〇リュウズの姿がそこにあった。


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