メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>   作:桜の宿

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二章十八話 「この程度の危険性」

 

 

 太陽が近くに見えてきた。見れば見るほど気持ち悪いそれは、ぐつぐつと何かが溢れ出し、湯気を立てて地面を抉っていた。

 

 

 「うわ。あっぶね。大丈夫か!?ミウ!」

 

 

 元気よく跳ねて移動するスライムは、呼びかけに答えるようにアメルの前へ出て、大きめに跳躍した。まだ余裕がありそうだ。

 

 

 

 ここまで来たはいいものの、どうやって消そうか。あんなものを消すほど高威力な技を持ってはいない。

 

 

 ふと前を見ると、ある集団がいた。数十人全員が頭に一本、角を生やしており、太陽になにかを送り込んでいる。あれを止めれば縮んだりしないだろうか。

 

 

 

 

 

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 始めの作戦としては、都市への侵略と同時にこれを投下して中央を焼き尽くす算段であった。それに背いて、ある程度時間が経ち、うざったい者どもを丸ごと焼き尽くすことで漁夫の利として全部を搔っ攫っていこうとした。

 

 

 だが、目の前の男にすべて邪魔された。

 

 

 

 「サンダーボール!サンダーボール!サンダーショット!!サンダーチョッっ・・・!!・・・・らああああぁぁぁ!!!」

 

 

 

 兵士を雷魔法で攻撃する者が現れた。側のスライムが真似をするように雷魔法を撃つが、その速度は桁違いに速い。魔法の溜めに集中していた兵士は、あっという間に蹂躙される。

 

 

 段々とこちらへ走ってくる少年は、こちらを視認すると驚きの表情を見せる。

 

 

 

 「え・・・?お前・・・。」

 

 

 

 私ではない。目線の先は、邪魔をしてきた男に向けられたものだ。本来はこの集団の頭である私に向く視線さえも奪う男が、ずっと憎々しい。

 

 

 

 「なんでここにいるんだよ・・・!?ヴィクラネオ・・!!」

 

 

 「こっちのセリフだ、アメル。なぜここで、お前の顔を見なければならないんだ。」

 

 

 

 魔人、ヴィクラネオ・リビューテシア。闇魔法の名門"リビューテシア"の性を持ち、その才能にも恵まれた、文字通り稀代の天才だ。化け物と対等に話す男は見るからに弱そうだ。雷魔法といえど初級魔法しか使えない、戦闘の初心者がなぜ真逆の存在と対等に話せるのか。

 

 

 

 「ペット連れて散歩気分か?相変わらずのんきなもんだな。」

 

 

 「散歩できるもんならしてぇよ!!わかって言ってるだろ!?なに、俺と仲良くおしゃべりしたいの!?」

 

 

 同じ位置に立っている私を無視して話し続ける。これほど愚弄されたことはなく、怒りが湧きあがってきた。

 

 

 

 「ってか、ここにいるってことは、奴らの仲間なのか?お前とは戦いたくなかったんだけど。」

 

 

 勝てないことを悟っているのか、若干後ろ気味に構える。やはり雑魚のようだ。逃げることが選択肢にあるというだけで、度量が伺える。

 

 

 「・・・俺も今は、お前と戦いたくはないな。予定外の損害は避けなければならないんだ。」

 

 

 

 ・・・・?なぜだ。なぜこんな雑魚が警戒されて私がないがしろにされるのだ。殺そうとすれば数舜で終わるこんな奴以下・・・?

 

 

 

 「いい加減にしろ!!稚魚一匹風情がぁ!!」

 

 

 チェーンのような闇魔法でアメルを拘束する。力任せに引っ張り上げ、弱い猿の首根っこを掴む。すかさず闇魔法で手を覆い、手刀でいつでも殺せる体勢を整えた。

 

 

 

 「うお!?なんだ!?・・ぐっ・・・ヴィクラネオの仲間か!?」

 

 

 「私は、お前風情がタメを聞いていい相手ではない!!名は"オールスト"!!お前より遥か高い存在だ!!名を知れることを光栄に思え!!!」

 

 

 

 話す必要などない。だが、無視した餓鬼に徹底的に教えておかなくてはいけないのだ。生物上の上下関係を、その身に染み込ませるほどに。

 

 

 ・・・もう殺していいだろう。上位存在に歯向かったことを後悔しながら死なせてやろう。

 

 

 

 「!?」

 

 

 

 横から大きな闇魔法が放たれた。ヴィクラネオの魔法は、食らってしまえばひとたまりもないため、嫌でも避けなければならない。

 

 

 優先順位は自分が先だ。雑魚は後でも捕まえられるため、放り出すしかない。

 

 

 

 「・・・????ヴィクラネオが。。。俺を助けた?・・・え?」

 

 

 突撃しようとしていたスライムの背中に転倒し、呆気にとられる男をスライムが必死に運ぶ。

 

 

 

 「邪魔だ。」

 

 

 

 ずっと頭に疑問符を浮かべていたアメルは、それでも切り替えて太陽の方を見る。すでに兵士は魔法の溜めを止めており、各々の武器で戦いを始めようとしていた。

 

 

 

 「貴様ああぁぁ!!私の邪魔ばかりしやがって・・・!!一体なにが目的で、こんなくだらないことをしている!!!」

 

 

 

 雑魚に気をとられたのは自分の落ち度だ。不意を突かれても文句は言えない。だが、こうして邪魔をする意味がわからない。下賤な者どもをいくら潰そうと突っかかってくるような奴ではなかったはずだ。・・・・・・

 

 

 

 「まさか、あの男に情でも湧いたか?ハッ・・・笑いものだな。奴の守ろうとする都市を守ってあげたい!!・・・なんて気持ちの悪いことを考えているのではないだろうな・・・?同じ種として嘆かわしい・・・!!!」

 

 

 「一緒にするな。角が一本しかない、魔人の成り損ないの"悪魔(インプ)"が。」

 

 

 

 「!!?」

 

 

 

 自分が恵まれているからといって、マウントをとってきた。あの男は、内心ではずっと馬鹿にしていたのだ。私なりに努力はしている。それでも生えない者の気持ちが、奴にわかるのか?わかるわけがない!!恵まれたやつに恵まれない者の気持ちなど、わかるわけがない!!

 

 

 

 「黙れ黙れだまれ黙れ黙れ黙れだまれ黙れ黙れ黙れ黙れえ!!!!!」

 

 

 

 ドドドドドドドドドゴオオオオオオォォォン!!!

 

 

 

 大量の闇魔法を撃ちこんだ。私を討とうとして現れたB級冒険者の雑魚でさえ、粉々になる威力だ。これを放つだけで、ボス面する阿保と、言葉も話せない馬鹿と、、もしかしたら気持ちの悪い犬畜生を除くすべての有象無象は消し飛ばせる。だからこそ漁夫の利は余裕と考えていたのだ。

 

 

 

 「ハァ・・・ハァ・・・。ッ・・・化け物・・!!」

 

 

 微動だにしていない。それどころか目立った外傷はなく、凛とした顔はこちらを向いてはいなかった。

 

 

 

 「やはりお前はその程度だ。」

 

 

 

 敵と認識されているのかも怪しい。意味がわからない。魔人なんて化け物ほどではないにしろ、悪魔(インプ)の中では群を抜いて強いはずだ。

 

 

 

 「・・・ふ、ふふふふふ!あなたには適わないわぁ。だけど・・・。だけど!!今の私はいつもとは違う!!!山一つを焦土と化す魔法が!!太陽がある!!!それをあなたにぶつければぁ!!」

 

 

 

 「・・・答えていなかったな。俺がお前の邪魔をしたのは、元からそのつもりでここに来たからだ。理由までは把握していない。」

 

 

 

 都市にぶつけるはずの特大魔法。それを目の前の男にぶつける。都市の侵略には程遠くなるが、いつでも機会はやってくるはずだ。・・・いや、魔法をうまい具合に操れば、横からヴィクラネオにぶつけ、魔法ごと都市まで吹き飛ばせるかもしれない。そうすれば一石二鳥だ。

 

 

 

 

 「お前は"力"にしか頼れないから、この程度なのだ。アメルの危険性は強さではない。死んでも起き上がる"気味の悪さ"と、勝ちを手繰り寄せる"都合の良さ"だ。」

 

 

 

 「・・・・・・・?・・・!?なぜだ!?なぜ太陽が来ない!!?」

 

 

 

 手筈通りのはずだ。今までもこれで操ることができた。・・・まさか。

 

 

 

 「太陽が・・・ない・・・?」

 

 

 

 確かにそこにあった。雑魚がどう消そうかと、無駄なあがきをしている姿を傍目で見ていたのだ。

 

 

 

 

 ギギギギギギギ・・・!!!

 

 

 

 耳を澄ますと、嫌な音がする。その方向では

 

 

 

 「おぉい。もう少し早めにできんのかねぇ。そんなもんじゃないだろぉ・・・?君の力はよぉ・・・!」

 

 

 「ひぃぃぃ。もっと頑張ります!頑張りますから・・・。もうその音やめてくださいぃ!!」

 

 

 悪魔(インプ)の兵士の一人がガタガタと震えながら、太陽の成分を少しずつ分解している。その成分の行先はスライムであり、そのスライムを引っ搔くことによって不快な音を大音量で奏でていた。

 

 

 「ああぁ!?聞こえねぇよ!!耳栓してるから、何言っても本当に聞こえてないよ!?終わって欲しければ、口じゃなくて手を動かす!!」

 

 

 「ひぃぃぃ・・・!!」

 

 

 大きさは十分の一を下回っており、もはや使い物になどなりはしない。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・。・・・・。どこまでも・・・。どこまでも私をコケにしやがってえええぇぇぇ!!!!」

 

 

 オールストの体が何倍も大きくなる。プライドが高い分、誰かを越すために開発した魔法の種類も多いのだろう。

 

 

 

 「ほっらもうすっこし!もうすっこし!・・・・・ん?げぇ!?なんだありゃ!?」

 

 

 都会のビルほど大きくなっており、大分迫力のある巨人へと仕上がっていた。音が鳴りやみ、へたれこむ兵士を別の兵士が抱き上げて去っていくのを見て、こちらもミウを抱いて逃げる。

 

 

 

 「すべてを!!都市も!ヴィクラネオも!!雑魚も!!!すべてを破壊しつくしてやる!!!」

 

 

 

 闇魔法を纏った巨大な手で、地形を破壊し始めた。制御が効かないようで、それ以降喋ることはなくなり、獣と化してしまっていた。

 

 

 

 オオオオオオォォォ!!!

 

 

 「・・・・滑稽だな。お前が馬鹿にしたものに、ことごとくなっていくではないか。」

 

 

 

 聞こえてはいないが、近くにいたヴィクラネオに気づき、足で踏みつぶそうとしている。直撃すれば、大地震は免れないだろう。

 

 

 

 「・・・・アメル、借りを返すと言ったな。残しておいても面倒だ。今ここで返させてもらおう。」

 

 

 隕石のように威力が高い踏みつけを、すぐ間近に捉える。

 

 

 

 「破滅の希望(ナ・ディーサ)

 

 

 

 衝撃波が、辺り一面を覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







サブ連載 < 魔人っ子の平和(?)な散歩道 >

二十六話 「魔人っ子のバラバラ(?)な言語」


 この数日間、なんの変哲もない手伝いが続いた。緩くなった地面を固めたり、建物の枠組み作ったり。リィウさんに、ご飯作ってもらったり。


 そして。


 「それじゃ。そろそろ行くよ。」


 「あぁ。手伝ってくれて助かったぞ。ありがとうな。」

 「ん。」


 特にまとめる荷物もないし、〇リュウズを呼んでこないと。


 キュー・・・。


 お。もうそこにいた。ほら、行くよ。


 ・・・・。


 ・・・ド〇ュウズ?


 「・・・フクイバシはな。本来、群れで行動する種族だ。」

 群れ・・・。一緒に暮らす存在ってこと。


 「それなら・・・。私が」

 「自分でもわかっているんだろう。こいつがこの場所に惹かれていたこと。そして・・・。」


 わかっていた。街で傷を治したら、幾分マシになると思ってた。


 「絶望的なほど、旅に向いていない種族だということが。」


 歩くことはできる。でも、少し歩けば疲れ切っていた。


 「貴様の目的地は他にある。急ぐほどの目的地が。」


 だからいつも服にいれたり頭に乗せたりしてた。服に入れて連れ歩いただけでも、疲労が溜まっていくのが目に見えてわかった。


 「それと同じように、こいつにも目的地があった。かつての群れがいた場所へ。餌が半永久的に流れ込む楽園へ。」


 ただのモグラじゃないのもわかってた。水で泳ごうとするから。なんならモグラじゃないことも。


 「この場所こそが、こいつの目的地だったのではないか?」


 キュー・・・。


 「違う・・・よね?私・・・私・・・!」


 でも嫌なんだ。右も左もわからない時に、最初に出会ったのが君なんだ。そんな大事な友達を、たとえ家族でも渡したくない。


 キュー・・・。


 「こんな・・・!こんな悲しそうな声出してるのに!辛そうな目してるのに!!・・・。・・・私が、私が守ってあげなきゃ、生きていけないほど弱い・・・・、くせ・・・に。」


 自分で言ってて嫌になる。こんなこと言える自分が嫌になる。


 キュー・・・。


 頬をペロッと舐めてくれた。励ましてくれてるの・・・?


 キュー・・・!


 そっか。ごめんね。もう、弱くないよね。家族に会えたんだから。生き抜いて、楽園に来れたんだから。


 「・・・ここに来れたから、だけではない。こいつが辛い時に、貴様が励ましてくれたから。一番辛い時に一緒にいてくれたからこそ、こいつは強くなれたのだ。」


 キュー・・・!!


 「ドリュ〇ズが貴様の支えであったと同時に、ドリュウ〇も貴様が支えであったのだ。」


 キュー!!!


 私が笑っていた時、君は笑ってくれていたかな。私が悲しい気持ちになったとき、君も一緒だったかな。


 種族が違うからわからない。でも・・・。


 「ありがとう・・・!!」


 言葉が通じなくとも、この気持ちだけは。


 キュー!!!!



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