メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>   作:桜の宿

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二章二十三話 「チームの信条」

 

 

 焼け焦げた犬獣人、モーイが地に倒れた。

 

 

 怯む兎獣人、リッツァを無視して焼き切られたミウのもとまで一直線に走る。底知れぬ脅威にビビりながら大剣を構えるシャドウだったが。

 

 

 

 「シャドウ!戻れ!」

 

 

 背の低いゴブリンに指示され、道を譲り戻った。溜めた電撃は行き場を失い、霧散する。

 

 

 「大丈夫か!?ミウ!!」

 

 

 未だ煙を上げて燃えているスライムは、その形ゆえに意識の有無もわからない。消そうとしても消えない炎は、触れる手を熱く苦しめる。上着を脱いで消そうと試みよう。

 

 

 

 「動くな。」

 

 

 

 その言葉が重くのしかかる。思えば、彼らがなぜこの手を使わなかったのか疑問であった。答えは単純で、使うまでもない敵と判断されたのだ。そして今、使うべきだと。

 

 

 

 「白馬の獣人の命が惜しければ、少しとて動くな。」

 

 

 

 一番に恐れた結末を、忘れてしまっていた。一人でも倒せば同じことができるので、敵側の油断は千載一遇のチャンスだったはずだ。だが、唯一倒せた敵は、広がる草原の中央に置いてきてしまった。せめて燃え盛る火を消したい。それすら許されないのだろう。

 

 

 

 俺は今、命の選択を迫られている。

 

 

 

 火を消せば助かるかもしれないミウの命。大人しくすれば見逃されるかもしれない白馬獣人の命。俺を助けてくれた存在と、一人で悪に立ち向かった勇敢な存在。

 

 

 

 白馬の子が謎の力で持ち上げられる。気絶しているが、苦しむ声を漏らす。4人が徐々に距離を詰めてくる。ミウが未だ燃えている。

 

 

 

 判断しろ!はやくはやくはやく。近づいたところでミウの炎を消化して、一斉に畳みかける。それまで命は持つのか?それまで白馬の子が殺されない可能性はあるのか?ミウが長く耐えると仮定して、人質持ちの4人をどうにかできるものか?そもそも、本当に見逃される可能性はないに等しいのではないか?まとめて殺されたら本末転倒だ。

 

 

 

 

 畜生畜生ちくしょう!!なんで油断したんだよ・・・!一か月前の俺とは違うんじゃなかったのか!?街の人たちに魔法教わって、一発限りでも"上級"を使えるようになったんだろ!?なんでこんなことになってんだ・・・!!

 

 

 

 

 ・・・違う。所詮、一か月か。人は一か月程度じゃあ何も変わりはしない。俺は転生した日から、イチから何も変わってなんて、いなかったんだ。タロにも止められただろ。それを自分勝手に断って死にかけてるんじゃ、世話ねぇな。

 

 

 

 

 ・・・タロに、申し訳ねぇなぁ。

 

 

 

 

 

 「 刀 ・ 豪断 」 「 樹印(ヴームマーク) 」

 

 

 

 「猛猪!!!」 「流星月下・・・!!」

 

 

 

 ドドドドドドドドオオオオオオォォォン!!!

 

 

 

 歩みを進める4人の背後から、高く飛ぶ影が一つあった。そこを中心として手裏剣が大量に降り注ぐ。空中に気をとられた瞬間、低い姿勢で迫る一つの影。剣を小ゴブリンと白馬の子の間に入り込ませ、体を使って助ける対象を吹き飛ばす。その勢いのまま二人と、背後の一人が軽い身のこなしでこちらへ来た。

 

 

 

 「・・・トウガ・・・!・・サリート・・・!」

 

 

 「おいおい、アメル・・・!何をそんなしけた面してんだよ!」

 

 

 「昨日ぶりだが、久しぶりに感じるな。・・・泣きそうな顔をするな。アメル。」

 

 

 

 苦しい戦闘を繰り返してきたのか、傷や汚れが強く現れているが、その姿は昨日と変わらない友の姿であった。

 

 

 

 「顔は元からだ!バカ野郎!!」

 

 

 

 一か月で手に入れたものは、力だけではなかった。トウガという友がいた。だからこそサリートとも巡り合えた。落ち込むことなどないではないか。他人の数年と比べても、十分に誇れる一か月だ。

 

 

 

 「そうだ・・・!ミウ!!今その火消して・・・。」

 

 

 「・・・ん?」

 

 

 あれ。さっき燃えてたよな。すごく平然な雰囲気で隣にいるけど、いつの間にいたの?

 

 

 「・・・誰だ?」 「ミウ!」 「おぉ、そうか。」と簡単に挨拶を交わしている。この世界ではスライムは喋るものなのか?自然と受け入れすぎじゃない?全然かまわないけど。

 

 

 

 「・・・火は?さっき切られた傷は大丈夫なのか!?」

 

 

 「よゆー!」

 

 

 ・・・拍子抜けもいいところだ。一体どれほど心配したことか。だが、そうか。俺が考えるほど俺の仲間は弱くない。俺も含めて。

 

 

 ならば強く出てやろう。仲間と肩そろえて、腕組んで、どんな悪とも対峙してやろう。こんな奴らに負けることなんてないと信じて。

 

 

 

 

 

 「・・・不快だな。数が等しくなったからと言って、お前らと同等に扱われるのは・・・。」

 

 

 深紅の髪をした青年、現シャドウが口を開いた。しまった大剣をその手に掴み、こちらへ切っ先を向ける。

 

 

 「・・・お前、トッカじゃねぇな。・・・・。死体に乗り移って、そいつの力を自在に操る種族か。気持ちが悪ぃ。」

 

 

 トウガは同じく剣を構えて切っ先を向ける。思い出したかのようにサリートが俺用の剣を手渡してくれた。誰のものかは知らないが、戦場ではいくらでも拾えるのだろう。

 

 

 

 

 「もう、あいつらの好きにはさせない。」

 

 

 わかりにくいが、サリートも戦闘態勢を整える。疲労は一番に溜まっているはずだが、うまい具合に隠されている。

 

 

 「好きにしているのはそっちでしょ。さっきから道を塞ぎやがって・・・!私たちはボスに託されたの!!殺してでも通してもらう・・・!!」

 

 

 紫色のゴブリン、リットオッドが不気味な杖を構えて殺意を向ける。暗い表情は一貫して変わらない。

 

 

 

 

 「ずっっっっと聞こえてたけど!!いろんな人に悲鳴あげさせてたの君たちでしょ!?ずっと嫌な気持ちだったんだから!!」

 

 

 ミウの雰囲気が変わる。顔のパーツがなく表現されないが、不快な気持ちや怒りが口上として現れている。

 

 

 「・・・・。・・・・・・・。あのさあ!!たぶん今喋っていいんだと思うし、聞き捨てならないから言わせてもらうけど!!馴れ合いの方が気持ち悪いんだよ!!ああああ!!殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたいぃ!!!」

 

 

 一切口を開かなかった兎の獣人、リッツァが大声でミウを指さし、癇癪が現れたように殴りたい衝動を曝け出した。すると、みるみるうちに両腕が膨張していく。ずっとつけていたメリケンサックが膨れる筋肉に押され、音を立てながら破壊された。

 

 

 

 

 

 「・・・・忠告しておく。名声も小さい小鹿が、いくら吠えようとしても無駄だ。大人しくしていれば苦も無く殺してやるが、どうする?」

 

 

 背の低いゴブリン、クスニクは一際不気味な雰囲気を醸し出す。簡単に人の命を奪えるであろう、最も危険な存在だ。

 

 

 

 

 

 「・・・俺らのチーム名は、"ダークホース"だ。」

 

 

 「「 ! 」」

 

 

 両サイドの二人が反応する。結局ダサい名前しかつけられないパーティだと証明された。敵側は聞いたこともない名称により、見下しが加速したか。いや、そこまで阿保ではないだろう。

 

 

 

 「ただの小鹿なら今の忠告を聞き入れてたかもしれないが・・・。」

 

 

 

 せっかくのかっこいい顔を、心底ムカつく煽り顔に変えて嘲笑ってやろう。

 

 

 

 「生憎と、ここには馬鹿しかいねぇんだ!馬の耳に念仏なのよ・・・!!」

 

 

 

 どうでもいい時は適当に言われた通りにして、本当にやりたいことは貫き通す。たまには馬鹿な顔して、馬の耳になっていよう。なんと自分勝手で都合の良い、チーム信条だ。

 

 

 

 

 「やることは変わらん。行くぞ。」

 

 

 敵側が攻撃を開始した。

 

 

 合図は必要ない。だが、あれば気分が乗る。

 

 

 

 「お前ら・・・行くぞ!!」

 

 

 「「「 おう!!! 」」」

 

 

 

 大将アテンドスの討伐と敵軍の半壊滅により、荒れた都市から戦いは途絶えた。一連の戦争が終わったこの瞬間、誰も知らぬ残党戦が開幕された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






サブ連載 < 魔人っ子の平和(?)な散歩道 >

三十話 「魔人っ子の成年向け(?)なお店」


 街を歩く女性が一人。さっきの男と別れたのか。


 「・・・え!?な、なんですかあなたたち!?何するんですか!!」

 「まぁまぁ。」


 「いや、まぁまぁじゃなくて・・!!さっき道のど真ん中で騒いでた方々ですよね?ちょ引っ張・・・!なんで押すんですか!!どこに」

 「まぁまぁ。」


 「助けてください!!拉致られてます!!」



 手筈通りの店へ。とある階段を下りてちょっと暗めの店へと入店。さっさと向かいに座らせる。


 「なんなんですか一体!!訴えますよ!?」


 「まぁまぁ。奢るから。この店美味いから。」

 慣れた手つきで注文をとった。


 「いや・・・。美味いもなにも・・・。」


 店員の女性が品物を持ってきた。


 「ここキャバクラかなにかじゃないの・・・?」


 主に酒。


 「おいしいから。」

 「味気にしてないからね!?女三人で来る場所じゃないって言ってるんですよ!!そこの女の子に関しては顔ぐるぐる巻きにされてますけど!?体より大きくない!?」


 食べ物も飲み物も口には届きません。


 「んーー。ん。ン”ーー!!(今の時代、お酒飲める場所に未成年がいるとかいう状況厳しいから。一応注意。この作品は未成年飲酒を推進しておりません!!)」


 「そんなことはどうでもいいのよ。この子にはジュース渡しとくから。聞きたいことがあるのよ。」


 店員が困っている。行くべきか行かぬべきか。なぜか、近寄りがたい雰囲気でも纏っているのかな。・・・コップつかめないな。


 「この男について、知っていることを全部教えて。」

 「男・・・?・・・!?」


 机の上に顔写真をスッと出す。


 「ん”ーー!!ン”ーーー!!(この作品はフィクションです!!実在の人物・団体・出来事とは関係ありません!!)」


 ジュースも飲めないこんな世の中じゃ。


 「・・・おっけ。ありがと。多めに払っとくから、好きなだけ飲んでて。」


 「・・・あの人を、どうするつもりですか?」


 「ん”ーーー!!(ジュース飲ませて!!)」

 もう駄目だ。何もできない。


 「・・・メッちゃん。行きましょ。」


 「ん”ーー!?ン”ーーー!!(聞こえてないのかな!?バーカバーカアホアホ!!)」


 「よしよし。後でドッグフードあげるからね。」


 「ン”ーーー!!!(ごめんなさい!!!)」



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