岸辺視点
マキマは支配の悪魔だ。
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昔の岸辺視点
「やあ、岸辺くん。お勤めご苦労だね」
「…用件はなんだ?」
俺は、藤井先輩に隊長室に一人呼ばれた。
公安1課の隊長室だ。
「そんなに嫌そうな顔するなよぉ、優しい隊長だぜえ?楽しい用件かも知れないだろ?」
どうせロクな用事じゃない。食べ物系統の悪魔を材料に料理を作ったので、試食してくれだとか、
悪魔をインテリアとして飾りたいから運ぶの手伝ってくれだとか、
悪魔を捕獲するための網を作ったから実践してみようだとかだ。
「それでな、実は子供を育てて欲しいんだ」
「子供?」
隠し子でもいたのか?出来ちゃったから俺に預かってくれと言うのなら無理な話だな。
"責任は自分でとるべきだ"
「藤井先輩、責任は自分で取るべきです」
「いや違う違う、そう言うことじゃなくて!」
違うのか、まあ冗談半分だったんだがな。
藤井先輩は面倒な先輩だが、不倫をするようなタイプじゃない。
それでも半分なのは、デビルハンターは死と隣り合わせの職業なので、生存本能なのか、不倫の話はザラにある。先輩もその中の一人に入らないとは限らないからだ。
「子供って言っても悪魔!」
「悪魔っすか?」
悪魔を育てるとかそんなこと出来るのか?
「ビビるなビビるな、この悪魔はしっかり管理すれば人間に危害を加えない。しかも、育て方次第では、公安の最高戦力になり得る」
「そいつは話通じるんですか?」
「勿論通じる、と言うかほぼ大人だね」
「何歳なんですか」
「幼稚園児」
マジか、人間でも話が通じない相手だぞ。
「だから頼む!」
「…嫌ですね、そんな責任負いたくないですよ」
「そこをなんとか!」
「"嫌"です」
「クソォ、じゃあ命令だ」
「分かりました」
藤井先輩は会話の節々に、罠を仕掛けてくる。そもそも、俺に頼み込んだ時点で、公安の上層部の決定だから、デビルハンターとしては拒否できない。
拒否したら止めさせられる。
…何てブラックな職場だ。金は沢山貰えるが。
だから、無理です、ではなく嫌です、と答えた。無理ですと言ったなら、止めさせられるか、別の部署に移動させられているところだろう。
と言うか、今回のはほぼ罠にすらなっていない。
悪魔の名前を言わなかった時点で。機密事項なのは目に見えている。
だが、藤井先輩は俺がこんな破綻した罠に気が付かない訳がないと考え、別の罠を仕込んでいた。
…嫌な信頼のされ方だがとにかく、別の罠とは責任の押し付けだ。1課の隊長としてではなく、藤井成行個人としての、私的な口約束にする事で、もしもの時の責任逃れに使おうとしていた。
しかし、そもそも責任は隊長が取るのが普通なのだから、こんな無駄な事をする必要はない。
隊長は俺が口約束を受けた時に、責任は全部お前な!だとか、引っ掛かったね?だとかの
意味の無い煽りで自分だけ気持ち良くなろうとしていたのだろう。
「分かってると思うけど、ここからは他言無用だよ」
「はい」
「悪魔の名前は支配、戸籍名はマキマ、幼稚園児と言うのは半分嘘。年齢は幼稚園児くらいで、公安が隔離施設で将来の為に勉強させてる」
「俺はなにするんですか?」
「ふれあい係」
あの後、「ふれあい係」という物の説明を受け、実際に会いに行った。
どうやら育てると言っても、何か特別教えたりする訳じゃなく、人間と触れ合う練習のようなものらしい。
…しかし、これは失敗作だな。
マキマは既に、性格に難がありすぎる。
数日後
「なぁ良いだろ?一回だけデートしてくれよ」
「無理」
顔についた悪魔の返り血をハンカチで拭い、クァンシは俺の誘いを断った。
クァンシとバディになって何年だろうか、未だに全ての誘いを断られてる。
「そうか、俺はいつでも空いてるぜ。そんじゃあな」
パトロールが終わった。俺の誘いを断った後に、女性をナンパし始めたクァンシを尻目に、今回のパトロールの報告をしに公安に向かう。
その後には、ふれあい係の仕事。
最近の俺の日課だ。
そう言えば、今回の悪魔はここら辺では珍しいな。
悪魔の出現頻度には傾向がある。田舎の方は野菜系の悪魔が、都会には虫や動物系の悪魔が出やすい。今回殺したのはトマトの悪魔、
植物系の悪魔だ。
公安では悪魔の出現傾向から、その地域における恐怖の対象が悪魔となり、誕生するのだと考えられている。
まあ、確証が無いので出現条件はランダムだとされているが。
パトロールの報告書に、普段見ない珍しい悪魔がいたと記入をし、マキマのいる部屋へと向かった。
物々しい鉄の扉を開き、無垢とは程遠い少女の姿をした悪魔が、算数のドリルを解いている。
「よお、マキマ。おしゃべりに来たぞ」
「…岸辺さんいつも来ていただきありがとうございます」
「さんだと固いな、先生と呼んでくれ」
「分かりました、岸辺先生」
「おう、それでだが。つまんねーだろうけど心理テストを受けさせろって命令だ」
ふれあいと言っても、上層部が決めた内容を事前に覚えて、会話すると言うものだ。俺が好きに会話する内容を決めて良い訳じゃないらしい。
それなら何故俺にやらせたのかと言うと、
俺の思想が入らないようにする為と、効率的にマキマを成長させる為、支配の悪魔が暴走した時の為だ。全く人使いが荒い。
心理テストには様々な物がある。絵を見て感想を言ったり、質問を答えたりだとかだ。
幾つか質問をし、最後のテストとなった。今日はこれで終わりだそうだ。
「えーっと、田舎のネズミと都会のネズミどっちが好きか…田舎のネズミってのは、、、」
「田舎のネズミ」
「この童話知ってるのか?」
「はい、私の友達のお母さんに教えて貰いました」
「そうなのか」
マキマの歳からすると、その友達のお母さんもまさか理解しているとは思っていなかっただろうな。
マキマの素性を殆ど遮断されてる俺には、妄想くらいしか出来ることは無い。
この後には何もなく、そのまま家に帰って布団に入った。
「田舎のネズミか…」
そう呟いて俺は眠った。
もし俺なら、迷うことなく都会のネズミだな。
テレビもねえ、ラジオもねえ、車もそれほど走ってねえ。何よりも悪魔が弱い。
悪魔を殺すのが好きな俺からしたら、退屈極まりない。
昔のマキマ視点
私は支配の悪魔だ。"名前"はまだ無い。
名前とは、「支配」と言う生まれ持った名前でなく、誰かから付けられた物だ。
今の私は名前が欲しい。この感覚が他の悪魔と違うものだと言うのは、何となく分かる。
何故なら、悪魔としての直感がそう言っているからだ。
悪魔には直感がある。
コウモリが教わりもしないのに飛翔出来るように、ヒルが教わりもしないのに血を吸うように、悪魔は生まれた時から人間を憎み、殺したがるように設計されているのである。
私が思うに、コウモリもヒルもただ「命令」に従っているだけなのだ。
現世の生物や地獄の悪魔はすべてが何かしらの命令を受けているのだと思う。
私が地獄に誕生した時、1つの命令が来た。
「お前の母を殺し尽くせ」
母とは人類の事だろう。悪魔は人間の恐怖によって誕生する。
しかし、私は素直に命令に従わなかった。
理由は単純、弱いからだ。
支配の悪魔が誕生したばかりの時は、人間の赤ん坊と同じ様な姿で生まれ、泣き続ける事しか出来ない。
人間を殺すどころか、飢えた野良犬程度に喰い殺され、また地獄に戻るだろう。
地獄にいる悪魔は弱い悪魔をイジメ、殺す。
私が仮に大人になれる時が来るのなら、きっと人間の住む現世でだろう。
そして、もしかしたら今回がその時なのかもしれない。
私は運良く孤児院に拾われた。
ネタを入れすぎたらごちゃごちゃした。