チェンソーマン マキマルート   作:マイマイマン

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マキマの過去の話。

昔のマキマ視点

 

 

私は孤児院に拾われた。ここには私以外に男子が2人、女子が2人いた。

 

男子の二人はタロウとジロウ、女子はハナコとトモコ。

 

ここは、トモコの母親がボランティアで行っているらしい。なので、孤児院と言うのは名ばかりだと言っていた。実際は養子のような物だとも。

 

私が見た限りでは、そこまで裕福そうには見えない。であるなら、私に何を要求するのだろうか?それとも、吟味した挙げ句殺すのだろうか。

 

 

両親の苗字は藤井と言い、夫の名前は成行、妻の名前は明美だそうだ。

夫はデビルハンターと言う職業で、悪魔を殺す仕事だ。

 

…私が支配の悪魔であるとバレたら殺されるかもしれないので黙っておこう。

 

私は"まだ"弱い。自分が支配の悪魔であると知られるのは、せめて数匹の悪魔や生物を使役した時だ。

 

私は動物や悪魔、悪魔と人間のハーフ(魔人)を使役し戦わせたり、使役した悪魔の能力を自分の物として扱うことが出来る。

 

そう、なので誰も使役していないと、攻撃手段がない。何とも厄介な能力だ。

だからこそ、見つかってはいけない。

 

そんな事を考えていると、明美さんと成行さんが私の方を見て何やら考え事をしている。

とても真剣な顔だ。

もしかしたら、悪魔であることがバレてしまったのかもしれない。

 

…またリスタートかあ。

 

思わずそんな妄言を吐いてしまいそうになる。

実際には転生前の記憶なんてないはずなのに、きっと今までも何度も失敗してきたのだろうと考えてしまう。

 

しかし、そう考えるのも当然だろう。何故なら今の私は弱いから。生き残る事を信じることしか出来ないから。

 

唯一私が覚えているのはチェンソーマンと言うヒーロー。

存在してはいけない世界から、私はずっと眺めていた。この記憶だけは、永遠に忘れる事はないだろう。しかし、それ以外の記憶は忘れてしまう。

 

 

 

私が半ば諦めて二人の顔を見続けていると、ニンマリとした顔に変わった。何が起きたのだろう。

 

「あなたの名前は"マキマ"よ。これからよろしくね!」

 

「ま、まき…ま」

 

「そうよ、あなたはマキマ。私はあけみ、この毛むくじゃらのおじさんが、なりゆき」

 

「マキマ、あけみ、なりゆき」

 

口が上手く扱えない。私の体は人体に限り無く近いので、実際の赤ん坊程度の動きしか出来ない。

 

すぐにこの肉体に慣れないと。

 

 

 

 

数年後

 

昔のトモコ視点

 

 

わたしはマキマちゃんがきらい!だってマキマちゃんは、皆や、お母さんからちやほやされてる。

 

お母さんは、いつもわたしに、マキマちゃんみたいにしなさい、と言う。

 

この前も、お皿洗いを完璧にこなしたり、英語のお勉強を進んでやってアルファベットを全部覚えたりしてた時にそう言われた。

 

 

 

 

昔のマキマ視点

 

 

トモコちゃんは良いなぁ、お母さんにあんなに愛されてる。あそこまで構ってあげてるのは、やっぱり血縁関係だからかな?

 

それに比べて、私は愛されてるのかな。

お母さんは私をいっぱい褒めてくれるけど、トモコちゃんみたいに叱って貰ったことはない。

 

何よりも私は嘘つきだ。ずっと自分が悪魔である事を黙っている。お母さんはボランティアで私を育ててくれてるのに、私は自分の利益の為に嘘をついている。

 

悪魔の本能なのか、等価交換をしないといけないと考える私からしたら、とても罪悪感のようなものを感じてしまっている。

だから、お母さんへの手伝いをしたりしているが、何故か満足が出来ない。

 

まるで自分が悪魔なのに悪魔じゃないみたいな。

 

お母さんが与えてくれている愛とは、どういう分類の物なのだろう。

 

何を返せば良いのだろう。

何も思い付かない。まるで、何も見返りを求めていないかのような。

 

 

 

    『お前の母を殺し尽くせ』

 

 

…殺さなきゃ?

 

 

 

 

「マキマちゃん、タロウとジロウはどこに行ったの?」

 

ハナコちゃんが私に問いかける。ハナコちゃんは、私よりも4つ程年上だ。もう一人でお留守番できる歳だ。

 

 

「さあ、どこに行ったんだろうね。冒険でもしてるのかも?」

 

「そんな所だろうね、早く帰ってこないとまたお母さんに叱られるぞ」

 

「全員揃わないとご飯食べられないからね」

 

二人で洗濯物をたたみながら話す。

穏やかな日常、当たり前の毎日。

何の変化も無い、いつもの1日。

 

「うわああああぁぁ!!」

 

そんな平穏は、彼の泣き声と共に失われていく。

この声はジロウだろう。バタバタと走り、私達の方へと向かってきている。

 

何があったのだろうか?

バタンと扉を強く開き、泣き崩れながら私達に助けを求めた。

 

「うぐっ、タロウが悪魔に殺されたかも知れねぇ…」

 

「う、嘘…タロウが?!お父さんは仕事だし、お母さんはトモコちゃんと買い物。私達しかいない…!」

 

ハナコちゃんが決意を胸に秘めた様な表情をしている。これは行くのだろう、私も賛成だ。

タロウくんを助けないとね、まだ生きてるかもしれない。

 

三人はアイコンタクトをして、タロウを助けに行った。

 

「そう言えば、ジロウは何で逃げてこれたんだ。やっぱりタロウが戦ってくれてるのか?」

 

「………」

 

「タロウ?どうした、おーい」

 

「………」

 

タロウくんどうしたんだろう。いつもは元気で、泣いててもしっかりと発言できる子だった筈だ。実際に、さっきも泣きながらも私達にタロウくんの救出を説明できていた。

 

無視するタロウくんに不信感を抱きながらも、私達はどんどん先に目指す。

 

「タロウくん、どこに向かってるの?」

 

「…神社」

 

とても端的で分かりやすく、タロウくんらしくない。やっぱりおかしい、まるで誰かに操られている人形のようだ。

 

タロウくんに連れられ、私達は神社に到着した。

 

石の階段を上った先には、黒い鳥居が見える。日の落ち始めた時間帯なので、空間が鳥居の赤を吸いとったかの様に光っている。

 

中に入ると美しいのであろう蝶々が沢山舞っている。きっと、青色や黄色、もしかしたら桃色の蝶々もいたのかもしれない。

しかし、夕日の前では皆無力。

 

あらゆる個性的な色を持つ蝶々達は、

全て黒で支配されている。

それは、目の前の蝶々の姿をした悪魔も同じことだった。

 

「どーもどーも、お人様!お騒がせしてすんません」

 

エセ関西弁の胡散臭い悪魔がそこにはいた。

 

「あなたがタロウを襲った悪魔ね?!死んじゃえぇ!!」

 

「ああ、ちょっとまったまった!」

 

フワリと悪魔はハナコちゃんの物干し竿を避ける。

 

「ボクは争うつもりは無いんだよ!ほらあそこ、タロウくん?も無事だろう」

 

「タロウ!」

 

ジロウが目を大きく開けて表情豊かに笑いながらタロウの元へと駆け寄った。

 

さっきまでの人形のような動きはなくなり、とても人間的な動きをしている。

あれはどこからどうみても、いつものわんぱくなジロウだ。

 

「それで、何の為にこんなことを?」

 

私は蝶々の姿をした悪魔に問いかける。

具体的な内容は分からないが、恐らく契約関係だろう。

 

「君だよ、支配の悪魔」

 

「え?」

 

「お前の母を殺し尽くせ」

 

「…はい」

 

 

 

 

私は孤児院(自称)に戻った

 

「「「いただきます」」」

 

夕御飯だ、ご飯にしょうが焼きに味噌汁。

 

「お父さんまだぁ?」

 

「お父さんは今日遅れてくるって言ってたでしょう、あーほら口汚れてるわよ」

 

お母さんは、しょうが焼きのタレで汚れたトモコちゃんの口をハンカチで拭う。

とても幸せな空間だ。一人の邪魔物さえいなければ。

 

三人で食卓を囲む。

穏やかな日常、当たり前の毎日。

何の変化も無い、いつもの1日。

 

「あはは、それでお母さん、私とトモコちゃんどっちの方が好き?」

 

私は支配の力でタロウくん、ジロウくん、ハナコちゃんの記憶を二人から無くした。

彼らもまた、トモコちゃんと同じく邪魔物だから。彼らがいなければ、お母さんの一番は私となる。

ですが、私の質問に対して、お母さんはトモコちゃんと答えるでしょう。

 

何故なら、言葉を濁すことが出来ないからです。もっと早くにこれをやれば良かったのですが、条件が整っていませんでした。

 

条件とは、洗脳の悪魔です。彼はとても良い駒になってくれました。私の支配の力と彼の洗脳の力。

私の支配の力の方が、洗脳も服従させることも自由なので、格上だと判断しました。

そして彼が私を守るための盾となってくれるのです。

 

 

お母さんは私が支配しているから嘘はつけない。

お母さんはトモコちゃんと血が通っているから一番好きな筈。

ではなぜ真っ先に殺さなかったのか?

 

それは多分、私の悪魔としてではなく、人間としての考え。私が一番だったら良いなと言う淡い期待。私の今後を大きく変えるかもしれない、無駄な期待。

 

 

「どっちも」

 

私は思わず目を見開いた。これは洗脳をしたわけではない、本心の筈だ。では、心の底からどちらも好きなのだろうか?

それとも

 

「…では、私を拾ったのは何故ですか?」

 

「泣いていたからよ」

 

それでは答えになっていない。一目惚れで、私を育てたいと思ったから育てたなら良い。

または、育てた後に目一杯こき使うと言う手もあるはず。

それならお母さんの価値基準においては、等価交換が成り立っていると言うので理解できる。

 

まさか、見返りを求めない?

そんなことがあり得るのだろうか。

 

無償の愛、本に書かれていた物。架空の概念にしか思えなかった。人間は本当にそんな物を持っているのだろうか。

 

「あなたは私に何をして欲しいですか?」

 

「んー、美味しいご飯をいっぱい食べたり、友達といっぱい笑いあったり、マキマちゃんには幸せになって欲しいかな。

あーそれと、いつか私が離れてしまっても、私の代わりにあなたを愛してくれる人を見つけて欲しい」

 

 

『お前の母を殺し尽くせ』

 

何故悪魔が人を憎むのか?それは多分、恐怖されながら生まれてきたから。

恐怖されながら生まれた存在は、恐れられる事しか出来ない。

 

だから恐怖された形になり、人間の根源的な恐怖である、死を与えることで恐怖させる。

 

では何故人間は無償の愛を持つことが出来るのか?それはきっと、愛されながら育ったから。

 

悪魔は愛されなかったから、利益のみで判断する。先程の私のように、等価交換を望む。

しかし、人間は愛されながら生まれたから、自分に不利益でも、知らない赤ん坊を助けるのだ。

 

トモコちゃんを殺す必要は無くなりました。

他の皆には申し訳ない事をしましたが、洗脳の悪魔は強力です。私がいなければ、村の住人は殆ど彼の駒となっていた事を考えると、私はむしろ救ったと言えるのかもしれません。

 

「分かりました。お母さんの望み通りになるよう頑張ります」

 

「ふふ、そう言ってくれると嬉しいわ」

 

「それじゃあお母さん、トモコちゃん。死んでください」

 

そう言った瞬間に、私の視界は真っ黒になりました。どうやら成功したみたいですね。

 

 

 

 

目が覚めると、見知らぬ真っ白な天井があった。

 

 

 

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