獅子と天使のコンチェルト   作:レオ2

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にょちお2号頭に乗られる獅子

お嬢様のボディーガードと言えば,びっしりとスーツを決めてサングラスをしている男と言うのが俺のイメージではある。

確かにスーツをかっちりと決めている男はそれだけで清潔感とプレッシャーを与えるし,なによりも強そうに見える。

 

「獅子さん!お待たせしました!」

 

名門高校,有栖川学院の門沿いの壁に背を預けていた俺に桜田と,春日春奈に白鳥胡桃に竹下みいこが近づいてきた。

それぞれ既に学校を出る準備を完了させていて,この後の場所に直接向かう事が分かる。…まあ桜田の予定表を見たから既に分かっている事だが。

 

「別に,今来たところだ」

 

ぶっきらぼうに言った自覚はあるが,それに眉を顰めたのは春日だけで他の3人は平常運転らしかった。

ふと白鳥の方を見ると首をこてんと傾けて不思議そうにこちらを見ていた

 

「…なんだ?」

「なんか獅子君がここにいるのが新鮮だなあって」

「新鮮もなにも,俺は今日初めてここに来たんだが?」

 

連星の思惑にまんまとハマった俺は,不本意ながら桜田のガードマンとして過ごす事になってしまった。提示された給料はニルヴァーナよりも良いし,居候と言った形で桜田家に身を置くことが出来ているのは良いのか悪いのかと聞かれれば…良いになるのだろう。

このままでは路上でずっと話す事になると思ったのか,春日が全員に聞こえるように声をかけた

 

「さ,おしゃべりをしていては他のユニットの方々に迷惑になりますので参りましょう」

「「おーっ!」」

 

威勢のいい返事をした低身長組の白鳥と竹下はずんずんと先に歩いて行った。

 

「美夢さんも参りましょう。」

 

春日は俺の隣に桜田を歩かせたくないのか,自分が桜田の横を歩くことでそれを妨害しているように見える。

まあ,俺としては桜田をガードするのならどんな形でも良いと思っているので気にも留めず4人の後ろからついて行く。

近くの宝亀商店街,という場所に向かっている中で暇なので残りの3人について振り返ってみる事にした。

 

(春日春奈,桜田と同じクラスの生徒でリリリリのDJ担当…か)

 

春日は前思った通り,根っからのお嬢様気質とでもいうのか桜田以上にお嬢様としての矜持を大事にしている気がする。

普段の話し言葉もそうだが,常に自分の家の…そして有栖川学院の名に恥じないような生活をしているのだろう。

けれども典型的な他人を見下すような性格ではなく寧ろ周りを常に思いやり,動くことのできる人間だ。

向こうは俺の事を嫌ってそうだが,俺自身はそこまで嫌っている訳では無い。寧ろ芯が通った生き様は16歳にしては素晴らしいとも言える。

 

「みいこちゃんそれでね…こそこそ」

「ふふーん!胡桃ちゃんいいアイデアなの!」

 

白鳥胡桃,リリリリのコーラス兼ビジュアルジョッキー…略してVJ担当。

彼女の事はまだよく分からないが,桜田と春日と比べればお嬢様と言う感じはない。

寧ろ天真爛漫なイタズラ娘と言った方がしっくりくる。けれども昨日のライブで見せたパフォーマンスや映像を見ると人を驚かす事が好きなのかと思う事がある。

ま,俺もイタズラされねえように気を張らないとな

 

「あ,それなら!」

 

竹下みいこ,個人的にはメンバーの中で彼女が一番ヤバい奴なんじゃないかと思う事がある。

彼女の場合は純粋と言うかなんというか,発言が自分の思った事を素直に言う分どこかサイコパスじみている。

今朝も俺を馬乗りするとかヤバいことを言っていた。けれども,その純粋さが心にロックをかけている人達の心を開かせているのだろうなと思った。

実際,彼女のライブでの盛り上げ方は彼女だったから出来たと言っても過言ではなかった。

 

(個性強すぎだろ,この集団)

 

改めてみるその個性の強さに俺は辟易した。

 


 

宝亀商店街,ライブハウス控室。元々この敷地にあったお店の人が歳で引退した後町おこしのイベントの為に作られた場所らしい。

俺とリリリリの面子はそのライブハウスの控室の一室に来た。

扉を開けると,控室とは思えないほどの広々とした部屋が現れ,中には総勢20人程度の女たちがいた。…あれ?とんでもなくアウェイじゃね?

 

「あ,虎舞じゃん!」

 

誰ですか己は,太陽のようなオレンジ色のヘアの持ち主は驚いたようにこちらを見たけど,初対面の相手にそんな事をされる俺の身にもなって欲しいものだ。

彼女の隣を見ると,見覚えのある紫髪の女性がいた。

他にも知らない面子がいる。というか全員知らない

 

「わあ!獅子君だ!」

「ちょっとりんく,うるさいわよ!」

 

何やら盛り上がってはいるが,これだけ人数がいるのなら端っこで待機もしなくてもいいだろう。

 

「桜田,外にいるから終わったら連絡くれ」

「え…はい」

 

俺が一緒にいてくれないと知って美夢は見るからに落ち込むが,この女子しかいない面子の中1人だけいる俺の身にもなって欲しいものだ。

にしても…

 

(招き猫作戦…ね)

 

ここにいるリリリリも合わせた24人6ユニットが,この商店街…もっと言えば地域を活性化する地域活性化イベントを盛り上げているDJユニットらしい。

俺は知らなかったが,どうやら8年前にあったD4Fes…?という奴があったらしくその時からDJは世界で人気なんだそうだ。

強くなることにしか興味が無かったから全く知らなかった。

部屋を出る前にもう一度面子を見渡してみる,大概が俺を驚いたように見ているが俺には知った事じゃない。

 

(この歳でそんな大きい事をしているのは褒められるべきなんだろうな)

 

彼女たちの行動力の凄さに俺は舌を巻き,部屋を出て行った。

 

 

獅子が出て行ったのを見届けた美夢達は,今月の会議の為に席に着いた。

そんな美夢に招き猫作戦に参加しているユニットの1つ,PeakeyP-keyのメンバーの1人の清水絵空が問いかけた

 

「美夢さん,今のは虎舞獅子さんですよね?」

「うん,そうだよ絵空さん」

「やっぱり…お父さんから聞いた時は驚いたけど虎舞さんが美夢さんのガードになったのは本当だったのね」

 

昨日の連星が開いたパーティーには絵空の父親も参加していた為,どんな情報網で獅子の事を知ったのかは知らないが既に知られているようだ。

絵空の呟きに答えたのは美夢ではなく隣にいた胡桃だった

 

「そうなんだよ!すっごいびっくりだよね!」

「本当に驚いたよ,いきなり来たって言うのもあるけど…美夢のガードをしてるなんて」

 

美夢達の左側の机に座っている女性…Happy around!!の明石真帆が心底思っていたように言った。

美夢も少し困った顔で答える

 

「私も昨日までこんな事になるなんて思っていませんでした。」

 

昨日までの事を思い出しているのか苦笑いだった。

けれども,あの時に必死に頼んで良かった…それだけは絶対に後悔していない。

 

「さ,美夢に質問攻めするのはやめてあげて今月の招き猫作戦について話しましょう」

「は,はい!」

 

燐舞曲の青柳椿が美夢に質問攻めされる所を助け出し,それを皮切りに招き猫作戦の会議が再開した

 

 

猫の祖先は中東の砂漠に住んでいるリピアヤマネコという生き物だったらしい。猫は昔からハンター気質な所があってネズミを狩ろうとするのがそれだけだ。

けれど,自由気ままな様子が人間にウケて今に至っているらしい。見ていて癒されるものには人は近寄って来るため猫は招き猫とも呼ばれるようになった。

そんな意味では,地域活性化を目指すこのイベントの招き猫作戦とは秀逸な名前を付けたものだ。

 

「あと桜田が猫みたいなときあるからな」

 

恐らくそんな事を思って名付けた名前ではないだろうが,まだ昨日耳を噛まれた時の事が思い浮かぶ。

けれど…

 

「おい,何故俺の上に乗る?」

 

頭には生き物特有の温かさを感じ,俺の言った事に対して””にゃあ”という気の抜けた返事が返される。

俺の上には何故か少し太っている猫が乗っていた。

ライブハウスのベンチに座って精神統一をしていた所,いつの間にか頭の上にいた。

 

「…お前は平和に生きられてるんだな」

 

野良猫かと思ったが,その割には毛並みはしっかりと整っているし首輪はないが平然と俺の上に乗っていると言う事は人間慣れも多少はしているだろう。

のほほんと俺の上に乗っていることからも,こいつが平和に生きられているのだと察せられた

 

「この商店街もやっぱり少し被害にあってるみたいだな」

 

ここに来るまでに商店街を通って来たが,やはりMOAによる被害が幾らか見受けられた。かろうじてこのライブハウスは被害は免れたようで何よりだ。

今回の招き猫作戦はMOAのせいで落ち込みが広がっている人達に向けて何か出来る事がないか?

そういう事を話しあう為の会議なんだそうだ。

 

「俺には永遠に無理な話だな」

 

誰かの希望になる事も,誰かを幸せにすることも俺には絶対に出来ない。

俺自身がそれを信じていないから,信じる気もないから。

 

(あとどの位かかるかな)

 

会議の時間を聞きそびれたので終了する時間が分からない。

暇を持て余したのでスマホを取り出し,円谷イマジネーションを開く。

このサイトはいわばウルトラマンの動画を見る事が出来るサブスクだ。

父さん達が死に,嫌々ながら施設にいた時に年下の子供が夢中になって見ていたのをこっそりと見て俺も好きになった。

大学に入った時にスマホを買って,このサブスクの事も知って直ぐに契約した。俺の知らないウルトラマンが沢山いて,寝る前の30分だけ見れると言う自分ルールで見ている。

…今?暇すぎるんだ,しょうがないんだ

 

「にゃあ」

「にゃあ…じゃねえよ。いつまで乗ってんだ己は」

 

頭の猫の事を無視しようとしたが,やはり生暖かい感覚は気になってしまう。

…無心になる修業でもしようか。寧ろ丁度いいかもしれない。そんな事を思った俺はスマホをしまって目を閉じ,姿勢をピンと伸ばす。

猫の事も何も考えず,ただ暗闇の意識に身を任せた

 

…この時の写真が後に滅茶苦茶取られて美夢の部屋に飾られるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

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