同日 夜
あのテロ組織MOAによってページが投下された。
そのページにはショッピングモールの爆破の映像と
それを苦虫を嚙み潰したように見ている男たちがいた。
「被害はどうなっている」
部下のスマホから,比較的若く落ち着いている男性が問いかける
「はい。東京を中心に被害は500を越えました。日曜の昼間の人通りは並大抵ではありませんから」
「そしてパニックになった人達が更に被害を拡大、か」
部下の手元にはタブレットがあり、今回のテロによって起きた被害の数が網羅されていた。
その被害は甚大で、尚且つパニックに陥いった人達の者も含まれているため相当だ。
タブレットを机の上に置き、その場にいた本部の人間達に発破をかけた
「我々の庭に土足で踏み込んできた奴らを許すな。日本警察の威信にかけてブラックアウトを絶対に捕まえるぞ!」
「「はい!!」」
会議室を揺るがすほどの気合が入った返事が響いた。
★
美夢を家に送り届けた獅子はその足を星朋大学に向けていた。
今東京に緊急事態宣言が出されて恐らく疑似的にロックダウンしているはずだ。獅子もそれを道中のテレビで確認したから間違いない。
(あいつらは……俺が止める)
キャンパスに入ると、やはり緊急事態宣言の影響なのか人の姿は見えなかった。
獅子からすればそちらの方が都合がよく、目的の場所まで向かった。少々入り組んだ道を歩き,普段なら絶対に来なさそうな道を通る事数分。
そこは工学部の研究室の1つだった。
獅子は工学部でもないので本来ならこんな所来ないが,今回はここにいる人物に用事があった。
(基本的にあの人はここに……)
そう思いながら獅子はドアを開けようとしたのだが……開けようと引き手に指を駆けた時にピタッと止めた。
何故か背筋が張り詰めた。それはやなことの前兆のようで
「なんか嫌な予感する」
思った瞬間、バックステップして扉から離れるのと同時に、研究室のドアの窓から眩い閃光が鈍い音共に爆発した。ついでにドアも外れた。
一歩下がらなければ自分も吹き飛んでいた。
「あの人またやらかしたのか」
獅子は爆発を見ながら微妙な顔をする。
爆発と言う事で先程のテロと関係あると誰かは思うかもしれないが、実際は全く関係ない。寧ろ日常茶飯事である。
吹き飛んだドアを横目に獅子は挨拶もせずに入る。
「栞、何やってんだ」
獅子が声をかけた先にはボロボロになった白衣を着た眼鏡の女性がいた。
彼女は何やらしゃがんで今の被害を最低限に収めたらしいが、この部屋の被害は全く持って良くない。
あらゆる場所に色々なものが散らかり、悲惨なんて言葉では済まされなかった。
ただ、ある意味日常茶飯事ではあるので獅子はなにもツッコまなかった。
彼女は獅子を視界に収めるとズバッと立ち上がって
「は、虎舞君やっと私のものになる気が」
どこか飢えた獣のような眼で獅子を見てきたが、獅子はしっしと手を振ってそれを否定した。
「ねえよ」
「そしたら何用で? 虎舞君がここに来ること自体が珍しいのに」
実際、獅子がここに来ること自体珍しい。基本的に余り近寄りたくない人種と言うのもあるが、それはさっきのような爆発に巻き込まれたくないと言う理由が大半だ。
それでも、戦場に行く前に準備が必要だった。
「今から訳あって、あれが必要になった」
「あれ、ですね?」
キラーんと眼鏡が光った気がする
「あれだよ」
「なら一つ条件があります」
「俺が出来る範囲なら」
「私とデーt」
「帰るわ」
「待ってください!!」
踵を返そうとしたら袖を凄まじい勢いで抑えられる。
何故かこの人、工学部3年の先輩、山瀬栞先輩は獅子についてこようとする。
その好意が少し狂気じみているというか……個性が強いので余り力を借りたくはないのだが、これから行くところに行く前に,その対策手段が無ければ奴らを潰したとしても恐らく東京は壊滅する。
それにもしかしたら戦闘になるかもしれない。その為に使えるものは使う。
「虎舞さんのお役に立てるならぜひお使いください!」
「いや態度変わり過ぎだろ」
「ここでフラれるくらいならマシかなと」
「懸命だけど俺が悪いことしてる気分になるからやめてくれ」
そんな獅子を放っておき栞は自分の机からごそごそと目当ての物を取り出し獅子に渡した。それは直径7㎝と言ったボール状の何かだ。
「うん、世間に役立つものを作れたらきっと報われると思うよ?」
獅子はそのボール状のものが、何かを知っているので微妙な顔で言った。
栞は大学の中では割かし変人として知られていて、獅子も普通にしている分には出会わなかったかもしれない。
ただ、何かの縁で出会ってしまった。きっとそれはあぶれ者同士波長があったのかもしれない。実際彼女は春の事を知ってはいるが獅子への態度は普通のそれであり,獅子からすれば不本意だけど大学内で気楽に話せる人間だ。
因みに変人の理由が彼女が発明するものにあった。
一言で言えば、「凄いけど役に立たない」。
「あー私の発明がとうとう役に立つときに」
心の底から嬉しそうな声でトリップしているのを見て獅子は苦笑していた
「うん、話を聞いて無いね」
そう言って早々に背を向けた。栞はトリップを止めて、直ぐに去ろうとしてる獅子を見た。いつも見ている背中の筈なのに、今日は一段と大きく感じられたのは栞の勘違いだろうか?
「でもまあ、今回はありがとな。次あったらどっか飯でも行こう」
ただ、今回に関しては獅子なりに感謝しているので、邪険にせずに純粋に誘った。
その獅子からの初めての誘いに、栞は心底嬉しそうな表情を見せた。
「はい!」
その返事を聞いた獅子は頷き、勢いよく外に出て、暗くなり始めている戦場へと向かった。