ボレアス家に来てから3日目の朝が来た。
ベットから体をゆっくりと起こす。うーん、まだちょっと眠いな。
そ、そうだ。エリスは?
昨日のことを思い出しすぐに自分の横を見る。
だが隣にエリスはいなかった。
ま、そうか。ちょっと寂しいけどこれがまぁ普通だよな。
カーテンの隙間から外を覗く。すると真っ白な太陽の光が俺の目に降り注いだ。
くっ、眩しい。反射的に目を細める。
太陽の高さからして時刻は6時頃だろうか。起きた時間は昨日と同じくらい。違うとすればエリスがいないので走る必要がないことだ。
「……寝るか」
時間的にあと1時間は寝れるはずだ。起こした体を再びベットに戻……
バァン!
「起きなさいルーデウス! 走るわよ!」
力強く扉が開かれエリスの声が俺の部屋に響き渡る。俺が絶望したのは言うまでもないだろう。
今日もなんとか3000メートルを走り終えた。体はヘトヘトだ。
エリスは無論まだ走るらしい。頼もしいような怖いような……
俺はもうギブアップなのでさっさと部屋に戻る。部屋に入るなり魔術で水を作り出し喉を潤した。
「ふぅ」
やはり魔術で生み出した水は濁りがなくて旨いな。
別にあの一件の事でボレアス家の水に不信感を抱いている訳では無い。すぐ水が欲しかったからそうしただけだ。
一息つくと気になったことを思い出した。
走っている時にエリスがチラチラと俺を見てくるのだ。
それでニコッて返してやると顔を赤らめて逸らす。途中からそんな余裕は無くなったが。
まぁ正直可愛いからなんでもいいな。
汗で濡れた服を脱いで、普段着に着替える。
ちょうどそのタイミングで部屋の扉かノックされた。
「ルーデウス様、いらっしゃるでしょうか」
「はい、います」
女の声だ。聞いた事あるようなないような……
とりあえず扉を開いた。
獣人だ。メイド服を着たアドルディア。なるほどメイドさんだったか。
「フィリップ様から大広間に来てくれとのことです」
「分かりました。ありがとうございます」
「いえ、では私はこれで失礼します」
頭を下げて獣人メイドさんは去っていった。伝えることを伝えたって感じだ。ちょっと素っ気ないが他人でしかないのでこんなもんだろう。
さて、一体なんの呼び出しだろう。やっぱり昨日のことか?
お前みたいな軟弱者は優秀なエリスの家庭教師に相応しくないとか言われるかもしれん。
そうだったらどうしよう……
土下座でもするか。
それでも許してくれなかった時は……いや、やめだやめだ。
決まってもいないことに怯えるなんてバカバカしい。行ってみればいいだけの話だ。
大広間にはフィリップとギレーヌがいた。
フィリップは椅子に、ギレーヌはいつも通り後ろの方で控えている。フィリップの顔がちょっと険しい。
やめてよちょっと。フィリップタイプの人のそういう顔ってなんか企んでそうで怖いから。ほんとに解雇じゃないよね?
「座ってくれ。ルーデウスくん」
そんなことを考えていると椅子に座るように促された。支持通り向かい側の椅子に座る。
向かいに座るフィリップは両手を顔の前で重ね合わせている。
エヴァに乗れとか言われそうだ。
「…………」
「…………」
え、これどっちから話すの。俺から話振った方がいいの。でも呼んだのはあっちだから違う? それとも身分的にやっぱ俺から?
沈黙の中執事のアルフォンスさんが俺の前に紅茶を置いていく。だが呑める雰囲気では無さそうだ。
俺からかな、
静寂を切り裂くように息を吸い込む。すると
「……すまなかったね」
俺が話す前にフィリップが口を開いた。
あ、あぶねぇ〜。かぶんなくてよかった。気まずくならずにすんだ。
いや、いいよいいよ。フィリップから話す方が俺としても楽だしな。このまま進めようじゃないか。
「すまなかったねとは?」
「昨日のことだよ。君が誘拐されたのはエリスのせいな部分が大きい」
エリスのせい……
まぁ言いたいことは分からんでもない。トーマスはエリスでは実力も警戒心も強いのでエリスと仲の良い俺を狙おうとした。
フィリップはそれをエリスのせいと捉えたのだろう。事実エリスを狙っての俺の誘拐だったからな。
でもそれは違うんじゃないか。
「謝らないでください。エリスは悪くありません」
「いや、だが」
「誘拐されたのは僕の油断です。もう少し警戒するべきでした」
「それはあまりにも……」
「それに寧ろエリスには助けて貰いましたから」
ふふ、フィリップが少し驚いた顔をしているぞ。それにギレーヌも感心した表情だ。ギレーヌからの評価低かったからいい感じだな。
「君ほんとに7歳かい?」
「7歳です」
全く嘘じゃない。身体は7歳だ。そう、あいつと一緒だ。
見た目は子供、頭脳は大人!
その名も名探偵コ〇ン
まぁそこまで賢くないけど……
「とにかく僕は気にしてないので大丈夫です」
「そうかい。そう言ってくれると助かるよ。実は」
バァン!
突然ドアを乱暴に開け放って、元気な爺さんが入ってきた。
なんか朝の出来事とデジャブ。さすが血は争えんな。
「フィリップ! 今すぐルーデウスを呼べ!」
「父上。ルーデウスはそこに」
「ん、おお! ルーデウス」
サウロスは俺を見つけると思いっきり肩を掴んできた。
い、痛いぜ爺さん。力強すぎじゃない?
「すまなかったな!」
「えっと昨日の件ですか?」
「そうだ! それでお前家庭教師を辞めるのか!」
What? 家庭教師を辞める?
いや、辞めないけど。寧ろ辞めさせられるのではとビクビクしたんだけど。
「えっと、辞めません」
素直に俺が答える。
するとサウロはニカッと口を曲げる。おお、ナイススマイル、
「ガハハハハハ。そうかそうか」
笑いながら俺の肩を叩くサウロス。
だから痛いって爺さん!
「さて、エリィィィス」
「はいお爺様!」
びっくりしたぁ。
急に大声でエリスを呼ぶサウロス。エリスはすぐにやってきた。
なんだなんだ。
「ルーデウスは家庭教師を辞めないそうだ!」
「そう! 良かったわ!」
あ、エリスがそう思ったの?!
朝のチラチラ見てきたのってもしかしてこれか!
全くバカだなエリスは。俺がその程度の事でエリスの家庭教師を辞めるはずじゃないか。
そんな不安をもつなんてなんか昔のエリスみたいだな。
「エリス。ルーデウスに礼を言うのだ!」
「は、はい。……ルーデウス、その、ありがとう」
いや、別に感謝されることじゃないんだけどな。
でもいいや。なかなか可愛らしい礼を見せてもらった。
俺の心もほっこ……
「違う!」
え、
「エリス! 礼の仕方を忘れたのか!」
「お、覚えてます」
「ならばそれをやるのだ!」
ま、まさか。
嫌な記憶が蘇る。だ、だめだ。このままだと次元連動システムが、
そんな俺の思いを他所にエリスが長い赤髪を根本から掴んだ。
側頭部で二つ、尻尾を作る。
即席ツインテール。
そしてそのままの格好で、バチコンとウインク。
「あ、ありがとうございますだニャん☆」
う、うわぁー。やっぱりこれだー。
だから駄目って言ったんだ。いや、口に出てないけどさぁ
だってほら見てみろあの怒り狂ったか……お?
あ、あれ? か、可愛い……
なんだ。いいじゃないか! 可愛いじゃないか!
前回は 怒り8、屈辱2、照れ0 だったけど
今回は 怒り2、屈辱1、照れ7 ぐらいだ。
いや。そりゃそうだ。
前回とは違うのだ。エリスとの親密度が。
今の俺は心も身体もエリスとつながった関係。寧ろこれぐらいの変化があって当然だ。
「おぉ、お~、エリスたんは可愛いのう。ルーデウスもそう思うじゃろ」
「いいよエリス! 過去一で可愛いよ。いい腰つきだ」
流石はケモナーボレアス家。獣族への愛の深さは世界一だな。
俺はケモナーじゃないが認めるよ。このエリスは可愛い。
「はい。可愛いら……」
奥の方にいるギレーヌと目が合った。
な、なんだ。あのジト目は。
まるで「おまえもか、ルーデウス」と言いたげな目。
だ、だめだ。折角上がってきたギレーヌからの評価を下げる訳にはいかない!
言うんだ。ここは言うしかない。
「そんな礼の仕方があるか!!!」
そこから俺は心を鬼にして大演説。
最終的には熱意は通じ、このボレアス流の「頼みごと及び礼」は全面的に廃止となった。いや、なってしまった。
結果としてギレーヌからはお褒めの言葉を預かり評価値を上げることに成功。
エリスはちょっと悲しい顔をしていた。
後で慰めておこう。あれは俺と2人きりの時にしてもらうのだ。
この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)
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