一悶着した後
早速授業を始めた。
色々あって始めるのが遅くなってしまったからな。
この場には俺とエリス、そしてギレーヌの3人がいる。だが授業を受けているのはエリスのみでギレーヌはいるだけ。見張りかな?
まぁギレーヌもそのうち誘ってみるとしよう。
今しているのは算術。
ひとまず簡単な足し算と引き算の問題を出してみた。
エリスの実力がどのくらいか確認するためにな。
「できたわ!」
問題を出してから5分。
出した10問全てに答えが記入された。なかなか早いじゃないか。どれどれ、どのくらいあってるかな。
1問目は正解、2問目も正解、3問目も、4問目も、…………
「全問あってるね」
「これくらい出来るわよ」
「いや、流石だよエリス」
出した問題は2桁の足し算と引き算なので正直できると思っていた。
だがここは素直に褒める。エリスは褒めて伸びる子だからな。
「じゃあ次はこれ解いてみて」
新たな問題をエリス渡す。今度は2桁の掛け算と割り算だ。エリスの苦手な7の段を含む問題を多めに作ってみたが、どうだろう?
「で、できたわ」
さっきより自信なさげにエリスが言った。
タイムは約12分か。まぁ悪くは無いな。だが大切なのは正解しているかどうかだ。
1問目正解、2問目正解、3問目正解
おお! 結構あってるじゃないか。この調子ならいけるんじゃないか?
………………あ、7問目不正解、8、9、10問目不正解
10問中6問正解か。でも間違えたのは7問目から、つまり掛け算は全問正解だ。
「掛け算はできてるね」
「ふふん。でしょう」
褒められて上機嫌なエリス。
「じゃあ割り算をできるようになろうか」
「…………そんなのいらないわ」
あからさまに態度が変わった。
いやいらなくないでしょ。便利だよ、割り算。絶対に使えた方がお得だって。
「割り算できた方が楽だと思うよ」
「そんな大きな数字の割り算人生で使わなかったわ」
そんなことあるか?
お金の計算とかで……いや、貨幣は10枚で別の貨幣になるからダメか。
じゃあ他に参考になるものと言ったら……
「アイシャやノルンを含めて家族は何人いた?」
「14人ね!」
速い。即答だな。家族のことに関してはよく覚えているよなエリス。
「エリス。アイシャやノルンとは誰だ」
あ、やべぇ。ギレーヌいるの忘れてた。
エリスはなんて答えるんだ!?
「そのうち分かるわ!」
「……そうか」
よ、良かった。かなり雑な返答だったがギレーヌの性格に助けられた。
いや、エリスだから軽く流したのかもしれない。今の俺だと首元に剣を当てられて「言え」とか言われかねないな。
とりあえず何とかなったので話を戻そう。
「それでだけど、家族みんなのためにパンを42個買ったとしよう。そしたら1人何個貰える?」
「えっと、パンが42個で、14人いるから……やっぱりこんな計算いらないわ!」
なんでだよ!
今いる理由を分かりやすく伝えてるとこだよね? なんでその途中でその結果が出るんだ!
「いや、だからねエリス」
「いらないわ! だってルーデウスや他のみんながやってくれるもの」
「…………」
あぁ〜なるほどね。そういうことね。はいはいはい。理解しましたよこのルーデウス。
エリスさん、あなた前世で計算ほとんど使わなかったでしょ。だってシルフィやロキシーがしますものね。
使う機会がなかった訳ですわ。
「はぁー」
大きくため息をつく。
もういいんじゃないか? エリスの言う通り使わないのなら覚える必要も無いのかもしれない。
…………いや、ダメだ。やっぱり出来た方がいい。
やらないと出来ないは全然違うんだ。
それに子供が出来た時に困る。子供ってのは親が出来ないことは出来なくていいと思うものなのだから。
…………奥の手をつかうとしよう。
ほんとは自分からして欲しかったが仕方ない。
「エリスは勉強やりたくない?」
「やりたくないわ」
「そっかー。じゃあ仕方ない。俺も家庭教師辞めるよ」
「な、なんでよ!」
バンッっと机をたたくエリス。それに反応してギレーヌが剣を浮かせる。怖いのでやめてほしい。
「エリスが勉強しないならそのうち俺は辞めさせられちゃうよ」
「うぅ……」
「それなら自分から辞めた方がマシさ」
「…………わかったわよ」
お!
「やるわよ。やればいいんでしょ! やれば!」
おぉ! やったぞ。
姑息な手だったがやる気を出させることに成功した。
こういう時はすかさず燃料投下だ。
「ありがとうエリス」
そう言いながら頭を撫でる。エリスは頭を撫でられるの好きだからな。
すると予想通りエリスは顔を赤らめた。
「ま、毎日それしてくれるなら、頑張るわ」
「……ふふ、分かったよ」
んふふふふ。幼いエリスがデレてくれるの、気分がいいぜ。
午後の時間は剣術である。
初日ということもあり準備運動をした後は見学となった。
授業レベルはきわめて高い。
そりゃそうだ。どっちも剣王なのだから。
型から始まるのだがそうだな、一言で言うなら美しい。
どちらの剣もブレなく振り下ろされ、空気がスっと切れる。
本当にギコギコはしません。1度刃を入れたらスーッとって感じだ。
こういうの出来たらかっこいいと思うが俺には無理だなぁ。
嫁さんが出来るのでそれで満足するとしよう。
次に打ち合いとなる。
お互い距離をとり、木剣を構えた。
だがどちらも動かない。ピクピクと手足の筋肉が僅かに動くのみ。
傍から見ればよく分からんが恐らくこの間にも数多の攻防があったのだろう。
剣を構えてどのくらいたっただろうか。遂に動きが見えた。
「がぁぁぁぁ!」
先に動いたのはエリス。ギレーヌの方にまっすぐ突っ込む。ギレーヌはぎゅっと剣を握りしめる。
ぶつかる!
そう思った瞬間だった。
────パァン!
エリスが吹っ飛ばされた。先に突っ込んだエリスが、だ。
全く見えなかった。いったい何が起きたのやら。
「……届かなかったわ」
倒れたままのエリスがそう呟く。それを聞いてギレーヌも口を開いた。
「身体能力の差だ。正直技量は変わらん。このまま腕を磨けばすぐに剣王になれる」
ふむふむなるほど。
予測でしかないがギレーヌに斬りかかったエリスはそのまま打ち返されたのだろう。純粋に速かったのだ、ギレーヌが。
「今日はこれで終わりとする。身体を休めとけ」
「「ありがとうございました」」
「それとルーデウス。次からはお前も参加だ」
「は、はい!」
これ見せられて参加とか、普通の子供なら全力拒否だぞ。
足手まといにならないように頑張ろう。
剣術の授業が終わると暇な時間となる。
正直やる事が無い。やる事を探して屋敷内を散策することにした。
あ、ヒルダさん。
廊下でヒルダに出会った。
何がとは言わないが相変わらずデカい。いったい何カップあるんだ、こりゃ? もはや違法建築ですわ。
まぁ彼女のおかげでエリスもデカくなるので感謝だな。
ただ、俺嫌われてるんだよね。
見ろよあの目。まるでゴミを見るような目だ。
全く、俺の性癖が歪んだらどうしてくれるんだっての。
まぁでも分からなくはないよ。
彼女の男児はボレアスの仕来りで養子にされちゃったからな。
当たりさわりのないようにしとこう。
ペコ
お辞儀だけにしておいた。決してどこかの兎の語尾ではない。
「……ふん」
あらら。鼻息ひとつか。
別に構わないさ。実の子がいないのによその子が家にいる。俺だってそんな状況ならそいつの事が鼻につくってもんだ。
ヒルダはそのまま行ってしまった。
さて、とりあえず一通り回るか。
〜〜〜〜〜
「なんもねぇ」
回った結果何も無いということがわかった。
いや、無いわけじゃない。色んな本とか置いてある。だが全部知ってる事ばかりで使えない訳だ。
寧ろ俺の知識の方が本より優れてることすらある。
結局俺は部屋に戻ることにした。
一応明日の準備というやる事はある。それをやるとしよう。
机に座り、紙に問題を書いていく。
「ええっと〜。割り算ができないからそこを中心にして〜。復習とモチベーションアップにエリスが出来る足し算引き算を入れて〜」
20分後
全ての準備が終わった。算術だけでなく読み書きのもだ。
あまりにも早く終わってしまった。大した時間つぶしにもならんとは。
ロキシーに授業している時はもっと忙しかったんだけどなぁ
ロキシー、あぁロキシー、…………ロキシー?
頭の中で何かが引っかかる。こう、重要な何かが。
…………あ、御神体!
そうだそうだ。御神体があるんだった。
ウキウキルンルンで机から立ち上がる。
そしてカバンから箱を取り出した。丁寧に箱のカギを開ける。
現われたのは純白の白いパンツ。
2礼2拍手1礼。
「神よ、感謝します」
神への感謝を忘れてはいけない。
これで準備OK。思いっきり吸い込んだ。
す──、はぁ────。あぁ〜落ち着く。ずっとこのままでいられる。
10分後
俺は吸うのを止めた。別に辛くなったわけじゃない。そんな事は万に1つない。ただ思ったのだ。
ずっと吸うのはありがたみが薄れるのでは、と。
御神体は1日10分。これをマイルールにしよう。
では今から何をするのか。それは御神体タイムの時に思いついた。
というか元々あったのだ、俺の趣味。そう、人形だ。
魔力を増やすのにも、お金を増やすのにももってこいである。
とりあえずロキシーから作ろうかな。俺の代表作だし。
これで剣術以降の時間の潰し方も見つかったぜ。
1ヶ月が経過した。
授業は順調といえなくもない状況だ。
算術と読み書きは1度習っていることもあってか前より飲み込みが早い。本当に前よりってだけだけど。
魔術は正直イマイチである。やはりもう9歳だからだろうか。
それとも俺に教師の才能がないのだろうか。ロキシーならもっと上手に出来るだろうに。
青髪の神の声(ルディは過大評価しすぎです)
まぁ前に教えた魔術は使えるので最悪出来なくても良しとしよう。
あ、あとギレーヌにも授業をしている。俺が剣術を教えて貰っているのに彼女に授業をしないのは不平等だからな。
飲み込みはエリスより良くないがこんなもんだろう。
授業を始めてからはかなり仲良くなった。なんだかんだで認めてくれたみたいだ。
ちなみに俺の剣術は全く成長しない。別にいいさ、悲しくなんかないもんね。
なんにせよエリスが授業を聞いてくれている。だからいい感じであるのは違いない。
そう思っていたのだが……
エリスが授業を聞かなくなった。
理由は分かっている。エリスが直接教えてくれたからな。
「休みがないわ!」
非常に簡潔でわかりやすい。そうだね、休みなかったね。
ということで休みを作った。
もちろんフィリップに話を通し、ギレーヌとエドナと話し合ってな。前と同じ週1での休みである。
休日
この世界に曜日は無いが今日を日曜日としておこう。
エリスは朝からテンションが高い。ランニングのスピードがそれを物語っている。元気なもんだ。
諸々の身支度を終えて入り口へ向かう。既にエリスとギレーヌがいた。
「早く行くわよルーデウス!」
エリスが俺の手を引っ張る。夢の国に行く子供のようだ。そして俺はおてんば娘のお父さん。
「その荷物はなんだ」
ギレーヌが俺に向かってそういった。
俺は今結構デカめのカバンを担いでいる。正確に言うと担いでないけどな。くそ重いので腕に通して浮かせている。
重力魔法はやはり便利だ。
「ちょっと売りたいものがありまして」
このカバンの中には20個もフィギュアが入っている。船やレッドドラゴンなど様々だ。
ロキシー人形はまだ未完成なので持っていない。
「なんでもいいわ! 行きましょう」
あらあら。エリスちゃんは早く行きたくてうずうずしてるのね。
全く、我慢を知らないんだから。いいわ、行きましょうか。
「それではレッツゴー」
「ゴー!」
あら、ギレーヌがよく分からず困惑しちゃった。
「ほら、ギレーヌも。レッツゴー!」
「ゴ、ゴ──?」
ロアの街は大きくわけて3つの区間でできている
住宅街、商業街、冒険者街の3つだ。
中心に行くについて金持ちが増える。必然的に物価も高くなる。
今日は商業街の方に用があるので住宅街はスルーだ。2人もここら辺には飽きているっぽいので問題なかろう。
「よう坊ちゃん嬢ちゃん。ゆっくり見てってくんな」
商業街に入ると活気の良い呼び声が聞こえてきた。賑わってんねえ。
普通の店から露店など数多の店が開いている。
アクセサリーやら、鏡やら色々売っているがお目当てのものじゃないな。
「メモしないの?」
「え、?」
「ほら! 前はメモしてたじゃない」
エリスが俺の事を見ながらそう言ってきた。
よく覚えてんなぁ。
確かに前はメモしていたけど、何年前の話だよそれ。
その記憶力もうちょっと勉強でいかせない?
「今はだいたい物価を把握しているからね」
「ふぅーん」
お、ここ良さそうだな。
そのまま街を進んでいくと1つの店が目に止まった。雑貨屋なのだが人形も売っている。ここにするか。
「なぁおっちゃん。ここって買取もやってるか?」
「あぁやってるぜ。と言っても質が良くないと買わねぇぞ」
「なら問題ねぇ。これを見てくれよ」
そう言いながらカバンからフィギュアを取り出した。
「こ、コイツはなかなかの出来だな……」
ふふん。そうだろう、細部までこだわっているからな。
後ろの方でギレーヌもまじまじとフィギュアを眺めている。
エリスは何故か自慢げな顔だ。
「いくらで買う?」
「そうだなぁ。1つ銀貨3枚だな」
は? 安すぎだろ。1つ銀貨5枚はするはずだ。
「おい安すぎるだろ!」
「いいや、銀貨3枚だね。いやなら他で売りな」
こ、こいつ。こっちがガキだからって吹かしやがって。
舐めてんじゃねぇぞ。こちとら巷で噂のルーデウス様やで。
「そんな態度でいいんですか?」
「あぁ?」
「こちらの女性はあの剣王ギレーヌですよ」
「っな!」
俺はギレーヌの名を使うことにした。ルーデウス君まだ知名度ないからね。
ちなみに当の本人はキョトンとしている。
「だ、だからなんだってんだよ」
「知っているでしょう。ボレアス家が剣王ギレーヌを迎えているのは」
「つ、つまり……」
「そういうことです」
ボレアス家にそんなことしてお前ロアでやってけると思ってんのか? あ? って意味だな。
「わ、悪かった。1つ銀貨6枚でどうだ」
「ではそれで」
完・全・勝・利
相手が悪かったな店主。俺に勝とうなんざ100年早いぜ。
結果として銀貨120枚、つまり金貨12枚の儲けとなった。財布の中はホクホクだ。ちなみに俺の月給は銀貨2枚。……世知辛いぜ。
その後はエリスの買い物に付き合うことにした。まだ俺のやりたい事は終わっていないが後からでいいからな。
「これなんてどうかしら」
「似合ってるよエリス」
麦わら帽子を被ってはしゃぐエリス。非常に良い。
ギレーヌもいるがもはやデートだな。
それからも色んな服屋に寄っていく。俺が褒めた服は全部買ってしまった。
いいよ、いいよ。全部持つさ。魔術でな。
「……力持ちだなルーデウス」
あら、ギレーヌに勘違いされちまった。でも面白いから力持ちってことにしちまおう。
「そうなんですよ。実は結構力持ちなんです」
「ああ、これなら訓練の量を増やしてもいいかもしれない」
ちょ、ちょ、ちょ。ダメだって! 今より多いと死んじゃうって!
「う、嘘です。実は魔術で浮かせてるんです」
「ほう、そうなのか! それはそれで凄いな。そんな魔術聞いた事がない」
「まぁ珍しい魔術ですからね。と、とにかく訓練量は今のままでお願いします」
「ん、ああ。そうだな」
あ、危ねぇ。助かったぜ。やっぱ下手な嘘はつくもんじゃないな。ごめんなさいママン。ママンの教え、正しかったよ。
帰り道
俺の顔に影がかかる。な、なんだ?
そう思い天を見上げた。
城だ。そこには城があった。悠然と空に浮かぶ城。
あったんだ。本当にラ〇ュタはあったんだ!
嘘である。この世界にラ〇ュタは無い。
あれは古の空中城塞ケィオスブレイカーだ。
そしてそこに住まうは厳しいおじたんペルギウスとおじたん大好き12体の使い魔。
本人たちには口が裂けても言えないな。
「甲龍王ペルギウスの空中城塞を見るのは初めてか?」
ずっと眺めているとギレーヌがそう聞いてきた。
「ええ、初めてみました。あれがかの空中城塞なんですね。凄いなぁ」
ごめんなギレーヌ。本当は中に入ったことすらあるよ。
ロアの街に来たのは始めてという設定なので嘘をつかせてもらった。やっぱり嘘も大事だよ。
だからエリス。そんな驚いた顔しないで。バレちゃうから。
だいぶ中心の方に戻ってきた。
物価の高いゾーンだ。そろそろ売ってるかな。
あ、あった。
俺は真のお目当てのものを見つけた。今日はこれを買いに来たんだよ。
「ちょっと買い物してきます。すぐ戻ってくるので待っててください」
「分かったわ!」
エリスとギレーヌを置いて駆け足で店に入った。
「いらっしゃい兄ちゃん」
「それください」
そう言って瓶を指さす。
「金貨10枚だよ」
「はい10枚」
今日稼いだ額のほとんどを使ってそれを買った。
それがなんだって? もう、とっくに何か分かってるくせに。
媚薬だよ。び・や・く。
まぁ別に今は誰に使うわけでもないけどな。こいつを買った理由は1つしかない。
この媚薬、この先めちゃくちゃ高くなるのだ。
なんとその額金貨100枚。
前世でもそれなりに金は持っていたから日常的に使っていたけど、安いうちに手に入るなら買わない手はない。
「お待たせしました。帰りましょう」
2人の元に戻る。媚薬は鞄の中だ。
「何買ったのよ」
「内緒」
「なんでよ!」
別に教えてもいいけど変な勘違いされたら嫌だから隠した。
でもギレーヌは気づいてそうな顔している。もしかしてだけど店の外観から分かっちゃったかな。
「帰りましょう」
「…………わかったわ」
欲しいものが買えた。いい休日だったなぁ〜
これから毎月買おう。
この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)
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イージールート
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ノーマルルート
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ハードルート