ゴリ押しあります。ごめんなさい。
1年が経過した。
エリスの教育は順調だ。本当に順調すぎる。
なんとこの1年で彼女は四則演算をマスターしてしまった。
非常に喜ばしい。
しかし勉強することが無くなった訳では無い。
読み書きの方はもう少しかかりそうだからな。語学はやはり難しいのだ。
ギレーヌは火の初級魔術はできるようになった。
本人も喜んでいて俺も教えたかいがあったなぁと思う。
ただこちらも読み書きと算術の方はまだまだな様子。
ペースとしては前と同じぐらいかな。
…………そりゃそうか。
ギレーヌは覚えていないんだから。
そして俺の方も順調である。
この1年で例のブツを10個も集めた。
つまりは金貨1000枚稼いだ訳だ。
これぞ2周目チートだな! 売る予定は無い。
その副産物として俺の魔力量が前世の1.5倍になった。
一体どこまで行くのやら。自分でも少し不安だ。
さらにもう1つビックニュースがある。
ついにロキシー人形が完成した!
デザインは前作と同じだが今作はさらにひと味違うぞ。
なんと今作は着色までされているのだ。
これが作るのに時間がかかった理由である。
ロキシーの陶磁器のように白い肌。美しく輝く青い髪。
どれも再現に苦労した。
おかげで俺史上最高の力作となったのは間違いない。
果たしてこれを超えるものを作れるのか。
……無理かもしれないな。
だからこそ売るのにはかなり覚悟を必要とした。
こんな素晴らしいものを売る必要があるのか?
いや、俺の手元で大切に保管すべきだ。
何度そう思ったことだろうか。
だがその度にチラつくのだ。
師匠! と俺に笑顔を向けてくるザノバの顔が。
友情と愛情は天秤で測れない。
幾度とない葛藤を乗り越え、泣く泣くロキシー人形を売ることにした。
さらばロキシー人形。また会う日まで。
ちなみに気になるお値段は金貨3枚。
…………もうちょっとしてもいいのでは?
もうすぐ、エリスは10歳の誕生日を迎える。
10歳の誕生日は特別だ。
5歳、10歳、15歳の誕生日は、
大規模なパーティを開催し、盛大に祝うのが貴族の風習。
今回もフィリップの口出しによりダンスパーティーだ。
そこで心配となることがある。
果たしてエリスは踊れるのか、
前回は俺の指導により何とか踊れるようになった。
まぁ前回のことを覚えているなら多分大丈夫だろう。
そう思っていたのだが……
「ルーデウス様。エリス様のことでご相談をしたいのですが」
礼儀作法を教えているエドナからそう頼られた。
こりゃダメか?
いや、決めつけるにはにはまだ早い。
何か他のことかもしれない。
「相談には乗りますよ。僕が解決できる保証はありませんが」
「そうですわね。えっと、その、ルーデウス様。ダンスのご経験は?」
「ありますよ」
なんか嫌な予感がする。ほぼ確だろこれ。
「まぁ! それなら心強いです。実は相談というのは」
「エリスが踊れないって話ですね」
「いえ、エリス様は踊れます」
ほら見た事か。やっぱりダメじゃないか。
最初から予想していた通り。
でもまぁ任せてくれよ。すぐに踊れるようにしてみせるから。
…………え? 踊れるの?
「踊れるんですか? エリス」
「はい。踊れます」
「で、では相談というのは」
「そのですね。エリス様は踊れるのですが、なんというかその、キレが良すぎるのです」
…………はぁ。
別にいい事じゃないか。
ダンスにおいてキレってかなり重要だぞ。
「それの何がダメなんです」
「えっと、口ではお伝えしづらいので実際に見てはくださいませんか?」
「……分かりました」
「ルーデウス! 何しにきた、何しにきましたの」
「エリスと踊りにきたんだよ」
エドナの礼儀作法及びダンスの練習の時間
俺は約束通りエリスのダンスの様子を見に来ていた。
ただ見るよりも実際に踊った方がいいと思い、
一緒に踊ることにしたのだ。
「いいですわね。では踊りましょう!」
「エスコート頼むよ」
「任せなさい」
自信満々に返事した後、
俺の手をガッチリ掴みながらエリスが動き出した。
うん。立ち位置とか足運びとか悪くなーーいーー
う、うぉーー。回る回る。なんじゃこりゃー。
凄い勢いで回転しているぞ。気持ちわりぃ。
キュッ!
ウグッ
回っていたと思ったら急に止まり、
今度は片手だけ掴まれて投げ飛ばされた。
いてぇ。体が鞭打ってるみたいだ。
そしたら今度は引っ張られてエリスの方に引き寄せられる。
そしてそのまま回転に、
「ストーップ!」
大声で停止を呼びかけた。
回転するモーションのまま止まるエリスと俺。
な、なんとか助かった。
形はダンスそのものだったが内容は暴力的だ。
キレが良すぎるってこういうことか。
なんか地上でアイススケートしてるみたいだった。
ダメだこれは。最悪死人が出てしまう。
「なによ!」
「はぁはぁ、はや、はぁはぁ、すぎる」
「こんなモンでしょう」
「全然違う」
こんなモンであってたまるか。
なんでこうなっちゃった。
「ルーデウスに教えてもらった通り、戦闘の時のステップを意識してやってるのよ!」
じゃあどうして…………
いや、それだ! 原因はそれしかない。
戦闘の時のステップ。
それはつまり剣王レベルのステップってことだろ。
そんなのキレがありすぎてダンスどころでは無い。
さながら人間ベイブレードだ。
「ルーデウス様。どうすれば良いでしょうか」
エドナがそう聞いてくる。
うーん。どうすればいいんだろうなぁ。
テンポとかがズレている訳では無い。
ただ動きが鋭すぎるだけなのだ。
bpmと密度が見合ってないクソムズイ音ゲーである。
だから改善するとすれば柔らかさか。密度を減らせば良い。
「エリス。もっとこう、ふんわり踊れる?」
「ふんわりってなによ」
「ええっと、ゆっくりした感じかな」
「分かんないわよ!」
んー。まぁ分からんよな。
分かんないから出来ないんだ。
もっと具体的に伝えることが出来れば。
「やはり無理でしょうか」
朗らかに笑いながらエドナが呟く。
相変わらずのポーカーフェイスだ。
ただその声には諦めの雰囲気があった。
その発言は良くないぞ。
生徒のやる気を削いじゃうから。
「いいわよ別に、できなくても」
ほら見ろ、エリスちょっと拗ねちゃってる。
まぁ任せとけ。今からいい方法考えるから。
大切なのはエリスにとってわかりやすいこと。
感覚派だからな。
難しい言葉を使っちゃダメだ。
簡潔かつ頭を使わなくても体でわかるような、
────閃いた!
これならイけるぞ。すぐに導入だ。
「エリス、もう1回やってみよう」
「できないわよ……」
「大丈夫さ。任せて」
俺はエリスと手を重ね合わせ足並みを揃える。
このまま動き出せば先ほどと同じ結果になるだろう。
だからここで1つ。
「幼いクリスと踊ると考えてみて」
「わ、分かったわ」
「じゃあいくよ。サン! ハイ!」
俺の合図とともにエリスが動き出した。
素早くキレキレすぎる動き、ではない。
ゆっくりとした足取り。相手のことを気にするような動き。
柔らかさというよりも優しさの溢れる動きだ。
「す、素晴らしい。優雅ですよエリス様」
エドナが驚愕の声を上げた。
そうやろそうやろ。
落ち着いていたらエリスは優雅なんやで。
「できてるよ」
「ほんと!」
嬉しくてはしゃぐエリス。
幼い頃から変わんないな。昔も褒めるとこんな感じで、
……いや、当時すぎないか。
まるで本当に昔に戻ったような、
って、うわぉ。
急にスピードが上がった。
エリスのテンションが高まって意識が崩れたのだ。
「お、落ち着いてエリス。相手はクリスだよ」
「そ、そうだったわね」
再びゆったりとした動きに戻る。
いい感じだ。作戦は大成功だな。
クリスティーナは我が家の中ではそんなに強い子ではなかった。
そんな娘と踊るとなればエリスも優しくなるだろう。
仮にそれが無意識であろうとな。
子を思う母の力は凄まじいのだ。
そのまま俺とエリスは踊りきった。
上出来と言えるレベルだっただろう。
「流石です。ルーデウス様」
エドナが感嘆した様子で褒めてきた。
本来あんたの仕事やで。まぁ仕方ないけどさ。
「僕は何もしてませんよ。あれがエリスの実力です」
本当に俺は何もしていない。
エリスが意識しやすいように言葉をかけただけだ。
出来る子なんだよエリスは。
「それで、エリス様に一体何をなさったんですか? 何やらダンスの前に呟いていたようですが」
「あー、企業秘密です」
悪いがちょっと教えられないな。
娘の事を考えさせたなんて言えないもの。
……なんか前も同じこと考えた気がする。
「そうですか。ただその秘密がルーデウス様がエリス様に好かれている理由なのでしょうね」
違います。
それは普通にエリスが俺の事を好きなだけです。
俺もエリスが大好きです。
相思相愛なんです。
まぁそれも言えないですけど。
「なんにせよルーデウス様のおかげで助かりました」
「お役に立てたようで良かったです」
「ルーデウスにできないことはないわ!」
エリスが自慢げに言う。
いや、いっぱいあるからね。今回はたまたま上手くいっただけだから。
エドナも感服した顔しないでくれ。
俺はそんな大したやつじゃないから、ね。
ダンスパーティ当日。
俺は会場の隅のほうに陣取っていた。
パーティの序盤。
グレイラット家に取り入ろうという群がってきた中級貴族や下級貴族を、フィリップと奥方が上手に捌いていく。
ならばとサウロスの方に向かったヤツらがどうなったかなど言うまでもないだろだろう。
そしてそいつらが最後に向かうのはこのパーティーの主役であるエリスだ。
やれこの子は頭がいいだの、この子は育ちがいいだのと言って息子を紹介して来る。
そのほとんどはかなり恰幅のいい、
いや正直に言おう。デブだ。
当のエリスはというと非常にうざったそうにしている。
だが殴ったりはしていない。
ボレアスの体裁を保とうとしているのかもな。
俺としてはエリスに近づくデブは皆殺しに……
ダメだダメだ。今日は祝いの席だ。
そういう物騒なのはよそう。
そうこうしている間にダンスの時間となった。
俺は前回通りエリスの最初のパートナーを務める。
曲もステップも子供向けで簡単だ。
でも場所はホールの真ん中、俺とエリスは注目の的だろう。
「楽しいわね♪」
「そうだね」
エリスは練習通り踊れている。
本音を言うとダンス自体はそんなに好きじゃない。けどエリスが楽しそうに踊っているのを見るとな。
俺も楽しくなるよ。
ダンスが終わり俺は食べ物が並ぶ場所に向かった。
お高い料理が沢山あるな。
お、これうまそう。うーん、美味い。
あれも良さそうだな、ん、これはどうだ?
美味いわ。
たらふく食べているとギレーヌがこちらを見ているのに気づいた。
口からはヨダレが垂れている。
そうだったそうだった。忘れていた。
安心してくれ。すぐに準備してもらうから。
俺は料理を少しずつナプキンで包み、メイドに言って自室へと運ばせた。
これでいいだろう。
あらかた料理を運び終えた頃、ふと気付くと目の前に少女が立っていた。
お初にお目にかかります、と前置きをおいて名乗る少女。
ああ、そうか。
サウロスの爺さんが俺がグレイラットの者だって言っちゃったんだな。
まぁいい。踊ってくれというなら踊ってやろう。
君に興味はないがね。
踊り終わると次の女性がやってくる。
そいつともその次の奴とも踊った。
身長的に無理な人以外とは全員踊ってやった。
こういうのは社交辞令だ。
レディから誘ってきたのに断るのは無礼だからな。
ひと段落着くとフィリップが来て、説明してくれた。
要約すると爺さんが口を滑らせ俺狙いの輩が集まったって訳だ。
やはり全部知っている内容である。
別にいいさ。
全員適当にあしらうだけだから。
俺の眼中には3人の女性しかいないのだ。
パーティーも終盤
お、その3人のうちの1人が来たぞ。
もちろんエリスである。
碧を基調としたドレス姿に髪はアップ。
花のあしらわれた髪飾りをつけていて、大変かわいらしい。
ただ興味のない話ばかりをされて精神的に疲れているようだった。
それでも俺の前に立つと元気なように振舞ってくれる。
嬉しい。
「わたくしと、踊っていただけませんか?」
いい意味でエリスらしくない、
今まで俺に声を掛けてきた女の子に勝るとも劣らない、お淑やかお嬢様の演技で、俺をダンスに誘った。
これもこれでありだな。
ホールに出ると変調で早い、リズムの曲が流れる。
「う……」
エリスが苦しそうな顔をする。
仕方ない。前回同様リードするとし、
…………いや。
このテンポ、エリスならイケるぞ。
助けてといった顔で俺を見てくるエリスにこう投げかける。
「いつもより早くしていいよ。そうだな、アルスと踊ると考えて」
「!」
俺の指示通りエリスがスピードあげた。
トップスピードとは言わないがかなり早い。
だが曲にはあっている。
だからここからは俺の勝負だ。
このスピードについて行かなければならない。
右! 左! 回って、止まる!
忙しいったらあらしない。
「あははは! 楽しいわねルーデウス!」
「そ、そうだね」
最初に踊った時よりも楽しそうにしているエリス。
溜まっていたストレスの発散になっているのかもな。
俺はさっきより大変だがこんな笑顔が見れたのだ。良しとしようじゃないか。
踊り終えると拍手が起こった。
サウロスが走りこんできて、俺たち二人を肩の上に乗せ、嬉しそうに笑いながら中庭を走り回った。
相変わらず元気な爺さんだ。
いい雰囲気だな。
楽しいパーティーだった。
この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)
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イージールート
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ノーマルルート
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ハードルート