無職転生〜2周目だけど本気だす〜   作:そこらへんの競走馬

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第十三話「誕生日パーティー」

 

 

 あれからまぁまぁの時間が経った。俺ももうすぐ10歳になる。

 

 この1年で俺の家庭教師としての仕事はほぼやり終えたと言っていいだろう。

 

 エリスは四則演算と読み書きがかなりできるようになった。

 これでもう1人で生きていけるだろう。

 1人にしないけどな。それぐらいの能力はあるって話だ。

 

 ていうかあれ? もしかしたら学校にも入れるのでは? 嫁3人との学園生活。むふふふふ。

 ……ま、まぁ先のことは置いておくか。

 

 ギレーヌもエリス程では無いが読み書き、計算ができるようになった。

 もはや誰も彼女のことを単細胞とは言えないぞ。

 本人も凄い喜んでいたので教えた身としても満足だ。

 

 そして俺も俺で頑張った。

 魔力量は増えなかったが重力魔法のコントロールはかなり上達した。

 まだまだ先は長そうであるものの横移動も少しは早くなったし、かなり集中すれば200キロぐらいは浮かせられる。

 その分必要な魔力も増えるけどな。強いけど使い勝手の悪い魔術である。

 俺の成長はこんな感じだ。 

 人形作って媚薬買ってただけではないのだ。

 

 というか媚薬も割と早めの段階で買うのやめた。何故かって? 

 1年ほど人形を売ってたら商人から専属契約結ばないかと打診されたからだ。

 そんな面倒くさいのは御免なので人形を売ること自体止めてしまった。

 

 それに10個もあれば十分だろう。だって1個アスラ金貨100枚だぞ。

 10個で日本円で1億円だ! 

 ……あれ、大したことない? 

 それぐらい半年で稼げるんじゃ、家族を養っていったら直ぐに消えるんじゃ……

 いやいやいや、1億円は紛うことなき大金だ。

 それに売りはしないからそんなことどうだっていい。

 将来使う分を今買ってあるだけ、

 そう! 安いうちにってやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 誕生日の一ヶ月ぐらい前から、エリスを筆頭に館中の人間がそわそわとし始めた。

 

 イッタイナニガアルンダロウナー

 

 しらばっくれるのはよそう。俺の誕生日パーティーの準備だ。

 俺のことを可哀想だと思う優しいボレアス家の人達は、わざわざ一介の家庭教師でしかない俺のためにパーティーを開いてくれるだ。

 感謝でしかない。

 

 というかどうも本来だと俺はそれなりの身分になるはずだったらしい。

 その身分とは何か。そう、ノトス家の当主の息子だ。

 地位的なことで言えばエリスよりも上である。正直全くピンと来ない。

 

 ちなみに今その身分にあるのがルークである。

 ん? 待てよ。てことはもしパウロが当主だったら俺はアリエルの傍付きになるのか? 

 んー、嫌ではないけど違うな。俺には合ってない。

 それにそれだとシルフィにもロキシーにもエリスにも会えないじゃ無いか。そんなのダメダメだ。

 

 

 

 話が逸れた。

 

 エリスが俺のためにサプライズで誕生日パーティーを開いてくれる。

 まぁ俺は知っているのでサプライズでもなんでもないけどな。

 ただそんなことはエリスも分かっているだろう。それでもなおサプライズ形式でやってくれているのだ。

 ならばそれに応えることこそが俺の努め。

 なんの詮索もせず、自然体で、正面から受け止め喜ぶ。

 これが正解だな。泣き真似なんて言語道断だ。

 

 転移事件前最後のイベント、気合い入れてこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっという間に1ヶ月が経った。

 今日は俺の誕生日。館中が少し騒がしい。

 

 昼の授業を終えると、ギレーヌが俺の部屋にきた。

 珍しく緊張した様子で、シッポがピンと立っている。

 

「ま、魔術で教えてほしいことがあってな」

 

 凄い目が泳いでいる。

 はいはいわかってるよ。俺をこの部屋に留めておきたいんだろ。

 大人しく従うさ。

 

「いいですよ。なにが知りたいんですか」

「宙に浮かせるやつだ」

「なるほど、重力魔術ですか。確かに珍しい魔術ですからね」

「ああ、お前以外に使えるやつを知らない」

 

 いくらギレーヌでも流石に知らないか。でもちゃんといるんだよ、使えるやつ。

 例えば我社の社長。あの人に使えない技は多分ない。

 まぁ重力魔術は魔力結構使うから使うことはないと思うけど。

 

 その点俺は魔力いっぱいあるから多用できる。

 剣士相手にも有効的な手段として今後利用するだろう。

 浮かされたら流石にどうしようもないしな。

 ……ないよね? もしかして浮いても動けるとかないよね? 

 

 そういえば剣士に使ったのはパウロだけだ。しかも不意を着くタイミングで。

 …………い、一応試してみるか。

 

「ギレーヌ、浮いてみますか」

「いいのか!」

「ええ」

「ぜひ頼む」

 

 よし。ギレーヌからの許可も得たということで実験だ。

 

「ではいきます。飛翔(フライ)

「おお!」

 

 魔術を行使するとギレーヌが浮き始めた。

 屋内なので高さはそんなにない。

 

「その状態で動けますか」

「やってみる」

 

 逞しくそう返事するとギレーヌは歩くモーションをした。

 だが足は宙を空振りジタバタとなる。

 よ、良かった。動けなさそうだ。

 

「無理そうですね。今おろし」

「いや、いける!」

 

 え、

 

 バタバタさせていた足を止め前かがみの姿勢になる。

 次の瞬間、バンという音と共にギレーヌが高速で直進した。

 そしてそのまま減速し、壁の手前で止まった。

 

 う、うそぉん。

 どういうことだ。どうやったんだ。おかしい。

 浮いている時は魔術で力を加えるか、なにか別のものを踏み台にしなければ動けないはず。

 だがギレーヌは魔術も何も使わずに動いた。意味わからん。

 

「ど、どうやったんですか」

「足に闘気を集中した」

「それで」

「蹴った」

「何を」

「空気だ」

 

 空気を、蹴った。足で? 

 はぁ───。これだから嫌なんだこの世界の剣士は。

 なんなんだよ。スマブラかよ。常識離れなことをやってくれる。

 

 ……いや、俺の考えが浅かったか。

 ダメだな。まだまだ地球の感覚でいた。地球の常識で考えてはいけなかった。

 そもそも光の速さで剣を振る奴らだ。空気ぐらい蹴れる。

 

 それに良かったじゃないか、実践の前に知ることが出来て。

 剣士相手にそこまで有効じゃないのは結構痛手だけど。

 

「この様子だと剣士にはあまり通用しない魔術みたいですね」

「そんなことは無いだろう」

「いや、実際動けたじゃないですか」

「戦闘中にいきなり浮かされればかなりキツイ。それに闘気のコントロールがいるので上級いや、聖級以上にしか出来ん」

 

 おぉ! 

 良かった。ある程度のレベルまでには通じるんだな。それに初見の奴にも有効と見える。

 ならばこれからも修行する価値大いにありだ。

 

「ありがとうございます」

「別に構わん。お前には色々と教えて貰ったからな。何か頼み事ができた時は聞いてやる」

「本当ですか! では近日中にお願いするかもしれません」

「分かった」

 

 ギレーヌへのお願い券を手に入れたタイミングでメイドが食事に呼びに来た。

 

 

 

 

 

 

 

 食堂に入った瞬間、拍手が巻き起こった。

 館で一度は見かけた事のある人達が勢ぞろいしている。

 もちろん、サウロスやフィリップ。滅多に姿を見ないヒルダもいた。

 

「わ、わぁ!」

 

 知っていたが驚いた声を出す。

 サプライズされた者として大切なことだ。不快な思いをして欲しくないからな。

 

「ルーデウス! お誕生日おめでとう!」

 

 真っ赤なドレスをきたエリスが大きな花束を持っていた。

 

「ありがとう!」

 

 満面の笑みでそれを受け取る。

 嬉しい。本当に心の底から嬉しい。

 ああ、やっぱ誰かに祝われるってのはいいもんだなぁ。

 感傷に浸っているとエリスが口を開いた。

 

「ル、ルーデウス、あなた泣いているわよ」

「え……」

 

 自分の目を擦ると確かに濡れている。

 

「あ、あれ。おかしいな。泣かないつもりだったのに、なんで? あれ? あれ?」

 

 目を擦りながらそう呟く。

 

 変な話だ。

 本当に泣くつもりなんてなくて喜ぶはずだったんだが。

 涙が勝手に零れてくる。いい歳して恥ずかしいや。

 

 目を擦るのを止めると、エリスの唖然とした顔が見えた。

 フィリップやサウロス、ヒルダまでもが拍手の手をとめて、ぽかんとしている。

 ああ、本当にこんなつもりじゃなかったのに。

 

 エリスはというとちょっと慌てていた。

 ど、どうしようって感じで周りをキョロキョロしている。

 そりゃそうだろう。俺が泣くなんて考えもしなかったはずだ。

 

 無性に可愛く、愛おしく感じたので思いっきり抱きしめる。

 そして耳元で囁くようにお礼を言う。

 

「エリズ、ありがとう……」

「い、いいのよ! ルーデウスは、か、家族なんだから! 当然よ!」

 

 家族か。良い言い回しだな。

 皆にはグレイラット家って意味になるが俺には別の意味を感じるよ。

 嬉しさをかみ締めていると大声が後ろの方から聞こえてくる。

 

「せ、戦争じゃぁ! ノトスん所と戦争じゃあ! ピレモンをぶっ殺してルーデウスを当主に添えるぞ! フィリィップ! アルフォォンス! ギレェェィヌ! わしに続けぇぃ! 資金はある! まずは兵を集めるぞ!」

 

 サウロスが大きくそう吠えた。

 文章に起こしたら! マークの多そうな声だ。

 

「ち、父上、抑えて! 抑えてください!」

「フィリィィップ! 邪魔立てするか! 貴様とて! あんなクソタワケよりルーデウスが当主になった方がいいと思うであろうが!」

「思いますけど落ち着いて! 今日はおめでたい日なんですから! 

 それに戦争はまずいです、ゼピロスとエウロスも敵に回します!」

「愚か者ぉ! わし一人でも勝ってみせるわ! 離せ、離せぇぇえい!」

 

 サウロスは、そのままフィリップに引きずられて退出した。

 少しずつ遠のいていく声が少し面白い。

 

「こ、こほん」

 

 エリスは咳払いを一つ。

 

「お、お祖父様の事は置いといて……。今日はルーデウスにプレゼントを用意したわ! ただ、その、ガッカリしないでね」

「何だろうとガッカリしませんよ」

 

 たとえ石ころだろうと喜ぶ自信がある。

 エリスから貰ったならそれは大切な石ころだ。

 

「じゃあアルフォンス! 例のものを!」

 

 と、エリスが指をパチンと鳴らす。

 それと同時にアルフォンスが俺に見えない彫像の影から一本の杖を取り出した。

 

 杖。

 ロキシーが持っていたのと同じような、魔術師の杖だ。

 節くれだった木製のスタッフ。

 先には高そうなでかい魔石がついている。

 

「アルフォンス。一応説明よ!」

「はい、お嬢様。

 杖素材はミリス大陸・大森林東部に生息するエルダートゥレントの腕を用いました。

 博学なルーデウス様はご存知かと思いますが、エルダートゥレントはレッサートゥレントが妖精の泉より養分を吸い上げたことで生まれる上位亜種で、水魔術を操るAランクモンスターでございます。

 魔石はベガリット大陸北部、はぐれ海竜より出たAランクの逸品。

 製作者はアスラ王国・宮廷魔術団でも随一の杖製作師ロッドディレクター、チェイン・プロキオン」

 

 聞いたことのある説明。

 見覚えしかない形。

 もはやあれでしかない。そう、

 

「銘は『傲慢なる水竜王(アクアハーティア)』」

 

 俺の相棒にして人生の半分近くを共にした友。

 今の俺から見れば身の丈の倍くらいはある。

 

「色々迷ったんだけれどもルーデウスにはやっぱりこれかなって思ったの。受けとって」

 

 エリスから傲慢なる水竜王(アクアハーティア)を受け取る。

 

 この感じ、懐かしい。凄く手に馴染む。

 年月にすれば約半世紀ぶりの再会か。

 ララにあげてから会うことはなかったからな、

 

「ありがとうエリス。大切にするよ」

「喜んだのなら良かったわ。さぁ、早くパーティーを再開しましょ! 

 せっかくのお料理が冷めちゃうもん!」

 

 エリスは上機嫌で俺を引っ張り、巨大なケーキが目の前に鎮座するお誕生日席へと案内してくれた。

 

「私も手伝ったのよ!」

 

 なんだって!? 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティーが始まり、エリスと俺は料理を食べながら喋っていた。

 本当にたわいもない話だ。

 するとヒルダさんが俺達の方にきた。

 なんだろうか。悪口でも言われるんだろうか。

 流石に俺の誕生日だし違うか。

 

「誕生日おめでとう。ルーデウス」

 

 普通に祝われた。素直に受け取り俺も返事をする。

 

「ありがとうございます。ヒルダ様」

 

 そう言って貴族の礼をすると手で静止された。

 

「今日はそういうのいいわ。それに私あなたに謝らなければならないと思って」

「あ、謝る……ですか?」

 

 ヒルダさんが謝る? ちょっとよく分からないな。

 

「ええ。その、最初の頃は私あなたの事をかなり邪険に扱っていたでしょう。でもさっきあなたがあんな風に泣いているのを見て、子供相手に大人気なかったと思ったの」

 

 なんだその事か。

 前にも言ったが事情を知っている身としては、別になんとも思ってなかったんだけどな。

 

「謝って貰う必要などありませんとも。何か僕に至らない所があったのでしょう」

「そんな事ないわ! あなたは良くやってくれた。それなのに本当にごめんなさい」

 

 軽く首を下げ謝られた。

 もう一度仲良くなれたらなとは思っていたが、こんな形で和解できるとは。

 恥ずかしかったがあの涙には感謝だな。

 

「それでなんだけど貴方うちの子にならない?」

「はい?」

「養子……いえ、エリスと結婚しなさい! 別に構わないでしょ! ルーデウスぐらいしか貰ってくれないわよ!」

 

 いきなり何を言っているんだ。脈絡が無さすぎだろ。

 結婚? 俺は今10歳になりたてだぞ。

 そりゃエリスと将来はそういう関係になるつもりだけど、流石に早すぎる。

 エリスからもなんか言ってやってくれ! 

 そう思いエリスの方を見る。

 

 するとエリスは腕を組んで言い放った。

 

「そうね。ルーデウスと結婚するわ」

「え」

 

 ザワ、

 

 屋敷の空気が一変する。

 楽しくやっていたはずのパーティーは今の一瞬で静寂に包まれた。

 違うってエリス。そこはこう、

 やんわりと聞かなかったことにするんだって。

 

「本気かい? エリス」

 

 静寂を破ったのはフィリップだった。

 よし。ファザーストップだ。

 

「本気ですお父様」

「そうかい。なら僕は止めないよ」

 

 おい! 止めろよ。そんな薄笑い浮かべてないでさ。

 絶対なにか企ててるだろ。悪い大人の顔だ。

 

「ガハハハハハ。そうかそうか! エリスとルーデウスが結婚か。それはいい! こうなると本気でノトスの所を潰さねばな! ガハハ」

 

 酒に酔ったサウロスが大声をあげる。

 まずい。このままだと本当に今から結婚式になってしまう。

 止めなくては。

 

「ま、待ってください。余りにも急すぎます」

「なんだルーデウス! エリスはイヤと申すか!」

「いえ、そういう訳では無いんですけど……」

 

 振り返るとエリスはちょっと悲しそうな顔をしていた。

 そんな顔しないで欲しい。エリスのことはもちろん大好きだ。

 だけどさ、ね、今じゃないじゃん。

 

「ならばいいでは無いか」

「結婚するには早すぎます! せめて僕が13になるまでは」

「ではそういうことで」

 

 し、しまった。フィリップに尻尾を掴まれた。

 この場を鎮めるために言っただけなのに。

 

「えっと、その」

「なんだい。男に二言は無いだろう?」

 

 まずい。非常にまずい。背後にまわられた。

 

 …………いや、まずいのか? 

 別に良くないか? 13でエリスと結婚。なんの問題もないじゃないか。

 ちょっと臆病風に吹かれただけだ。ここはYES。直ぐにYESだ。

 

「そうですね。男に二言はありません。13になったらエリスと結婚します」

「よく言ったルーデウス!」

 

 サウロスが立ち上がり俺の事を担ぎ回る。

 俺も少しは重くなったと思うんだが元気だな爺さん。

 

 全くどうしてこうなったんだが。

 はぁ、まぁいいか。予定が確定になっただけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 パーティーはその後更なる盛り上がりを見せた。

 サウロスを筆頭にどんちゃん騒ぎである。

 大人たちは今日はめでたい日だと言って酒をがぶ飲み。メイドたちですら少し羽目を外していた。フィリップを除いて。

 

 結果的に酔いに酔ったサウロスとヒルダは部屋に戻り、疲れたのかウトウトしていたエリスもギレーヌと共に戻って行った。

 料理もほぼ食べつくし、メイドたちもやや眠そうな顔で空の皿を下げていく。

 

 フィリップと俺だけが残った。

 

 

「いやー良かったよ。エリスに相手が見つかって」

 

 ワインの入ったグラスをゆっくりと回しながらフィリップが言う。

 

「本当に僕で良かったんですか。エリスなら他に相手もいたでしょう」

 

 話の流れでそんなことを聞いてみた。

 フィリップはというと回していたグラスを口に運び、噛み締めるようにワインを飲んでいる。

 

「……確かに今のエリスなら他に相手はいるだろう。だがね、僕は君だから許可したんだ」

「僕だから、ですか」

 

 なんかそう言って貰えると凄く嬉しいな。だって親公認ってことだろ。

 

「君はその年に見合わないほど賢いし、金のこともよく分かっている。何故かよく分からないがエリスからの信頼も最初から厚い。それに……」

「それに?」

「強い」

 

 強い。

 まぁ確かに並のやつよりは強いことを否定しない。

 けどそれそんなに重要か? 強いに越したことはないけどさ。

 

「ふふ、よく分からないって顔してるね」

 

 顔に出ていたらしい。やめろよ恥ずいから。

 フィリップはワインを一気に飲み干して言った。

 

「エリスは生まれた時から強かった。天性の才能ってやつなのかね。凄まじい剣術の腕前だったよ」

「流石ですね」

「そうだね。でも僕は可哀想だとも思ったよ。つけた剣術の教師は皆やられていく。いつもつまらなそうにしていたよ」

 

 なるほどな。

 そりゃつまらんわ。教師って精々上級程度のやつだろ。

 そんな奴が剣王に教えることなんてないもの。

 

「ギレーヌが来てから少しマシになったと思ったら、また直ぐに落ち込んでいた。知らないかもしれないが1度屋敷を出ていこうとしたこともあったんだ」

 

 え、何それ初耳。

 ウルトラやんちゃガールだな。

 屋敷を出てどこに行くってんだよ。

 …………もしかして俺の所とか? 流石に自意識過剰か。

 

「だから、エリスが結婚するならエリス並みに強くないとダメだとは考えていた。少なくとも彼女が退屈しない程度にはね」

「それで強いってことですか」

 

 フィリップがこくりと頷く。

 

 なんか感動した。

 フィリップもちゃんとエリスのことしっかり考えてるんだな。

 てっきり跡目争いとかのことばかり考えているのかと。

 すまねぇ、歪んだ考えの俺を許してくれ。

 心の中で謝罪をしておく。

 

「まぁ君を選んだのはノトス家の血が流れているからでもあるけどね」

 

 おい! 

 俺の謝罪を返してくれ。折角感動したのに。

 

「そこまで僕は万能じゃないと思いますよ」

「それは僕が決めることさ。現に君は色々とやってみせた。エリスも変わったし、父上すら動かした。ここ数年父上は資金集めをしているようだけど、あれは君だろう?」

 

 確かにそれは俺が関係している。

 あの日以降サウロスはちょくちょく何処かに出掛けていた。それは俺が金を貯めようと言ったからだ。

 

「なんのことでしょうか」

 

 すまし顔で言い返す。

 バレバレだけど一応は隠しておかないと。

 

「……まぁいいよ。君がエリスと結婚するのはもう決まったようなものだし。なんだったら今日から好きにしていいよ」

「ご冗談を。僕はまだ10歳ですから」

「パウロはそのくらいの歳で好き放題していたさ」

 

 そういう事言うなよ。決意が鈍るだろうが。

 それにパウロと一緒にしないで欲しい。

 

「そろそろ寝ようか」

「そうですね。おやすみなさい」

 

 こうして、エリス主催の誕生パーティーは終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻り自室のベッドに横たわる。

 

 色々あったが楽しいパーティーだった。

 だが今日から数日後にはこのフィットア領も消え去る。やることは最終段階まで来ている。仕上げは当日だ。

 

「準備でもするか」

 

 ベットから起き上がりカバンを取り出した。

 机の上に物を置いていく。

 金、紙とペン、服、杖、御神体、媚薬、etc……

 この中から必要な物をカバンに詰めていこう。

 それ以外は全部消え去る。俺のカバンはいわばノアの方舟だ。

 

 

 ある程度整理した所で気づいた。

 媚薬をそんなに持っていけないことに。

 10本のうち持っていけるのは精々3本。残った7本はどうなるのか。

 もちろん消え去る。

 

 どうしよう。勿体ねぇ。

 無くなっても問題ないものなのだが、ちょっとな。

 机に並ぶ媚薬を見つめながら考えていると、

 ドアがノックされた。

 

「ルーデウス。…………いる? 入るわね」

 

 エリスの声だ。

 ま、まずい。媚薬が並べっぱなしだ。

 急いで隠そうとするが当然間に合うはずも無くエリスが入ってくる。

 

 エリスは赤いネグリジェ姿だった。

 非常に見覚えのある格好である。なんて言うか、エロい。

 思わず手に持った媚薬を落としてしまう。

 そしてそれはコロコロと転がりエリスの足元で止まった。

 

 エリスはそれを拾い上げる。

 

「なにこれ?」

「あ、いや、それは、その、えっと。栄養ドリンク、かな?」

「なんで疑問形なのよ。まぁいいわ。ちょっと話しましょう」

 

 良かったバレずに済んだ。てか媚薬知らなかったか。

 そういえばエリスの前に出したことなかったな。

 

 俺はベッドに座った。するとエリスも俺の隣に座った。

 

「それで何の話だい?」

「……転移まであとちょっとよね。ルーデウスが作戦を立ててくれているから大丈夫だとは思っているけど、お爺様達はなんとかなるのよね」

 

 それか。

 そりゃまぁ心配だよな。

 

「大丈夫。心配ないよ。サウロス様たちはギレーヌと一緒に転移してもらう予定さ」

「ギレーヌがいれば安心ね!」

 

 安心したエリスは俺の肩に頭をのせたきた。

 服装も相まって下半身に宜しくない。

 

「ところでどうしてそんなカッコで?」

「……私たち夫婦になるじゃない。それで、その」

 

 え、それってまさか。……そゆこと!? 

 まじか。そんなこと言われると急にエリスが色っぽく見える。

 

 ダメだ! 13までって自分で決めただろうが! 

 ここは我慢だ。

 

「あのねエリス」

「こ、この部屋暑いわね」

 

 俺が何か言う前にエリスが立ち上がった。

 そしてそのまま机の方へ。

 

「ちょっと喉乾いたからこれ飲むわね」

 

 そう言いながら瓶を掴み取る。媚薬の瓶を。

 

「ちょまっ! エリス!」

 

 ゴク! 

 

 媚薬が喉を通る音が鮮明に聞こえる。

 ま、間に合わなかった。

 

「ふぅえ?」

 

 その場でエリスが崩れ落ちる。

 

「エリス!」

 

 すぐさまエリスの元に駆け寄った。

 すると俺の首に腕が通される。そしてそのままキスされた。

 

「ルーデウスぅ、すき」

 

 口移しで入ってきた媚薬。エリスの心地いい甘言。

 俺の理性は崩壊寸前だった。

 だがギリギリのところで耐える。

 

「待ってエリス。えっと、ほら、シルフィとロキシーにも悪いし」

 

 恐らくどちらも許してくれるがこの場を抑えるために2人を引き合いに出す。

 ある意味俺のウォールマリアであった。

 だが、

 

「だいじょうぶよ。2人はいいって言ってたわ」

「いつ?」

「てがみで」

 

 え、マジかよ……

 あ、ダメだ。もう、いっか。

 俺のウォールマリアは一瞬にして崩れ去り、

 そのまま俺はエリスの腕の中で溺れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 起きると隣にエリスがいた。

 2人とも裸で同じベットの上。

 

「…………やっちまった」

 

 結局俺は自分との約束を守ることが出来なかった。

 情けない。結局俺もパウロと一緒だったわけだ。

 でも、良かったなぁ。

 

 

 

 

 

この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)

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