だいたい1年くらい経過した。
この間俺が何をしていたって? 真っ当な赤ん坊をしていたさ。
はいはいしたり、おもらししたり、お乳を飲んだり、
そうお乳を飲むのだ。ゼニスのお乳だ。
80歳になっていても俺としては心はまだまだ若いつもりである。
けれども正直すごい複雑な気持ちになる。生きるためにも仕方ないことだとは思うがなんとも言えない感覚だ。
1年間ただただそんな生活をしていた訳では無い。
魔術だ。魔術の練習をしていたのだ。
魔力というのは10歳までのうちは使っていれば増えていく。俺は特に魔力量が多い方なのでぐんぐん増えてもらいたい。
ここで肝心なのは何処でするかである。
俺は前回と同様に書斎でトレーニングをしてきた。別に本など読まなくても魔術を使うことはできる。大事なのはそこに本があることである。
3歳になった。
魔力総量もだいぶ増えてきた。
そろそろいい頃合いだろう。俺は今日パウロ達に魔術を使えることを話そうと思う。前回は上手くコントロールできず、そのまま壁を破壊してしまったが今回はそんなヘマはしない。
ちょうどいいところにゼニスが通りかかった。チャンスだ。
「母様、僕、魔術が使えるようになったんです」
「え、ほんとにルディ? ……じゃあお庭でやって見せてくれる?」
「分かりました。それでは父様とリーリャさんも呼んできてください」
「分かったわ」
ゼニスは笑いながらパウロとリーリャを呼びに行った。
信じていないのだろう。それもそうだ。普通の3歳児は魔術など使えない。
だが残念だったなゼニス。俺は普通の子供ではないのだよ。
パウロとリーリャを連れてゼニスはすぐに中庭にやってきた。
「ルディ。魔術を見せてくれるってのはほんとか?」
ニヤニヤしながらパウロがそう言ってきた。
こいつバカにしてるな。
まぁいいさ。ここで実力をみせれば済むことだ。因みにここで手加減はしない。何故かって?
これは女神召喚の儀式の一環だからな。
「はい。今からウォーターボールを打ちます」
「お、一丁前に初級水魔術の名前なんか言いやがって」
パウロがごちゃごちゃとうるさいが無視して魔術を使う。
右手をかざすと空中に水球が発生する
「ウォーターボール」
そう言うとともに水球が空中に向かって打ち出された。
ふふん。どうだ凄いだろ!
自慢げな顔を浮かべて後ろを振り返ると……
唖然とした顔の2人と化け物でも見るような顔をする1人がそこにいた。
ありゃーこれはやりすぎたかな。いきなり無詠唱はよくなかったかも。
そう思っていると
「キャー、あなたうちの子はやっぱり天才だったんだわ! 無詠唱で魔術を放ったのよ!」
「いや、これはおかしいだろ。天才で片付けられるのか? そもそも何処で魔術を学んだんだ」
「天才以外の何ものでもないでしょ! きっと書斎で魔術の本を読んだのよ。 今すぐ家庭教師を雇わないと! 将来はきっと凄い魔術師になるわ」
慌てる2人とは別にリーリャは落ち着いていた。
まぁリーリャのことだ。俺が魔術を使えることはどこかで気づいたのだろう。ただこのレベルとは思っていなかったようだが……
「ねえあなた、明日にもロアの街で募集を出しましょう! 才能は伸ばしてあげなくっちゃ!」
「いやまて、男の子だったら剣士にするという約束だったろう」
うーむ、前回と全く同じやり取りをしだす2人
つまりこの後のことも前回と同じであろう。確かこの後はリーリャが
「午前中は魔術を学んで、午後から剣を学べばいいのでは?」
そうそうこう言うんだった。
ということで我が家で家庭教師を雇うことになった。
俺の思惑通りに事が進んでいる。
つまり来るのだ彼女が、俺の最愛の人の1人が
今か今かと待ちわびていると、家の扉をノックされた。パウロが扉を開くとそこには人影が、
「ロキシーです。よろしくおねがいします」
よっしゃ───
俺の元に再び女神が現れた。青髪で見た目は中学生くらい。ただなんとも言えないエロスを感じる。
やばい泣きそう。
パウロ達にあった時も感動したけどやっぱ自分の嫁は違うな。
感動の再会と行きたいところだが確認するべきことがある。
ロキシーが前回のことを覚えているかだ。
「あ、あ、君が、その、家庭教師の?」
「あのー、ず、随分とそのー」
2人は戸惑った様子でいた。
初見でロキシーを見た反応はそんなもんだろう。
だが俺は知っている。
彼女が優れた魔術師であることを、そして
彼女の全てを。もちろん体の隅々まで。ぐへへ
「貴女方が私の事を小さいとおっしゃりたいのは分かります。 ですがこれでも私は水王級魔術師ですので」
ん? 水王級だと。
確か初めて会った時のロキシーは水聖級だったはずだが。
「それで、 私の生徒はこの子ですね」
暖かい目で俺の事を見ながらロキシーはそう言った。
まさか、これは
「それでは今から授業を始めます。ですがその前に貴方は、いえ、ルディは覚えていますか?」
「ロキシー!」
俺はロキシーに飛びついていた。
ロキシーの匂いがする。嗅ぎなれたロキシーの匂いだ。落ち着く。
精神の浄化すら感じられる。
「ふふ、 ルディはあいかわらず甘えん坊ですね」
ロキシーは覚えていたのだ!
嬉しい限りである。
「あ、ちょっとルディ! お尻を揉まないでください」
む、叱られた。
仕方が無いのでロキシーから離れる。
「とりあえず確認ですが魔術は使えますか?」
「はい。問題なく使えます!」
「では使ってみてください」
頷いてそのままウォーターボールを放つ。
ロキシーもそれを見て頷いていた。
「ふふ、 どうかしらうちの子は」
っ! 振り返るとそこにはゼニスがいた。
どうやら今のやり取りを見られていたようだ。
ただ不信感は抱いていないようなので抱きついているところは見られてなさそうだ。
「素晴らしい才能の持ち主です。 今世紀最強の魔術師も夢ではないでしょう」
よせやい! 照れるでやんすよ。
大体俺より強い魔術師は多分いるぞ。ムーアとか、
「そうでしょう! これからよろしく頼むわね」
「あ、はい。精一杯頑張ります」
ロキシーはバツの悪そうな顔を浮かべて返事した。
「なんだか悪い気がしますね」
「なんでですか?」
「教えることなどないのにお給金を頂くからです」
なるほど。やっぱり真面目だなロキシーは。
こういう時は気の利いた言葉を送ってやろう。
「大丈夫ですよ。 将来僕が払っておきますから」
「それはダメです! 私の責任ですから」
「未来の妻の責任は夫が負うものですよ」
それを聞いた途端ロキシーは顔を赤くした。
可愛いなぁ俺の奥さんは。
「あ、 ありがとうございます。 ではよろしくお願いします。 それと1つ言いたいのですが、 敬語はやめてくれませんか?」
おっと小さい頃の癖が出ていたようだ。
ルーデウス君は妻の要望に応える良夫なのだよ。
「分かったよロキシー。 でも周りに人がいる時は敬語にするね。でないと怪しまれてしまうから」
「そ、そうですね。 じゃあそれでいきましょう」
午後になった。パウロとの鍛錬の時間だ。
楽しくて仕方がない。
なんせパウロとの触れ合いの時間だからな。今回は必ず助ける予定だが、それでもこういった時間は嬉しいものである。
ちなみに前回と同じくまずは体づくりからだ。
ランニング、腕立て伏せ、腹筋、などなどである。
前回は思わなかったが、 正直3歳児にさせることでは無い。
まぁ今回の生でも妥協はしない。頑張ろう。
俺の体ではずっと運動はできないため夕飯の時間までは魔力を鍛えている。
そこで俺は気づいた。俺の魔力総量が前回を越していることに。
正直打ち止めだと思っていたが、 まだまだ俺の魔力は増えるようだ。
もしかしたら前回よりさらに幼い頃から魔力を使っていたからかもしれない。
夜中に魔術を使っていると、どこからかギシギシアンアンと悩ましい音が聞こえ出した。
どこからかもなにも、パウロとゼニスの寝室に決まっているのだが。
しかし不快では無い。
俺が童貞を捨てる未来が確定しているからだろうか。
確かにそれもあるがそれだけじゃあない。
彼らは妹を作っているからだ。そう、ノルンだ。
ノルンが生まれる行為をしているのに何が不快だろうか。寧ろもっと励んでもらいたいね。
そんな事を考えていると俺の部屋のドアがノックされた。
誰だろうか? 扉を開けるとそこにはロキシーが立っていた。
「入れてもらえますか」
特に断る理由もないのでそのままロキシーを部屋に迎え入れる。
なんの用なのだろう。もしかして俺とHしたくなったとか!?
「あいかわらずお盛んですね。 パウロさん達は」
「ええ、 ロキシーも俺としたくなったのかい?」
「そんな訳ないじゃないですか。そもそもルディはまだ精通すらしていないでしょう!」
そうか。まぁそうだな。でもそんな訳ない、か。
俺が落ち込んでいるとロキシーは慌てて付け加えた。
「べ、別にルディとしたくないのではないんですよ! ただ」
「ただ?」
「私が初めてを奪うとエリスが怒りそうだなって」
なるほど。エリスを思ってか。
確かにエリス怒りそうだな。俺の初めてであることに誇りを持っていたし。
別に大したもんじゃないんだけどな。
「なるほど。理解したよ。じゃあ何しに来たんだい?」
「今後のことについてお話に来ました」
普通に考えればそうか。てかそれしかないな。恥ずかしい。
「それじゃあまずはお互いの情報を共有しよう。まずは俺から」
そして俺は80歳で死にこの世界に再び生まれたこと、 1歳から魔力を鍛えていること、 魔力総量が前回を越したことなど一通り話した。
「ルディは生まれた時から覚えているのですね。 しかも全部」
「と言うと、 ロキシーはもしかして?」
「ええ、 私が思い出したのは3年前です。 寝ている時に走馬灯のように流れてきたんですよ。 ただ思い出せたのはルディと同じでルディが死ぬまでなんです」
そうか。それはちょっと残念だな。
ロキシーならばことの結末まで知っていて、俺が再び生まれた理由も確かめられると思っていたのだが。
まぁ仕方ない。ロキシーが覚えていることをとりあえず喜ぶべきだろう。
「覚えてないなら仕方ない。じゃあ次に今後の方針について話そう」
「そうですね。とりあえず転移事件が起こるまでの事を決めましょう」
ロキシーと俺は夜通し話し合った。
そしてこれからどうするかがだいたい決まった。
結局概ねの動きは前回と変わらないようにした。知識のアドバンテージがこちらにはあるからな。
ただ幾つか変更したこと、変更しなかったことがある。
まずはロキシーの授業の時間。
この時間は俺がロキシーに乱魔と獣神語を教えることとなった。知っておいて損はないからな。
次にシルフィについて。
シルフィにはコンタクトをとろうと思う。ロキシーが覚えているので彼女が覚えている可能性も高いはずだ。とにかく確かめる必要はある。
エリスについて。
彼女も覚えている可能性が高いが、距離が離れているので会うのは厳しい。前回通りに進めばそのうち会えるので今は特に何もしない。
最後にオルステッドについて。
彼とも今は特に連絡は取らない。というか取れない。何処にいるかも分からないからな。
俺?
俺はロキシーに講義しつつ魔力の向上だ。そしてそれと並行で重力魔術の練習をする。
前回でも出来なかったので正直厳しいと思うがやる価値はあるだろう。
そんなこんなしているうちに2時ぐらいになった。
パウロ達はまだお盛んのようだが。
「ではそろそろ戻りますね」
ロキシーは自室に戻るようだ。
「途中で父さん達を見なくてもいいのかい?」
茶化すようにそう言うとロキシーは顔を真っ赤にした。
「見ていたのですか! 若気の至りですので忘れてください」
相も変わらずオレの嫁は可愛いようだ。
この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)
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