4歳になった。
この1年間の成果を報告しよう。
まずは俺について
なんと人1人ぐらいなら浮かせるようになった。
正直びっくりだ。やはり若いうちは才能というか物事の吸収スピードのようなものが違うようだ。
コツとしては重力と反重力を意識することである。
全ての物には重力と反重力が働いていて、魔術で反重力を増やすイメージを思い浮かべるのだ。
実際にそんなもんがあるのかなんてのは分からない。
大切なのは想像力だ。それさえあればなんとでもなる。
あと魔力総量が前回の1.2倍ぐらいになった。まだまだ増える様子である。
俺については大体こんなもんだ。
次にロキシーについて
彼女はこの1年で獣人語を覚えた。
獣人語は元々簡単な言語ではある。実際俺も1年で覚えた。
ロキシーにはこれぐらい朝飯前だろう。
「ルディの教え方が上手だったからです」
なんて言われてしまったが、
ロキシーなら本だけでもいけたはずだ。
そして乱魔
これは未だ成功していない。
前回シルフィに教えた時と同様に
俺が水を作り、 ロキシーがそれを妨害するといった練習法をとった。
が、水が少し乱れる程度しか起こせていない。
螺旋丸の途中段階みたいな状態だ。
乱魔は結構高等テクニックなので仕方ないだろう。
根気よくやっていくしかない。
そしてシルフィについて
彼女にはまだ会えていない。
シルフィに会おうと決めた翌日、
すぐさまロキシーと共に外に出ようとした。
それがなんとパウロに止められてしまったのだ。
前回は5歳の頃には外に出ていたが3歳では許されないのかもしれない。
まぁ俺も自分の子供が3歳の時に外に出るのは止める。正直5歳でも止める。
とりあえず4歳にはなったのでそろそろパウロも許可してくれないだろうか?
それを言われたのは午後のパウロとの訓練の時だった。
「なぁルディ。 俺はお前のことを天才だと思っている」
そりゃそうだろう。
別に「俺まじ最強! 天才なんて当たり前」と自惚れている訳ではない。
パウロの目から見れば天才に見えるだろうという話だ。
「だがな、天才ってのは意外にゴロゴロいるもんなんだな」
ほう。
パウロの目から見ても俺並みの天才がいると。
そりゃー興味深いね。
「俺も人から聞いた話だしほんとか分かんねぇんだけどよ、 どうやらお前と同い年で無詠唱魔術を使える奴がこの村にいるらしい」
そいつぁー天才だ。
無詠唱を使える奴ってのはあんまりいないからな。
それこそ前回でも両手で数えるくらいしか知らないレベルだ。
てかなんだその話。
そんな奴この村にはいないはずだけどなぁ、、、
…………それシルフィじゃね?
「それでよぉルディ。お前ソイツに会ってみたくないか?」
「会ってみたいです! 是非お願いします!」
「お、おお。随分乗り気だな」
よしよしよし。いいぞ、凄くいい流れだ。
元々シルフィには会いに行く予定だったがまさかパウロから直接提案されるとはな。
「と言ってもな、俺は午前中は森に出なきゃならん。ゼニスとリーリャも家のことがある。 かと言ってお前1人で外に出させる訳にもいかない。 だから会うとなったら午前中にロキシーと行くか、 午後に俺と行くかだ。 どっちがいい?」
ふむ。
それはロキシーと行く一択だな。
パウロがいると面倒かもしれない、というか面倒だ。
「では、ロキシー先生と行ってきます」
「ほーう。そうか……分かった。じゃあそう伝えておく。ロキシーにはお前から伝えておいてくれ」
パウロは意外そうな顔をしながらもそう応えた。
なんだパウロ、選ばれなくって悔しいってか?
すまんなパウロ、また今度遊んでやるよ。
「ん、どうしたルディ?」
「い、いえ。父様がおかしな顔をしていたので……」
「いや、単にお前が俺を選ぶと予想していただけだ。 お前魔術の授業好きだろ。 だから授業時間が減るのは嫌がると思ってたんだけどな」
なるほどな。パウロなりに考えがあったのか。
だが1つ間違っているぞ。別に俺は魔術の授業が好きな訳では無い。
ロキシーが好きなのだ。
けれど俺を思うその気持ち。素直に嬉しい。
ご褒美に息子から1つ教えてやろう。
「僕は父様との訓練も好きですよ」
「……そうかそうか! じゃあ父さんも張り切って教えてやろう」
「はい! よろしくお願いします」
それから今日一日中パウロはニヤニヤしていた。
単純で分かりやすい奴だ。
翌日
「それじゃあロキシーちゃん、 ルディを頼むわね」
「はい。 任されました」
「ルディ、 そんなに危険は無いでしょうけど、ロキシー先生の言うことを聞くのよ」
「分かりました。母様」
やはり俺の予想通り天才と噂の子供はシルフィのことだった。
ということで家を出て、シルフィに会いに行く。
と言ってもまぁ村から出るわけでもないのでゼニスもそんなに心配はしてなさそうだ。
「ほら、ルディ」
ロキシーが手を伸ばしている。目線がかなり高い。
今回もカラヴァッジョに乗って行くからだ。
ロキシーの手を掴んで俺はカラヴァッジョに乗馬した。
高いな。でも見慣れた高さだ。
18歳ぐらいの俺と同じぐらいの高さだろう。
「では、行ってきます!」
「行ってらっしゃいルディ」
「行ってらっしゃいませ」
見送りのゼニスとリーリャを背にカラヴァッジョは悠々と足を運んだ。
スピードはほとんどなく、歩いているのとあまり変わらない。
「体が幼くても馬はもう怖くありませんね?」
ロキシーがそんなことを言ってきた。
そもそも馬は怖くないのだが、懐かしいなぁ
「怖くないよ。 ロキシーこそ気をつけてね」
「大丈夫です! 馬の扱いは慣れているので」
ロキシーの乗馬歴は長い。
だから俺もそこには気にしていない。
だがなロキシー、君は今危険な状態なんだぜ。
前に俺を乗せるだなんて。
色々していいと言っているようなもんなのだよ。
まぁ何もしないがな。危ないし
そうこうしている内にシルフィの家の前まで来てしまった。
「緊張しますね」
ロキシーがそう呟いた。
そんなに緊張するだろうか。俺は緊張していない。
俺とロキシーではシルフィとの関係性が違うだろうが、 俺の妻たちの仲は悪くなかったはずだ。寧ろ良かったと思う。
コレはあれだな。
仲良い奴に久しぶりに会うと緊張するあれだ。
なんだかそう思うと俺も緊張してきた。
だがここまで来て逃げ出すなんてのは選択肢にない。意を決して扉を叩く。
「ごめんください。ルーデウス・グレイラットです」
「はいはい。今出ます」
男の声だった。ガチャっと扉が開かれる。
「待っていたよ。ルーデウス君」
目の前には端正な顔立ちの男が立っていた。
シルフィに似ていなくもないがそれよりもエリナリーゼに似た顔だ。
確かこの人は、シルフィの父親の……
「僕の名前はロールズ。とりあえず中に入って」
ロールズにすすめられて俺たちは机に座った。
「では改めて自己紹介から僕はロールズ」
「パウロ・グレイラットの息子、ルーデウス・グレイラットです」
「ルーデウスの教師をしています。ロキシー・ミグルディアです」
挨拶を済ませるとロールズは驚いた顔をしていた。
なんだ、なんか変なことでもしたか?
「いやはや、パウロから話は聞いていたが随分と大人びているね。正直うちのシルフィよりは下だと思っていたが思い違いだったようだ」
俺の歳不相応な振る舞いに驚いていたのか。
実際中身は80歳のジジイだし。そんなことは教えられないが、
「先生の教えの賜物です」
いて、
隣に座るロキシーに軽く肘でつかれた。
まぁジョークはこのぐらいにして、本題に入ろう。
「あの、それでなんですが私たちが会いに来たシルフィ……エットさんはどちらに?」
そうそれだ。正しく今俺が聞こうとしていたことをロキシーが尋ねた。
夫婦の以心伝心ってやつだな。まだ夫婦じゃ無いけど。
「それがですね。ここにはいないのですよ」
「どういうことですか?」
「いえね、昨日娘に君たちが来ることを伝えたのですよ。そしたらね、今朝あの子 「いつもの場所にいる」 って言って出ていったんですよ。君たちとはあったことも無いはずなのに」
なるほどな。
だがこれで確定した。彼女は覚えている。
けど結構危ないことしてるなシルフィ。普通に怪しまれるぞ。
「いつもの場所には心当たりがあります」
いつもの場所は恐らくあそこだ。
知るはずもない俺がいつもの場所を知っているなんて言ったから驚いているだろう。そう思いロールズの顔をのぞいた
ロールズは驚いた顔をして……いなかった。
寧ろどこか腑に落ちたような顔だった。
「やはりそうですか。 何となくそんな気はしていました。あの子は聡明でね、間違ったことを言ったことがないのですよ。こんな事をしたのも恐らく私が居ない方がいいということなんでしょう」
そう言ったロールズの顔は少し悲しそうだった。
そうだよな。娘にそんな扱い受けたら俺だったら3日は引きこもっちまいそう。
「兎に角、娘の事は頼みます」
もちろんだとも。今だけでなく未来永劫任せて欲しい。
「分かりました!」
「それでルディ、「いつもの場所」とはどこなのですか?」
「道案内するからその通りに馬を進めてくれ」
俺が指示するとロキシーは言った通りに動いてくれた。
俺が右にと言うと右に、左にと言うと左に
チューしてと言うと叩かれた。
おいたが過ぎたようだ。
どうもこの体になってからそういう行動が目立つ。
まるで精神が体に引っ張られているかのようだ。
ちょっと不安になってロキシーに聞いてみた。
「ルディはいつもそんな感じでしたよ」
どうやら思い過ごしのようだ。神が言うなら間違いない。
馬を進めて数分後
見慣れた木が見えてきた。
この辺りの道も懐かしい。どんどんと木が大きくなっていく。
ある程度木が大きく見えた時だった。
木の下にフードを被った子が立っているのが見える。
俺はすかさず馬から飛び降りた。
ただこのままだと大怪我なので着地の瞬間に重力魔術を使う。
そのままフードの子に向かって走りながら叫んだ。
「シルフィ!」
俺の声を聞いてフードの子が振り返る。
それによってフードが取れ、綺麗なエメラルドグリーンの髪が現れる。
「ルディ!」
次の瞬間俺たちは抱き合っていた。
「よかったルディ。よかった、よかったよ〜!」
なんとシルフィは泣いていた。
「あぁ、よかった。本当によかった」
俺はそれを慰めるように抱きしめながら背中をさする。
小さいな。それに細くて華奢だ。でも懐かしい。
俺たちが抱擁していると後ろから声がかかった。
「あのー、私の事も忘れないで欲しいです」
そうだな。ロキシーも忘れちゃいけない。
「ほらシルフィ。泣いてないでこっちを向いて、ロキシーだよ」
「っ、ロキシー!」
「久しぶりですね。シルフィ」
今度はロキシーがシルフィのことをハグした。
妻たちの再会に俺もちょっと泣きそうだ。
「そっか。ロキシーもなんだね!」
「ええ、でもとりあえずこれで顔を拭いてください。可愛い顔が台無しですよ」
そう言いながらロキシーはハンカチをシルフィに渡した。
「ありがとうロキシー」
数分後
シルフィは落ち着きを取り戻していた。
「うう、恥ずかしい」
「そんな事ないさ。俺はすっごく感動したぞ」
「ええ、私もです。それに幼い頃のシルフィに会えて幸せです」
「ほんとに? それならよかった」
最早確認するまでもないが一応聞いておこう。
「シルフィもその様子だと覚えてる?」
「うん。でもボクはルディが死んじゃうまでなんだ。ロキシーは?」
「私も同じです」
やはりそうか。何となくそんな気はしていたがシルフィも俺が死ぬまでか。
この分だとエリスも一緒だな。
いや、エリスは俺より先に死んだからそもそもありえないか。
「それでねルディ。その、ごめんなさい!」
うん? どうした? なんで俺は謝られたんだ?
おじちゃんはそんな覚えてないことで怒鳴るような亭主関白じゃないで。
「えっと、何に?」
「本来ならもっと早くルディの家に行くべきだったのに……」
そんなことか。そりゃお互い様だ。
俺たちだって会いに行けなかったんだから。
「ボクね、もしルディが覚えてなかったらどうしようって怖くなっちゃって、それで……」
「心配ないさ。俺は死んでもシルフィのことを忘れないよ」
そう言うとシルフィは顔を赤らめた。
もう、可愛いなシルフィは。
でもちょっと違和感があるな。シルフィはもっと芯があってそんなことに怯えないイメージだったが、 なんだか今のシルフィはまるで昔の頃のような。
まぁいい。それは後回しだ。
今考えるべきことを考えよう。
「それじゃあまずは各々について話そうじゃないか」
ということで先に俺とロキシーについて話した。
「すごい2人とも。それなのにごめん、ボクこの4年間は魔術の練習しかしてないんだ」
充分じゃないか。
魔術の練習は大切なことだ。特に若いこの歳では
それにシルフィはもっと大切なことをしていたはずだ。
「大丈夫さシルフィ。それにシルフィのことだ、親孝行をしてたんだろ」
「う、うん。その、両親には久しぶりに会ったから」
やっぱりか。シルフィは幼くして親を失ってるからな。
親を失う辛さは俺にも痛いほど分かる。
親孝行は今最もやるべきことだろう。そういう意味じゃ俺は親不孝者だな。
「じゃあ次は今後のことについて話しましょう」
「それについては俺に考えがあるから話させてくれ」
という事でここで俺の考えを話した。
まず俺について
俺はとりあえず7歳まではこの家にいる予定だ。
この家でやらなければならないことはまだまだある。
そして、7歳になったら家を出てなんとかエリスに会おうと思う。
前回みたいに上手くいくかわからんがな。
その道中で救えなかった人を救っていきたい。
次にロキシーについて
ロキシーには俺が5歳になったらシーローン王国に行ってもらう。
そこでザノバとパックスの事を見てきて欲しい。
それと前回通りに進めることで歴史をある程度同じにすることが狙いだ。
次にシルフィについて
シルフィには転移事件までずっとこの村にいてもらう。
転移事件が起きた時に俺とシルフィの家族を守ってもらいたい。
その後は皆と共にフィットア領に戻って欲しい。
そんな感じで俺は話した。
するとシルフィが難しい顔をして言った。
「ごめんなさい。転移事件の時にルディとボクの家族を守るのはできない」
何故だ? 守るべき人達だろ。
「ボクはアスラ王国に行ってアリエル様とルークを守りたい」
おっと、完璧に失念していた。
そうだよな。シルフィはアリエル達も守りたいよな。
でもどうしようか。パウロたちも救わなければならない。
「それでね。ボクは転移の正確な日付を覚えているから、その時に全員を一緒に出来ると思う。それじゃダメかな?」
ふーむ。
確かに全員が同じ場所に転移すれば楽ではあるが、大丈夫だろうか。
上手いことパウロと一緒に転移できるか分からない。全員ゼニスみたいになってもらっては困る。
でもそれを言い始めたらどうにもならんな。
仕方ないそれしかないようだ。
「うーん、分かった。それでいこう」
「それでしたら私はパウロさん達が無事に帰ってこれたかを確認し、その後そのまま合流しようと思います」
悪くない手だ。
エリナリーゼとタルハンドとの繋がりが無いのはちょっと痛手だがあの2人なら大丈夫だろう。いつか会える気がする。
パウロ達の方が心配だ。ゼニスにリーリャもいるだろうがあいつはおっちょこちょいだからな。
「パウロさん達といればルディともすぐに会えるでしょう」
なるほど、それも狙いって訳か。
「あー! ロキシーずるい。ボクもルディと早く会いたいのに。ルディ、ラノアにも早く来てね!」
「ああ、分かったよ」
やれやれモテる男は辛いぜ。
もっと辛いのはモテるのにまだ手は出せないことだがな。
「ルディ。そろそろ時間です」
太陽を見るとだいぶ頭上に位置していた。
そろそろお昼頃か。
「了解、帰ろう。シルフィも送ってくよ」
その後俺たちはシルフィを家に送り、帰宅した。
お昼ご飯の時間に少し遅れていたが怒られなかった。
初めての外を楽しんできたと思われたのだろう。
何にせよ、これから忙しくなりそうだ。
この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)
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イージールート
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ノーマルルート
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ハードルート