無職転生〜2周目だけど本気だす〜   作:そこらへんの競走馬

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第五話「緊急家族会議」

 

 あれからしばらく経った。

 その間に起きたことを纏めよう。

 

 まずロールズに怒られた。そりゃそうだ。一人娘の初めてを奪ったのだから。いやーイケメンに凄まれるとビビっちまうね。

 ただ俺も数々の修羅場をくぐってきた男。今更そんなことで諦めるなんてことはしない。

 俺は本気なんだという気持ちを全面的に伝えた。

 その甲斐あってか最終的にはシルフィとのお付き合いを認めてくれた。

 

 あと、シルフィを家に連れてきてからパウロがシルフィについて色々言ってくるようになった。

 あの子は可愛くなるだの、嫌われることをしてはいけないだの、わかっとるわ! 

 まぁ子供に口酸っぱくなってしまう気持ちはわかるがな。ただ俺はいいけど娘にやったら嫌われちゃうぞ。

 

 シルフィとはほぼ毎日と言っていい程一緒にいる。

 一緒にいると言ってもエッチなことはしていない。普通に魔力トレーニングだ。頼んだらやってくれそうだけどな。

 でもそういうのは身体年齢的にまだ早い。取り敢えず13歳まではそういうの禁止だ。

 なぜ13歳かって? 俺の卒業が13だったからだよ。

 

 

 そんな風に毎日を過ごしていると

 ゼニスの妊娠が発覚した。大変めでたい。

 

 もうそろそろかなと思っていた矢先である。ゼニスはなかなか子に恵まれず悩んでいたので非常に嬉しそうだ。

 グレイラット家では産まれてくる子の話題で持ちきりである。男だろうか女だろうか、名前はなんにするかとかな。

 

 ここで1つ予言しよう。産まれてくる子はちょっとドジっ子だが人を集め纏めあげることのできる努力家の美少女だ。

 

 

 それから1ヶ月後

 

「申し訳ありません。妊娠しました」

 

 リーリャの妊娠が発覚した。これまた大変めでたい。まぁそう思うのは俺だけかもしれないが、

 

 取り敢えずもう1つ予言しておこう。

 産まれてくる子は才能に溢れた兄想いの頼れる巨乳の美少女だ。

 

 しかしそれを知るのはこの場において俺1人。

 ついこの前までの明るい雰囲気はどこへやら。俺以外の家族全員が凍りついていた。その子は一体誰の子だと言うふうにな。

 そんなのはもちろん決まっている。俺じゃなくても分かるだろう。

 

 俺は、やっちゃったねと満面の笑みで

 ゼニスは、まさかと鬼の形相で

 一斉にパウロに視線を注いだ。

 

「す、すまん。た、多分、俺の子だ……」

 

 ここで俺の記憶がフラッシュバック。まるでシュ○クのようにビジョンが見えた。父親が顔を殴られ吹き飛ぶビジョン。穏やかじゃないですね。

 

 バシン! 

 

 アタマの中で流れた光景と同じ光景が目に映る。泣きながらパウロに平手打ちをするゼニス。

 あぁあぁあー、もうダメだこりゃ。

 そんなこんなで家族会議に突入である。

 

 

 

 

 

 

 

 居間の食卓に全員が座った。

 まだ昼過ぎであるにも関わらず普段は明るいこの部屋がとても暗く感じる。

 

「それで、どうするつもり」

 

 ゼニスがそう一言。この一言でこの場の主導権を完全に握った。逆にゼニスから何かなければ誰も口を開けなかっただろう。

 

「奥様の出産をご助力した後、お屋敷をお暇させていただこうかと」

 

 リーリャが冷静に答える。

 まぁそう言うしかないよな。端っこのほうで身を小さくしているパウロはあてにならないし。まじダサいわーって感じ。

 リーリャはもうそれしか道は無いって顔しちゃってるよ。

 

「子供はどうするの?」

「フィットア領内で生んだ後に、故郷で育てようかと思います」

「あなたの故郷は南の方だったわね」

「はい」

「子供を産んで体力の衰えたあなたでは、長旅には耐えられないわね」

「……かもしれませんが、他に頼れる所もないので」

 

 前の時はなんとなく無理だろうなと思っていたが今ならはっきり言える。無理だ。

 体力的な面でもそうだし、普通に盗賊につかまってアウトだ。リーリャなんて特に美人だろうから慰みものルート確定だろう。そしてそのまま奴隷として売られるのだ。そんな運命を辿った奴を何人も見てきた。

 将来奴隷として働かされているリーリャ。

 そんなの死んでも見たくない。

 

「あの、母さん、さすがにそれは……」

「あなたは黙っていなさい!」

 

 パウロも俺と同じことを考えたようで端の方からヒソヒソと声を出すがゼニスに一喝されてしまった。絵に描いたような威厳のない父親だ。

 

 それ以降、場には静けさが漂っている。

 何も言わずに真顔のままのリーリャ

 どうすればいいか分からずオドオドするパウロ

 爪をかみながら葛藤しているゼニス

 

 みな現状の対処方法は分かっているのだ。リーリャの言う通りにすればいいと、

 だが頭では理解していても気持ちがそれを認めない。結局それは全員が不幸になる道であると知っているから。でも上手い落とし所が見つからず、ぐるぐると思考が巡るのみ。それがこの静寂を生み出しているのである。

 

 

 

 

 ……そろそろ動くか、

 ずっと会話に入る機会を伺っていたが今がその時だろう。逆に今を逃せばチャンスはない。よし、今だ。

 

「母様。どうして2人のことを怒るのですか? 兄弟が2人もできたというのに。寧ろ喜ぶべきでは?」

 

 前回どんなことを言って場を収めたかはだいたい覚えている。一語一句合わせることは無理だが多分ニュアンスは同じだろう。あとは子供っぽさを出せばいいだけだ。

 

「お父さん達がやっちゃいけない事をしたからよ」

 

 はい。その通りです。正しくおっしゃる通りでございます。

 でもな、その考えでいくと今の状況は些かおかしくないか? 

 だってそうだろう。

 悪いことをしたやつにはそれ相応の罰がある。これは当たり前のことだ。そして今回悪いのはパウロとリーリャの2人。

 じゃあどうしてリーリャだけが罰を受けないといけない。

 パウロだって同罪だ。寧ろパウロの方が悪い。

 だからパウロ、悪いがお前には再び罪を被ってもらう。

 

「母様。でもリーリャは父様に弱みを握られているので逆らえませんよ?」

 

「どういうこと? ルディ」

 

 ゼニスとパウロがなんだその話はといった顔を浮かべる。しかしリーリャは真顔のままだ。

 凄いな。こんな話をされても貫き通せるのか、

 ていうかあれ? この前は驚いてなかったか? 

 なんで今回は驚かないんだ。よく分からん。

 ま、まあいい。このまま話を進めるか。

 

「実はこの前、夜中にトイレに行こうと思ってリーリャの部屋の前を通ったら明かりがついていて、中から父様の声であれこれを言いふらされたくなかったら、分かるよな。と聞こえました」

 

「なっ! ルディ、なにをバカな……」

「真っ赤な嘘です!」

 

 リーリャが大声でそう言い放った。

 え! ど、どういうことだ。

 思いっきりリーリャに否定されたぞ。

 

「リーリャ、本当はどうなの。もしかしてこのバカに言わされているの?」

 

「いえ、パウロ様に言わされた訳ではございません。真実としてルーデウス様の言ったことは事実無根です。私は自分の意思で過ちを犯しました」

 

 な、なにー

 前回はこんな流れじゃなかっただろ、

 本来ならあそこから俺がゼニスを説き伏せる感じだったはずだ。何がどうなっている。

 

「ルディ。嘘をついたの?」

「い、いえ、その……」

 

「いいことルディ。世の中にはついていい嘘とダメな嘘があるわ。今回の嘘はダメな嘘よ。どうしてそんな嘘をついたの」

 

 まずいまずいまずい

 どうすればいい。なんでか知らんがリーリャに否定され、ゼニスに詰問されている。こんなはずじゃなかったのに。何を間違えたんだ。

 お、落ち着け。今考えるのはそれじゃない

 どうすればこの流れから話を上手く纏めるかだ。

 理論武装するのは難しい。だって俺は子供なんだから。子供がそんなペラペラと御託を並べるのは変だ。いくら天才でも筋が通らないだろう。

 

 ……ちょっと待てよ、

 子供……

 

 そうか子供だ。俺は子供なんだ。

 なら子供だからこそ通じる方法があるじゃないか。ちょっと恥ずかしいがやるしかない。もうこれにかけるっきゃねぇ。よーし、いくぞ! 

 

 

「う、うぇーん、わぁぁぁん、だっで、だっでいやだっだんだもん。リーリャがどごがにいっぢゃうのも、みんながながよくないのも、いやだっだんだもーん。ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」

 

 思いっきり泣いた。子供らしく大声でわめき散らした。

 みんな目を見開いて驚いている。そりゃそうだろう。だって泣いたことないもの。常に賢い子供で通してきたもの。

まぁ魔術で出した涙だけど。

 

「ル、ルディ……だめよ」

 

 よし。ゼニスが困った顔をしているぞ。後はもう勢いだ。このままゴリ推してやる。

 

「やだやだやだやだやだやだ。どおじで、どおじてなんでずか。いいじゃないでずか。ぐす、リーリャがこの家にいてもなんの問題もないじゃないですか」

 

 分かっている。問題があるとかないとかの話ではないと。

 でもそんなの知ったこっちゃない。俺がいて欲しい。理由なんてそれだけで十分だろ。

 

「母様はリーリャに出ていって欲しいのですか」

「……違うわ。でも」

「僕はいて欲しいです!」

「……」

「それに、リーリャだって、産まれてくる子だって、僕にとっては大切な家族です」

「…………はぁ。仕方ないわね。リーリャ、あなたはこの家にいなさい! あなたもその子も家族よ!」

 

 ド、ドンという効果音でもつきそうな雰囲気。

 リーリャはというと声にこそ出ていないが号泣している。折角の美人が台無しだな。

 パウロは安堵とまぬけさの混じった顔をしている。

 元はと言えばお前のせいでもあるんだからな! ったく。

 かくいう俺はと言うと、

 ま、まじ焦ったー、いやいやまさかどうしてリーリャに否定されるなんて。でも上手くいって良かったわー

 

 ついさっきまで泣いていたのも忘れて安心しきっていた。

 まぁなんにせよこれにて一件落着である。

 

 

 

 

 

 後日

 

「ルディちょっと来なさい」

 

 ゼニスに呼ばれた。珍しい。一体何の用だろうか。

 

「どうかしましたか母様?」

 

「この前のは見逃すけれども嘘をつくのは良くないことよ」

 

 どうやら先日の家族会議の時の話の続きのようだ。

 

「もちろんです。もう嘘はつきません」

 

 嘘である。必要に応じて嘘は使う。だからまぁ、この場を穏便終わらせるための嘘だなこれも。

 

「そう、ならいいわ。もちろん嘘泣きもね」

 

「え……は、はは」

 

 バレていた。母親に隠し事は出来ないな。

 

「それはそうと随分上手だったわね。もしかしてやった事があるの?」

 

「ありません!」

 

 これは嘘であり嘘では無い。

 今生ではやってない。前回はボレアス家で使ったがな。

 そんなことまで感じ取ったのか。母親は子供に対してエスパーなのかもしれない。

 

 

 

 〜リーリャ視点〜

 

 完璧に自分の落ち度だった。

 だってパウロを誘ったのは自分なのだから。

 

 初めはそんな気など全くなかった。

 雇われのメイドとして徹するつもりでいたし、仮に誘われても断る気ですらいた。パウロなら寧ろその可能性の方が高いとすら思っていた。

 だがパウロは自分には手を出さなかった。

 それどころ自分が思っていた以上に大人になっていて、その……かっこよかった。

 

 自分だって女だ。好意を寄せている男性といれば欲情もする。

 でも自分なら制御できると思っていた。いま思えば完全に自惚れである。

 

 結局溜まりに溜まった性欲は暴走し、パウロを誘った。

 

 だから妊娠は自分の罪だと思ったし、責任も自分で負う気でいた。

 

 だが、許された。

 それもルーデウスに。

 

 正直に言おう。

 私はルーデウスを避けていた。怖かったのだ彼が。

 

 ルーデウスは産まれた時から変わった子だった。

 産声を挙げず、話すのも早かった。

 それに母親の母乳を嫌がる子だった。母乳を嫌がる子などいるのだろうか。少なくとも私は知らない。

 

 大きくなってからは良く書斎にいるのを目にした。

 1度、子供の読める本などあったかと思い覗いたことがある。

 だが彼は本など読んでいなかった。

 後ろ姿だったのでよく分からなかったが手から何かが出ていたと思う。

 それが魔術の練習だったと知ったのは彼が魔術を披露した時だ。

 ただその時は分からないのに恐ろしく感じた。

 

 それからも彼は子供とは思えないほど様々なことをやってのけていく。

 初めの頃は天才なんだと片付けていたがそんな話ではすまない程に。

 それに伴って変だと思う気持ちが段々と変化し、恐怖になり、結果としてルーデウスを遠ざけるようになった。

 彼も私が遠ざけていることを感じたのか直接話しかけてくることは少なかった。

 

 それなのにだ。

 それなのに何故か、今日彼は私を助けてくれた。

 

 賢い彼はまず何も分かっていないふりをした。

 そして嘘をついてパウロに罪を着せることで私を助けようとした。

 5歳の子供がやるには余りにもレベルが高すぎることだ。

 でも何故か私はそうなる気がした。

 それと同時にルーデウスに迷惑をかけてはいけない! と思い、大声で否定した。

 ほぼ無意識だった。自分でも不思議である。避けていたはずなのに。

 

 でも良かったと思った。

 自分は許されないことをした。ちゃんと罪を背負うべきだ。

 このまま話が進めば宣言通りになるだろうと。

 

 だがそうはならなかった。

 それでもなおルーデウスは許してくれた。

 

 なんと彼は大声で泣き出したのだ。

 びっくりした。泣き顔なんて初めて見たから。そして熱弁する彼。

 結局彼の熱意に負けゼニスは私を許してくれた。

 

 余りにも恵まれている自分に涙し、ふとルーデウスを見た。

 彼は何事もなかったかのようにケロッとした顔をしていた。嘘泣きだったのだ。

 戦慄した。だが怖いという感情はなかった。

 幼い身でありながら全てを理解し、完璧に場を動かしたルーデウス。

 もはや畏敬の念を抱いていた。

 

 これから彼は大物になるだろう。

 その時に自分はそばに居ることは出来ないかもしれない。

 だからこの子を、お腹の中にいるこの子をルーデウスに仕えさせよう。

 彼に見合う子に育てあげるのだ。

 それが今できる私の罪滅ぼしである。

 

 

 〜ルーデウス視点〜

 

 それから数ヶ月は、特に何事もなく過ごした。

 午前はシルフィと魔術トレーニングという名のデートをし、午後はパウロとの剣術練習。非常に充実した毎日である。

 

 ゼニスとリーリャの仲も順調だ。

 やはりあの2人は仲良くしているのが1番だな。

 パウロはまだ怒られている様子である。仕方ない。反省しろよ! 

 

 そう思っていたのだが、どうやら俺もそのうち怒られる運命にありそうだ。

 パウロに何か小言を言う度にゼニスは俺にパウロみたいにはなるなと言ってくる。

 すみません。ちょっと無理そうです。

 浮気じゃないけど嫁3人は確定してるからなー

 いや、逆にその3人だけだからセーフみたいなもんだろう、はは、、、

 ……先の事を考えると胃が痛い。

 

 ま、まぁ人生暗いことばかりじゃない。

 明るいニュースもある。

 子供が生まれたのだ。

 かわいいかわいい2人の女の子が。

 ゼニスの子にはノルン、リーリャの子にはアイシャと名付けられた。

 いい名前だ。それしかない程しっくりくるね。

 どちらもいい子に育つだろう。

 片方は俺の子供とできちゃった婚するけど。

 ……やっぱり胃が痛い。

 

 

 

この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)

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