無職転生〜2周目だけど本気だす〜   作:そこらへんの競走馬

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ちょっと短めです。


少年期 家庭教師編
第七話「狂犬との再会」


 

 

 ロアに着いた。

 昼に出発したので今はもう夕方だ。

 

 ラノアとほぼ同じぐらいの広さなので慣れ親しんだ感じがある。

 

「……随分と落ち着いているな」

 

 外の風景を眺めているとギレーヌがそう言ってきた。

 

「どういうことですか?」

「いや、お前くらいの歳の子供がでかい町を見ると普通ははしゃぐものだがな。お前は堂々としている」

 

 そういう事か。

 子供っぽさを出すにはそういう所も気をつけた方がいいのか? 

 でもそれメンドイな。一々ガキのフリなんてしてられないぞ。

 

「そろそろ領主の家に着くぞ」

「あ、はい」

 

 いつの間にか商店街、住宅街をぬけ中心の方に近づいていた。

 そういえば全然会話してないな。これから再び仲良くなっていくにも会話は大切だろう。よし、もっと話そう。

 

「えっと、僕が教えるお嬢様はどんな方ですか」

 

 ただ話すだけだとあれだなと思い、話しながら少し探りを入れてみることにした。

 

「強い」

「え」

「お嬢様は強い」

 

 つ、強いか。まぁエリスは昔から強かったからな。

 あ! でもギレーヌに強いって言わせるほどって事は覚えてる可能性大では? 

 

「ほ、他に何かないですか」

「ん、そうだな。……これまで雇った家庭教師は全員殴られて辞めていった。お前も気をつけろ」

 

 え、暴力

 それ昔のエリスじゃないか。大丈夫なのか。

 やっぱり不安だ……

 

 

 馬車が止まった。

 

 

 

 

 

 

 館に入ると、執事の人(確かトーマスさんだったかな)に応接間のような場所に通された。

 二つ並んだソファを示される。

 

 正直いって全く緊張しない。

 なんだかんだ言って俺もそれなりの地位にいたからな。アスラ王国では一代限りだが王族扱いだった。

 クリスがエドワード王子と結婚したから結局一代限りではなくなったんだが。

 

「そちらにお座り下さい」

 

 まぁそんなことはどうでもいいな。

 俺は言うとおりに座り、ギレーヌは部屋の隅に立った。その位置なら何が起きてもすぐ対応できるからだろう。

 俺は特に何もしないけど、、、

 

「もうじき若旦那様がお戻りになられるので、しばしお待ちください」

 

 トーマスさんは、高級そうなカップに紅茶を注ぐと、入り口脇に控えた。

 湯気を立てるそれを飲む。

 うん、うまい。特段紅茶に詳しい訳では無いがこの紅茶は美味い紅茶だ。

 

 そんな風に思っているとドシドシと乱暴な足音が聞こえた。

 

「ここか!」

 

 乱暴に扉が開いて、筋骨隆々とした一人の男が入ってくる。

 そう、俺の大叔父サウロス・ボレアス・グレイラットである。

 相変わらずのご様子だ。

 

 俺はカップをおいて立ち上がり、右手を胸に当て、少しだけ頭を下げた。

 

「初めまして。ルーデウス・グレイラットです」

 

 サウロスは鋭い目で俺を睨む、

 

「フィットア領主のサウロス・ボレアス・グレイラットだ。パウロのガキにしては礼儀がなっているな!」

「母に教わりました」

 

 嘘である。

 

「ただ礼儀正しいだけの中身がない奴はろくな奴にならんぞ!」

「心得ております。誠心誠意務めさせていただきます」

「その心意気やよし! 自分のなすべきことを理解しているようだな。この屋敷への滞在を許す!」

 

 そう言うとサウロスはバッと振り返り、そのまま肩で風を切って退室した。

 どうやら上手く受け答えできたようだ。

 

「いやはや、ルーデウス様はお若いのに礼儀がなっておられますね」

「いえ、あはは……」

 

 トーマスさんに褒められた。なんだか照れくさいぜ。

 

 と、そこで扉から一人の人物が登場する。

 

「どうしたトーマス。扉が開けっ放しじゃないか。あと、父さんがやたら上機嫌だったけど、何かあったのかい?」

 

 もちろんフィリップ・ボレアス・グレイラットである。

 

「これは若旦那様。申し訳ございません。先ほど大旦那様がルーデウス様に会われまして。気に入られたようです」

「ふーん。父さんが気に入るねぇ〜。これは当たりを引いたかな?」

 

 フィリップはそう言うと、俺のいる場所の丁度対面のソファに座った。

 

「初めまして。ルーデウス・グレイラットです」

 

 先程と同じように挨拶をする。

 するとフィリップは俺の値踏みするかのような目で見てきた。

 

「なるほどね。最低限の礼儀作法はあるようだ。どうぞ座ってくれ」

 

 フィリップはソファにどっかりと腰を下ろす。

 言われるまま、俺も座る。

 

「話はどこまで聞いている?」

「えっと手紙を読ませて頂きましたので……」

「そうか、なら話は早い。では今から娘に会ってきてもらう」

 

 あ、面接もなしか。

 まぁあっちから頼んできたしな。この家に来た時点で採用か、

 

「今のところ、あの子が気に入った教師は礼儀作法のエドナと、剣術のギレーヌだけだ。今までに5人以上解雇している。そのうちの一人は王都で教鞭を取っていた男だ」

「ギレーヌに聞きました」

「へー。それでも引き受けるの?」

「まぁ大丈夫だと思っています」

 

 仮にエリスが忘れていても、今の俺にとってエリスのパンチはご褒美でしかない。ドンと来いである。

 

「なるほど。以外と頼もしいね君。だがある意味不安だな」

「不安、、、ですか?」

「ああ、君に娘を誑かされないか不安だよ。なにせ、パウロの息子だからね」

 

 目の付け所がいいですね! 

 お宅の娘さんは僕が頂きますよ。そして愛情の名のもとで犯して子供を産んでもらいます。

 いや、犯されるのは俺の方か……

 

「どうしたんだい黙り込んで」

「あ、いえ。なんでもありません」

「……まぁいいか。とり会えず娘に会ってもらおうじゃないか。トーマス、案内してあげて!」

 

 フィリップはそう言って立ち上がった。

 いよいよエリスとの再会である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は今、エリスの部屋の扉の前に立っている。

 

 ごくん

 えもいえぬ興奮で生唾を飲むんだ。

 覚悟を決め、扉をノックする。

 

 すると返事は返ってこず、いきなり扉がバン! っと開かれた。

 

 目に入るのは幼さがあるが整った顔と美しい赤色の髪。

 正しく昔のエリスだった。

 

「えっと、今日から家庭教師になる、ルーデウス・グレイラットです」

 

 とりあえず名乗りをあげるとエリスは顔を赤くした。そのあと少し悲しそうな顔をする。

 

「え、エリス・ボレアス・グレイラットよ」

 

 おや? 怒鳴られないぞ。それになんだか俺の事をチラチラ見てくる。

 これはさてはあれだな、覚えているな。

 ふーん、ほーん。でもあっちは気づいていない様子。

 

「おっぱい揉んでいいですか?」

 

 バシン! 

 殴られた。ちょっとよろめく俺。

 軽く揶揄うつもりでやったのに……

 

「相変わらずいいパンチだな」

「なによ! いきなり。……え」

 

 エリスは目を丸くして俺をみつめる。どうやら困惑しているようだ。

 

「どうしたんだいエリス? 俺の事忘れちゃったのかい?」

 

 キザったらしくそういった瞬間

 俺はエリスに掴まれて、部屋の中に連れ込まれた。

 そしてそのまま俺を抱きしめながら床に押し付ける。

 

「ルーデウス、ルーデウス、ルーデウス」

 

 泣きながら俺の名前を呼ぶエリス。

 流石というか力ではどけることも出来ないな。

 

「誰も、誰も覚えてなくて、ルーデウスも覚えてなかったらどうしようって」

 

 そうだよな。周りがそうだと不安になるよな。

 俺は倒れた状態のままエリスの背中をさすってやった。

 

 

 

 

 10分後

 

「落ち着いた、エリス?」

「も、もう大丈夫よ!」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめながらそう言い返すエリス。

 もう、可愛いなぁ。

 

 俺たちは今エリスのベットの上で肩を並べて座っている。

 エリスのいい匂いがしてきて非常に良い。

 

「そ、それでルーデウスも覚えてるの?」

「ああ、覚えているよ。それに俺だけじゃない。シルフィもロキシーも覚えているんだ」

「ほんと! そうなのね、よかった。私だけだったらどうしようって」

 

 そういう不安もあるのか。

 まぁ確かに俺も自分だけだったら結構キツかったかもしれない。

 いや、確実にキツいな。エリスは本当によく頑張ったと思う。

 

 なんだか無性に撫でたくなったのでエリスの頭を撫でた。

 

「何よ急に!」

「いや、撫でたくなっただけで……」

 

 そんなに怒らなくても。悪かったけどさ。

 

「そ、そう。じゃあ続けてもいいわ」

 

 ああ、なんだ怒った訳じゃないのか。ちょっと驚いただけか。

 じゃあ遠慮なく。

 

 それから俺はエリスの頭を撫でながら

 これまでの事、これからのことを全て話した。

 

「……ってことで転移事件から家族を救って俺たちは魔大陸に行こうと思う」

「分かったわ。流石ルーデウスね!」

 

 何が流石なのかイマイチよく分からんがいいか。

 それより今度はエリスについて聞こう。

 

「エリスは俺に会うまで何があった?」

「何も無かったわ」

「えっと、何も無かったってのは?」

「何も無かったは何も無かったよ!」

 

 腕を組んで自信満々に答えるエリス。

 何も無かったってことは前世通りってことか? 

 

「じゃあ家庭教師を殴って辞めさせたのは?」

「ルーデウス以外は認めないわ!」

 

 さいですか。

 非常に光栄でございます。

 でも聞きたいのはそこじゃなくて、なんで殴ったかなんですけどねぇ。

 

 ……まぁ逆に俺以外の奴が教えてたらムカつくからいいか。

 次の質問をしよう。

 

「それじゃあ俺をどうやって呼んだの?」

「それはね」

 

 ガチャ

 

 エリスが説明を始めようとしたその時、部屋の扉が開かれた。

 

「遅いと思ったら、随分仲良くなったじゃないか」

 

 半笑いでフィリップが入ってきた。

 ま、まずい。フィリップからしたら

 気難しいはずの娘を瞬く間に手懐けたいけ好かない奴だぞ俺。

 

「お父様! ありがとう。希望通りよ」

「そうかい、それは良かったよ。ねぇルーデウスくん」

「あはは、そ、そうですね」

 

 ああ、生きた心地があまりしない。顔怖いよフィリップパパ。

 てかなんだ? 希望通りって。

 

「その、希望通りってどういうことですか?」

「ん? まだ話してなかったのかいエリス」

「今から話すところだったの!」

 

 希望通りってもしかして俺の事か。

 なるほど条件を俺に合うようにしたのか。エリス賢いな。

 

「では僕からエリスの希望を伝えよう」

 

 フィリップが話したエリスの希望はこうだ

 ・男である

 ・自分より年下である

 ・魔術が使える

 ・頭がいい

 ・フィットア領内にいる

 

 な、なんだそれ……

 

 年下で魔術師って時点で高難易度なのにそれに加えて領内って。

 そんな奴いないだろ! いやいるんだけどさぁ

 

 呆れてエリスの方を見る。

 いや、そんなドヤ顔されても。

 

「正直初めはどうしたものかと思ったよ。だがね、探してみるといるじゃないかそんな子が。しかも驚いたことに身内に。本当に奇跡みたいだよね」

「す、凄いですよね〜」

 

 ほら〜怪しまれてるじゃん。どうすんのこれ? 解雇は嫌だよ俺。

 

「……まぁいいか。とりあえずルーデウスくん。部屋を案内するからついてきて。エリスはここにいる!」

「分かりました」「……分かったわ」

 

 

 俺は前回と同じ客間を自室にしてもらった。

 そこで一息つく

 

「初日から忙しかったな」

 

 今日あったことを振り返りながらそう呟いた。

 

 まぁなんにせよ、エリスが覚えていた。非常に喜ばしい。

 これで嫁が全員オレの嫁になることが確定した訳だ。

 え、やばい。いくらなんでも最高がすぎるじゃないか。

 

 

 興奮しすぎて寝れないかもしれない。

 いや、だめだ。早く寝よう。

 明日からいよいよ家庭教師の始まりなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この先の展開どれがいい。(執筆スピードに影響はございません)

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