黙示録狂騒満喫譚   作:ヤン・デ・レェ

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最後の晩餐その2

色々な決め事があった日から一年も経てば、美玖はすっかり花の女学生って感じになった。

 

今どきの女子を俺は知らないが、何を着てもよく似合う。俺と同じ家で同じものを食べているとは考えられないな。

 

ついこの前、彼女の誕生日プレゼントに何が欲しいか聞いた。俺はサプライズは苦手だから相手に聴いて、本当に欲しい物をプレゼントすることにしてる。

 

流石の俺でも…リカの「ハンヴィー欲しい」と「禁制小火器が欲しい」には困った。だが在日米軍の伝手と警視庁をさりげなく動かしてちゃんと誕生日当日にプレゼントした。

 

禁制小火器の方は、名目上は演劇で使用するための外国製<小道具>として輸入した代物だから、本物だとバレると不味い。なるべく一目にはつかない様厳重に保管してもらっている。

 

話が逸れたが…俺は「身に着けられる物が欲しい」という美玖にカチューシャをプレゼントした。

 

「あ、あの!嬉しいです!ありがとうございます!」

 

「うん。喜んでもらえたようで俺も満足だ。」

 

いつもなら俺の事だから高度10000フィートでも正常に稼働する腕時計とか、クマを撃退できて尚且つ長く延びる高電圧スタンガンとかを贈っていた筈だ。

 

だが…これ見よがしに食卓や風呂上がりに前髪が邪魔そうな仕草を見せられれば、鈍感じゃないので俺でも気づく。

 

「GPSを仕込んである。もしもの時は、内側のボタンを押せ。俺も親機を持ってる。」

 

「もしかして…人差し指の指環のことですか?」

 

「あぁ、緊急電波を受け取ると模造ダイヤの所が赤く光るんだ。かさばらない様に埋め込み式だから俺が身に着けてても変じゃない。」

 

それからしばらくして、二年目の誕生日に親機みたいな指環タイプをねだられて…まぁ、結局用意した。普通のカチューシャとダイヤ部分を押し込むと電波を飛ばすタイプの指環をそれぞれ贈った。凄い喜びようだったな。用意してよかった。

 

 

 

俺の家で美玖が暮らすようになってから、家事は美玖が助けてくれるようになった。リカや静香も気を掛けてくれて、週に一度は家で朝飯を食う。浩一は流石に遠慮していた。まぁ、今や生徒と教師の関係だからな、真面目な浩一は依怙贔屓してしまわないように気を遣うのだ。

 

ある日は、俺とリカと静香の三人で少し遅めの朝食を摂った。あの時は確か二年次の修学旅行でお泊りに行っていたのだ。だが、俺は美玖のことが心配だった。だからこの時は美玖の持ってる発信機の電波を頼りに、変装して尾行しつつ常に一キロ圏内で過ごしてた。

 

過保護な俺を見透かすように、日程二日目にはなぜかリカと静香も加わって三人で美玖を見守っていた。この時に美玖の泊っているホテルの近所の民泊で、三人で食事を楽しんだのだ。俺たちが和食膳に舌鼓を打っている十時過ぎ頃、美玖たちは二日目の屋内レクリエーションだったか?なので少し安心だな。

 

運転は俺が担当するからな、寛いで酒の入った静香が仲居さんの前で脱ぎ出したのを鮮明に覚えている。

 

リカに介抱を任せようとしたら、彼女も酔っていてそのまま俺は押し倒されたのだ。大変不健全な真似を真昼間から経験したせいでかなり、そう…かなり美玖と顔を合わせるのが気まずかった。

 

リカが乱れる静香を携帯で写真に収めていた所為で後日、静香は顔を真っ赤にして気絶したそうだ。

 

うん…初めてだったもんな。酔いに任せて一気に腰を落とすからそうなるのである。

 

それと、いくら俺が抵抗したからって頭を一升瓶で殴られた件は少し怒ってる。いや普通に瓶砕けてたし、あれ俺じゃなきゃ気絶じゃ済まないからな?

 

まぁ、初心なのに最初があんなことになったのは気の毒だから許すけど。

 

和食膳は小鉢が豊富だったなぁ、あと刺身と地酒が美味しかった。帰りは大人三人でラーメン食って帰った。そろそろ冬に入る頃だ、一番熱い食べ物が美味しい季節で良かった。ただ、イタズラで俺のラーメンに山ほど唐辛子を掛けるのはナシだ。辛い物は苦手なんだ…。

 

 

 

 

美玖が三年になるのと同時に、俺は少し家を空けることが増えた。

 

理由は厄介な仕事の依頼で日本に居られなかったのである。依頼主はおそロシアのクレムリンからだった。科学者数人の護衛任務らしく、その点に関して文句はなかった。ただ…少し、いやかなりきな臭かったので値段を釣り上げた。

 

だが、それでも仕事を再三依頼してくるので、仕方なく受けることになったのだ。向こうも分かってはおるだろうが、俺は一応合衆国の伝手で仕事にウラがないか調べて貰うことにした。

 

裏取りが終わる直前に俺は科学者と面会した。幾つか契約内容と具体的な業務の内容に関してすり合わせを行ったのだが、科学者たちはシロだったと思う。メンツは中国人とロシア人とインド人、あとはモンゴロイド系や東欧系が数人いたな。

 

<研究内容に関しての理解>も一応はこっちが不測の事態を回避する為に聴取する権利がある。そう予め俺との契約には記載してあった。だが、こっからは少し芳しくない。どうにも渋るのである。

 

結局この点に関してはほとんど建設的な会話が成立せず、さりげなく新種の薬品精製のための研究程度にはぐらかされてしまった。釈然としないが…向こうが無理やり前金で全額振り込んできた所為で断りにくい。いや、断るべきなのだが…この一件にはアメリカも敏感なようで、できれば仕事を受けて内情を少しでも報告して欲しいとのことだ。

 

米ロ双方から同時の依頼…流石に断れなかった。大統領もかなり心を砕いてくれたそうだが、恐らく数年前から話題になってた中露合同の新種細菌の研究施設との関連が強かったのだろう。

 

俺は中途半端な情報と日程表だけを貰い、周辺地図すら渡されずにこの仕事に望むことになった。

 

 

 

結果から報告すれば…ヌルいしごとだったなぁ。

 

研究所に着いて、それから検査の為に血を抜かれて、あとは極寒の館内をさらっと視察するだけだった。

 

…これ、俺じゃなくてもよかったよな?

 

追い出されるように先行してモスクワに帰されて、そこで接待と後金を渡された。額は事前に俺が釣り上げた額の倍。あまりの気前の良さに薄気味悪くなり、貰った金はさっさと物に変えた。

 

前金も併せて自家用機を購入した。USAFの型落ちだが、改造すれば問題ない。アメリカからの報酬として機体の融通と、あと在米基地に置いて貰う代わりに金は貰わなかった。

 

気持ちの悪い仕事だったが…それ以外は寧ろ美味しい仕事だったな。

 

 

 

美玖と静香が夏休みに入り、リカも少し有休を消化すると言う事でアメリカに飛んだ。

 

気が付いたら静香も藤美学園に見習い女医として勤めていたので驚いた。なんだか…あの学園とは縁があるみたいだな。いや、家から近いだけか?

 

折角なので自家用機に乗って行くことにして、向こうの空軍基地に着陸許可を貰ってから出発した。

 

操縦は俺、それからもう一人お雇いを副操縦士に、それから航法士やら含めて四人ほど雇ってから出発した。こうみえてハンドルさえあればなんでも運転できることは自慢である。勘が頗る良いもんでね。

 

 

 

俺は正直日本の方が住み良くて好きなのだが…家族サービスという奴だ。

 

家でのんびりするよりも、少し非日常を経験したいリカとアメリカに行ってみたいミーハーの静香。そして家族旅行と聞いて心躍らせた美玖が一致団結(えっちだんけつ)したのだ。

 

リビングで件の研究施設に関するドキュメンタリー番組を見てたら突然画面が真っ暗に。驚いて顔を上げると、突然水着の美女三人に包囲されていてびっくりした。この時の俺はいつもの淡々とした表情じゃなくて、目と口をポカんと開いて固まっていた、とリカが笑いながら言ってたよ。

 

「ねぇ、トニー!アメリカに行きましょ!夏だから本場のビーチに行きたいわ!ほらッ…その為にこうして水着まで新調したのよ?」

 

リカはセクシーな黒のモノキニを着ていた。猫にするように囁きながら、俺の顎の下をその細く長い指で擽った。

 

引き締まった小麦色の肌を惜しげもなく晒して、女豹のように俺に熱いカラダを絡ませてくる。

 

<<ポヨーン!>>

 

「リカちゃんに賛成~!私も行ってみたぁ~い!!ね?ねねね?イイでしょ?お願いおねがーい!ほら、私もお医者さんに成れたことだし?そのお祝いってことで…どう?トニーちゃん?ね?…ダメかな?」

 

静香は無邪気に俺を背後から抱きしめつつ、無意識にもネコ撫で声でこれでもかとねだってきた。

 

明らかにリカの作為的なものを感じる。

 

何故ならば、鞠川の鞠に紐が沈み込んでしまうワンサイズ足りていない感が満載の、真っ白なビキニを纏っていたからだ。

 

鞠が…鞠が…鞠がッッッ零れているッッ!!!

 

俺は血を吐きそうな心境で、静香の警戒心の低さに恐怖を抱いた。

 

<<ドッボィーン!!!>>

 

「トニーさん!私も!私の事も!か、家族旅行に連れてってください!生スタチューオブリバティ、一度でいいから見てみたいです!」

 

美玖も美玖で何を血迷っているのだろうか?

 

俺は保護者として頭を抱えずにはいられなかった。

 

美玖は俺の左側に陣取り、リカと静香を大きく引き離してセクシュアルな、一瞬ランジェリー化と見紛うような上品な臙脂色の水着を着用していた。

 

惚けていたのが悪かった。美玖は悪辣な顔(トニー視点)で俺の左半身にしがみついた。バレーボールの谷に腕の主導権を奪われてしまう。

 

俺は断言できるがカラダだけでは狂わない…だが、どうにもこの女達のカオは最高に俺の好みなのである。面食いの俺にとってこの事象は、その首から下の全てにまで執着を抱くのには致命的過ぎることだった。

 

万事休す!左半身失調!

 

<<ダプーン!!>>

 

「………」

 

なかなか過激な提案だったが、鋼の精神力を持つ俺は頷かなかった。だって、家でゆっくりしたいし…それに、あっちは物騒だから三人に何かあったら嫌だし。

 

 

だが三人も三人で諦めるつもりは無いようである。俺は度重なる重爆撃に晒された。そう、頬が赤く腫れあがるほどに…な。

 

「トニー!!」

 

ポヨーン!ポヨーン!ポヨーン!

 

「トニ~ちゃん!!」

 

ドッボイーン!!!ドッボイーン!!!ドッボイーン!!!

 

「トニーさん!!」

 

ダプーン!!ダプーン!!ダプーン!!

 

 

格闘すること三十分…俺は生まれて初めて敗北した。

 

拭い難い…そう、動物種としての敗北感を感じたぜ。

 

「…………ワカッタヨっ。」

 

少し腫れた赤い頬を摩りつつ、俺は三人の提案を承諾した。

 

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