黙示録狂騒満喫譚   作:ヤン・デ・レェ

22 / 31
スラッグ実包×0発(0発:6発:8発)24発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定


DAY1・6「オタク君さぁ…」

トニーと冴子を先頭に、離れない様に美玖と静香が互いを庇いながら進んだ。トニーと冴子という双璧の前に、職員室迄の道のりは孝や麗と共に永を背負って進んだ時とは比べ物にならない迅速さで進むことが出来た。素早く慎重に廊下を渡り、階段を上り、そしてあとワンブロック進めば職員室だ、という所で悲鳴が廊下に響き渡った。

 

「くっ来るなぁあああああッ!?」

 

トロフィーや盾。藤美学園の栄誉の証。今となっては無意味の権化、それらを次々に投げつけながら、腰を抜かした可憐な少女が雄たけびを上げていた。

 

「高城さんから離れろおぉォォ!!」

 

可憐な少女の横で、小太りの眼鏡の青年が弾の切れた釘打ち銃のお手製銃床で、少女に迫る<奴ら>を殴りつけるも効果が薄い。

 

「な、何とかしなさいよおォォ!!デブオタ平野のクセにぃぃ!!」

 

遂に血が服につき、物凄い剣幕で涙鼻水ほか色々を隠すのも忘れて喚く少女。向かう矛先は<奴ら>…ではなく、必死に少女を助けようとするも明らかに力不足の青年。

 

「ご、ごめんなさいいい!!クソッ!このっ!このっ!はなれろよぉぉ!!」

 

いやに腰の低い青年に、なんとなく可愛げとも面白さとも呼ぶべき類を感じたトニーは、飛び出しかけた冴子を押しとどめると、バックサイドホルスターから瞬時にピストルを引き抜き、これに消音器を取り付けながら、かの修羅場に駆けた。

 

 

「もうッ!イヤぁッ!!!」

 

修羅場のグラウンドゼロでは、もはや耐えかねた少女が近くの袋から取り出した電動ドリルを空回りさせていた。このままだと近い未来に服が血と脳漿塗れになること間違いなしである。

 

「た、高城さんを離せええええ!!」

 

半ば折れたお手製の角材ストックに目もくれず、必死に少女に近寄る<奴ら>に立ち向かう青年。眼鏡小太りの外見に恥じぬ戦闘力ながらも、案外根性あるなコイツ…というかなり高い評価をトニーから獲得した平野青年に向けて、トニーはお遊び半分、その奮闘への敬意を半分に声を張った。

 

「屈め、一等卒。」

 

「イッ!?イエッサー!?」

 

空から鬼軍曹が降って来た。或いは百戦錬磨の将帥が降臨した。そんな錯覚を本気で起こすような、威厳に満ちた渋い声に突然囁かれた平野青年は、その遺伝子に刻まれた大和魂と軍オタ魂に忠実に、ほぼ反射的に全力でその身を屈めた。

 

<<タカッ!タカタカッ!タカッ!タカッ!>>

 

頭を軽く撫でられる感触。次いで疾走感と風を感じ。そして最後にくぐもったガスを殺す独特の音と共に、運ばれて来た懐かしくも忘れじの硝煙の薫り。

 

「ヒィッ!?…あ、あれ?」

 

「無事か?ん?どこかで…見覚えがあるな…。」

 

倒れた<奴ら>と無事な自分を交互に見ながら、今の自分の状況を把握しようと、涙を拭いながら頭を必死に働かせる少女。

 

彼女の顔をどこかで見た覚えがあったトニーは、その時の記憶を掘り起こしながら、安全になったことを知らせるべく冴子たちの方へ振り返った…

 

「あ、あ、あ、あの、どうも、ぼぼっ、僕は平野コータと申します!!あのあの、そ、それってもしかするとシグザウエル社製のコンシールドキャリーに特化して開発された小型拳銃のP365SASだったりしますかあぁぁぁ!?あ、あの、初めて見たかも!す、すすす凄すぎる!9mmパラベラム弾が最大10+1発装填できるのにこのコンパクトさ!しかもサプレッサー付きなんて…特注でカスタムしてあるんですか!!うっひょーッ!しかも、この威力、多分+P弾ですよねぇ!じゅるり…あ、あぁ、しかもこのレーザー…ナイトサイトのトリチウムファイバー管と同じ緑で統一してるなんて…粋過ぎません!?趣味が良すぎです、スコスコの好コです!アッ!その肩に掛けてるのって、もしかしてレミントンですか!?えぇ~~!!しかもストックが独特な…ファッ!?M870ロングフォールディングストック!?な、なんてもん持ってるんですかぁ~!!うわあッ!バレルとマガジンチューブの先端が同じ長さだぁ!しかも先端のそれって…ショットガン用のサプレッサーなんて…そんな変態装備どこから??もうッ日本の法律破りすぎですよぉ!コヨーテブラウンの全身戦闘服姿で現れたからSEALsかと思ったじゃないですか!あれあれ??しかもタクティカルベストに…腕に脚部に…この防御板とか腿の裏まで覆うプロテクターって、もしかして対咬合用に御自分で用意したんですか!?うっわ凄すぎ…こ、これは間違いない…緊急時に敵の特徴を的確に研究した上でカスタムされた、ほ、本物の戦闘服だあ~…グヘへへ…ああの、あと、あとはぁぁ…」

 

振り返ったつもりだったが、そこに居たのはどういう原理なのかは理解不能だが、眼鏡を爛々と光らせて鼻息荒い小太りの青年が、直立不動で敬礼をしていた。敬礼の状態からよくもまあそんなに早口で喋れるものだ、と感心していると復活した少女が青年を怒鳴りつけていた。

 

「いい加減にしなさい!このデブオタ!!おじさんが引いてるでしょ!!」

 

<おじさん>というキーワードで、トニーの記憶の鍵が開いた。手鼓一本。なるほど思い出した。

 

「平野君、お陰で思い出したよ…久しぶりだね、高城ん家の…百合子の娘の沙耶であってるよな?」

 

「はい…あの、さっきは、そのありがとうございました…あの、此処にはパパとママから言われて?」

 

トニーが相好を僅かに緩めると、高城沙耶は一礼し、それから両親の要請でここまで救出に来てくれたのかと、両手に握りこぶしをつくりながら、かなり前のめりになって聞いてきた。

 

「壮一郎は関係ない。家族を連れ帰りに来たんだが…何かの縁はあるもんだな、君を救えてよかったよ。」

 

「あ、そう、ですか…。あの、ありがとうございます。」

 

トニーは期待に沿えないことに罪悪感を感じつつも、寧ろ偶然であれ良かったと思うことにして、正直に自身が無所属でここに立っていることを説明した。

 

「さあ、まずは職員室に入ってくれ、話はそれからにしよう…君もだ、平野君。」

 

なんとなくどんよりしてしまった沙耶を冴子と静香に任せ、トニーは職員室の戸を叩いた。中からトニーの無事に安堵する孝と麗の声が聞こえて来たのをきっかけに、少しずつバリケードが開いていく。隙間から沙耶たちを先に入れ、周囲を油断なく警戒していると、まだ一人直立不動の兵士???が居ることに首を傾げた。よく見るとそれは、劇画調に敬礼をビシっと決めてトニーを見つめる平野青年だった。

 

「あッ!ハイ!了解であります!」

 

驚きつつも、平野青年に入室を促したが、どうやら変なスイッチが入っているらしく、ありもしないM1ガーランドが幻視されるほどに室内でも姿勢を崩さない。

 

「…うむ、休んでよろしい。」

 

「サーイエッサー!!」

 

少し、危険なスイッチを押してしまったかもしれないな…。トニーは答礼しながら、心の中で小さく懺悔した。

 

 

 

 

 

「さて、なんだか知り合いの割合がグッと高くなった気がするんだが…まずそれはイイとして…。」

 

職員室内で今後についての話し合いと、情報の共有や互いの自己紹介を熟したことで、何となく弛緩した空気が漂い始めていた。

 

「な、なぁ、平野落ち着けよ!」

 

その証拠に、孝を押しのけて平野青年こと、平野コータは孝が預かっていた拳銃を穴が開くほど見聞しながら、奇声を上げて小躍りしている。

 

トニーはボストンバッグから食料品やらを用意していたのだが、麗や静香の看病を受けながら永が魘され始めたのを見て、そろそろコータを鎮静させる必要性を感じていた。

 

「うおおおお!!スゲーー!?これって、スタームルガー社製のLCRですよねッ!!すげぇぇ!!ウッヒョー!!しかも握ると赤いレーザーが出るように成ってる…ちゃんとクリムゾントレース社純正品だ…これって、もしかして、やっぱり銃に不慣れな僕たちを戦力として数える為に、だったりしますか!?」

 

キラッキラ!の視線を破壊光線の如く向けてくるコータに、一歩たりとも物怖じすることなく、トニーは彼の話に耳を傾け、彼の疑問にすっかり答えてしまうことに決めた。一度、ある程度まで吐き出させてしまう作戦である。

 

「…ご名答だ、ダブルアクションだけだから操作に迷いは生じない。トリガーを引けば撃てるからな。故障もオートマチックよりもしにくい分、信頼性に足る。何より銃を触ったことが無い者でも、赤いレーザーサイトに頼れば無理に<狙う>動作をしなくて済む。照準合わせに手間取らなければその分視界を広く保持できる。視野が広ければ生存率も上がる。…どうだろう、満足していただけたかな?」

 

彼の情熱を認めつつ、トニーは指示を聞いて貰えるように、より深く言えば暴発しない様にコータに語り聞かせるように言葉を紡いだ。

 

「は、は、はいっ!そ、それはもう!…あ、あのう、実はですねぇ…」

 

「その様子だと、実銃に触れた経験もあるようだな。銃口管理に余念がなさそうだ。」

 

コータが言いたいこと、それは既に分かり切っていた。なぜなら孝や麗に預けたルガーLCRに向ける目が、変態が女性のヌードに向けるそれと同じだったからだ。

 

「ハイ!ハイ!そ、そうなんです!実はアメリカのPMCで、ブラックウォーター社のインストラクターから研修を受けたことがありまして…それでっ!それでッ!!」

 

「うむ、そうだな。なら君にはこっちの方で問題なさそうだな。」

 

コータの望みに答えない理由はなく、何よりもそのことが彼にとってもトニーの守りたいものにとっても、他の者たちにとっても有益だ。そんなトニーの最終判断により、コータはその手に実戦で初めて銃を装備した。

 

その歓喜は理解できぬものは一生理解できず、理解しようとしても当人をおいて他には体感が許されず、表現の叶わない、それほどの感動だった。文字通り、コータは涙が出る程嬉しかったのである。

 

「え?あ?あ…ナッ!?やった…本物だ…本物のS&W社の380ボディガードだッ!先端もねじ切り済み…サプレッサーもある!?ま、マガジンも三つもある!!…モンドさん、実は凄腕のエージェントだったりします???」

 

大興奮のコータが詰め寄り、ひそひそ真顔で聞いてきた。

 

「不満か?」

 

これに対するトニーの返答は不敵に笑い返すのみ。

 

「大満足です!!!」

 

諸手で万歳三唱を唱えそうなコータ。彼はある意味トニーの漢気に、すっかり首ったけであった。

 

「オートマチックならそれでも十分威力がある。今は取り回しの良さの重視、それといざという時のための個人武装だ。大型火器は大口径拳銃も含めて安全上もそうだが、それ以上に今は用意が無いので持たせられない点を理解してくれ。銃は時間の都合上全員分用意できなかったが、弾薬と非常食、救急キットは余分に用意してきた。今は先ず、少し休もう…。」

 

二人のやり取りに注目が集まっていたのを思い出してから、トニーは咳払い一つ。それから取り出した軍用レーションやら、家に備え置きしてあった市販のお菓子なんかを配り始めた。

 

トニーによる諸注意と、新品のMREに狂喜乱舞するコータの感涙の咽びとを背景に、縁あって職員室にて一堂に会した生存者たちは、あたりまえの日常が終わって幕を開けた新たな世界での、初めての食事を味わった。

 

 

 




装備&状態

スラッグ実包×0発(0発:6発:8発)24発
9mm弾実包×5発(5発:5発:5発+1)60発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定

・トニー・主水*状態…安定>心配
 主武装…レミントンM870ロングフォールディングストック(サプレッサー:サルボ12)
 副武装…シグザウエル社製P365SAS(FOXTROT LIMA365レーザー緑+サプレッサー)→バックサイドのカイデックスホルスターに装備(M49から交代)
 その他…コヨーテブラウン戦闘服、アラミド繊維製対咬合戦闘用改造プロテクター(両腕両脚部)、特注ククリナイフ(腕の一二本簡単に飛ばしますからね)、衛星電話


・小室孝*状態…不満>不安
 主武装…金属バット
 副武装…スタームルガーLCR(クリムゾントレースレーザー:赤)
 その他…不良の携帯電話

・宮本麗*状態…不安>混乱
 主武装…槍(モップ)
 副武装…スタームルガーLCR(〃)

・井豪永*状態…瀕死
 主武装…NONE
 副武装…NONE
 その他…輸血パック

・鞠川静香*状態…安心>心配
 主武装…NONE
 副武装…NONE
 その他…救急キット(トニーより譲渡)、各種医薬品

・夕樹美玖*状態…安心>不安
 主武装…NONE
 副武装…NONE
 その他…カチューシャ、指環型GPS

・毒島冴子*状態…嫉妬>…>>>濡れるッ!
 主武装…木刀
 副武装…??? 文字化けしていて読めない…
 その他…落とし物のライター(御守り)

・高城沙耶*落胆>不信
 主武装…NONE
 副武装…NONE

・平野コータ*感謝感激!!!>>>不安
 主武装…手作り!釘打ち銃
 副武装…S&W 380ボディガード(レーザー内臓:赤+サプレッサー)



☆☆☆☆☆
石井かず*男の意地>諦観>死への恐怖
 主武装…保健室の点滴スタンド
 副武装…NONE
 その他…手向けのベッドシーツ
特記事項…黙示録の顕現した終末世界において、類稀なる勇気と自己犠牲を払った、その義務の求めを遥かに超越した勇敢な行為をここに顕彰する。僭越ながら、彼の栄誉が永く人々に記憶されんことを祈願し、ここに黙示録十字勲章を授与する。鞠川校医を守ってくれて有難う。R.I.P.
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。