9mm弾実包×0発(0発:5発:5発+1)60発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定
職員室の床や教員の机の上にはスナック菓子やチョコレートバーやMREの空の包装紙がまとめられていた。食事中の会話を通して、その場に居合わせた生存者たちの間には既に連帯感のようなものが育まれていたが、そのなかでもやはりトニーの存在は少し浮いていた。
食後の眠気で口数が少なくなってきたのを見計らい、唐突に始まった自己紹介の流れを作ったのはトニーだった。
「改めて、俺はトニー・主水。トニーと呼んでくれ。ここには浩一…紫藤浩一とここに居る夕樹美玖、鞠川静香の三人を保護する為にフリーで、つまり個人的にここまで来た訳なんだが、君たちのことも少し教えてくれないか。これからどうしたい、とかな?」
「あ、はい。俺が二年の小室孝で…こっちの手当てしてもらったのが、親友の井豪永です。」
「私は三年の宮本麗…です。槍術部で、柄の長いものなら扱えます。」
「私の番かしらぁ?え~と、校医の鞠川静香です。トニーちゃんとは家がお隣同士で、あとは噛まれた以外なら応急処置ができるわ!」
「三年の夕樹美玖…トニーさんと静香さん、ここにはいないけどリカさんにもお世話になってます。」
「毒島冴子だ。三年で剣道部の主将を務めていた。」
「へ…へぇ~…あ、僕、僕は二年の平野コータって言います。実銃を使ったことがあるので!トニーさん、僕に何かできることがあればっ!是非、言ってください!!」
「おぅ、そうだな頼らせて貰うよ。」
ぎこちないながらも始まった自己紹介。銃を持って現れたかと思えば、<奴ら>を殴り倒し蹴り倒し、職員室に籠城するまでを主導したことは全員がトニーの実績として認めていた。その素性は怪しいが…知り合い自体はいるものの、前触れもなく起こった非常事態に即座に対応できたことへの疑念が生まれることは、満腹になり冷静になる余裕が生まれた烏合の集団にとっては当然のことだった。
「…二年の高城沙耶。以上よ。」
「ありがとう…名前はわかったよ。なら次だ、今後どうしたいのか教えて欲しい。それ次第で俺が持ってきた物資を分配することになるからな。」
「あの、おじさん、その前に聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ?沙耶。」
「どうしてすぐに動けたの?その、確かにおじさんには小さい頃お世話になったけど、その時も別に役人ってわけじゃなかったわよね。言っちゃ悪いけど…一介のボディガードがどうしてここまで迅速に動けたのか、その装備にしたってじっくり<奴ら>を観察しなきゃ準備できなかったんじゃないの?でも、そんな暇はなかったはずよ。」
「……ああ、そうだな。」
「じゃあ、何か隠してるの?その銃にしたってオタクの話じゃ違法なものもあるし…これで本当にどこにも所属してないなんてことあるのかしら?」
「知りたいのか?」
「知りたいわよ、この状況下で他人より早く行動している時点で何か私たちが知らないことも知ってるんじゃないの?こんな中だからこそ、私は信頼に足る仲間が欲しいわ。」
「とはいってもな、俺の場合は仕事の関係上執行機関や政府にツテがあっただけだ。装備は…そうだな、業務上の実益と趣味を兼ねて、かな。どのみち運が良かっただけだ。それとは別に…情報とは文字通り金と同じだと証明されたな。他に君たちの知らないことで、俺が知ってることはさっき君らが齧り付いて観てたテレビがほとんど喋ってた。」
「…本当に他に知ってることは無いわけ?」
「…これは国家によるものじゃなさそうだ。これも公式見解ってよりは、俺の知人のCIAの一局員の意見に過ぎないがな。あとは何だ、正直今の俺達に必要な情報だとは思わないな…直近で活動してた過激派やテロリストも政権の連中と仲良くリビングデッドになってるし、大統領の頭が一日に四五回変わったとか…他にもこういう話なら出来るが、もっと聞くか?沙耶。」
「そう…いいわ。ごめんなさい、恩人を疑ったりして。」
「いや、生き残る上で必要な行動だ。沙耶は昔から賢いから俺達が気づかないことにも気づくこともあるかもしれないが…この場ではいったんお預けだ。まあ、気に病むな。さあ!疑念も晴れたなら、君たちの今後のプランを考えようじゃないか。」
天才を自称する少女、高城沙耶が聞き辛いことを聴いてくれたことで疑念が少しなりとも晴れた。トニーから促されて、生存者たちは自分自身が考えていた、これからの希望について意見を出し合った。最初に手を上げたのは小室孝だった。
「俺は家族を探しに行きたいと思ってます。部活遠征用のバスならまだ駐車場に残ってたから、あれなら全員乗れるし。俺達はみんなここが地元なんで、順繰り家を回って家族が安全かどうか確かめるなりできれば。」
「あの、私もそれがいいと思う。永のことも、出来るだけ安全な場所で休ませたいし。」
孝と麗の提案には沙耶もこくこくと頷いた。家族の安否が不確かな三人からしてみれば、武器を手にした今なら現実味が帯びてきたように思えたのだろう。コータや冴子は家族の安否という話題に対して特に反応を見せずに沈黙を守り、トニーは家族と呼べる者とは一人を除いて全員の安否が確認されたので現時点では何も口を出す気はないらしく、美玖と静香は他の生徒たちの希望に沿うつもりでいるのか真剣に耳を傾けていた。
孝の意見が最後まで話されると、一人が手を挙げた。毒島冴子だった。
「小室君の話にも一理あるだろう。さっきニュースで見た通り、今この状況を全員で乗り切るためにも、まずはチームを組むべきだ…好き勝手に行動していては生き残れまい。」
「毒島先輩の言う通りね。今は世界中がこんな状態だし、パンデミックから隔絶された、未だに安全な場所が存在するのかどうかすら不透明な状況よ。軍や警察も当てにできるとは思えないし、今は生き残った者同士で協力し合い少しでもマシな環境で生き残ることを目指すべきだわ。」
冴子と沙耶の言葉に孝と麗も頷いた。案外早く意見がまとまった様に感じた矢先のことだった、トニーがおもむろに手を挙げた。
「モンドさん、最も場慣れしているであろう、貴方の意見も聞かせてくれるか?」
そう冴子が促すと、トニーは先ほど全員分の食料を取り出した大きなボストンバッグを二つ自身の前に置いた。円座でトニーの、すぐ隣に座っていた静香と美玖は鞄が置かれた時に重量感のある音と風を感じた。置かれた鞄に注目が集まる。トニーは丈夫なナイロン製バッグのファスナーを開き、中身が全員に見えるように縁を大きく広げた。
「孝や麗に預けた拳銃の弾がこれ、平野君に預けた銃の弾がこれ、右側のバッグの中身は銃弾が入ってる。それぞれに100発ずつ箱に入ってる。全部で200発ある。だが…銃声は奴らを呼び寄せるから注意して活用してくれ。それから左側のバッグだが、さっき食べたような食料品、それから
トニーは床の上を滑らせて孝と麗の目の前にバッグを押し出した。突然渡されたバッグ一杯の物資にトニーを除いた全員が目を丸くした。麗はバッグを一瞥してから、トニーに疑問の声を上げた。
「あの!どうしてこれを私たちに?」
「家族を探しに行くチームに入れればベストだったが、現状俺の家族の最後の一人はここに居るんだ。少なくとも消息を絶つ寸前までここに居た。だから、ギリギリ詰めても二日以内に何処か家に着く可能性が高い君たちにこれを預け、俺はここで浩一を回収してから、遅くとも三日以内には君たちに合流したいと思っている。」
「え!?トニーちゃん一緒に行かないの?」
トニーの返答に麗は絶句。静香は素っ頓狂な声を上げた。左腕に抱き着く静香に真剣な表情のトニーが向き合った。
「静香はリカの家の鍵を持っているな?俺の家は俺がいないと鍵が開かないからな、一旦そこで避難しておいて欲しい。車でのしかも大人数での移動だ。ここに留まっているより安全だ。ついていけないことには悪いと思ってる。必ず清算する。だから一度だけ行かせてくれ。…鞄には予備の電話が入ってる。俺かリカにしか繋がらないが、ほぼ確実に連絡はできる。何かあったらこれで俺に連絡してくれ。」
「…どうしても残るの?」
静香は顔を悔しそうに歪めて、尚もトニーの腕を離そうとしなかった。上目遣いで見上げる仕草に胸が切なく締め付けられたが、それでも何もせずに離れることは出来なかった。それは余りにも無責任だと感じたから。一時的な別行動を許して貰うための、せめてもの贖罪と餞別で物資を渡したつもりだった。
「ああ、捨てられない。<彼女>の忘れ形見だから、せめて…ダメでも遺品だけでも持ち帰りたい。」
「きっとリカに怒られるちゃうわ。いいの?」
トニーはじっと静香と見つめ合った。普通なら男の方を捨てるだろう。だがトニーは浩一を捨てるには余りにも彼という人間の人生に深く関わり過ぎていたのだ。トニーの左腕を両腕と両峰で捉えて離さなかった静香も、トニーの強い意志の宿る瞳で貫かれ続けては首を縦に振るしかない。静香はトニーのことを憎からず想い慕っている。その気持ちの大きさは決してリカや美玖に劣るものではない。二人との相違は彼女がトニーに対して並外れて強く母性の寵を抱いていること。その自覚が無いだけで、彼女はとっくの昔にトニーに酷く絆されている。
「今回だけ、これが最後だ。そのあとは、ずっと、君の為に働くよ。」
「<君の為>なんて…誰にでも言うのよねー♪もうッ!知らないわ!無事に帰ってきてね?」
「君の方こそ何があっても無事でいてくれ。」
静香の手から解放され、トニーは全員に向き合った。それぞれの眼にはばらばらの感情が渦巻いていて、孝や麗は非難がましい視線を向け、沙耶は呆れた様子、コータは最敬礼で応え、静香と美玖は手の掛かる子供を見守る目で、そして冴子は口元に微笑を浮かべていた。
「ハァ~…好き勝手に行動したら生き残れないって話したばかりなのに、こういうのってどーなのかしら?」
「沙耶には平野君がいるから大丈夫だろう。」
「チョっ…はぁ!?どういうことよそれェ!」
「頼んだぞ、平野一等卒。」
「了解であります!上官殿!」
沙耶からの小言を躱し華麗にコータへパスを送ったトニー。敬礼をビシりと決めたトニーからのミリオタの琴線に触れる点呼を受け取ったコータはキレッキレの答礼を見せて沙耶を引かせていた。
「トニーさん!本当に一人でここに残る気ですか!?」
それでもまだ納得できなかった麗が噛みつくもトニーの意志は変わらなかった。
「ああ。だが、バスまでは一緒に行こう。そこまでエスコートしてから、俺は学校内部を探索してみるよ。食料品とかは災害用の備蓄でカンパンとかがある筈だ。非常時用のペットボトルの水もあるだろうから、何とかなる。悪いがこれは譲れない。」
「正気じゃない…あの、夕樹先輩や毒島先輩もなんか言ってくださいよ!」
業を煮やして孝も援護するが、それが逆にトニーの行動を許容する結果となり、この場での議論は決した。
「小室君…私も、私も正直トニーさんについていきたいの。でも、静香さんを一人にするのは心配だし…それにね、トニーさんなら約束通りに合流してくれるって信じてるから。だから、ごめんなさい。私には止められないわ。」と美玖は言い。
「…モンドさんの意志を捻じ曲げることは出来ない。そもそも、此処に辿り着くまでの道中で聞いた話通りなら、彼は紫藤教員、鞠川校医、それから夕樹を助けることのみを目的としてここまで単身で乗り込んできたのだ。本来ならば我々を助ける義理など無いが、成り行きでここまで共に行動してくれていたに過ぎん。それが元の単独行動に戻ったのだ。無論、行方の分からぬ家族を救うべくして、再会した家族をほったらかしにすることを肯定することは出来んが。」と冴子が言った。
「…そう、ですか…わかりました。」
孝は力なく肩を落とし、トニーに剣呑な視線を向けたが、トニーは平然と受け止め、しかし小さく頭を下げて言った。
「チームを俺の事情で二つに裂くつもりはない。自由意志でついて来るなら別だが…物資はほとんど君たちの方に預けるからこっちに食事の保証はないぞ。…話し合いはここらへんにして、持てるものを持って早いとこ出発しよう。ここに来るまでに表通りは渋滞でだめだったが、旧道や山道なら問題なく通れるはずだ。ここに来るまでは難儀だったが、出るだけなら簡単だ。」
孝が視線を切るのを受けてから、トニーはこれからの予定に関して軽い助言を行い、自分自身の装備を身に着け始めた。チャコチャコと音を漏らしながら、プラスチック製の散弾実包をレミントン社製M870ロングフォールディングストックモデルのチューブマガジンに直通するゲートへと入れていく。総弾数8発の12ゲージ弾で至近距離の有機体を情け容赦なく粉砕する代物である。
<<ジャコッ!>>
音を立ててフォアエンドをポンプし、薬室に送り込まれた実包を目視すればショットガンの用意は完了だ。ショットガンを脇に置くと、次にバックサイドのカイデックスホルスターから副武装の拳銃を抜き取った。シグ社製P365SAS拳銃のマガジンキャッチのボタンを親指で押して、9mm弾が10発装填出来るマガジンを取り出してから、スライドを引きチャンバーの一発を排出する。スライドストップによりスライドが後退した状態で固定される。時に、飛び出した無垢の弾丸をコイントスの要領でキャッチしたら、これをマガジンに装填する。
<<チャク…チャク…チャク…チャク…>>
<<カシッ!>>
マガジンにはチャンバーの一発を含めて6発が既に存在しており、これに追加で腰のポーチから取り出したバラの9mm弾を4発装填した。弾数が限界に達したマガジンを銃に装填し、スライドストップを降ろすとスライドが戻る。一度スライドを最後まで引くと、バネの復元力で一発目が押し上げられて薬室に送り込まれた。銃口を誰もいない床の方向に向け、スライドを浅く引いて薬莢の存在を目視する。ハンドガンの準備も完了した。9mmフルメタルジャケット実包はベストに差し込まれた予備のマガジン4本とバラで16発、スラッグ実包と散弾実包は腰のポーチとベストにそれぞれ30発ずつの合計60発だ。
「そうね…おじさまの言う通りかもね、<奴ら>は視覚も触覚もないけど音に敏感だわ。夜になって暗闇の中で行動することになったら不利になるのは視界に頼る私たちの方よ。暗くなる前に出ましょう。」
銃を携えトニーが立ち上がった。トニーの支度が終わるころ、他の全員も出発の準備を終えてそれぞれの荷を背負っていた。弾薬の入ったバッグをコータが、食料の入ったバッグを美玖が背負っていた。工具袋を抱えた沙耶がトニーの忠告を補足し、出立前の情報共有が完了した。
「…わかった!麗、俺が永を背負う。」
「うん…お父さん、お母さんも無事、きっと無事よね…。」
「そうさ、今はそうだと思うしかない。」
「よし、準備はいいな。出発だ。」
永を背負った孝は手に金属バット、腰にルガー社製LCRを差すと麗を促して職員室を後にした。バリケードを男三人がかりでどかし、生存者の一団は正面玄関へと向けて歩き出した。
スラッグ実包×0発(0発:6発:0発)32発
散弾実包×0発(0発:0発:8発)30発
9mm弾実包×0発(0発:5発:10発)56発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定