黙示録狂騒満喫譚   作:ヤン・デ・レェ

26 / 31
スラッグ実包×0発(0発:6発:0発)32発
散弾実包×4発(8発:8発:0発)30発
9mm弾実包×0発(0発:5発:10発)56発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定



DAY1・10「OPEN UP」

 

 

起き上がったトニーは何も言わずにショットガンにシェルを8発込めると、目の前の二体の<奴ら>の中間に散弾を打ち込んだ。

 

<<ガシュッ!!>>

 

白い硝煙を上げ、くぐもったガスが逃げる音と共に、<奴ら>は忽ち膝から崩れ落ち、或いは散弾の衝撃で頭を押されて後ろへゆっくりと倒れ伏した。

 

最寄りの<奴ら>を打ち倒した間に、立ち上がり木刀に手を掛けた冴子を一瞥してから、トニーは前へと駆け出した。待つのではなく攻める為に。突破口を敵の海に求めたのだ。

 

「冴子!俺から離れるな!」

 

「ああ!さて、囲まれている訳だが…モンドさんのお手並み拝見と行こう。」

 

「話は、後で聞いてやる…今は前だ!!」

 

全方位を<奴ら>に囲まれたトニーと冴子は最も人口密度の低い方向に向けて駆け出した。ショットガンを肩に掛けなおしたトニーは走り抜けざまにククリナイフを振りぬき、すれ違う<奴ら>の中でも自分と冴子への脅威度が高い順に切り捨てていく。その斬撃はまさに切断するという表現が適切なものばかりであった。冴子を庇いながら前へ前へと進むトニーは肩で風を切りながら、アスリートの全力疾走と同等の勢いで正面に立ち塞がる敵に接近し、靴底とアスファルトが削れるほど強く踏み込むと、遠心力に任せて歯を剥く顎や突き出される腕、時には首さえもをピンポイントで刎ね飛ばした。ポンポンと擬音が聞こえて来るような画力は人に楽観を抱かせるが、実際には死地の中の死地での神業であった。瞬時に肉と骨を見極め、その狭間に刃を完璧な角度とタイミングで滑り込ませなければ、たった一度の失敗でそこまでの進捗は水泡と帰するのだ。

 

疾走するトニーの背中から離れないようにする冴子もまた、トニーが討ち零した敵を木刀と体術だけであしらいながら、<奴ら>の群れに弾丸道路を生み出しながら前進した。突き出される腕を木刀で打ち払い、噛みつく動作を僅かな身じろぎで見抜き脳天を木刀の切っ先で鋭く穿つ、トニーが切り伏せた敵の屍がつんのめり道に折り重なろうとも軽々と飛び越え、躱し、そして着地と共に再び打ち込む。全ての動作を機械的なまでに基本に忠実に。しかして圧倒的技量で殺人級の威力で放つのだ。

 

二人が斬り込むや道が出来、その道は屍で舗装され、ぞろぞろと二人を追う<奴ら>が補修するよりも早く次へ伸びていった。そのためトニーと冴子の背後には常に一定の空間が生まれていた。

 

「モンドさん!後ろの距離が詰まって来たようだ!」

 

「そろそろ銃に切り替える!一瞬代わってくれ!」

 

「わかった!」

 

更に進んだ方向にグラウンドの茶色の地面が見えて来た。赤黒い水溜まりがあちこちで染みになっていた。駐車場に負けず劣らずの<奴ら>の数に辟易とするとともに、二人ともに疲労が見え始めていた。トニーが切り開き冴子も実力で追いつきながらここまで進んできたが、体力集中力共に摩耗する速度が尋常ではない行軍だった。先がまだまだ長いことが分かったからには温存のための戦略に切り替えることが必要だ。その為のトニーの判断で二人は背中を預け合いながら戦う…低速だが些細なミスが致命傷に繋がる確率が、より低い…比較的低リスクの戦術への転換を図った。

 

冴子は背中合わせで正面に出ると共に、障害となる数体の<奴ら>を剣道の打ち込みのままに続けて三度木刀を打ち込んだ。無心の極みで瞬きの間に撃ち込まれたある個体の頭蓋は粉々に破砕され、またある個体は眉間に穿つような繊細な面打ちにより一撃で脳を破壊された。三体目に至っては鬼神の如き切れ味の木刀が骨と骨の接続部に直撃したことで刀身が深々と脳に沈み込んだ。木刀本来の破壊力を遥かに上回る威力と、木刀を壊すことなく使いこなす技量は正に繊細かつ凶悪な殺人剣術と呼ぶにふさわしかった。

 

冴子にバトンタッチしている間に、トニーはそれまで使っていたククリナイフを血ぶりしてから腰に納め、ショットガンを構えてフォアエンドを前後にポンプすると、直前に撃った空のシェルを排莢してから、ベストに備え付けられたショットシェルホルダーから一発抜き取り、口を開けたエジェクションポートに直接挿入した。

 

「待たせたな。進むスピードは落ちるがリスクは低くなる。しばらくこっちで進もう。」

 

「ああ!背中は任せてくれ!」

 

背中合わせで回転し、再び先頭に立ったトニーは一定の速度で前進しつつ、ショットガンの引き金を引いた。

 

<<ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!>>

 

<<ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!ガキッ…>>

 

ストックを倒して肩付けでも射撃に移行したトニーは、一発撃つごとに数体の頭部を滅茶苦茶にして屍を量産していく。引き金を引くたびに肩を殴りつける様な反動が加わるが、トニーはその人間離れした鋼の筋骨で易々と受け止めては、平然とフォアエンドを手前にポンプして排莢、正面にポンプして装填を繰り返した。反動が齎す手振れや衝撃への肉体の反射反応によるタイムラグを筋力と経験で極限まで逃がし抑制することで、射撃と排莢と装填の一連の動作を極めて俊敏かつ精密に行っていた。体が覚えているのままに、トニーは近寄る者から順に左右正面に銃口を向け、確固たる構えのまま本能的に引き金を引き、フォアエンドを前後にポンプし、排莢し、装填し、そして再び引き金を引いた。

 

「リロードッ!」

 

<<シャコッ!ガココッ!!>>

 

<<ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!>>

 

8発のマガジンが空になるや最後の空薬莢をエジェクションポートから吐き出させ、逆さにした銃を斜めに、ストックが肩に乗るように持ち、周囲に一定の空間を確認した後冴子と前後を交代した。ベストのシェルホルダーから一掴みで2発抜き取り、これを上方向にむき出しのローディングポートに2発直列で持ち、手で押し込むのを助けるように挿入する。2発ずつマガジンに収める、コレを4度繰り返しマガジンの総弾数8発を収容する。この間約10秒。ただし専用のシェルホルダーやスピードローダ―があれば更に早いリロードも実現可能である。クアッドリロード完了後は即座にフォアエンドを戻して初弾を送り込み、冴子と交代する。再び先頭に立った瞬間から機械的に本能的に、かつ効率的に<奴ら>を射殺していくのだ。銃口から勢いよく吐き出された散弾が加速と共に飛び散り、数十の鉄の子弾が立ち塞がる<奴ら>を見る間にズタズタにした。

 

「そろそろだが後ろが詰まって来た!ハンドガンに切り替える!!」

 

「ここまで長かったな。さあ、もう一踏ん張りといこう!」

 

<<タカッ!タカ!タカ!タカッ!タカ!タカッ!>>

 

<<タカタカッ!タカタカッ!カシンッ…>>

 

背後からの圧力が増大していた。いつのまにか建物の影や校舎の近くから湧き出してきた連中が後続に続々と合流したのだ。既にそこまで迫っている状況でちんたら弾込めをしている暇はない。ショットガンのリロードが間に合わない局面に遭遇するや、トニーはすぐさまバックサイドから消音器装着済みのハンドガンを抜き構えた。サイトは覗き込まず、視野を広く保ったまま握り込んだ指がグリップ中腹のボタンに重なり自然とスイッチが入り、緑色のレーザーが照射された。レーザーの当たった目標から脳天に弾丸を打ち込んでいく。レーザーの緑の光点が<奴ら>の頭を捉えるたびに、ガスが押し殺される音とスライドが前後するくしゃみより大きい程度の銃声が連続した。

 

「リロードッ!随分遠回りだったが、あと少しで抜ける!このまま駐車場を突っ切って向こうに出るぞ!」

 

「承知した!この先を進めばグラウンドの外周に出るはずだ!」

 

スライドキャッチがスライドを固定すると、銃身とチャンバーがむき出しになった。残弾ゼロを確認し、マガジンキャッチを押して、自重で落下する空のマガジンを掴み取りポーチに入れ、マガジンホルダーから抜き取ったマガジンを装填する。スライドキャッチを降ろし、再びトリガーを引いた。目前に迫った運動場へ向けて、二つのマガジンを使い切り進軍スピードを速めた。

 

 

 

「冴子!次の曲がり角の先に行き止まりはあるか!何がある!」

 

「ない!駐車場を抜けてグラウンドに向かう方向には倉庫があるだけだ!」

 

難局を乗り越えグラウンド周辺の建物群に辿り着いた二人は撒き切れなかった<奴ら>の集団を時間を掛けて着実に削っていた。グラウンドを突っ切ることなく陸上部のトラックの更に外側の林の中を迂回し、部活棟での遭遇戦を避けながら部活の用具倉庫などのある区画へと近づいていた。

 

「よし!倉庫なら備蓄物資を期待できそうだ!走り抜けるぞ!先に行け!俺が奴らを足止めしておく!」

 

「撒けるのか!」

 

「撒かなきゃ今夜は安眠できない!」

 

トニーは建物の角に差し掛かると、ハンドガンをホルスターに納めて再びショットガンを構えた。ここまで連れ立って駆け抜けた冴子を先行させ、<奴ら>を撒き、倉庫で夜を明かすことが出来るかの偵察をトニーは彼女に依頼した。学外との世界を隔てるフェンスと建物の裏手に挟まれた細い通路で、ショットシェルを着々と込めながらトニーは冴子の背中を押した。

 

「なら任せたぞ!」

 

「ああ!先に行って<奴ら>がいないか確認しておいてくれ!俺達と同じことを考えた奴がいるかもしれん!!」

 

「生存者ならどうする!回収するか!」

 

「話してからだ!さあ行け!GO!GO!GO!GO!」

 

<<ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!>>

 

冴子が先行して戻って来るまでの約10分間、トニーはレミントンM870ロングフォールディングストックモデルの12ゲージ散弾実包を7発、シグP365SASの9mm弾フルメタルジャケット実包を10発消費した。現時点の残弾は12ゲージのスラッグ実包32発、散弾実包11発。9mm弾フルメタルジャケット実包は10発マガジン2つ、バラで16発である。

 

 

備蓄倉庫の入口から10m近辺。部活の用具倉庫が隣り合う林の中で二人は息を潜めていた。土の地面に座り込むトニーはマガジンに1発だけ残った散弾実包を抜き取り、スラッグ実包を装填してから目標の建物周辺の状況を注意深く観察した。先行した冴子が別の角度からの偵察を終えて帰ってくると、二人は小声で話し合った。

 

「どうだった、何かいたか?」

 

「何もいなかった。だが鍵がかかっていたぞ?」

 

「心配無用。ショットガンは<マスターキー>って言うくらいだ。扉の鍵壊すくらいならワケない。」

 

「そうか、ところで疑問なのだが、ここであとどのくらい息を潜めているつもりだろう?」

 

「奴らが他所に行くまでだ。」

 

戻って来た冴子の案内で倉庫へと接近したところ<奴ら>の姿はなかった。しかし、周囲にはまだ撒いたばかりの集団が徘徊しており、トニーと冴子は強力な一発の大口径弾を射出するスラッグ実包を使用するタイミングを、建物の陰で息を殺して待ち続けた。




*補足
サプレッサー付き拳銃をSOBホルスターから引き抜く描写の違和感への補足説明です。この際、バックサイド(腰の上部分)に収納しているシグ社製P356SASの先端にはミニマムサプレッサーを装着している設定です。元のP356SASそのものが極小さな秘匿携帯向けのコンパクト拳銃であり、またサプレッサーも口径9mmのスライドからはみ出さない上にサプレッサーの筒自体が全長100mmを切るサイズにしております。そのためサプレッサー装着済みの状態で、45口径の大型拳銃程度の全長に相当する銃全長と考えていただければ、引き抜く際に無理がないことを説明できると考えております。以上、補足でした。

スラッグ実包×0発(0発:6発:1発)31発
散弾実包×16発(19発:27発:0発)11発
9mm弾実包×10発(30発:35発:0発)36発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定
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