黙示録狂騒満喫譚   作:ヤン・デ・レェ

31 / 31
スラッグ実包×1発(1発:7発:8発)23発
散弾実包×0発(0発:27発:0発)11発
9mm弾実包×0発(0発:35発:10発)26発
357マグナム弾実包×0発(0発:1発:0発)24発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定


DAY1・15「LIGHTER・5」毒島冴子

早朝の白けた光が窓から注ぐ頃、冴子はトニーにしがみついた体勢で目を覚ました。手の平や指先に二の腕に感じる温もり。新鮮じゃない温もりだった。長時間の密着で肌が離れて涼しさを感じると汗をかいていたことに気づく。瞼を恐る恐る開けるとそこには、昨日眠る直前にみた時のままの景色があった。真顔のトニーがいた。違う所は冴子の目覚めを察知して、彼女の瞼が開く間も見守り続けていてくれたこと。自分のことを見ていてくれることだった。

 

トニーは本当に冴子の傍を離れなかった。ずっと傍にいた。文字通り寸分狂わず。身じろぎ一つしなかった。全世界に活力を与える朝日の登場で、心なしか外も騒がしく感じる。急かされることなく、丁寧に抱き起されて水を飲まされてから乾パンを口に運ばれた。緩慢な動作でビスケットを咀嚼する。噛む回数が足りなくて咽る。背中を摩りながら、水が差しだされて受け取り、口に含んだ。冴子は今の自分の姿を、後で思い出してきっと羞恥心に負けて赤くなるだろう。それが着替えの最中か、はたまた<奴ら>との戦闘中なのかは彼女次第だが。

 

「ん…もう朝か、おはようだな。トニー。」

 

「おはよう、冴子。今日も動くぞ、朝飯はしっかり食えよ。」

 

「食べさせてくれ…。」

 

「粥ならそうしたいが、あいにく乾パンしかない。」

 

「それでいい…。」

 

「咽るからダメ。ほら、支えてやるから体を起こして食え。」

 

「ふふ、父もここまでしなかったぞ。」

 

「親父さんのことは知らん…言っとくが、俺は父親に専念できないからな?」

 

「父親を務めることは否定しないのか…。」

 

「偶になら、な。」

 

「そうだな、偶には甘えさせて貰おう。」

 

 

 

冴子が完全に覚醒して一人で食事を引き継ぐと、トニーも食事を始めた。夕べとは違うテキパキと詰め込むような食事だった。四つか五つもまとめて口に放り込み、バリボリ食らう。砂糖も一緒に噛みながら、嚥下できそうだと思ったら水を含んで飲み干してしまう。そうして十分ほどで食事を終えたトニーは冴子が食べ終わり、着替え終わるのを待ちながら外の様子を伺っていた。

 

「待たせたな、もう支度は済んだしそろそろ出よう。」

 

制服を着て、靴下に足を通しローファーを履いて、左手に木刀を携えた。準備万端の冴子が言うと、トニーは頷き腕時計を一瞥した。トニーはそれから懐を探り、お目当ての物を取り出すと口に咥えて冴子の隣に立った。

 

「今は07:00だからまだまだ時間はあるな…おっと、俺が咥えているのは何だ?こいつはラッキーストライクのシガリロじゃないか、ちょうどいい時間もあるし今ここで吸ってしまうか、一歩外に出ればそこは、命が幾つあっても足りない戦場だからなぁ…。」

 

「ふむ、喫煙に対して特に思うことは無いから。存分に吸ってくれてかまわない。」

 

「そうかい、なら遠慮なく。え~と…どこだっけかな…あれ?どこにやったかな?」

 

「……吸わないのか?」

 

トニーは演劇風にやや大袈裟な身振りと言葉で話すと、わざとらしく声を上げながら懐を探った。だが、一向に着火具は出てくる様子が無かった。冴子に指摘されたトニーは目の端がピカリと光ったように見える程、あからさまに顔色を変えて困った顔をして口を開いた。

 

「吸いたいのは山々なんだが、どうやら手持ちにライターが無くってな。どうやらどっかで落っことしたみたいなんだ。なあ冴子…俺のライター知らないか?金色で黒い革が巻いてある奴でな、数年前に落としたっきり探してるんだ。」

 

トニーの言葉に何かを悟った冴子はスカートのポケットからライターを取り出した。その手は少し震えていた。

 

「…偶然だな、私も探し物をしていた。金色で黒い革の巻いてあるライターを落とした誰かさんをずっとずっと探していたんだ。」

 

冴子の震える手を自分の手で包みながらトニーは言った。いつの間にか演劇調のわざとらしさは消えていて。優しい面持ちのトニーの渋い声だった。

 

「不思議なことはあるもんだな。冴子、俺が無くしたライターの代わりに、俺のに火ぃ着けてくれないか?」

 

「お安い御用だ…。」

 

トニーの問いに冴子は即答した。顔を寄せられてドキッとしながら、冴子は毎日のように磨いて手を入れて来たライターの石を擦った。

 

<<キン!ボボッ!ジジジ……カシン!>>

 

灯された火がトニーのラッキーストライクの先端を炙る。煙草葉の良し悪しはともかく、ガスを源にした小さな炎がシガリロの先に分けた火から悠々と紫煙が立ち昇った。ゆっくりと吸い、口の中で転がすと何時もの風味がした。数分間、トニーはシガリロの煙を無言で味わった。ゆっくり煙を燻らせてから、トニーは冴子にぎこちない笑顔で言った。

 

「旨いな。冴子…火、助かった。あと、ライターは持っててくれ。」

 

「…いいのか?」

 

「…持ち主かどうか、確かめるのに時間まだまだ掛かるだろう?」

 

トニーが窘めるように言うと、冴子は張り詰めて堰き止めていた息を肺からゆっくりと逃がした。憑き物がとれたような表情にはじんわりとした落ち着きがあった。

 

「…そうか、少し、私は焦っていたのかもしれないな。」

 

「そうさ、だからゆっくりでいい。冴子の中でその時が来たら、そうしたら受け取るよ。あと…。」

 

そう言ってトニーは腰のポーチに手を伸ばした。

 

「何かあるのか?」

 

「ほら。受け取れ。」

 

トニーが差し出したのは弾が差してある黒い革製のホルスターだった。革のベルト部分に差してある弾は数えると10発はありそうだ。

 

「これは?」

 

「ああ、こいつは357マグナム弾って言ってな…俺の愛銃だったM49ボディガード…口径を拡大しちまってるんで実はM49じゃあないんだが…細かいことはどうでもいい。とにかく、そいつの弾なんだ。なんだが…。」

 

「……。」

 

「どっかに落とした所為でな…生憎今の俺の愛銃はこのP365SASだ。こいつは9mmだから、口径が合わない。それじゃあ弾の持ち腐れだ。だから、俺の愛銃を拾ってくれた誰かに銃も弾も、ついでにこのホルスターも代わりに使って欲しいと思ってな。」

 

冴子が水を掬うように手で器を作ると、トニーがそこに弾と革のホルスターを手渡した。どちらもトニーがM49用に使っていた物だった。

 

<<カチ…カシャッ…>>

 

冴子が腰にベルトを巻くと、ホルスターは丁度お尻の上に来ており、グリップの底が上を向くようになっていた。二度出し入れしてから、冴子はM49ボディガードのラッチを親指で押し、銃を傾けてシリンダーを押し出した。金属のこすれ合う音が澄んで聞こえる。

 

「…認めてくれた、ということでいいのか?」

 

「俺は子供の前で煙草を吸わない。その銃も、もう君の物だ。俺の愛銃をお前にやる…俺の手を離れた瞬間から拾った誰かの物になる予定だったんだ。だから、それはもう冴子のものだ。」

 

冴子が上目遣いにトニーに尋ねると、彼は手で銃に弾を込めるように促した。冴子は腰のベルトに几帳面にも整然と差し込まれた実包を抜き取り、シリンダーに一発ずつ装填した。慣れない手つきでゆっくりと弾を込める様子を、トニーは静かに見守っていた。

 

<<パチ…パチ…パチ…パチ…パチ…>>

 

<<カチュンッ!>>

 

5発の357マグナム弾実包がシリンダーに確実に装填されると、冴子は空いた左手でシリンダーを押し込んだ。部品が噛み合い音が気高い音色が響いた。何時でも撃てるようになった拳銃を腰の後ろに差した冴子はトニーと向きなおると、くぐもった声で言った。

 

「女子に初めて贈る品にしては、些か風情が足りないのではないか?」

 

「泣きそうな笑顔で言う事じゃないな……泣くなよ。使い方は分かるか?」

 

「あ、ああ…使いこなせるよう努力する。ありがとう。」

 

冴子が流した涙が渇くまで待ってから、トニーは銃を携えて立ち上がった。

 

「俺の方こそ。さあ!動くぞ。グラウンドを突っ切って昨日いた校舎とは反対の棟を探索しよう。12:00前にはここを脱出して車を拾いに行く。やっぱり愛車は捨てるもんじゃないな。10分走ってそいつに乗り、御別橋の入口まで迂回路で向かう。其処からはタイミング次第だな…。」

 

「合流場所の連絡はまだ来ていないのだろう?」

 

「ああ、だが昼までには来ると思う。車の中で冴子に電話に出て貰うのがベストだな。」

 

「私でいいのか?」

 

「ああ、信頼を置いてるからな。」

 

「そ、そうか…なら信頼に応えよう。」

 

「よし、あと5分で出発しよう。いまは身軽な方が良い。町に下りれば渋滞で掴まっても店からかっぱらうまでだ。」

 

「ああ、委細承知したよ。」

 

ヒーター用の袋を水で濯ぎ乾かしたものに乾パンを詰め込み、水のペットボトルと一緒にポーチに詰めてから、トニーと冴子は一晩過ごした倉庫を後にした。向かう先は孝や麗たちのいた校舎の反対方向。目的はそこで、紫藤浩一を見つけ出すこと。或いは…その生死を確認し遺品を持ち帰ることだ。

 




M870→スラッグ弾実包×0発(0発:7発:8発)23発
M870→散弾実包×0発(0発:27発:0発)11発
P365SAS→9mm弾実包×0発(0発:35発:10発)26発
M49→357マグナム弾実包×0発(0発:1発:5発)19発
消費弾薬×作中消費数(実際:累計:弾倉)残弾数
*主人公と主人公の同伴者に限定

・トニー・主水*状態…高揚>悲観
 主武装…レミントンM870 longfolding stock
(消音器:salvo12)
 副武装…シグザウエル社製P365SAS
(Foxtrot Lima365laser:緑+minimum suppresser)
→カイデックス製SOBホルスターに装備(M49ボディガードから交代)
 その他…ククリナイフ、衛星電話、LUCKY STRIKE(シガリロ)etc

・毒島冴子*状態…高揚>濡れたッ!
 主武装…木刀
 副武装…M49ボディガードカスタム(centerfire laser sight attachment:赤、Titanium製シリンダ+同製Jframe、357magnum仕様)
 その他…御守りのガスライター(LONSON classic:純金+黒クロコ革)、黒の牛革製ホルスター(腰回りに弾帯有)
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