万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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バトルロワイヤル②

 転送が完了し、零は普段はレーダーに映らないようにするオプショントリガー、バッグワームを着てそのままその場に座り込む。

 

「柚宇、レーダーから何人消えてる?」

『えーと・・・・零ちゃん以外なら三人かな』

「三人ね、了解」

 

 零はそのまま通信を切り、グラスホッパーで空を跳び始めた。

 

◇◆◇◆

 

『各自転送が完了して移動を開始!』

『零の動き・・・・一回何処に誰が居るのか把握するつもりね』

『でもそれじゃあ見つかるんじゃ・・・』

 

 小南の解説に武富が目を向きながら驚く。

 バッグワームをしているのだから隠れながら相手の居場所を探るのが定石の筈だ。

 トリオンを大量に使い空を跳び回るなんて見つけてくれと言っているようなものだ。

 

『そもそも、風切は隠れるためにバッグワームを装備している訳じゃない』

『と言うと?』

『風切はおそらく気分でバッグワームを着けている』

 

 武富はA級の風間の口からそんな言葉が出てくる事にただただ絶句するしかなかった。

 

◇◆◇◆

 

「あのバカ何処に居んのよ・・・・!」

 

 転送されて直後、香取は走り出し、自分をこの試合に強制参加させた師匠の少年を八つ裂きにするために探していた。

 目下それだけが今の彼女のやる気を上げている。

 しかし、そのやる気も零が見つからず次第に苛立ちへと変わっていっていた。

 真っ直ぐ走り、曲がり角が見えたら安全を確認して再び真っ直ぐ走る。

 そして、当然ではあるが零以外にも敵が居て、零よりも先に遭遇することもある。

 

「香取先輩発見っす!」

「ホント・・・・めんどくさいわね」

 

 目の前に立ちはだかる弧月を構えたボーイッシュ褐色少女を見て立ち止まり、香取はスコーピオンをうみ出し構えた。

 

◇◆◇◆

 

 一方その頃。

 

「お、ザキ発見」

『りょうか~い。タグ付けとくね~』

 

 零は小南の言う通りグラスホッパーで空を跳びながらレーダーに表示されているのが誰なのかを確認して行く。

 現在発見しているのは笹森と熊谷、柿崎の三人で未だに誰がバッグワームを装備しているのかは分かっていない。

 

『零ちゃん近くにもう一人いるよ~」

「あ?」

 

 国近の通信に反応する前に右斜め下からスコーピオンが襲い掛かってくる。

 それを難なく防いで襲ってきた本人を見る。

 零は地面から大体十メートル上を跳んでいる。

 基本的にスコーピオンは十メートルも先を攻撃することは出来ない。

 しかし、それをメインとサブのスコーピオンを繋げて距離を伸ばす荒業を成し遂げる男を彼は知っていた。

 白いマスクにギザギザの歯、鋭い目を持つ男、影浦雅人だ。

 

「やっと見つけたぜ・・・ッ!」

「マジか・・・。カゲ発見!」

 

 零はグラスホッパーで方向を転換しようとするが、それもまたある男によって防がれた。

 

「旋空弧月」

 

 零には聞こえない声量で呟かれたそれは零の脚を切り落として空へと消えていく。

 即座に脚からスコーピオンを生やして義足を作る。

 

(今旋空弧月が出てきたとこまでだいぶ距離あんな・・・)

 

◇◆◇◆

 

「あれ?外してもうた・・・」

 

 旋空弧月を零に向けて放った男が落ちていく零を見ながらそう呟く。

 

『いや、脚には命中してる。機動力は奪ってる筈やで』

 

 通信から聞こえる関西弁に「そうか」と返事をしながら零が落ちた地点へと走り出す。

 それは勿論他の場所でも同じだった。

 

◇◆◇◆

 

『影浦隊長のマンティスと生駒隊長の生駒旋空が炸裂!風切隊員左脚を失った!』

『ちょっと零!何やってるのよ!』

 

 零が脚を切られたのを見て小南が実況席から身を乗り出す。

 

『こ、小南さん!?』

『落ち着け小南。まだ風切が負けた訳じゃない』

 

 小南を宥めた風間が更にだが、と付け加える。

 

『状況は最悪と言って良い。生駒と影浦はもちろん、今の生駒の攻撃に気付いた辻と村上も風切を取りに動いている。ここが風切にとっての正念場になるだろう』

 

◇◆◇◆

 

『零ちゃん大丈夫?』

 

 頭から墜落した零がトリオン体なので痛くもないはずなのに痛ェ・・・、と呟きながら頭を擦る。

 辺りを見てまだ誰も来ていないのを確認してから一息ついて近くの家屋に身を隠す。

 

「あぁ。たく、カゲもイコもよってたかって攻撃しやがって・・・」

 

 悪態を付きながらも、おそらく周りを囲まれている現状をどう打開するかを考える。

 現在のトリガー構成はメインに弧月、スコーピオン、グラスホッパー、旋空。

 サブに弧月、スコーピオン、バッグワーム、旋空。

 

「柚宇、こっちに向かってるのは?」

『カゲ君にイコさん。バッグワーム着てる人も居るから全員かはわからないけど』

 

 上等だ、とそれだけ言って通信を切ると、とりあえず零はその場に座り込み息を潜める。

 

◇◆◇◆

 

「零さんはあの家か・・・。なら反対方向かな」

 

 遠くから零の動向をみていた王子が零が居る方とは逆方向を見て戦っている二人を見る。

 

「まずはカトリーヌとオビ=ニャンを取りに行こう」

 

 そう言って脚を動かした時だった。

 近くの屋根から足音が、しかも二方向から鳴り響いたのを聞いて王子は脚を止める。

 

「「王子先輩確認!」」

 

 笹森と小荒井弧月を構えながら同時にオペレーターに向かって叫ぶ。

 

「さて、どうしようかな」

 

 不適な笑いを浮かべながら王子はゆっくりと弧月を抜くのだった。

 

◇◆◇◆

 

『ステージ各地で続々と戦闘が始まっています!まずは香取隊長と帯島隊員!』

『互角って感じね』

『香取隊長は風切隊員の弟子だと聞きましたが・・・』

 

 武富の問いに風間が武富を見ながら答える。

 

『弟子と言っても香取も風切も感覚派だ。特に何かを教えるなんてことはしていない』

 

 ほへ~、と感嘆の声を上げながら武富は画面に映る香取と帯島の戦いを眺める。

 確かに、過去の香取隊の戦いを見ていれば香取の感覚(センス)で点を取り、若村と三浦がそれをサポートする。

 それでB級上位にのしあがったのだから彼女の感覚(センス)は圧倒的と言う他ない。

 そして、そんな香取の師匠をしている零は感覚(センス)がそれ以上なのだろう。

 だと言うのに・・・・。

 

『ずっと建物に隠れてますけど?』

『何時も通りね』

『何時も通りだな』

『え!?』

 

 建物に隠れるのが何時も通り?どれだけ臆病なんだ。

 そんな考えを顔に現しながら武富桜子はとりあえず落ち着いて実況を続ける。

 

『・・・・・さて、次は王子隊長と笹森隊員、小荒井隊員!こちらは笹森隊員と小荒井隊員が協力して王子隊長を倒す作戦か!?』

『中々考えたな。手を組むなと言うルールはない。ルールの裏をかいた作戦と言える』

『なるほど・・・』

 

◇◆◇◆

 

「なぁ、柚宇」

『どったの~?』

 

 未だ屋内で息を潜めていた零がふと国近に通信を入れて話し始める。

 何かの作戦があるのか、いったい何なのか。

 そんな考えを持ちながら国近は次に出る零の言葉を待つ。

 

「やっぱりさ、ポケモンの対戦は一撃必殺のロマン砲が一番楽しいと思うわけよ」

 

 しかし、出たのは最近零が国近とやるゲームの話し。

 零は努力値や性格、個体値の厳選が苦手だったので、基本的には「ぜったいれいど」や「じなり」、「ハサミギロチン」等と言った一撃必殺しか使わない一撃必殺論者であった。

 

『命中率低いしそんなことないと思うけどな~』

「バカ。当たるか当たんないかのスリルが楽しいんだろうが。あれで勝ったときの爽快感と言ったら・・・」

 

 一撃必殺を三回連続で命中させる。

 その光景はまさに零にとって理想的な物だった。

 足掻いても足掻いても、どうすることも出来ない理不尽さ。

 当たれば最期、どれだけ相手の体力が多かったところで、どれだけ耐久力に優れていたとしても、どれだけ大量の体力があったとしても、相手の体力は(ゼロ)になる。

 蹂躙の二文字が相応しいそれにうっとりとしている零に国近はうわ~と少し引く。

 

「しかもだ。命中率30パーセントを三回連続、つまりは8.1パーセント確率だ。こんなのが起こったら柚宇はどう思う?」

『通信切断案件じゃない?』

「だろうな。つまりはそういうことだ」

 

 ふぅ、と一行き着いたところに近くで爆発音が鳴り響く。

 

「誰か建物を片っ端から潰してやがるな?」

『カゲ君だね。どうする~?』

「どうするっつってもな~・・・・」

 

 影浦雅人には感情受信体質と言う副作用(サイドエフェクト)を持っている。

 これは自分に向けられる他人の意識や感情を肌で感じることができると言うものでつまりそれは・・・。

 

「見つけたぜ!」

「ですよね~」

 

 この爆発音が影浦と分かった時点で零は影浦に何らかの意識を向けることになり、影浦に見つかってしまうと言うことだ。

 影浦は日本のスコーピオンを繋げたマンティスで零の隠れていた家に穴を開ける。

 急いで零も家を離れ影浦の前に走り込む。

 

「やっと戦う気になってくれたか?」

「冗談じゃねぇよ。村上に勝ち越せるような奴と誰が戦いたいと思うんだよ!」

 

 影浦の足元にグラスホッパーを敷いて影浦を飛ばす。

 そのまま零も影浦が踏んだグラスホッパーを踏み込んで影浦に斬りかかる。

 互いに空中で防いでは斬りかかりを繰り返しながら次第に地面に落ちていく。

 チラリと零の視界に王子と戦っている笹森と小荒井を見た瞬間影浦から逃げ切るための算段を一つ思い浮かべてチラリと笑った。

 笹森と小荒井が王子との戦闘を開始して早五分。

 王子は隙のない二人の攻撃に防ぐしかなかったが完全でなく着実に切り傷が増えていきトリオン流出過多の警告(アラート)すら流れている。

 

『ひさと!後ろ注意!』

「え!?」 

 

 小佐野の警告に笹森驚き後ろを見る。

 その隙をB級上位の王子一彰が見逃すはずもなく、横一文字に笹森を切り裂く。

 

『戦闘体活動限界緊急脱出(ベイルアウト)

 

 笹森が光になり、空へと跳んで行く。

 

「笹森!?」

「はーい、小荒井はこっちね」

「うわっ!?」

 

 笹森の緊急脱出(ベイルアウト)に動揺した小荒井を零がグラスホッパーで引き寄せて胴体を横に真っ二つにして影浦に蹴り飛ばすと今度は影浦が小荒井の頭を縦に真っ二つに切って零に向かってくる。

 

『トリオン供給器官破損緊急脱出(ベイルアウト)

 

 小荒井が緊急脱出(ベイルアウト)したのを見た王子がその場から離れようとするが一足遅かった。

 

「旋空弧月」

 

 生駒の放った旋空弧月に王子がそれに気付いてシールドを出すが、シールドと立っていた建物ごと身体を真っ二つにされ、身体にヒビが入る。

 

『戦闘体活動限界緊急脱出(ベイルアウト)

 

 王子が光になって跳んで行くのを確認した零が地面に着地して生駒を視認する。

 影浦も崩れた家の瓦礫の上に着地して零を見る。

 三つ巴でにらみ合いながらB級攻撃手(アタッカー)屈指の実力者達が同時に得物を構えだした。




辻新之助 0
影浦雅人 1
生駒達人 1
帯島ゆかり 0
王子一彰 1×
小荒井登 0×
香取葉子 0
村上鋼 0
笹森日佐人 0×
熊谷友子 0
柿崎国治 0
風切零 0
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