万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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香取隊がメインです。



風切零②

 諏訪と小佐野と別れた後、次に零は香取隊の隊室へと赴いていた。

 

「おーす。待ったー?」

「遅い!アンタ、防衛任務エスケープする気じゃなかったわよね!」

 

 零が入った瞬間怒り声を上げながら零を捲し立てる赤髪の少女、香取葉子を見ながら「どーどー」と宥める。

 

「諏訪隊のヘルプしてただけだって」

「諏訪隊って、俺達の前のシフトでしたよね?」

 

 奥から香取隊のメンバーである若村麓朗が現れて香取の隣に立つ。

 零は若村を見てからコクッと頷く。

 彼は基本的に香取隊は苦手だ。

 何かあればすぐに喧嘩はするし、隊長の香取はセンスがあるからなのか、元からなのか我が儘だし、若村も若村でサポートの筈なのに合わせろと言う。

 二人が喧嘩する度に三浦雄太が宥めてはいるが零は彼も苦手だった。

 能力があるくせに自主性がなく、基本的に自分から動くことはしない。

 

「堤さんと日佐人が欠員でな、代わりに俺が行ったんだ」

「は?なにそれ?アンタウチとのシフトあるくせに諏訪隊のヘルプしたってこと?」

 

 何が言いたい?

 そんな言葉が出掛けたが零はその言葉を喉で止めた。

 香取には何を言っても毒づかれるだけで相手にしても無駄だと零は知っていた。

 だからこそ香取の言葉は基本的に右耳から左耳へと流している。

 

「まぁまぁ、葉子ちゃん。そろそろ時間だし、ね?」

 

 若村の後に続いて奥から現れた三浦が香取を宥めながらオペレーターの染井華を見る。

 染井がゆっくりと立ち上がって華に近付いていく。

 

「葉子。文句なら防衛任務の間でも言えるでしょ?」

「・・・・・・・・・」

 

 染井の言葉に香取が黙り込み零を睨み付ける。

 しかし、零はそんなことは気にも止めずに若村と三浦の顔ををそれぞれ見ていく。

 最後に染井の顔を見て再び香取の顔を見ると少し口角を上げてそのまま隊室を後にした。

 

◇◆◇◆

 

「ほんっと、何なのよアイツ!トリガー全部でアタシよりランクのポイント高いからって調子乗ってんじゃないわよ!」

 

 防衛任務の最中にも関わらず、香取は堰を切ったかのように少し先を歩いている零への不満を若村と三浦にぶつける。

 二人とも零の態度に思うところがないわけではないが、しかしそれでも零が自分達よりもランクのポイントが高く、それでいて戦いも自分達の様に連携が出来ていないわけではない。

 何度か香取隊と零は合同で防衛任務をしたことがあるが、香取の様に独断専行で動いてフォローがしにくいこともなければ、自分達の様に香取のフォローが遅れることもない。

 

「・・・・・・なぁ」

「何よ?」

 

 若村が地面を見ながら立ち止まる。

 若村の声に香取と三浦が立ち止まって若村を見る。

 

「葉子はさ、文句ばっか言うんじゃなくてもう少し周りを見るべきなんじゃないのか?」

「は?なにそれ?」

 

 香取が腕を組んで若村を見る。

 

「零さんは俺達がフォローしやすい様に立ち回ってくれてる。葉子をフォローするときだってそうだ。あの人は周りを見てそれに応じて行動してるんだ」

「要するに何?私に手を抜けってこと?」

 

 若村の言葉に香取がハッと鼻を鳴らして顎をくいっと上げながら若村に向かって鋭い視線を突きつける。

 

「アタシよりランクが低い癖に文句しか言わないアンタに言われたくないのよ!」

「何だと!?」

「葉子ちゃん!流石に言い過ぎだよ!」

 

 二人のやり取りをずっと見ていた三浦がようやく二人の間に入って止めようとする。

 しかし、香取はもう止まらなかった。

 

「アンタもよ雄太!何時も指示がなかったら動けないのもう少しどうにかならない?」

「お前・・・・・」

「何よ?」

 

 睨み合う香取と若村、そしてそれを宥めようとする三浦を前に零は溜め息をつきながら注意をしようと振り返ったところで(ゲート)発生時の不快な警報が鳴り響く。

 

「染井、場所は?」

『南西に500メートル、北西に350メートルそれぞれに三体ずつ』

 

 染井の通信を聞いて零がいち早くグラスホッパーで南西に向かう。

 それを見て香取はすぐに北西に向かって走り出す。

 取り残された若村と三浦の二人は零が向かった南西と香取が向かった北西をそれぞれ数回見た後北西に走り出した。

 

◇◆◇◆

 

 (ゲート)が発生して三十分後、屋根を飛びながら走る香取がスコーピオンを握り付近を練り歩いていたバムスターの目を切りつける。

 バムスターが倒れ、土煙が上がる。

 口を塞ぎながら香取が地面に着地しようとして、横に大きな影が現れた。

 香取が影に気付き受け身を取ろうとするが時既に遅し。

 大きな影、二体目のバムスターが首を大きく横に振り香取の至近距離まで近付いてくる。

 

(ヤバッ!)

 

 既に受け身を取る時間すらない。

 そう思った時、目の前に影が現れて吹き飛ばされる。

 それで出来た少しの隙を使って住宅の塀に足を付け、塀を蹴りバムスターの目を突き刺して止めを差す。

 ようやく地面に足を付け、先ほどの影の主を確認する。

 

「雄太・・・・」

「葉子ちゃん!大丈夫!?」

 

 三浦雄太だった。

 後ろには息を切らした若村が見える。

 少し、何を言うか考えた後結局若村はなにも言うことができなかった。

 しかし・・・・・。

 

「・・・・・・ッ!葉子!危ない!」

 

 そう叫んだ若村の視線の先にいたのは五体のモールモッドだった。

 今度こそ誰のフォローを受けることは出来ない。

 一人一体ずつ倒したとしても残り二体が襲ってくる。

 

「葉子!早く逃げろ!」

「葉子ちゃん!」

 

 逃げる?本当に良いのか?

 自分のことを下に見ている零が一人で向かったのに対して自分は三人居てこの状況だ。

 おそらく零は一人でも難なく対処して向かってくるだろうことは何度も戦った香取自身がよく分かっていた。

 だからこそ、納得がいかなかった。

 本当は強いくせに周りに恐れられ避けられていることを甘んじて受け入れている零に。

 同じような戦い方を好む筈なのに零のように強く慣れない自分に。

 逃げる?冗談ではない。

 零に出来て自分に出来ない事は理論上はある筈がない。

 だから香取は逃げなかった。

 かといって、もうどうしようと間に合わない。

 

追尾弾(ハウンド)

 

 たった一言。

 冷たい声色で放たれたその一言で五体のモールモッドが同時に追尾弾(ハウンド)貫かれ絶命する。

 その冷たい声色に香取だけでなく若村も、三浦も誰なのかはおおよその検討は付いていた。

 

「・・・・・・・何やってんの?」

 

 冷たい声色の主、先ほど一人でグラスホッパーでトリオン兵の討伐に向かった少年、零が今度はその冷たい突き刺さるような声を香取達に向ける。

 家屋の屋根から飛び降りて香取に近付いていく。

 

「この際だから言わせて貰う。俺はお前らが苦手だ」

「「「ッ!?」」」

「指示が無いと動けない自主性の無い奴。文句しか言わない無能。才能はあるが自己中心的なバカ」

 

 三浦、若村、香取の順で零が顔を覗かせていく。

 そんななかで、若村は先ほど香取に言われた「手を抜け」と言う言葉を頭で反復させていた。

 何時もならモールモッド一体に三十秒は掛かる筈の零が()()()()()()()モールモッド五体を倒した。

 つまるとこ彼は、()()()()()()()

 何故?等と言う疑問は若村の中には無かった。

 零の言葉を聞けば文句を言われたくないから自分に合わせていたと言う事なのだろうと予測はつく。

 

「・・・・・・取り消しなさいよ」

「止せ止めろ」

 

 香取が一歩でて今にも零につかみ掛かりそうな所を寸でのところで若村が止める。

 

「二人をなじって良いのはアタシだけ。部隊(チーム)でも無いのに何勝手なこと言ってんのよ!」

「葉子ちゃん・・・・・」

「葉子・・・・・」

 

 香取の言葉に、冷たかった零の視線にだんだんと暖かみが出てくる。

 それに気付いた香取が先ほどとうって変わって拍子抜けした顔になり零の胸ぐらをつかもうとしていた事も忘れ立ち竦む。

 

「・・・・・・まぁ、零さんからしたら三人ともまだまだケツの青いガキだから今から何とでもなるとは思ってるけど」

 

 だって、と続けて零は三人の頭に手をポンと乗せて行ってニカッと笑う。

 

「香取は二人を大事に思ってるからそんな啖呵切れたんだろ?」

「ち、違うわよ!」

「え、違うの!?」

 

 何時もの雰囲気に戻った零を見てようやく三浦は安堵の溜め息を流す。

 しかし、若村は違った。

 香取が半年で上がった銃手(ガンナー)ランクのマスターに犬飼の師事得ても未だ到達出来ず、今回だって三浦が香取のフォローに間に合ったから良かったものの、自分は間に合うことが出来なかった。

 自分と目の前の三人の前にある()()の差。

 それを若村は実感していた。

 

「・・・・・・三人ともまだまだ強くなるだろ。迅じゃないけど俺にはお前らのそう言う未来が見える。しいてアドバイスをするならば先ずは若村と三浦がもっと強くなることだ。香取の力を引き出すにはそれが一番有効だ」

 

 零としては、香取隊の作戦は普通に有効だとは思っている。

 香取をちゃんとサポートすれば、B級一位の二宮隊や狙撃手(スナイパー)の始祖である東春秋はともかくとして二位の影浦隊になら勝てる可能性は十分にある筈だと零は確信していた。

 しかし、A級に上がるとなれば香取より強い隊員が同じ部隊に複数人存在することになる。

 だからこそ、現状メンバーでA級と渡り合うなら香取の戦闘力向上はもちろん、若村と三浦のサポートもより一層向上しなければならない。

 

「てことで香取、お前俺の弟子になれ」

 

 驚くほどさらっと発せられたその言葉に、最初は三人とも反応できず、次第に理解できていき嫌な汗を流し始める。

 先ほどからフォローの二人が強くならないといけないと話していたにも関わらずメインの香取を弟子にしようとする言動の不一致を起こす零が理解出来なかった。

 

「あんだけフォローの話しといて何でアタシ!?」

「フォローは所詮フォローだろうが。メインが強く無きゃ意味ねぇんだよ」

「はぁ!?」

 

 言っていることは理解できるのだが、やはり零本人が理解できない香取。

 もちろん理解できていなかったのは香取の後ろに居る二人も同じなのだが、やはり当事者の香取はそれ以上だった。

 

「よし、なら今晩飯に行こう。小佐野と一緒に飯する予定だし。二人より三人の方が美味いだろ」

 

 それ、入ってはダメなやつでは?と若村と三浦が思う中、それとは裏腹に何故か小佐野の名前が出てから急に抵抗を止めた香取が肩を震わしている。

 

「じょ、上等よ!強くなれるならアンタの弟子にでも何にでもなってやろうじゃない!」

 

 実際のところ、香取としては零に他の女性と二人きりで居させる事が嫌なだけなのだが、彼女の性格上それを表に出すことはしない。

 知っているとすれば幼馴染みの染井華くらいのものだ。

 対して零も小佐野にご飯に誘われたのは相談事、大方まぁまぁアホな小佐野の勉強を見てほしいだのそんなことだろうと考えており、無事に諏訪の気遣いが無駄に終わってしまったわけではあるが、その事をこの見た目で損をする少年はまだ知らなかったのだ。




主人公の香取隊に対する対応が結構辛辣な気がする・・・・。
ちなみに香取ちゃんだけを弟子にした理由は自分と同じくセンスでやっているので案外教え安そうと思ったからかです!
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