「来馬隊長、風切隊員そしてまさかの二宮隊長
「これは来馬隊長と風切隊員がそれぞれいい仕事をしましたね。一撃を入れて体勢を崩していなければどちらもやられていた可能性もありました」
「さて、試合は終盤に突入!現在残っているのは来馬隊二人、村上隊三人、柿崎隊一人。人数的には村上隊が優勢か!」
「か、影浦隊員は深傷を負っているので・・・。まだそうと決まった訳じゃ」
『トリオン漏出過多
「ここで影浦隊員が
◇◆◇◆
『あれ?俺点取れたん?』
通信から聞こえてくる声に柿崎は苦笑いを浮かべる。
「あぁ。今のところ俺たちが単独1位だ!」
『やったじゃねーか!』
まだ試合が終わってないとは言え来馬隊を抑えての1位。これには藤丸も喜びの声を上げる。
『浮かれてんじゃねぇ!まだ終わってねぇぞ!』
そう、弓場の言う通りまだ終わっていない。二宮は何とか下せたもののまだ
「マップに見えてるのは俺と犬飼、後太刀川さんか・・・」
建物に隠れてマップを確認しながら柿崎がそう呟く。太刀川の動きを見るにおそらく犬飼を狙っているのだろう。
「!犬飼と加古さんがマップから消えた。バッグワームか」
『そうなりゃ、この試合はもう消化試合だ。お前もバッグワームつけてそっから離れて隠れてろ。移動中の当真の射線には気を付けろよ』
「了解」
零の指示に従って柿崎はバッグワームをつけて加古がいた方向とは逆方向に建物をでる。
ドンッ
『戦闘体活動限界
そして柿崎は当真に撃たれてステージから退場した。
◇◆◇◆
『ザキさん取ったぞ』
「当真くんナーイス。ついでに太刀川さん狙えない?」
当真の通信に太刀川に牽制で銃を撃ち、バックステップで逃げる犬飼か笑顔を崩さずに告げる。
『移動する時間も考えるとしばらく逃げ回ってもらう事になるぞ?』
「それはちょっと無理かな」
太刀川の旋空孤月を避けられずシールドごと左腕を持っていかれる犬飼はもはや諦めムードで時間を稼ぐために逃げ回る。
『当真君を見つけたわ。でも射程外。多分もう移動してるわね』
加古の通信にジワジワと犬飼を追い込む太刀川が答える。
「そうか。こっちはもう直ぐ犬飼を取れそうだ」
『そうなると当真君は隠れそうね。見つけるのは一苦労よ?』
「いや、何処にいるのか分からないなら逆に狙撃される可能性もある」
『それじゃあ、どうするの?』
「犬飼を倒したら時間切れまで隠れる」
『じゃあ・・・』
「あぁ」
太刀川がとどめて言わんかのように一歩踏み込み旋空孤月で斬り捨てる。
『戦闘体活動限界
「この試合、うちと柿崎隊の引き分けだ」
◇◆◇◆
「3、2、1、タイムアーップ!生き残ってた部隊が複数ある為生存点はなし。よってA級B級の猛者達が入り混じるこの試合を制したのはまさかの二部隊!来馬隊と柿崎隊だぁぁぁぁ!!!」
まさかの結果に会場が静まり返る。しかしそれも束の間。すぐに歓声へと変わる。
「それじゃあ、総評に入るぜ。まずは来馬隊から」
「といっても来馬隊で言える事はあまりないですね。強いて言えば来馬隊長が
「なるほど。じゃあ柿崎隊は?」
「こっちは生駒隊員が落ちて最初はどうなるかと思いましたけど風切隊員が3得点を上げてなんとか持ち直しましたね。柿崎隊長をサポートして二宮隊員をおとしたところも自分の役割を分かってる感じでした。生駒隊員も捨て身で影浦隊員を削った事で同点になったので」
笑顔で総評をする嵐山。一方緊張で何も話せていない辻に今度は仁礼から話を振る。
「辻はどうなんだ?村上隊」
「え!?えっと・・・、エースと言える村上先輩と影浦先輩が序盤で動けなくなったのが痛いところでした。・・・でも、柿崎先輩を撃った当真先輩の狙撃。あの射線はなかなか通す事ができないと思います」
「柿崎隊長もそう思って油断してましたからね」
「ほぉ・・・。最後に今回得点を上げられなかった奈良坂隊だけど・・・」
「こ、こっちはもっと単純で最初に
「
二人の説明が終わった後に仁礼がよーし、と声を上げる。
「と言うわけで本日の試合は終わりだ!」
仁礼の一括ち共に観客がドンドン観戦室を後にする。
総評をテレビで聞いていた零達もテレビを消してお互いに向き直る。
「悪い。俺が奈良坂落とし損ねたから単独一位を逃しちまった」
「な、何言ってんだ!お前が3点取ってくれてなかったら1位になれなかったんだぞ!」
零が頭を下げて謝るがすぐに柿崎が零をフォローする。終わってかああすれば良かったと言ったところで結果が変わるわけではない。しかし、零はそれだけが心残りだった。
「そ、そうだぜ!太刀川さん、二宮さん、加古さんがいる来馬隊とタイだったんだ。気ィ落とす事ねぇよ!」
「せやな。俺もそうそう落とされてもうたし」
「あぁ。むしろ俺の方がなんもできてねぇ」
藤丸、生駒、弓場にそう言ってもらい少しだけだが零も気分が楽になる。だが、もう一つ零にはやる事があった。
「・・・・・悪い。ちょっと用事思い出した」
そう言って零は柿崎隊の隊室を飛び出した。
飛び出して向かった先は那須がいるであろう隊長の奈良坂が所属している三輪隊の隊室。
「那須はいるか?」
隊室へ入るや否や零は直様視界に入った奈良坂に質問する。
「玲なら那須隊の隊室に戻りましたよ。随分落ち込んでました」
「・・・・・そうか。邪魔したな」
奈良坂の返答を聞き直様零は踵を返す。足早に那須隊の隊室に向かい歩いているとある人物が視界に入った。
「熊谷!日浦!」
那須隊の
二人が廊下の休憩スペースで缶ジュースを片手に何かを話している。
「あ、零さん!試合観ました!凄かったです!」
「あぁ、ありがとう」
「それで、どうしたんですか?そんなに慌てて」
熊谷の質問に零は自販機でジュースを二つ買いながら答える。
「那須探してんだよ。奈良坂が言うには隊室に戻ってるって聞いたから。もう戻ってるか?」
「さぁ。私達も試合を観てすぐにここに来たので・・・」
熊谷が日浦と顔を見合わせながら答える。零もこの答えは想定していたのか顔色を変える事なく二人に零を言う。
「そうか。ありがとよ」
ジュースを持った零は再び足を那須隊の隊室に向ける。
数分後、那須隊の隊室の前に辿り着いた零は三輪隊の隊室とは違いインターホンを押す。
しかし反応はない。仕方なく零は扉の前で声をかける。
「・・・・・那須、いるか?」
返事はない。ため息を吐いて零は隊室へと入り隊室の中を見渡す。那須の姿は無い。
ゆっくりと部屋の奥へと入ると那須がソファに横になりスヤスヤと寝てしまっていた。
「・・・・・・・・・」
それを見た零は向かいのソファに座り机にジュースを一本起きながらじっと那須の寝顔を眺めてポツポツと言葉を漏らす。
「・・・・・ちゃんと戦ってやれなくて悪かったな。あの時は俺も必死だったんだ。・・・・・いや、違うか。そうじゃ無いな。ちゃんとお前を信じてやれずにごめん。許さなくてもいい。でも、ごめん」
言うだけ言って立ち上がると零は那須隊の隊室を出て行った。零が部屋を出ていきしばらくして隊室にか細い啜り声が聞こえてくる。
この部屋に居るのはただ一人。ソファを涙で濡らす那須だけだ。彼は気付いていた。自分が嘘を吐かれて正々堂々戦ってくれなかったことに怒っているのではなく、信じて一緒に戦ってくれなかったことに怒っていたことに。
すぐに起き上がり弱い身体に無知を打って零を追いかけ隊室を出る。
既に零の背中は遠くにあり、那須は叫ぶ。
「先輩!また私と練習試合をしてくれますか?」
那須の問いかけに答える事は無かったがその代わりに零が手を上げて答える。やはり先輩は先輩だったと試合中の考えを改める那須だった。
次回堤三度目の死