万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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綾辻遥①

 三門市にあるとあるお高めの焼き肉店、『寿寿苑』。

 ボーダーの元A級一位部隊の隊長、東春秋御用達であり、その他のA級隊員やボーダーの上位ランカー等もよく来る店である。

 そんな店で零は冷や汗を流しながら零は牛タンを焼いていた。

 チラリと前を見ると基地からずっと不機嫌そうな香取が座っている。

 更に香取の隣を見れば合流した時は複雑そうな顔をしていたが今や肉の焼ける音と匂いに心を踊らせている小佐野。

 ここまでは分かる。

 小佐野は零を晩御飯に誘った本人であり、香取は零の弟子となったと言うことで零が初弟子が出来たと言うことで舞い上がり連れてきたので居るのは当然だ。

 問題は零の隣に居る少女の事だ。

 

「あ、先輩、これ言い感じに焼けてますよ?はい」

「そ、そうか?でもこれお前が育てたやつ・・・・」

「はい」

「あ、ありがと・・・・・」

 

 有無も言わせずに零の皿に自分の育てた肉を入れ、零が食べるのをニコニコして待つ少女の正体はA級五位であり、ボーダーの顔とも言われる嵐山隊のオペレーター、綾辻遥だった。

 嵐山隊とは前述の通りボーダーの顔であり、隊員は美男美女(佐鳥賢は除く)ばかりだ。

 もちろん、オペレーターも例には漏れず、綾辻はボーダー内外問わずファンが居るほどでボーダーのマドンナとも言うべき存在だ。

 進学校の副生徒会長を務めていて、王子隊所属の生徒会長の蔵内和紀との熱愛疑惑を持たれていたが双方が笑顔で否定。

 綾辻の方は「他に好きな人が居る」と発言したことによりファンは誰だ誰だと日夜議論が続けられているらしい。

 

「あの・・・・・綾辻さん?」

「遥って呼んでください」

「綾辻」

「遥」

「あ・・・」

「遥」

「・・・・・・・・遥」

「はい」

 

 ずっとニコニコ顔で訂正を求めてくる綾辻に諦めたのか零は綾辻呼びを遥呼びに変えて綾辻が皿に入れた肉を頬張る。・・・・・・・いや、そこではない。

 

「ちょっと!なんでボーダーのマドンナ様がここに居るわけ!?」

 

 この状況にいち早く待ったをかけたのは香取だった。

 流石の零もこの綾辻だけには何時ものような態度を取ることが出来ない。

 だからこそ、香取の行動には正直感謝しかなかった。

 しかし・・・・・。

 

「先輩の彼女なので」

 

 笑顔で発された綾辻の言葉に香取だけでなく肉に心を踊らせていた小佐野までが肉から目を離して笑顔の綾辻を見る。

 ウガー!と顔を赤らめる香取、どう反応すれば良いのか分からずにあたふたする小佐野、何時もの事なので軽く流す零、騒がしくなる後ろの席。

 

「ど、どういう事よ!?」

「先輩って去年まで私と同じ学校に通ってたんです。そこで紆余曲折あって結果、恋人同士に・・・」

「なってないからね?」

 

 綾辻の惚気をバッサリと切り捨てて零は焼き上がった牛タンをアワアワしている小佐野の皿に入れ、ついでに文句を言われても嫌なので香取と綾辻の皿にも牛タンを入れる。

 

「つか、俺が二人とここで飯食うってどうやって知ったわけ?」

「旦那の事を把握するのは妻の役目です」

「恋人から夫婦にランクアップしちゃったよ・・・・」

 

 既に綾辻は自分の世界に入り込んでしまっているようで子供の人数などを口走ってしまっている。

 これには香取も恋はここまで人を変えるのか、と自分はならないようにと肝に命じ零が皿に入れた牛タンを頬張る。

 

「先輩、そう言えば先輩に頼みたいことがあるんです」

「勉強か?」

「そうですそうです!よく分かりましたね?」

「国近経由でお前の情報は耳に入ってるからな」

 

 レバーを自分の皿にいれてタレを付けて口に入れる。

 この極限の緊張状態で焼き肉の味もあまり感じることが出来ない零。

 そんな様子を少し離れた席から眺める男と少女が居た。

 

「あんにゃろ・・・。せっかく俺が気ィ効かせたっつうのに」

 

 未成年が居るにも関わらずビールジョッキを片手に四人を覗き見る男、諏訪洸太郎はそう悪態を付きながら内心「羨ましいなおい!」と血の涙を流す。

 諏訪としては自分の隊のオペレーターである小佐野に零に対する想いを成就してほしいとは思っているが、彼は見誤っていたのだ。

 

「まさかアイツの事が好きなやつがまだ居たとはな・・・・」

 

 そう、確かに零はボーダーで恐れられ避けられている。

 だがしかし、彼に想いを寄せている者は戦闘員にもオペレーターにも複数人存在するのだ。

 しかし、そんなことは織り込み済みなのか諏訪の前に座る少女は表情を変えずに四人の席をじっと観察する。

 

「食わねぇのか?」

「私は・・・葉子の様子を見に来ただけなので」

 

 香取隊のオペレーター、染井華。

 先ほどの防衛任務では話はずっと聞いてはいたが何も言うこと無く話が終わってしまった人である。

 香取は人に対して自分の心を偽ってしまういわゆるツンデレと呼ばれるものだ。

 だからこそ、香取が自分の想い人に心にもないことを言わないかが心配だった。

 そして、二人が一番不安視していたのは、現在零の隣で正妻の余裕かの様に笑いながら零の皿に肉を投入する嵐山隊のオペレーター、綾辻遥だ。

 

「あ、先輩。こっちのお肉も焼けましたよ」

「いや、自分の所にいれなさいよ・・・・。お、香取、小佐野、これ焼けてね?」

 

「つか、アイツなんでボーダーのマドンナにあんだけされて照れねぇんだ?」

 

 何にしても一番の疑問は、零が綾辻にベタベタされているにも関わらず、淡白な反応しかせず、何なら香取と小佐野の肉の世話ばかりをしている。

 

「じ、自分でやれるからアンタは自分のをしなさいよ!」

「あ、そう?」

「先輩!私はこういうの苦手だからお願いします!」

「ほいきた!」

 

 零は嬉しそうに肉をひっくり返したり、小佐野の皿に肉や野菜を盛り付ける。

 度々人の世話をしたがる所が影浦隊から男版仁礼光と影で呼ばれている所以なのだが、本人はまだ知らない。

 

「葉子、もう少し素直になりなさい」

 

 香取に聞こえていないにも関わらず香取に注意を促す染井を見て若干ではあるが、諏訪が恐怖する。

 心配になったからとは言え覗き見をしている自分が言えたことではないのだろうが、明らかに染井は香取の恋愛成就に執着しているような気がする。

 これで香取が零とくっつかなければと考えると背筋が凍りそうだが、しかしそれでも諏訪は小佐野の隊長として、小佐野を応援するのだった。

 

♢♦︎♢♦︎

 

「・・・・・・・・ヤバない?」

「ヤバいっす」

「ヤバいなぁ・・・・」

「確かにヤバいかもしれへん・・・・」

 

 そして、諏訪と染井とは別の席で、諏訪や染井と異なり、会話まで聞こえる位置で焼き肉を食べていた隊が真剣そうな顔でそれぞれが呼応するように呟いた。

 彼らは生駒隊。

 オペレーターも含め五人の内四人が関西圏出身者で構成された部隊にである。

 特に生駒隊の隊長である生駒達人は弧月の斬撃を飛ばす旋空弧月において無類の射程をほこっており、換算すれば通常の旋空弧月が二十メートルの射程であり生駒旋空はその二倍、四十メートルの射程がある。

 しかし、零によると生駒隊で本当に警戒すべきは生駒ではないと言うが周りはそれを信じてはいない。

 さて、そんな生駒隊が何故焼き肉店に居るのかと言えばタコパをするためにたこ焼き屋を予約しようとした生駒が間違えて『寿寿苑』に予約を入れてしまったのだ。

 普通はキャンセルすれば良いのだが、そのキャンセル料がお高めの焼き肉店なので意外に高い。

 給与が出来高制のB級隊員にはかなりの痛手になるため諦めて焼き肉店に赴いたのだ。

 

「まさかボーダーのマドンナの好きな人が零やとわな・・・」

 

 表情一つ変えずに肉をひっくり返しながら喋る生駒。

 そんな生駒を見ながら自分の育てた肉を自身の皿に入れ、水上敏志は念入りに肉にタレをつけると肉を口に放り込む。

 

「まぁ、ありえへん話やないでしょ?現に零さん結構オペレーターの子にモテはりますし」

「マジか!どんくらいや?隠岐くらい?」

 

 自分の隣に座っている部隊メンバーを見ながらそう言うと、隠岐孝二は苦笑いを浮かべながら自分の肉を取っていく。

 

「自分そんなモテませんよ・・・・」

「いや、隠岐はモテるで!そや、何なら今からどんだけ隠岐がモテるかプレゼンしたるわ」

 

 周りが見れば本人に向かって何プレゼンするの、と思うかも知れないがこうして生駒隊の話題はボーダーのマドンナがボーダーの嫌われ者のことを好いていることから自分たちの隊の隊員がどれだけモテるかへと移り変わって行ったのだった。




生駒隊のノリがわからない・・・・。
これで良いのか?
後ヒロイン何人だそうか・・・・。
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