万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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完全オリジナル展開です。


遠征任務②

「おうおう、全員揃い踏みじゃねーの」

 

 探索終了から一時間。零と見張りの交代をした当真が遠征艇に戻って開口一番そう言った。

 零と今帰ってきた当真以外の全員が席に座り顔を見合わせている。今話題となっているのは辺りを彷徨くトリオン兵の排除、および太刀川、出水が捕らえた近界民(ネイバー)の処遇だ。

 もちろん誰も殺そうなどとは思っていない。精々捕虜として情報を吐かせたり人質として利用する程度だ。

 

「くそッ!解きやがれ!ぶっ殺してやる!」

 

 紐に縛られて船の隅に放置されている少女が太刀川達に睨みつけながら喚く。

 

「安心しろ。危害を加えるつもりはない」

「そんなこと言って!お前らは最近ここら辺りを徘徊してるトリオン兵どもの親玉なんだろ!」

 

 風間の言葉も嘘と一蹴し、少女は更に叫ぶ。

 

「お前らをぶっ殺して私がこの国を救うんだ!」

 

 そんな少女に困ったように太刀川が言葉をかける。

 

「悪いんだけどさ、お嬢ちゃん。俺達はあのトリオン兵とはなんの関係もない。ただこの国に遠征をしに来ただけなんだ」

「おい、太刀川」

 

 太刀川の言葉を止めようと風間が割って入る。だが太刀川の言葉は止まらなかった。

 

「それに、俺達もトリオン兵に襲われた」

 

 太刀川の言葉に少女は風間や歌川の顔恐る恐るを見る。二人もそれに気付いたのか頷きながら答える。

 

「確かに襲われた。ワニのような見た目のトリオン兵だ」

「!」

「僕の方も襲われましたよ。ゴリラみたいな見た目でした」

「!!」

 

 少女が縛られたまま立ち上がり、風間に向かって行く。

 

「そいつらどうした!?」

「倒した。硬かったがそこまで手こずる敵でもない」

 

 その言葉に少女は絶句し、尻餅をつく。国近と三上が少女を起きあがらせに向かうが少女は二人が来る前に立ち上がり覚悟を決めたような顔をその場の全員に向ける。

 いきなりどうしたのか、とその場の全員が思う中、少女は頭を勢いよく下げる。

 

「お願いします!少しの間でいいんです。この国をトリオン兵から守ってください!」

 

 そこからは少女、ミカの話は始まった。

 まずこの惑星国家の名前はメノエイデスと言い、南半球が海の惑星国家だ。ここは気候が温暖なので農作物が盛んな惑星だった。

 そんなメノエイデスに最近トリオン兵が現れ始め住民が攫われ始めている。もちろんそれを阻止すべくメノエイデスのトリガー使いの兵が奮闘したが力及ばず敗北。抵抗の術がほとんど無い状態だ。

 ミカはそのトリガー使いの1人でまだ見習いなので戦いには参加させてもらえずそのまま指を咥えて見ることができないと森をパトロールしていたところ太刀川と出水を発見し、つけていたところを出水に撃ち抜かれたのだ。

 

「正直、ウチのトリガー使いは私を含めてみんな弱いんだ。こんなことは滅多にないから。精々ロドクルーンのアイドラを一人で倒せるかどうかだし・・・」

「だから俺達に手を貸して欲しいと?」

「は、はい!」

 

 風間の質問にミカが大きく頷く。だがこの場の誰もが顔に難色を指名ていた。

 そして、真木が使っているパソコンから一人の声が聞こえてくる。

 

『それやって俺達にメリットあるの?』

 

 全員がデカデカと画面いっぱいに風切と書かれた真木のパソコンに振り向く。

 ミカは何も答えずに黙り込んでしまう。

 

『要するにお前は自分達では勝てない相手を、この国に義理もねー俺達が戦って守って下さい。でも報酬は何も払えませんってそう言いたいわけだな?』

「わ、私が王様に掛け合う!」

『掛け合ってどうする?見習いなんだろ?聞いてくれんのか?』

「それは・・・」

 

 ミカは答えない。自分でも分かっているのだ。見習いの自分が掛け合ったところで誰も相手などしてくれないと。

 玄界(ミデン)で言えばC級が城戸に掛け合うようなものだ。

 

『もうちょい言ってやろうか?俺らが遠征する目的は近界(ネイバーフッド)の軌道の調査とか未知のトリガーの確保な訳』

 

 そこで哀れな見習いに質問です、と明らかに嫌味を含みながら零は楽しそうに吐く。

 

『今、この場で俺達にどうして欲しいのか。今の話を聞いて君がやるべきことを述べなさい』

 

 しばらくの間、沈黙が流れる。いったい何秒だっただろうか?そんなことは誰も数えていないので分からないが少なくとも思ったよりも流れた時間は短かっただろう。

 

「・・・・・私達に、手を貸して欲しい。でも、私からは報酬が提示できない。でも隊長に繋ぐことならできる。交渉はそこでやって欲しい」

『ギリギリ。ほんっとうにギリギリだけど及第点の解答だな。それで良いですか風間さん?』

 

 不意に来た質問に風間が頷き他のメンバーを見る。

 

「明日の予定を伝える。明日は俺と太刀川、風切でミカを連れその隊長との交渉に向かう。菊地原、歌川、出水は明日船からIキロ圏内のトリオン兵の排除。冬島さんと当真は今日と同じように船の見張り。オペレーターは俺達に国近、菊地原達には三上、冬島さん達には真木を充てる」

『了解!』

 

 風間の指示に全員の声が一致し、直様それぞれの用事へと移る。

 

「太刀川さん、俺先に風呂入りますよ。晩の見張り、次俺達なんで」

「おー」

「あー、出水君ズルい」

「え?柚宇さん先入ります?」

 

 次の見張りの為に風呂に入ろうとする太刀川隊。

 

「隊長。こっちの辺りなんだけどここら辺にもワープ置いといて欲しいんだけど」

「この辺か?・・・・・よし、置いたぞ」

「サンキュー、隊長」

『1人って暇だな・・・。真木、話し相手になってくんね?』

「文句を言わずに働きなさい」

 

 若干1名は文句を言っているようだが船の周りの守りを盤石にしようと話を進める冬島隊。

 

「風間さんも甘すぎますよ。そんなことしなくてもあの子人質に要求したらいいじゃ無いですか」

「無理に恨みを買う必要もない。穏便に済むならそれが一番だ」

「私、お茶淹れて来ますね」

「あ、オレも手伝います」

「ありがとう」

 

 見張りにはまだ時間があるので暫しの休憩を享受する風間隊。

 そんな面々を見ていると本当に遠征中なのか、と囚われの少女は不思議に思ってしまう。

 そんな中、そんな哀れな見習い少女に三上が近付いて紐に手をかける。何をされるか分からないと言う恐怖で目を閉じるが次に訪れたのは紐が服に擦れる音と解放感だった。

 

「!?」

 

 何をされたのかミカはすぐに理解した。目の前の少女は現段階では敵かもしれない自分の拘束を解いたのだ。

 

「なんで・・・」

「ずっと縛られたままじゃ大変だもんね。大丈夫ですよね、風間さん?」

「問題ない。今日はもうここに泊まるといい。ただ、念の為お前のトリガーは預からせて貰う。心配するな。明日には返す」

 

 渋々頷いてミカが立ち上がる。

 

「その・・・」

「なんだ?トイレか?」

「当真」

「冗談だって。真木ちゃんこえーって」

 

 当真の失言に真木が睨みを効かせる。びびって真木を宥める当真を見ながらミカは腹を鳴らす。

 

「ご、ご飯を貰えれば・・・」

 

 赤面しながら力無くミカが声を振り絞る。

 

「三上、風切の作り置きがあったはずだ。持って来てやれ」

「はい」

 

◇◆◇◆

 

 風間から予定を聞いてから三時間。零は未だに遠征艇の上からアイビスのスコープ越しに見張りを続けていた。

 現在の時刻は日本時間で九時少し前。見張りは各隊三時間ずつで行われる。そろそろ太刀川隊の誰かが出てくるはずだがまだ出てこない。

 話し相手は通信越しの真木視界ないが何を話してもおそらく働けと言われて終わるだけだ。早く誰か来ないかな〜、などと思っていると不意にスコープに誰かの目が映し出される。

 

「うわっ!?」

 

 驚いて零がスコープから目を離し、前を見るとそこには笑いながら立つ太刀川隊のオペレーター、国近がいた。

 

「柚宇・・・。船の外はあぶねーぞ」

「だって零ちゃん寂しそうだったし」

 

 たく、と諦めたように零は再びスコープを覗く。そんな零を見るや否や国近は零の隣にちょこんと座る。

 

「あの近界民(ネイバー)、今どうしてる?」

「ご飯食べたら疲れたのか寝ちゃったよ」

「・・・・・そうか」

 

 短い会話に国近はう〜ん、と唸り、今度は自分からと言わんばかりに零に言葉を投げかける。

 

「零ちゃんはさ、最初からあの子のことを助けたかったんじゃない?」

「・・・・・何を根拠にそんなこと言ってんだよ」

 

 国近を見ようとはしなかったが、確かに零は動揺したように声色が変わる。

 

「あの子の言うことに最初は何のメリットも無かったからね。孤立してる中で緊急脱出(ベイルアウト)機能も無しに受けるにはそれ相応のリターンが要ったのも皆理解してた。結局、誰が言うかの問題だったんだよ」

 

 でも、と国近は続ける。

 

「皆を危険に晒すことだって言うのも理解してた」

 

 ようやく零が顔を上げて国近をみる。確かに自分のやったことが部隊を危険に晒すこととは理解していた。それでも零が口八丁で誘導したのはこの国が三門市と被ってしまったからだ。

 

「零ちゃんは優しいから。あの子に三門市みたいの人達みたいに悲しんで欲しくなかったんだよね?」

「・・・・・トリガーを手に入れる最適解だと思ったからだよ。別にこの国の奴らがどうなっても関係ない」

 

 国近は自分のことを分かっている。それでも天邪鬼な零は嘘を吐く。

 

「・・・・・私は好きだよ。零ちゃんのその捻くれたところも優しいところも」

「そうかい。ありがとよ」

「本当だよ?」

 

 国近が零に顔を近付ける。あともう少しで唇が重なる距離だ。

 

「おーい、風切。交代だ」

 

 しかし、不意に太刀川の声が聞こえて距離は瞬く間に開く。

 

「あれ?柚宇さんもいたんですか?」

「うん。零ちゃんの話し相手にね〜。すぐ戻るから〜」

 

 国近が船内に戻っていくのを見ながら零は夜空に輝く星を見上げた。




遠征ってどんな感じでやるんでしょうね
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