万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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遠征任務③

 南半球を海が、北半球を陸地が構成する惑星国家メノエイデス。その首都フェンガリ。山の頂上に位置するその都の中心に聳え立つ城の近くにある立派な建物。そこに今風間、太刀川、零、ミカはいた。

 

「お待たせして申し訳ない。団長のイザヨイと申します」

 

 ミカの案内の元、応接室に通され、ミカが団長を呼びに行くと部屋を出て行ってから数分が経過し、ようやくミカともう1人の男が入ってくる。

 いかにも優男と言うような感じのイザヨイと名乗る男はそう言いながら零達の前へと腰掛けミカは壁沿いに立ったまま待機する。

 

「ミカから大方の話は伺いました。まずは彼女の非礼を心よりお詫びします」

「過ぎたことです。それに他所者の我々に対しては正しい対応です」

 

 頭を下げるイザヨイを宥めながら風間は言葉を続けていく。

 

「この国の状況は彼女から伺っています。我々が防衛の手助けをする条件としてはメノエイデスの軌道地図とトリガー全種類を一個ずつ譲って頂きたい」

 

 この提案にイザヨイは何と答えるのか。部屋にいる四人に緊張が走る。しばらく目を閉じていたイザヨイがようやく口を開いて喋り出す。

 

「ありがたい申し出ですが、お断りさせていただきます」

 

 眉をぴくりと動かした風間がイザヨイに質問する。

 

「理由を伺いたい。特にそちらにデメリットは無いように思いますが?」

「まず第一として私は貴方達の力を信用していない」

「ミカの話を信用していないと?」

 

 すかさず零も質問する。部下の話を信用していないのか、と。

 

「もちろん、部下の話ですので信じましょう。しかし彼女は貴方方がトリオン兵を倒したと言う話を聞いただけで実際には見ていません。貴方方が彼女に嘘をついた可能性がある」

 

 確かに風間はミカにトリオン兵を倒したと言った。だが、彼女が見ていたのは太刀川と出水であり、彼らはトリオン兵と遭遇してはいない。

 

「第二に、我々だけでも十分トリオン兵に対応できる」

「どう言うことだ?」

 

 イザヨイの言葉に太刀川が顔を顰める。イザヨイの言うことが本当であるならばミカは状況も見れないバカになるが昨日のミカには本当に切羽詰まった何かを太刀川は感じていた。

 それは風間も、声だけしか聞いていない零もミカが本気なのは分かっていた。

 だからこそ疑問に思う。見習いでも分かるような状況を、果たして団長の位置にいる目の前の優男が分からないのか、と。

 

「確かに我が国のトリガー使いは弱い。しかし奴等を足止めはできる。時間さえ稼いで貰えれば私が全て討ち取ります」

「・・・・・それじゃあいつか限界が来るだろ」

 

 あまりにもイザヨイに負担が大き過ぎる。もちろんイザヨイはそんな事は百も承知だった。

 

「当然、兵の訓練、トリガー技術の研究、トリオン兵の解析、全て行っています。手助けに名乗り出てくれたのには感謝します。しかし・・・」

「あくまでも、我々に借りを作りたくはない、と?」

 

 イザヨイが頷くのを見て零は全員に聞こえるくらいの大きなため息を吐く。

 

「素人意見で恐縮なんですけど、捕獲用トリオン兵の情報は其方にあるんですか?」

「捕獲用トリオン兵?」

「人間を捕らえる為の大型トリオン兵です」

 

 イザヨイの疑問に風間が答える。零も正直ここまで現状が酷いとは思っていなかった。

 せめてどのようなトリオン兵が攻めて来ているかの特定は済ませているものではないだろうか?

 なのに未だに特定ができていないどころか捕獲用トリオン兵が何なのかすら分かっていないのが現状だ。

 

「それはまだ判明していません。しかし、研究班が総力を上げて調査中です。心配はいりません」

「それまでに何人が攫われた?」

 

 零の質問にイザヨイは答えない。分かっているのだ。研究班が調査してもなお特定できず行方不明が相次いでいることは。

 

「我々なら今日中に原因の特定が可能だと言ったらどうします?」

 

 風間の提案にイザヨイは目を丸くして風間を見る。そんなことができるならば確かに願ったり叶ったりではあるだろう。だが、交渉の主導権を渡してしまえば後から倍以上のものをふっかけられる可能性もある。

 

「本当に、そんな事ができるんですか?」

「約束します」

 

 風間の言葉に嘘はない。それはイザヨイが見ても明らかだった。それでもまだ少し信用するには何かが足りなかった。

 

『太刀川さん。太刀川さん達の近くでトリオン反応。多分昨日のトリオン兵だね』

 

 そんな最中、左耳から国近の声が聞こえてくる。すぐに俺達は立ち上がって部屋を急いで出る。

 

「どうしたんだ・・・。いきなり?」

 

 零達が出てすぐ、イザヨイのそんな疑問はすぐに晴らされることになった。イザヨイの部下の一人が部屋に駆け込んでする。

 

「ほ、報告します!市街地にトリオン兵多数出現!第一、第二、第三部隊が現在避難誘導を、第四、第五部隊でトリオン兵の足止めを行っていますが戦況は押され気味です!」

「何!?」

 

 部下の報告にイザヨイも直様立ち上がり部下とミカを連れて部屋を出る。

 

「第一、第二部隊をトリオン兵の足止めに回せ。今回は市街地だ。見習いを避難誘導に充てる!見習いは主席のミカに任せる」

『了解!』

 

 部下とミカがそれぞれの方向へと走り出す。

 

(問題は・・・・・。いの一番に飛び出していった()()()()())の兵、か・・・)

 

◇◆◇◆

 

 フェンガリの中央通りを逃げ惑う人々とは逆の方向に走る三つの人影があった。

 二人は腰に孤月が納まった鞘を掲げ一人は何も手に持たずに走る。

 

『トリオン兵の位置情報載せとくね〜』

 

 国近のアシストで三人の視界にトリオン兵の位置が表示される。

 

「よし、三手に分かれる。俺は南西だ」

「じゃあ俺は東にでも行くか・・・」

「となると俺は南っスね」

 

 

 次の瞬間、風間、太刀川、零が三方に分かれて走り出す。

 

『トリオン兵の情報は昨日の通りだ。ワニ型のトリオン兵は背中の装甲が硬い。だがおそらく孤月なら簡単に斬れるだろう』

『ゴリラみたいな奴は多分スコーピオンでも削れます』

 

 屋根に登った太刀川がトリオン兵を視界に入れながら風間と零の話に耳を傾ける。

 

『極力街や市民への被害は避けろ。旋空や射撃トリガーは無しだ』

「ハンデ戦か。面白そうだ」

『遊びじゃないっスからね?』

 

 零の忠告に分かってるよ、と軽く返しながら太刀川が屋根伝えに移動する。

 

『おそらく捕獲用も何処かに居るはずだ。見つけ次第優先的に排除だ』

「了解」

 

 太刀川が一気に腰の日本刀を抜きトリオン兵へとその黄色に輝く刃を振り下ろすのだった。

 

◇◆◇◆

 

「皆さん!落ち着いて!トリオン兵には我々が対処します!」

 

 見習いの少女が逃げ惑う市民を煽動しながら最後尾を走る。自分の任務は市民への避難誘導。トリオン兵は尊敬する先輩や団長が何とかしてくれる。そう信じて与えられた仕事をこなす。

 だが陽奈は不思議に思っていた。

 

(トリオン兵が・・・こない?)

 

 何時もならどれだけ対応が早くとも一匹はトリオン兵を目にしてもおかしくない頃合いだ。

 先輩や団長を信用していないわけではないが、短時間で抑え込めるほど強くなるわけがない。

 たまたま今日は全員が絶好調だった、と言うこともあり得るが押され気味と報告を聞いていたミカはその選択肢を頭から排除する。

 

「トリオン兵が来るぞ!見習いは住民の避難を急げ!」

 

 建物の上から見張っていた先輩達が本部から支給されるノーマルトリガー、月の弓(ミスタ)を構える。

 ミカも後ろを見てみれば確かにものすごい勢いでワニ型のトリオン兵が攻めてくる。

 トリオン兵に狙いを定め先輩が一斉に矢を撃つが止まる気配すら一向にない。

 

「ッ!逃げろミカ!」

 

 先輩の声に気付けばミカは避難していた集団から取り残されて一人トリオン兵の進行方向に突っ立っていた。

 急いでミカもその場から離れようとするがふと、脳裏に過ったのは昨日零に言われた言葉。

 

(逃げる・・・?私が?この国を守ってほしいって無関係の人達を巻き込んでおいて?)

 

 ギリッ、と歯軋りをしてミカは再びトリオン兵に向き直る。先輩は矢を撃ちながらも未だに逃げるように促すが腹を括ったミカには届かなかった。

 ミカはもう一つの本部から支給されたノーマルトリガー、太陽の剣(プロイ)を握り無謀にもトリオン兵に真正面から斬りかかる。

 誰もが予想した通り、ミカの剣は装甲に傷を付けることができずに弾かれてしまう。

 

「ミカ!」

 

 弾かれたことにより体制を崩して地面を転がっていく。そしてそれをプログラムによって状況に応じた最適の動きをするトリオン兵が見逃す訳もなく、大きな口を開きミカを食おうと走り寄る。

 先輩達もミカを助けようと攻撃するがもちろん止まるわけもなく、近接に移り変わるには遅過ぎた。

 もう駄目だ。そうミカが思った時だった。

 トリオン兵の頭上に人が降りて来て黄色い弧が描かれると共にミカの横スレスレをトリオン兵の上半身が転がっていく。

 

「これで大分減ったか?」

 

 独り言を呟きながら再びグラスホッパーで空に跳ぶ零がそこに居た。

 

「何だ奴らは!?」

「撃ち落とせ!」

 

 だが事情を知らない先輩達にとっては零は見たことがない装備で街を走り回る不審者だ。当然倒そうと月の弓(ミスタ)を零に向ける。

 

「ま、待ってください!彼は味方です!」

「何?」

 

 先輩の一人がミカの言葉に零からトリオン兵の残骸へと目を向ける。確かに鮮やかな手口だった。とても優秀な、下手をすれば自分達の団長よりも強いトリガー使いかもしれない。

 味方になれば心強い。だが、彼に零を測るような目は持っていない。それは自分がよく知っていた。今ならおそらく避けられない。心強い味方を失うリスクと、脅威になる可能性を後に残すリスク。

 

「待て!狙わないでいい!俺達は住民の避難誘導を続行する」

『了解!』

 

 先輩は部下を信じ、脅威になる可能性を後に残すリスクを取った。

 

◇◆◇◆

 

「結構倒しましたけど未だに捕獲用トリオン兵が見つかりませんね」

 

 担当する地域のトリオン兵の駆除も大方の終わりを迎えた零が風間に通信を入れる。

 

『こっちもだ。敵の狙いはトリオンではないと言うことか?』

 

 最早手詰まりと言った感じに見える範囲のトリオン兵を狩っていく。捕獲用トリオン兵を一体でも倒しているのであれば解析してマップに映すことも可能だが今はそれができない状況だ。

 

『国近。出水達からなんか新しい情報ねーか?』

『あったらすぐに伝えてるよ。トリオン兵の討伐自体は順調みたいだけどね』

 

 太刀川の質問に国近が淡々と答えるのを聞いて零は舌打ちをする。探しても見つからない敵にうんざりしていた。

 

「こっちもう見える的全部仕留めましたよ?」

『俺の方も片付いた。風間さんは?』

『こっちも終わった。だが腑に落ちない。いったい何故市街地にトリオン兵を放つ必要がある?』

 

 四人が通信越しに考えていると国近の通信から男の声が聞こえてくる。

 

『おい、風切。お前ちょっと周りで孤月振ってみろ』

「冬島さん?まぁ、はい・・・」

 

 渋々と言う感じに零は孤月を振ってみる。こんなことをして何になるのだろう、と思いながら孤月を振った三回目。ガキン、と何かに当たる音がして同時にそこにふわっとカメレオン型のトリオン兵が現れる。

 

「コイツは・・・・・!?風間さん!新たなトリオン兵を発見!多分コイツが捕獲用です!今から排除します!」

 

 すぐさまもう一度トリオン兵に斬り込む。さっき当たった感覚で分かる。このトリオン兵は他の二匹とは違い装甲は硬くはない。

 捕獲用だけあって攻撃はしてこなかった。攻撃が無ければ例えC級だとしても倒すのは容易い。

 トリオン兵を真っ二つに切断して零は通信に出る。

 

「排除完了。今からそっちにデータ送ります。解析は頼みましたよ」

『おう。任せとけ』

 

 もうそろそろ沈むであろう時間。捕獲用トリオン兵の掃討はメノエイデスのトリガー使いと合同で日が沈むまで続いた。




関係ないんだけどネロさんの最新音MADが結構好きです!
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