万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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遠征任務⑤

「・・・・・なるほど。玄界(ミデン)、良いチームだ」

 

 メノエイデスの何処かに泊まる一つの舟。その中で先の戦いが映し出されたデータを眺める一人の少年が口を開いた。

 近距離が五人に中距離が一人、遠距離が一人の構成。

 遠征に来ると言うことはそれほどの実力があると言う事だ。おそらく玄界(ミデン)でもトップクラスだろう。

 

「ここでの任務も大方終わったからね。隊長の手土産に花を添えようかな」

 

 舟の中でたった一人で不穏に笑う少年の姿がそこにはあった。

 

◇◆◇◆

 

「だーから、違うって言ってんだろ!こう、ばー!っと言うかシュバっ!って言うか!」

 

 フェンガリにあるトリガー騎士団本部の訓練場。

 現在、トリオン兵の襲撃も落ち着きを見せ急遽イザヨイに依頼された兵の訓練を行っている。

 

「わかりません!」

 

 一人の兵士が手を挙げて宣言すると同時に零は竹刀の形にしたスコーピオンを地面に叩き付ける。

 

「このバカちんが!何度も言ってるだろ!?基本的に腰はこうして構えはこう!」

 

 零も動き的には間違ってはいないのだが何せ彼は感覚派完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)だ。説明的には些か言語不足だ。

 こんなんでよく進学校卒業できたな、と思うかもしれないが説明問題はからっきしで国語系はいつもギリギリだった。

 

「先輩、落ち着いてください」

 

 補佐の歌川に宥められて落ち着きを取り戻した零が一度深く息を吸って吐く。

 考えるのはここにボーダーのように何度でも実践形式で戦える設備があれば、と言う過程ばかり。それがあるならいくらでも戦わせて経験を積ませるがそれが無い以上いついかなる場合にも万全のトリオン体で無ければならない。

 

「鬼怒田さんってやっぱ凄かったんだな」

「はい」

 

 それを見ていたミカが手を挙げる。

 

「だったら、寸止めでいいので教官と副教官の手合わせを見せてください」

 

 何を言っているんだ、と言う二人を他所に兵士たちから声が上がる。

 

「そうだそうだ!」

「やってみせろ!」

「どうするんですか?収集つきませんよ、これ」

 

 ふむ、と零が考える素振りを見せてじきに歌川を見る。何か嫌な予感を感じ取ったのか歌川も汗が滲んで来る。

 ニチャァ、と笑う零。少しずつ後ろに下がっていく歌川。

 

「やるか歌川」

「・・・・・風間さんに怒られますよ?」

「そん時は頼むぞ歌川」

「アンタ年上としてのプライドとか無いんですか!?」

「ないね、そんなの」

 

 さらっと言ってのけた零がスコーピオンを左手に持ち襲いかかる。

 直様歌川もスコーピオンでそれを防いでバックステップで距離を取る。だがそれにより気付いたのは零の後ろの立方体だ。

 左手でスコーピオンを持っていると言うことはおそらくメイントリガーに入っていたのだろう。

 何かと入れ替えたのは明白だ。なら、今から打ってくるのは何だ?

 曲射的に弾が動き出したのと同時に歌川は理解する。これは誘導弾(ハウンド)だ。

 だが、少しだけ、ほんの少しだけ歌川の中に疑問が残る。出来るだけ警戒して前にシールドを出す。

 結論から言うと歌川の勘は正しかった。歌川のシールドの前で弾は二度曲がり、再び歌川を狙う。

 警戒をしているならば対応は可能だ。シールドを横にずらすだけ。

 しかし、そこまでは目の前の少年だって読んでいるはずだ。両手でシールドを貼ったら最後孤月で斬りかかってくるだろう。

 だから歌川は()()()()()()()

 

「!?」

 

 予想が出来なかったのだろう。バックステップで距離を取ろうとするがもはや至近距離まで迫った歌川のスコーピオンが首に近付いてくる。

 

「参った!」

 

 零のその言葉と共に歌川のスコーピオンが止まる。

 

「・・・・・勝った?」

 

 手からスコーピオンが消えて、戦いを見ていた兵士達も次第に歓声を挙げる。

 未だに現実を理解できない歌川は呆けながら力無く零を見る。今まで一度も零に勝てたことがない。

 何故勝てた?

 その疑問は兵士達を見ていれば一目瞭然だった。

 

「カッケー!」

「俺もあんなんやってみてーぜ!」

「私も!」

 

 兵士にやる気を出されるデモンストレーションだったのだろう。おそらく自分は出汁に使われたのだ。

 今考えてみたら自分が前に出てきた時点で孤月で迎え撃てば良かったのだ。孤月はスコーピオンより耐久があり鍔迫り合いなら確実に孤月の零の方が有利だ。

 本当に、何を考えているのかつくづく謎な人だと歌川は心の中でため息をつく。

 

「よーし、お前ら。戦いに必要なのはなんだと思う?」

「やっぱり根性とか、気持ち?」

 

 零の質問にミカがすかさず答える。そして零もすかさずミカの頭をスパンッと叩く。

 トリオン体なので勿論ミカに痛みはない。

 

「アホンダラ。んなんで勝てるのはマンガやアニメだけだわ。戦力、戦術、運大体この三つが勝敗を左右するんだ。敵が孤立してるなら囲め。考えることを止めるな。負け確だとしても敵の足は止めろ」

 

 感覚派完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)の零は戦闘に関しては完全に感覚で動いているため説明なんてそもそもできる訳が無い。

 理詰めの戦いよりも勘に頼る戦いなのだ。

 だが防衛はチーム戦だ。一人が突出しているだけでは意味がない。カクレオンと高い連携が売りの風間隊がそのいい例だろう。

 

「んじゃ、今日は解散」

 

 零と歌川がその場を去り、残った兵士達も順次その場を去っていく。そして、ミカもその軍勢と共に訓練所を後にした。

 

◇◆◇◆

 

 特別教官として来た彼らの言っていることがよく分からなかった。孤立している敵を囲むや考えることを止めるなと言うのは分かる。

 だが最後が分からない。負けが確定しているならばその場から離れて別の敵の相手をした方がまだ効率的だとミカは思う。

 ミカには目標があった。尊敬するイザヨイ団長より強くなり、家族や国の皆んなを護る。その上で攫われた国民を取り戻す。

 その為ならばどんな努力だって苦ではなかった。

 しかし、今日来た教官。歌川と名乗っていた方はおそらく努力もしている納得の強さだ。

 だが、零の方は多分違う。あの性格だ。才能にかまけて努力なんて一切していないのだろう。だから彼は負けたのだ。

 

「いい気味だ」

 

 捨て台詞のようにそのような言葉を吐き捨てながら今日の晩御飯の材料を買うために市街地の中央通りを歩く。

 今日はパンとシチューだ。ミルクに野菜、小麦粉も欠かせない。

 

「おじさん!人参と玉葱、あとじゃがいも三つ!」

「おぉ、ミカちゃんじゃねーか。はいよ。いつも俺らを守ってくれてるお礼だ。一個リンゴもオマケだよ」

「ありがとおじさん!」

 

 ミカは昔からこの辺りではちょっとしたアイドルのような存在だ。困っている人達を助けるから好かれている。

 

「ん?」

 

 そんな彼女だからこそ気付いた。毎日通って、この辺りに住む人達の顔を覚えているからこそ、見覚えのない人間は余計に目立つ。

 それがフードを被って人目を気にしながら動いているなら尚更だ。

 気になり後を付けてみる。そこは人気のない路地裏だ。これは本格的に怪しくなって来たとミカは物陰に隠れてじっと不審者を観察する。

 行き止まりまでたどり着くと不審者はいきなりしゃがみ込みぶつぶつと何かを呟く。

 

「さ、行っておいで。ボクの可愛い可愛い息子達」

 

 地面が光だし、そこから巨大なトリオン兵が現れる。見た目は足が大きく、手が極端に小さい。尻尾があり口も長く大きい。

 零達から見れば一目で恐竜と分かる見た目だ。だが、ミカからしたらよく分からない形のトリオン兵だ。

 ミカを跨いでトリオン兵が大通りへと流れ出る。

 

「トリオン兵が・・・・・ッ!」

 

 起こった現状に理解が追いつかない。だが現状できることは三つ。トリオン兵を作り出した敵を尾行するか、トリオン兵の相手をするか、避難誘導か。

 どれが最適解だ?悩む。だが、現段階でそれをする暇など彼女には無かった。

 

「あぁ、君はまだ残っててね。まだまだ用があるから」

 

 不意に後ろから声をかけられて急いで距離を取る。だが既に不審者はそこには居ない。

 

「酷いなぁ・・・。そんなに警戒されちゃうとボク泣いちゃうよ?」

「・・・・・誰だよお前。顔を見せろ」

 

 不審者はミカの命令に不気味に笑いながら抵抗する素振りもなくフードを脱ぐ。

 露になった不審者の顔にミカ目を丸くする。

 

「な、なんで・・・」

 

 悪そうな目付き。160程の背丈。特徴敵なアホ毛。それは今先ほどまでずっと見ていたその顔は。

 

「うんうん。言いたいことは分かるよ。似ているもんね。君が連れて来た彼に」

 

 ミカは答えない。確かに顔は瓜二つだ。

 

玄界(ミデン)の兵士、風切零に、ね」




書けば書くほど大規模侵攻編とB級ランク戦編に早く突入したい
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