万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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2章〜大規模侵攻編〜
迅悠一①


 S級隊員の実力派エリートの迅悠一にとって風切零と言う男は本当に不確定要素だ。

 確定した未来すら彼が介入しただけで幾つもの道に別れてしまう。

 

 だから、迅は今回見た未来をいい方向に確実に持っていくために城戸に頼み込み零を遠征へと連れて行くことにした。

 小南には結構ドヤされたがそれも仕方はないと割り切った。

 

 彼の今回の目的は旧ボーダーの創立メンバーの一人、空閑有吾の息子である空閑遊真のボーダーへの入隊だ。

 

 玉狛支部での仮入隊も果たし、ここまでは順調だった。

 

 だが、(ブラック)トリガーの保有者であった空閑を玉狛支部に入れた事によりパワーバランスが崩れることを危惧した城戸派が遠征から帰ってくる遠征部隊を差し向けてくる未来が見えた。

 

「………ちょっとマズいかもな………」

 

 玉狛支部の屋上から本部をじっと眺めてそうボソッと呟いた。

 

◇◆◇◆

 

 その日の夜、ボーダー本部の中庭に(ゲート)が発生した。

 

(ゲート)(ゲート)!遠征艇が着艇します。付近の隊員は注意してください!』

 

 幹部達が見守る中、無機質な放送と共に(ゲート)の中から遠征艇が出て地面に着陸する。

 

「いっちばーん!」

 

 まず最初に出てきたのは何やら機嫌が良さそうな少年、零だった。

 

「あ、司令!鬼怒田さん!根付さん!唐沢さん!お出迎えありがとうございます!それじゃあ帰ります!」

「待てい!先に報告を済ませんか!」

 

 笑顔で四人を通り過ぎ、そのまま帰宅しようとする零を鬼怒田が止める。

 

「え〜………」

「風切………」

 

 ブーブー、と文句を垂れる零に次に出てきた風間が注意する。

 流石に風間には中々背けないのか諦めて戻ってくる。

 

 全員が降りてきたのを確認して城戸が口を開く。

 

「………太刀川、風間、冬島、風切は後で司令室に報告に来るように。以上だ」

 

 城戸がその場を立ち去り残りの幹部も後に続く。

 

「何で俺まで………」

「おいおい、隊長今グロッキーだぜ?」

「アンタが行けば良いじゃない」

「デスヨネー………」

 

 真木の鶴の一声もあり、結局冬島の代わりに当真を加えた四人が司令室に脚を運び、先ずは今回の遠征の成果を風間が報告する。

 

「………さて、帰還早々で悪いがお前達には新しい任務がある。現在玉狛支部にある(ブラック)トリガーの確保だ」

(ブラック)トリガー………!」

「玉狛?」

 

 風間と太刀川が聞き返すとその場にいた三輪隊の奈良坂が立ち上がり説明を始める。

 

 12月14日午前、追跡調査により近界民(ネイバー)を発見。

 交戦したところ(ブラック)トリガーの発動を確認。

 その能力は「相手の攻撃を学習して自分のものにする」

 その後、玉狛支部の迅が戦闘に介入。

 迅とその近界民(ネイバー)に面識があったため一時停戦。

 その近界民(ネイバー)は迅の手引きにより玉狛支部に入隊。

 

 大枠はこの様なもので零も目を細めながら城戸を見る。

 

「驚いたか?」

「………いえ。迅のやることですから意味はあるんでしょう。でも(ブラック)トリガーって言うのは問題ですね」

「何でだ?」

 

 当真が零に聞き返すと風間が呆れた様に口を開く。

 

「玉狛に(ブラック)トリガーが二つとなればボーダーないのパワーバランスが逆転する」

「そうだ。だが、それは許されない。お前達には何としてでも(ブラック)トリガーを確保してもらう」

(ブラック)トリガーの行動パターンは?」

 

 太刀川の質問に全員が太刀川を見る。

 

「一人になる時間帯とか決まってんの?まさか玉狛全員わ相手するわけにはいかないだろ」

「暗殺なら俺得意ッスよ」

「そんなことしたって迅が対策してるだろ」

 

 冷静に零の発言を太刀川は却下する。

 当たり前だ。未来を見れる迅に小手先の技は通じない。

 

(ブラック)トリガーは毎朝七時ごろ玉狛支部にやってきて夜9時から11時の間に玉狛を出て自宅に戻る様です。現在もうちの米屋と古寺が監視しています」

 

 奈良坂の報告に零は近界民(ネイバー)が自宅?とか、米屋絶対暇してるな、等と頭に浮かべる。

 

「チャンスは毎日あるわけだねぇ。ならばしっかり作戦を練って………」

「いや、今夜にしましょう今夜」

 

 根付の提案に待ったを掛けて出す太刀川の言葉に全員が目を見開く。

 

「………太刀川さん。いくらあんたでも相手を舐めない方がいい」

「舐める?何でだ?三輪。相手のトリガーは「学習する」トリガーなんだろ?今頃うちのトリガーを「学習」してるかもしれない。時間が経つほどこっちは不利になるぞ。それに長引かせたら見張りをしてる米屋と古寺に悪いだろ。サクッと終わらせようや。それでいいですか?城戸司令」

「いいだろう。部隊はお前が指揮しろ。太刀川」

「了解です」

 

 報告諸々も終了して風間以外が司令室を出る。

 

「普段の課題もあれくらい頭使って下さいよ………」

「悪い悪い」

「零さん」

 

 零が太刀川に嫌味を言いながら歩いていると不意に後ろから三輪が話しかけてくる。

 

「おー、秀次!元気してるか?」

「はい、おかげさまで」

「お前から見た感じその近界民(ネイバー)はどんな感じだった?」

「………近界民(ネイバー)は全員敵です」

「………そうだったか」

 

 神妙な面持ちになりながら零は再び歩を進める。

 そんな零を見ながら奈良坂は少し胃が痛くなるのだった。

 

◇◆◇◆

 

 一方その頃玉狛支部では………。

 

「え!?零が帰ってくるの!?」

「あぁ」

 

 昼食のカレーを食べながら迅、小南、三雲、空閑の四人が顔を見合わせていた。

 

「こなみ先輩。そのれいって人は誰?」

「零は私の次にボーダーに入った古株よ。今は本部所属だけどね。部屋だってちゃんとここにあるんだから」

「それってこなみ先輩が良く寝転がりに行ってる部屋?」

「な!?」

 

 バレていた事に顔を赤くしながら忘れなさい〜!と空閑の頭をワシャワシャと揺らす。

 

「あの………その零ってもしかしてあの?」

「お、メガネ君は流石に知ってたか」

「まぁ、有名ですし………」

「強いのか?」

 

 三雲が冷や汗を流しながら三雲を見る。

 

「強いも何も、噂じゃ一番最初に正隊員になった人だ」

「ほう………、一度戦ってみたいな」

「心配しなくてもすぐに戦えるよ」

「ちょっと、それって………」

 

 小南が迅に質問しようとするが、カレーを食べ終わった迅が立ち上がり

食器を片付ける。

 

「それじゃあ、訓練頑張れよ若者達よ!」

 

 そのまま迅が出ていくとしばらくの沈黙の後、再び団欒が始まるのだった。

 

◇◆◇◆

 

 その日の夜。作戦結構時間になるであろうその時に香取葉子はある男の跡をつけていた。

 

 男の名前は風切零。香取の師匠だ。

 遠征チームが帰ってきていたのは知っていた。だからいつ零が自分に会いに来てくれるのか楽しみに待っていたが、結局来ることはなくそれに腹を立てた香取は基地で見つけた零の跡をつけて家に乗り込んでやろうと画策したのだ。

 

「ここは………」

 

 川の側にある堤防の様なその建物にボーダーと似た様なエンブレムが掲げられている。

 ここが零のよく言っていた玉狛支部だろうと当たりを付けながら香取は支部へと足を踏み入れた。

 

 一方その頃支部の地下にある訓練室では零、三雲、空閑、宇佐美が対面していた、

 

「はじめまして、空閑遊真です」

「これはこれはご丁寧に………。俺の名前は風切零。まぁ、呼び方はなんでもいいから」

「じゃあ、俺と勝負してよ」

 

 空閑の言葉に他の三人が目を見開く。

 

「お、おい空閑!」

「無茶だよ遊真くん!」

 

 二人が空閑を止めようと前に出る。

 当たり前だ。以前小南は三雲と空閑にウチに弱い奴は要らないと言ったことがある。

 この玉狛に出入りしていると言う事はおそらく小南が強いと認めていると言う事であり、それは空閑が一回しか勝てなかった小南と同等クラスの力があると言う事だ。

 そんな相手にまだボーダーのトリガーに慣れていない空閑が勝てるわけがないと三雲は思った。

 

「なんで?やってみないと分かんないじゃん」

 

 能天気な空閑を見るなり零は笑う。

 

「アハハ、良いねぇ!俺今スッゴイ舐められてる気がするよ。よし、やろう。でもただじゃあ面白くない。賭けをしようぜ。俺が勝ったら、そうだな………お前のその指輪をくれ」

 

 空閑の指輪、それは空閑の父親の肩身であり父親本人。(ブラック)トリガーだった。

 最初から、零の狙いはそれだった。

 だが、今更気付いたところで空閑が勝負を降りる事はできない。自分から申し込んだ勝負だ。自分から降りることなんてできない。

 

「じゃあ、俺が勝ったら何をくれるの?」

「ん?あー、じゃあ何でも言うこと聞いてやるよ」

「分かった。じゃあやろっか」

 

 空閑が机に置いてあった訓練トリガーを手に取ると零は眉を顰める。

 

「訓練トリガー?(ブラック)トリガーはどうした?使わないのか?」

「オサムとの約束だからな。これは使わない」

「空閑………」

 

 へ〜、と少しだけ口角を上げて、零は近くにあったキャスター付きの椅子に座りもしもの為と私服姿で纏っていたトリオン体を解除して杖を壁に立てかけながら自身も訓練トリガーを手に取る。

 

「宇佐見、用意してくれ」

「わ、分かった………」

 

 こうして嫌われ者の少年と白髪の少年は訓練室へと姿を消した。

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