万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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綾辻遥④

 綾辻遥はただただ混乱していた。

 歌川に対しておおよそ人間ではないような声を上げながら鉈を振り、襲いかかる零を見て、映像に映っていた零が脳裏に浮かぶ。

 

「これが・・・・先輩・・・・?」

 

 これは、人間ではない。

 もはや、トリオン兵よりも恐ろしい()()()()だ。

 自分を助けたのもそうだった。

 そもそも彼は自分を助けるために拳を振るったわけではなく、カルピスを溢された報復として拳を振るっていたのだ。

 つまり、彼は自分など見てはいなかった。

 だだ、それとは別に彼はこの戦いを・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

『綾辻さんや綾辻さんや』

「・・・・・・は、はい!」

 

 零の呼び掛けに綾辻は意識を戻す。

 

『風間隊の名前マーカー出来てる?』

「出来てます!」

『んなら、風間さんとウッディの居場所を逐一報告してくれ』

「了解!」

 

◇◆◇◆

 

 風間に左手を斬り落とされた右手に弧月、左手の斬られた断面からスコーピオンで作られた鉈を生やして応戦する。

 風間の直ぐ後に到着した菊地原の攻撃をいなしながらいつ雪に足跡が付くか注意を払う。

 しかし、一向に付く気配がなく、少しずつ零がイラついてくる。

 

「だぁも!何で足跡付かねぇんだよ!」

「そんなの教えるわけないでしょ」

 

 スコーピオンを横に振り菊地原を遠ざける。

 しかし、その隙を狙い風間と歌川が姿を現して零の背中と右腕を狙う。

 

『後ろと右です!』

「了解!」

 

 右足を軸に弧月で風間の、スコーピオンで歌川の攻撃を受け止める。

 

「今だ、菊地原」

「了解」

 

 更に後ろから菊地原がスコーピオンで零の首を刈ろうとするが零に菊地原に顔を向けて嫌な笑みを浮かべる。

 

「!?」

 

 歌川を押し返して自分の脚を斬るとスコーピオンで、今度はスコーピオンの側面で菊地原に向かって脚を打つ。

 

「目眩ましのつもり?」

「違う菊地原。それは・・・・・」

 

 風間が言いきる前に菊地原が飛んできた零の脚を斬り伏せる。

 すると、見えてしまった。

 脚に付いていた立方体が。

 菊地原の頭の中には零がセットしているトリガーが浮かんでいる。

 立方体が現れるトリガーは通常弾(アステロイド)炸裂弾(メテオラ)変化弾(バイパー)誘導弾(ハウンド)の四つ。

 その中で以前零がセットしていたのは通常弾(アステロイド)変化弾(バイパー)誘導弾(ハウンド)の三つ。

 通常弾(アステロイド)は散弾銃散弾銃の為立方体のトリガーは変化弾(バイパー)誘導弾(ハウンド)

 そして、零が罠に使うトリガーは基本的に変化弾(バイパー)

 つまり、この立方体は・・・・・。

 

(変化弾(バイパー)!?)

「残念。炸裂弾(メテオラ)だ」

 

 何処から弾が来ても良いようにシールドを広く展開していた菊地原のシールドはあっけなく爆発により割られ菊地原も巻き込まれる。

 

『戦闘体活動限界緊急脱出(ベイルアウト)

 

 菊地原の脳内にそんな音声が流れると菊地原の身体に亀裂が入り、光の柱となって消えていった。

 

「・・・・・・先ず一人」

 

 と言っても左手左足がなくなっている。

 スコーピオンで義足を形成しても中々バランスを取れることはない。

 

『すいません。風間さん』

「問題ない。寧ろ脚を削れたのは幸いだった」

 

 だいぶ慣れてきたのか雪のせいでしにくいジャンプや脚のスコーピオンを使って塀を斬ったりしている。

 

「・・・・・なーるほどね」

 

 ニヤリと風間と歌川を見ると零は今度は旋空弧月で辺りの建物を横一文字に一刀両断する。

 跳んで避けながらそれを見た歌川が冷や汗を流す。

 

「足跡が付かなかった理由。塀や壁を走ってたんだな」

「・・・・・・・」

 独り言で一人で納得する零を見ながらこれからはどのように立ち回れば良いかを考える。

 そんな中零が後・・・と付け加える。

 

「雪だと脚が雪で隠れて全然見えねぇよなァ?」

 

 舌を出してまた下卑た笑みを浮かべ、それに風間が不審な目を向ける。

 そして気付いた。

 

「歌川!避けろ!」

「!?」

 

 だが、もう遅かった。

 雪の中から現れたスコーピオンが歌川のトリオン供給器官を突き刺す。

 

『トリオン供給器官破損緊急脱出(ベイルアウト)

 

 初めて鉈以外でウッディコール無しで零に負けた歌川を見ながら零は最後に残った風間を見る。

 

「・・・・・・流石だな、風切」

「いやいや、結局のとこ風間さんは全部見破ってるじゃないですか」

「顔が悪くなるからな」

「へー、どうな風に?」

「そんな風にだ」

 

 風間が再び跳ぶと先ほどまで風間が立っていた場所にスコーピオンが生えてくる。

 

「旋空弧月」

 

 今度は斬撃を飛ばすが風間はスコーピオンで防ぐ。

 しかし、スコーピオンは弧月より脆いため、砕けてしまう。

 その隙を逃さずに零は風間の落下予測地点へと距離を詰める。

 それを見て風間も再びスコーピオンの剣を生成して攻撃を受けるの構えを整える。

 だが、彼には見えていなかった。

 既に零の両手には得物が無いことを、今この戦いで最も下卑た笑みをしていることを。

 零の手に青い物が浮かび上がりそれに風間が当たると風間が零からどんどん彼の意識とは別に離れている。

 

(グラスホッパー!?)

 

 再び風間が零を見ると既に右手にはグラスホッパーがなく、アイビスが握られている。

 一発アイビスから弾が放たれる。風間は両手からシールドを出してフルガード。

 二発目が放たれる。風間のシールドに亀裂が入る。

 三発目が放たれる。とうとうシールドが破られて風間の左腕が吹き飛ぶ。

 

「くっ!」

「まだだ!」

 

 グラスホッパーで風間に急接近して風間の腹に散弾銃を突き付ける。

 

「吹っ飛べ!」

 

 その叫びと同時に散弾銃が放たれて風間の身体が真っ二つになる。

 だがそれでも風間は諦めることがなかった。

 最後の最後にスコーピオンで零の首と胴を切り離す。

 

『戦闘体活動限界緊急脱出(ベイルアウト)

『戦闘体活動限界緊急脱出(ベイルアウト)

 

 二人が同時に光となり、練習試合は幕を閉じた。

 

◇◆◇◆

 

「A級三位部隊に先輩引き分けたの!?」

 

 女子会の最中、小佐野がそう叫ぶ。

 

「うん。その後先輩が戻ってきた時に何処か悲しそうな顔をしてて・・・・」

「何でなん?」

 

 綾辻の言葉に細井が疑問を呈するとこの隊室の隊長である加古がジュースを飲みながら喋りだす。

 

「風切くん、風間さんに勧誘されてたのよ。でもそれが嫌だったから練習試合で決めようとしたの。でも・・・」

「引き分けちまったと・・・・」

 

 弓場隊のオペレーターである藤丸ののが加古を見る。

 

「でも本当に大変だったのはその後よ。ね、綾辻ちゃん」

 

 加古が綾辻を見ると綾辻は困った笑顔を向けながら無言を貫き通す。

 回りの女子たちはいったい何があったんだと思わなくはないが誰も少し怖くて質問しようとしない。

 

「綾辻ちゃん何があったの?」

 

 いた。

 自他共に認めるまぁまぁアホな元モデルオペレーター、小佐野瑠衣が空気も読まずに綾辻に聞いてくる。

 

「お説教しちゃいました」

「説教?」

「うん。さすがに戦いの振る舞いが酷かったので」

「でも、それから風切くんちょっと戦いの振る舞い方が変わったのよ」

 

 へー、とそれぞれが感嘆の声を出す。

 そんな時だった。

 

「たのもー!」

 

 話の中に出てきた当人、『ミスターセブンイレブン』の風切零だ。

 

「うぇ?零ちゃん何してるの!?」

 

 今まで話に入ってこなかったA級一位の太刀川隊のオペレーターの国近柚宇がやっていたゲームを一時中断し突然の訪問者に目を向ける。

 零が女子会に乗り込んできたのも驚きだが、零に気がある一部の女子からしたら国近が零のことを零ちゃんと呼んだことのほうが驚きだった。

 

「柚宇おま、ここでそう呼ぶんじゃないよ」

「えー、いいじゃん別に」

「・・・・・それもそうだな」

 

 何故最初拒んでいたのだろうと思いもするが零も零で国近をしたの名前で呼んでいることにまた驚く。

 零が女子でしたの名前を呼ぶのは玉狛支部の小南桐絵、ごり押しで呼ばせている綾辻くらいのものだ。

 

「じゃあ柚宇ちょっと手伝ってくんね?」

「またオペレート?今度は何処?」

「太一と組んでA級三バカと」

 

 何故そのメンバーで?と言う声も出そうだったが結局出ることはなかった。

 仕方ないなー、と国近が部屋を出て零も後を付いていこうとする。

 

「先輩」

 

 しかし、綾辻が声をかけると零は立ち止まって少し笑いながら綾辻を見る。

 

「わかってる。もうあんな事はしねぇよ」

「信じてますよ」

 

 それだけ聞くと零は再び歩き出す。

 それを笑顔で見送る綾辻は周りの目からは旦那を見送る妻のようだと語った。




主人公と原作主人公どっちがサイコ度高いんだろ・・・。
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