万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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那須玲①

 C級隊員は毎週訓練が行われる。

 訓練隊員は毎週の訓練でトリガーの練度を上げるのだ。

 それを数値化した物があり、だいたいの隊員は初めは1000ポイントが与えられ、仮入隊で力を認められた物はそれにポイントが上乗せされる。

 そして、4000ポイントになれば晴れてB級隊員となる。

 すると毎週の訓練はなくなり、後は自主訓練となる。

 ただ、それは攻撃手(アタッカー)射手(シューター)の場合だ。

 狙撃手(スナイパー)はB級隊員になったとしても毎週訓練が行われる。

 本作品の主人公である風切零は攻撃手(アタッカー)射手(シューター)銃手(ガンナー)狙撃手(スナイパー)全てでマスターランク、つまり8000ポイントを超えているボーダー()()()のパーフェクトオールラウンダーである。

 パーフェクトオールラウンダーと言うことはつまり彼は狙撃手(スナイパー)でもあると言うことだ。

 

「だっりぃ・・・・」

 

 射撃訓練に参加しながらそう呟くのはB級部隊、荒船隊の半崎義人。

 荒船隊は三人が三人全員がスナイパーの異色な部隊だ。

 

「半崎くん半崎くん」

「何すか?だるい頼みなら断りますよ?」

 

 隣で死んだ目をしながら延々と的のど真ん中を撃つ零をちらりと見ながら半崎は再び的に向かってイーグレットを撃つ。

 

「いやーね、あの後ろの方々が授業参観の親並みの視線送ってくるからさ、半崎くん何とかしてくんない?」

「それ俺関係無いでしょ。先輩の客なんだから先輩が何とかしてくださいよ」

 

 後ろに居る狙撃手(スナイパー)ではない少女三人を見ながら、零が右隣の半崎に対処を断られたことによりどうするか再び考え、今度は左隣のA級部隊の三輪隊のスナイパーである奈良坂透の方を向く。

 

「奈良坂く~ん」

「何とかできるとしても玲だけです。残り二人は何とかしてください」

「よし、お前は那須を頼む。俺は残りの二人を受け持つから」

 

 零と奈良坂が訓練を止めて後方親面で零を眺める三人に向かって歩く。

 一人目は奈良坂透の従姉妹であり、B級部隊の那須隊の隊長である那須玲。

 たまに零に射手(シューター)として手解きをしてもらっているが、零いわく「絶対俺より良い腕してる」とのこと。

 二人目は、零の唯一の弟子であり、天才肌なので基本的に努力や勉強を嫌うもぎゃりストの香取葉子。

 週三日に二時間ほど零と試合をしながら零にダメ出しを受ける日々を送っている。

 最近は綾辻が積極的に動き始めたことにより、少し危機感を感じているため少しでも長い時間近くにいようと零の背中を追ってはいるが、零に話しかけられれば素っ気なくするツンデレ化が進行している。

 三人目は言わずと知れたボーダーのマドンナ綾辻遥・・・・ではなく、元モデルの小佐野瑠衣。

 ただただ零の訓練を見に来ただけの一般オペレーター。

 

「玲。今は訓練中だ。風切先輩に用があるなら後にしてくれ」

「大丈夫よ。先輩の邪魔はしないわ」

 

 奈良坂の言葉に一切動じることなく言い返す那須。

 内心ダメじゃねぇかと思いながら零も目の前の二人にコンタクトを取ってみる。

 まずは香取の方を振り返り、

 

「香取さんや香取さんや、流石にここに来て目的地の方角が一緒とは言えませんことよ?」

「私は狙撃手(スナイパー)の練習を見に来たのよ悪い?別に邪魔はしてないでしょ」

 

 確かに、別に邪魔にはなっていないわけだから文句はない。

 寧ろどうして自分は気になったのだろうか。自意識過剰?等と思いながら次に零は小佐野を見る。

 

「先輩ちょっと口を開けてください」

「ん?お、おう」

 

 小佐野の言われるように零は口をあー、とあける。

 すると小佐野は零の口に何かを突っ込んで零は反射的に口を閉じる。

 口の中にイチゴの甘い味が広がった瞬間零は何を口に入れられたのか理解した。

 

「あ、アンタそれ・・・、間接・・・」

 

 香取も顔を赤くしながら零を指差してあたふたする。

 対して那須は何も言わずに目を見開いて呆然としている。

 

「先輩、それ、差し入れなんで全部舐めきってくださいね」

「こんな舐めかけの差し入れ聞いたことねぇよ・・・」

「でも全部舐めるんですよね?」

「まぁな。貰えるものは病気とゴミ以外なら何でも戴くのが零さんだからな」

 

 零の言葉を聞いて満足したかのように訓練場を後にする小佐野の背中を見送り再び香取を見る。

 

「な、何よ・・・・・」

「香取・・・・。今の俺、もしかして諏訪さんくらいイカした感じになってる?」

 

 コイツは口に何か咥えるイコール諏訪洸太郎だとでも思っているのだろうか?と思いながらそっぽを向く香取。

 しばらくキャンディを味わってから考えるようにして香取と那須を見る。

 

「ん~、まぁ見学だけなら別にいいか・・・」

「何のために俺呼んだんですか・・・」

「糖分摂取したら気にならなくなった」

 

 呆れ気味に零を見ながら奈良坂が元の射撃位置に戻る。

 それを見て零も二人に手を振りながら戻る。

 二人もそれを見ながら香取が那須に向かって顔を向けずに話し始める。

 

「・・・・・・アンタ、何でアイツの訓練に着いてきてるわけ?」

「先輩の背中を見ていたいから、じゃダメかしら?」

 

 笑顔で言葉を返す那須に香取が「なにそれ・・・」、と呟きながら零を見る。

 確かに、彼の顔面偏差値は一般的であり、香取が思うイケメンには程遠いだろう。

 だがしかし、彼の背中を見ていればいくら顔が平凡でも、性格が少し粗っぽくても的を狙うその背中はとてもカッコよく感じてしまう。

 

「そう言う香取ちゃんはどうして先輩の後を?」

「アタシ、アイツの弟子だし・・・・。アイツの生活見て真似たらちょっとは強くなるかもしれないじゃない」

 

 嘘である。

 この香取葉子という少女はただ単に零にかまって欲しいだけなのだ。

 零にかまって貰えるのは教えて貰っている時と防衛任務で零が一緒の時だけである。

 そもそも、どうして香取がここまで零を好きになったのかは香取と染井にしか分からない。

 四年前に零と香取は出会っているが、零はまったく覚えがない。

 だが香取はしっかりと覚えている。

 染井と逃げている最中に襲いかかって来たモールモッドをトリガーも無しに、鉄パイプだけで応戦して助けてくれたその少年の背中を。

 

「弟子?」

 

 先ほどまで笑っていた那須が笑顔を屑して、過去を振り返る香取を現実へと引き戻す。

 

「香取ちゃん、先輩の弟子なの?」

「そ、そうだけど・・・・。それが何なのよ?」

 

 那須は意を決したように零に向かって歩を進め始める。

 元々身体が病弱な彼女は基本的に那須邸の自室にあるベッドで過ごしており、ボーダー内の噂や情報は部隊メンバーの熊谷友子や日浦茜経由である。

 だから香取が零の弟子になった等と言うあまりインパクトのない話は那須には回ってこないのだ。

 そんな彼女は以前零に弟子にしてくれと頼んだことがあった。

 しかし、零の答えはノー。

 那須が理由を聞くと「お前俺に勝ち越してるし、師事を頼むなら二宮さんとか出水とか加古さんとか、もっと強い人にしとけ」らしい。

 ちょうど訓練が終わったのか訓練を受けた全員が順位が写し出されたモニターを見る。

 一位は奈良坂でこれは大体いつも通りの結果で奈良坂は常に的のど真ん中に命中させるので穴は一つしかない。

 対して零は十一位と言う順位であり、これが彼の異名の所以の一つである。

 

「先輩やっぱり十一位何すね」

「本当に謎だ・・・・」

「先輩」

 

 零と半崎がボーダー七不思議である何をやっても十一位の零の順位を見ながら話していると、那須が零を呼び掛ける。

 那須の声に奈良坂も反応し、三人が那須を見た。

 

「香取ちゃんを弟子にとったって本当ですか?」

「ん?あぁ。本当だぞ」

「どうして香取ちゃんは良くて私はダメなんですか?」

「だからそれは・・・」

「あんなのは理由になりません!」

 

 那須の語気の強まった大声にその場にいた誰しもが那須の方を振り返る。

 普段の那須は冷静で思慮深く、感情的になることはない。

 それを知っている奈良坂は那須はいったいどうしてしまったのか、と困惑する。

 

「先輩、答えてください。どうしてですか?」

「・・・・・・香取隊を強くしてやりたいと思った。これならいいか?」

 

 那須が項垂れているのを見て少し良心に来るものがあるが、これも那須のことを考えての事だった。

 那須が自分の弟子になったとしても自分が教えられる事など、おそらくは存在しない。

 那須が零に教えを乞うだけ時間の無駄でしかないのだ。

 しかし、それでも零は那須に対して練習試合は行っている。

 

「我が儘なのは分かっています。でも・・・」

「・・・・・悪いけど、やっぱり俺はお前を弟子にはできない」

「!・・・・そう、ですよね」

 

 でも、と零が続けると那須が顔を上げる。

 すると那須の頭に零が手をポンと置いて撫でる。

 

「今までみたいに模擬戦ならいつでもしてやる」

「・・・・・・はい」

 

 これを見た周りの反応が気になるものの目の前の少女から目を離すことがなぜか憚られる。

 

「これが父性か・・・・」

「何アホなこと言ってんすか・・・」

 

 半崎に呆れられながらも娘や妹がいればこんな感じなんだろうなぁ、と考える零であった。




小佐野にこんなことして欲しいと言う願望。
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