万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

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那須玲②

 ボーダー本部所属の風切零には()()()()()()()()()

 一つはボーダー本部から与えられる個室。

 もう一つは玉狛支部に存在する扉に風切と言うネームプレートが飾られた部屋。

 

「おはよーす」

「あぁ、おはよう」

 

 欠伸をしながら玉狛支部のリビングに降りてくる少年、零に似合いもしないエプロンを着けた筋肉質の大男、木崎レイジがだし巻き玉子を皿に盛り付けながら零に軽めの朝の挨拶を交わしながらだし巻き玉子を盛り付けた皿を次々と机に置いていく。

 玉狛支部のキッチンは当番制となっていて、毎日変わる。

 今日は木崎の当番日なのだ。

 

「おはよ~」

「おう、桐絵」

「あら?今日はこっちに泊まったのね」

 

 零に気付いたのか小南は零の隣に座って食べ始める。

 机に置かれている皿は三つ。

 つまり零と小南、木崎しか今ここにいないと言うことだ。

 

「陽太郎は?」

「ボスとうさみと一緒に本部に行ったわ」

「本部?」

 

 だし巻き玉子を食べ終わり避けにあった米をかっ食らう零を見ながらキッチンの整頓が終わった木崎が隣の席にエプロンを二つに畳んで掛けて椅子に座る。

 

「本部はどうだ?しっかりやれてるか?」

「オカンスか・・・。迅に聞いてるでしょそんなの・・・」

「それはその通りだが、俺はお前の口から聞きたいんだよ」

「・・・・・・別に普通スよ。任務も滞りなくやれてるし。・・・あ、後弟子取りました」

「はぁ!?」

 

 零の現状報告に反応したのは、聞いてきた木崎ではなく、だし巻き玉子を食べていた小南だった。

 

「アンタが弟子ィ!?」

「おん」

「だ、誰よ!?」

「・・・・・香取」

「香取?」

 

 香取、香取、香取?と何度も香取の名前を繰り返し口に出す。

 それを見て零は「知らねぇのかよ!」とツッコミたくはなったが、小南が玉狛支部所属なこともあり、香取の事を知らなくても無理は無いかと落ち着きを取り戻して味噌汁を飲む。

 

「あ、アンタ今日大学は?」

「ねぇけど?」

「ならアンタのスクーターで送って」

「おいおい、お嬢様がスクーターでご登校とかやって良いわけ?」

 

 小南は星輪女学院と言うお嬢様学校に通っており、周りには一オペレーターと偽って過ごしている。

 そんな小南が誰とも知らない男の身体に腕を回し、お嬢様が乗らないようなスクーターに乗って登校すればどうなるか、想像するだに恐ろしい。

 

「別に近くの見えないとこで下ろしてくれていいから」

 

 零がチラリと木崎を見る。

 自分の作っただし巻き玉子を満足そうに食べながら零の視線に気付いて箸を置く。

 

「良いんじゃないか?送っていってやれ」

「へーい・・・・・」

 

 どうやら彼には味方が居なかったらしい。

 

◇◆◇◆

 

 身体が病弱な那須玲も学生として当然学校には行かなくてはならない。

 彼女の通う学校は小南と同じ星輪女学院である。

 ゆっくりと身体に無理がないように通学路を歩きながら次に零との模擬戦のシミュレーションを頭の中で何度も何度も繰り返す。

 そんな那須を見ながら今日偶然通学路でであった後輩の照屋文香が声をかけてくる。

 ちなみに彼女もボーダー隊員であり、B級部隊、柿崎隊の一員で歌川や奈良坂と新人王を競いあった程の秀才。

 別名柿崎夫人。

 

「那須先輩、おはようございます!」

「おはよう照屋ちゃん」

 

 軽く挨拶を交わした二人が最近柿崎が零と一緒にご飯を食べに行っていたことや、零が柿崎に頼んで講義のノートを借りていたとか些細な世間話をしながら通学路を歩く。

 そんなときだった。

 向かいの道路で二人乗りのスクーターが一人を下ろしてそのまま走り去っていったのだ。

 そして那須はスクーターの運転手の顔をチラリと見る。

 ヘルメットやゴーグルをしていたが、あれは間違いなく風切零本人だと那須は確信した。

 となると今スクーターを降りたのは誰なのか不意に那須はその事が気になり始める。

 

「あれ?今降りた人って玉狛の小南先輩じゃないですか?」

「え!?」

 

 照屋の言葉に驚きながら今スクーターを降りた人物を見る。

 赤い星輪女学院の制服にベージュ色の綺麗な長い髪。

 顔は見えないが、 間違いなく那須のクラスメイトである小南桐絵本人だった。

 

「ごめんなさい照屋ちゃん。私先に行ってるわ」

「え!?」

 

 照屋の返事も聞かずに足早に歩く那須。

 その背中を見ながらとりあえず小南武運を祈る照屋文香だった。

 

◇◆◇◆

 

 それから時間は経過して昼過ぎの三時頃。

 零のもう一つの自宅であるボーダーの個室には数人の男子が家主の許可もなく押し詰めていた。

 部屋に居たのは家主の零は勿論、生駒、弓場、柿崎、嵐山、迅の計六人。

 正直個人部屋に入るには明らかに人数が多い。

 

「これより裁判を始めるで」

 

 先ず声を上げたのは世の中のあまねく事象にヤバないヤバないと心を震わせるお年頃の攻撃手(アタッカー)六位、生駒達人。

 

「被告人、前へ」

「誰が被告人だブッ飛ばすぞ」

 

 キレ気味に被告人呼びに反応しついでに茶漬けを客に配るのはこの部屋の家主の風切零。

 茶漬けに生駒が反応して零をじっと見た後に茶漬けをかっ食らいからにする。

 

「おい、風切ィ。テメェ随分と筋曲がったことしてるみてぇじゃねぇか」

 

 零のベッドに座りながら腕を組む見た目ヤクザの弓場が零を睨みながらメガネをくいっと上に上げる。

 

「あ?何の話よ?」

「惚けやんでえぇで。ウチの隠岐からこの前の射撃訓練の事は聞いとるから」

「・・・・・・・・あぁ、あれ」

 

 思い出したかのように零が手をポンと鳴らす。

 この前の射撃訓練に現れた珍客三人衆の顔を思い浮かべながらもそう言えば隠岐も狙撃手(スナイパー)だからあそこにいたのか、と思いながらそれで何故被告人扱いなのかの疑問が残る。

 

「小佐野ちゃんと間接キッスしたみたいやんか」

「近ェよ」

 

 ぐいっと顔を近付けてくる生駒の顔を押し返しながら青筋を立てる。

 

「でも正直な話、零はちょっとヤバいかもな」

 

 その言葉にその場に居たメンバー全員が迅を見る。

 彼には未来視と言う副作用(サイドエフェクト)がある。

 副作用(サイドエフェクト)とは高いトリオン能力を有する人間が稀に持つ副作用的能力の事で迅は未来が見えるのだ。

 

「ヤバいって迅。何か見えたのか?」

 

 嵐山が眉を潜めながら迅を見ると、迅は頷いて零を見る。

 

「まだ不確定だけど近い未来零が刺されて死ぬ未来が見える」

「え、マジ?」

 

 部屋の真ん中の机に置かれたどら焼きを食べながら零は冷や汗を流す。

 彼の頭の中に思い浮かんだのはネットに顔が上がる度に「死ね!」と言われる伊藤誠(クズ)の死に顔。

 

「まさか、メールでさようならとかうたれないよね?」

「それはまだ分かんないけど・・・・。ただ、そこに居るのが柿崎隊だけみたいなんだよね」

「お、俺の部隊?」

 

 零に出されたお茶を飲みながらゆっくりと零のモテる裁判を聞いていた柿崎がお茶から目を離して迅を見る。

 

「そもそも零が誰に刺されるのかも分かんないし、原因も零がモテるからって言うのは可能性に過ぎない。もしかしたら原因は他にあるかもしれない」

「・・・・・・未来を変える方法はあんのか?」

 

 弓場が少し強張った声をして迅に問いかける。

 しかし迅はゆっくりと首を横にふる。

 

「分からない。もし零の事が好きな女の子が原因なら今の零はギャルゲーのヒロインを爆弾付きにしてプレイしてるようなもんだから行動一つで爆発する可能性がある」

 

 深刻な雰囲気になる零の個室。

 しかし、その深刻な雰囲気を打ち壊したのはこの部屋の主の風切零だった。

 

「いや、そもそも何で皆様俺がモテる前提で話してるわけ?」

 

 え?と驚いた顔をする五人を見て逆に零もえ?と言う顔になる。

 

「ち、ちなみに零は誰かに惚れられてるって自覚は・・・」

「あ~・・・・何か綾辻には懐かれてる気がする」

 

 駄目だこいつ・・・・、と誰もが思う中何処からスマホが鳴り響く。

 迅たちの茶菓子を見繕いに行った時に置いてきたのだろうスマホを取りにすぐに零が立ち上がってキッチンに向かう。

 戻ってきたと思ったら零が顔を青くしていた。

 

「どうしたんだ零。顔色が悪いぞ?」

 

 嵐山の言葉に少し波駄目になりながら零は全員にスマホの画面を見せる。

 そこに映っていたのは那須と零のメッセージ履歴だった。

 

【今日は学校終わりに模擬戦をお願いでしたいのですが大丈夫ですか?】

【大丈夫だぞ。何時これそう?】

【出来れば先輩のスクーターに乗せていただければ幸いです】

 

「これ、迎えに来いってことだよね?」

 

 零の質問に誰も答えずに唸り始める。

 確かに、これは十中八九那須の零に対する帰宅デートのお誘いではある。

 が、先程の迅の会話を考えればここで迎えに行けば他の爆弾が爆発する可能性があるためはっきりと言うべきかを悩んでいたのだ。

 

「あ、でもスクーター乗りたいだけなら別に熊谷にでも迎えに行かせりゃいいのか。・・・・アイツ免許持ってたっけ?」

「いや、それも那須の爆弾爆発させるだけやろ」

 

 流石の生駒も何時ものノリになることはなく普段ほとんど変わらない顔がより何時もの顔で零を見る。

 

「やっぱ?」

 

 零が立ち上がってベッドの上の棚に置いてあるヘルメットを二つに抱える。

 

「へーへー、行ってきますよ。頼られるのはやぶさかじゃねぇしな」

 

 部屋から出ようとドアに手をかける。

 そして、よく考えてから後ろで自分の背中を見ている五人を見る。

 

「つか、お前らも家主が出てくんだから帰れよ」




ごめん」
























さようなら
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