万年B級詐欺師隊員劇場   作:暁桃源郷

9 / 46
那須玲③

 那須のメールが来てからおよそ三十分が経過してした。

 現在は四時を過ぎた辺りの部活をしている生徒の掛け声が多くなる時間帯。

 そんな中、星輪女学院の校門の前で那須玲は尊敬する先輩の迎えを今か今かと待ちわびていた。

 事の発端は今朝に遡る。

 

◇◆◇◆

 

 零のスクーターから降りた小南を見つけて那須が小南に話しかけたことから始まった。

 

「おはよう。小南ちゃん」

「あら、那須ちゃん。おはよう。どうしたの?」

「今のスクーターの人・・・・」

「あぁ、零よ零。送って貰ったのよ」

 

 さらっと、何でもないかのように、まるであたまりまえの様に言う小南。

 うらやましい、ただただそう思う。

 

「仲良いのね」

「そんなことないわよ。子供の頃から一緒に居ただけだし」

「子供の頃から?」

 

 那須の疑問にえぇ、と答えながら小南はふぅ、と息をつき、学校の校門に向かって歩き始める。

 そんな小南の後を追いながら那須も歩を進める。

 

「ケンカだってたくさんするしね」

 

 零とケンカ。

 それは那須が経験したことがないことだった。

 ケンカするほど仲が良いと言う言葉もあるように、ケンカをすると言うことはある程度仲が良いと出来ない事だ。

 もし仲が悪いのなら話をすることすら基本はない。

 だから那須は零と仲良くなれてはいない、と()()()()()

 実際のところ、風切零と言う少年は青春を謳歌しようとする思春期真っ盛りの人間だ。

 だからこそ、女子に嫌われるような発言はあまりしないように注意を払っている。

 だがしかし、何事にも例外はある。

 長いこと一緒に居た小南やゲーム仲間の国近、キレた時。

 何はともあれ那須は少なからず女子として意識はされている。

 なら何故彼は間接キスや彼女を自称されてデレたりしないのか。

 女性経験が極端に少ないから。

 

「小南ちゃんは先輩のこと、どう思ってるの?」

「どうって・・・・・」

 

 ここが一つの分岐点だ。

 小南桐絵はライバルになるのか、ならないのか。

 ならなければそれでよし。

 なるのであれば他の零のことが好きな女子よりも長い間零と共に居たアドバンテージがある分強力なライバルとなることは間違いない。

 

「好きよ。異性として」

 

 何を当たり前のことを言っているのだろうかと言う顔で言う小南に胸をドキッとさせながら掌を強く握る。

 自分には想い人に対して小南に勝る物が何もない。

 付き合いの長さも、絆も、その人に対する理解も何もかもを、目の前のクラスメイト(嘘つき)に勝つことが出来ない。

 

「まぁ、それはそれとして那須ちゃんがアイツに何かして欲しいことがあるなら正直に言いなさいよ。アイツ頼まれれば基本やってくれるし」

「・・・・・・・えぇ」

 

◇◆◇◆

 

 そうして、授業が終わった直後に那須はスマートフォンで零を呼び出して、待っていたのだ。

 既に部活に入っていない生徒は自習するもの以外は帰ってしまった後で、校門の前には現在那須だけが立っていた。

 辺りは少し肌寒くなり始めた頃、彼女の待ち人が端から見れば別段カッコよくもない普通のスクーターで現れた。

 

「やぁ、お嬢さん。お迎えに上がりましたよ」

 

 少し格好をつけながら零は那須にヘルメットを手渡す。

 那須がヘルメットを被ったのを確認すると、零は座席を上にあげて那須の学生鞄を受け取り詰め込む。

 

「先輩、ありがとうございます」

「何の何の。昼頃にちょっとトリガーの位置とか色々取り替えてな、誰かで試したかったとこだ」

 

 零が座席を閉じてスクーターに跨がるのを見て、続いて那須も零の後ろに跨がって零の腰に腕を回し、零の背中に張り付く。

 零の匂いがして、胸の鼓動がだんだんと早くなっていく。

 

「んじゃあ、しっかり捕まっとけよ」

「はい」

 

 スクーターが動きだし、那須は更に零の背中に張り付き、零の鼓動を感じる。

 自分ほどでは無いものの何時もの零よりも少しだけ早い。

 少しだけでも自分を意識してくれているのだと、そう思うと那須の中に嬉しさが込み上げていた。

 確かに、零は那須が背中に密着しているして多少なりとも緊張していたのは事実だが、いつ刺されるか分からない緊張の方が大きかった。

 もちろん、那須がそんなことをする人物でないことは零は重々承知していた。

 しかし、それでも迅の副作用(サイドエフェクト)がそう言った以上、このまま行けば零は確実に刺されて死ぬことになる。

 

「そう言えば先輩。試したいことっていったい何なんですか?」

「ん?そりゃやるときのお楽しみよ。これが出来れば来るぜ射手(シューター)界に新しい風が」

 

 イタズラ小僧のような笑顔を覗かせながらスクーターが赤信号で停止する。

 早く基地に赴き、零の試したいことを見たい気持ちはあるが、今はできるだけ長く零の匂いを、背中を、零との時間を独占したいと唯々那須はそうして、思った。

 

◇◆◇◆

 

 そんな二人の会話を薄暗い自室でヘッドフォンをしながら少年のスマートフォンに仕掛けた盗聴機で盗み聞きする少女がいた。

 彼女の名前は志岐小夜子。

 那須隊のオペレーターである。

 

「あ~、先輩の声、カッコいいな~」

 

 うっとりとした顔に頬を赤らめてヘッドフォンから聞こえてくる少年の声を何度も、何度も脳内で再生させる。

 志岐は男性恐怖症と言われるほど男、特に年上の男が苦手だった。

 だった、と過去形にしているが今も男性恐怖症には変わりがない。

 それでも、何故か零だけは志岐の中で恐怖を感じることがなかった。

 前シーズンのランク戦で零は間違って那須隊の待機部屋に入ってしまい、その時に志岐と出会った。

 何時もなら男が目の前にいれば足が震えて呼吸も荒くなる志岐が零を前にしてもそんなことは起こらず、寧ろ安心すら覚えていた。

 

「先輩、また家に来てくれるかな?先輩の料理美味しかったな・・・」

 

 だれも居ない部屋で、誰にも気付かれる事もなく、志岐は彼女にとっての初めての男(絶対神)を崇めながら、次に零が自宅に来たらどうしようか考えるのだった。

 

◇◆◇◆

 

 さて、志岐が零を盗聴しているとはいざ知らず、基地に着いた二人は訓練室で見合っていた。

 

「じゃあ行くぞ!」

「はい!」

 

 那須が変化弾(バイパー)を周りに漂わせる。

 それを見たい零が人差し指と中指を銃口に見立てて両手とも手で銃を形成する。

 手で作った銃の銃口の指先二つから一つずつ通常弾(アステロイド)のキューブが現れる。

 

徹甲弾(ギムレット)

「!?」

 

 零がそう呟いた瞬間零の両手の指先のキューブが融合されて那須へと飛んで行く。

 那須も一瞬驚いたものの、冷静沈着な那須はそれをさっと避けて変化弾(バイパー)を放つ。

 零も走りながら変化弾(バイパー)を避けて再び徹甲弾(ギムレット)を連射する。

 本来徹甲弾(ギムレット)は二つの通常弾(アステロイド)を融合させて放つため連射力はない。

 しかし、零の子供のような発想と天才的な才能(センス)により、弾丸サイズの通常弾(アステロイド)を一秒もなく融合させて左右交互に発射を繰り返す。

 それからも、撃っては避け撃っては避けを繰り返していたが結局那須の得意技である鳥籠で零の負けとなった。

 

「流石ですね先輩。あんな合成弾の出し方見たことがありません」

「まぁ、避けられたら意味ないわけだけど・・・・」

 

 腕を回りながら訓練場の近くに置かれた自販機からカルピスとオレンジジュースを勝って那須にオレンジジュースを渡す。

 

「アイデア的には弓場の二丁拳銃を参考にしたんだけどよ、那須的に何か足りてないこととか無いか?」

「そうですね・・・・。先ほどの徹甲弾(ギムレット)は連射性能は多分他の人の徹甲弾(ギムレット)と比べても一番です。でも威力はおそらく一番低いと思います」

 

 だろうな~、と相づちを打ちながら零はカルピスを煽る。

 正直なところ、仮想モールモッドで試し打ちをして、撃破時間が十秒であった時点で零はこのやり方は駄目だと薄々感じていた。

 

「もっとトリオンがあれば良いんだけどな~。それこそ市街地Dのあのショッピングモールを炸裂弾(メテオラ)で半壊させれるような」

「そんな人居るんですか?」

「仮定だよ、仮定」

 

 零はカルピスを飲み終わるとゴミをゴミ箱に入れて身体を伸ばす。

 

「やっぱ前の編成の方が良いかな」

「先輩、何処に?」

「ランク戦してくる。勿論編成は戻してな」

 

 零が手を振りながらランク戦ブースへと向かうのを那須はただ黙って見守る。

 少なくとも今さっきまでは自分が零を独占していたと言う実感と余韻を噛み締めて・・・・。




二宮さん一回指で撃ってた気がするし多分大丈夫だよね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。