メイド イン アビス イン ザ ボッチ 作:ボンボルドのボンドルド
後藤ひとり、それは私の名前だ。そして妹の名前はふたり。正直に言って両親の正気を疑うレベルの命名だけど、私はかなり気に入っている。
私には一つだけ誇れる特技がある。ギターだ。
中学生の頃何と無くに見たテレビ番組に影響でバンドに憧れて、1日に6時間ギターの練習を頑張った私は贔屓目に見てもかなり。い、いけていると思う…!
実際にネットの動画投稿サイトでは、十何万人と登録者がいるのだ!
何を挫ける、後藤ひとり、お前は最強だぁ!
「チッ!道の真ん中で突っ立ってんじゃねェ!」
あっ…
生きててごめんなさい。
生意気言ってごめんなさい。
イキってごめんなさい…
私が突然にも誰も聞きたくもない、自分語りをしていたのはちゃんとした理由がある。
「ここどこ…」
かなり高低差の激しい道に立っているおかげか、視野は広かった何キロ先も見渡せている様な絶景に初めて見た時は、感嘆の息を吐いた程だった。
けれどそんな感情は直ぐに吹き飛んでしまった。
さっきまで私は家にいた筈なのだ。突然こんな風景が視界に入るのは可笑しい。夢かと思い頬を抓るけれど夢からは一向に醒めなかった。
これは現実だと、肌の触感が、冷や汗でベタついてしまったジャージと服の間を通り抜ける風の心地よさが、如実にこれは現実だと語っていた。
けれど私が現実だと未だに信じられないのは、風景に問題があった。
数キロ程の直径の円形の異国情緒溢れる街並み、その真ん中には直径一キロ程の底の除く事が出来ない大きな穴。
円形の街ならまだわかるけど、直径が何キロもある穴がある場所なんて、私は知らない。
それで私は自己統一性の維持の為に、誰も聞きたくないであろう、自分語りをしてしまったのだ。
人類の皆さんすみません…
私は道の隅っこで蹲って、精神を回復させようとしゃがみ込む。
あぁ…落ち着く。
それでは一曲、『後藤ひとり幻覚を見る』
〜♪
ふぅ…
中学生の頃から慣れ親しんだギターの感触は私を現実に引き戻すのには十分過ぎるもので……
戻ってない!?
どっどどうしよう!
た、助けて!
お父さん、お母さん、ふたり、ジミヘン!
「わぁ感動!おねぇーさん、その楽器上手なのね!」
ヒェ!
声の元を見るとそこには、メガネをかけて金髪を耳より下の位置でツインテールに纏めた女の子が話しかけてきていた。
そして、その周りには沢山の人達が私を見ていたのだ。
「えっ、あっその…」
「ねぇ!その楽器なんて言うの!?その格好からして外の人だよね!そのピンクの髪の毛は地毛なの?地毛じゃ無かったらどんな植物で染めているの?」
「あっウェゑそ、そ、その!」
「なに!?」
「こ、これはギターって言って、その…」
「それでそれで!?」
ち、近い!?
押しが強よ過ぎる…!
これが…ッ!
陽キャPowerだと言うのか!?
眩しい!
と、とける…
「うわあ!!ひ、人が、おねーさんが溶けた!?」
「イキッテテゴメンナサイ…」
「なんだよ、良い感じの音楽が聞こえてきたから来たのにもう聞けないのか……こんな溶けたピンクなんて捨ててあっちの酒屋の吟遊詩人の方に行こうぜ。」
「そうだな行こう行こう。」
「仕方ないわね、代わりはいるものね。」
「えっ?!み、皆どうしちゃったの?」
「インキャデゴメンナサイ…」
「と、取り敢えずおねーさんを助けないと!」
「ソンザイシテテゴメンナサイ…」