Fate/Grand Order 最終章3部作   作:超ローマ人

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最終話~さらば藤丸リツカ~

人類最後のマスター・藤丸は遂に全てのロストベルトを滅ぼした。後は最後のロストベルト=ナウイミクトランを破壊した余波を生き延びた異星の神を倒すのみ。しかしその段階から八時間が経過した──

藤丸はサーヴァントたちと共闘したが惨敗を喫したのだ。力の差は歴然だった。

「全てのサーヴァントを喪った今………俺がやらないと……。人類が…平和に暮らす世界のためにも………。」

藤丸は、岩のように重い身体を懸命に引きずった。

そこに一人の男が立ちはだかる。

「……ムニエルか。そこをどいてくれ。」

立ちふさがるムニエルは「断るっ!」と叫ぶと藤丸を指差す

「その身体で!どこに行くんだ!?そして、何をするんだ!?」

「………前に言った筈だ。『異星の神を倒す』ってな。」

「どうして!?」

「もう、誰かが苦しむのも死ぬのも見たくないからだ。」

藤丸の返事に対して、ムニエルは荒い声を挙げた

「リツカ!!お前は怖くないのか!!?……お前は!!お前は一体!!?何と闘っているんだ!?」

藤丸は空を睨み、ムニエルを真剣な目付きで見据えてその問答に答えた。

「俺が闘ってるもの……それは……」

言い切る前に、世界を飲み込もうとする雷鳴が轟く。それを聞くと、藤丸はムニエルを払いのけ、黄金の剣を抜いて言った。

「『運命』だ!!」

星の神が統べる宇宙に黄金の人が光の尾を引きながら飛んでいった。

「…ついに行ってしまったか…。あの小僧……体が人間のものではないものへと変わっているというのに……」

「信じよう…彼を…!なんてたって、人類最後のマスターだからね。」

その光は、嵐の名を冠する装甲車を照らす希望の光であった。

 

「Uオルガマリー……いや、異星の神!!今度こそお前を倒す。」

「…また性懲りもなく来たのね。冠位のマスターさん。」

神は、白く長い髪を持った女の姿で現れた。

かつてカルデアの所長を務めた女と同じ顔をした「ソレ」を相手に冠位の魔術師は立ち向かう。

「グランドカリバー!アーチャーモード!」

光に包まれた矢が巨体を射る。

「この程度でこの地球大統領を倒せるとでも!?」

魔術師と神は対等に渡り合っていた。黄金の拳は生体金属に阻まれ鉄の触手は手刀で切断される。これやそれに似たような展開が光速で行われていた。その間、地球からは花火のように映っていた。

黄金の鎧を着た魔術師の右手には黄金の槍が握られていた。

「グランドカリバー・ランサーモード!」

そして、それを神に目掛けて投げたのだ。

黄金の槍は神を殺す威力を持ち、必中の概念を背負う。

そして、それは神の左胸を貫いた。

「……勝った……のか??」

司令室からゴルドルフの声が響いた。

仲間たちが見守るなか、藤丸は横腹に焼かれたような痛みを感じていた。

「…なっ!?」

「馬鹿ね…私は地球大統領。この程度で死ぬはずが無いって分からないの?とんだ間抜けね!!」

黄金の騎士は四肢を斬られ、胸を貫かれながら落ちていった。まるで、蝋の翼が溶けたイカロスのように。

 

「すまねぇ、マシュ。俺はアイツを…止めれなかった。」

藤丸が去った後、ムニエルは空を睨みながら藤丸を大切に思っている彼の後輩・マシュに謝る。

「そうですか……行ってしまいましたか……」

藤丸の後輩=マシュは窶れた顔で車椅子に腰を掛け途方にくれる。

彼女は月から侵攻してきたBBというサーヴァントに拐われ、藤丸と闘わされた。そのため、今はリハビリに取りかかっていた真っ最中であった。

藤丸の安全を祈願する二人に、歩み寄る人物がいた。

「お前たち、こんなところにいたのかっ!大変なことが起きているから、今からこっちに来るんだ!!」

新しいカルデアの所長であるゴルドルフだ。

大きな腹からそれ相応の声を出し、ムニエルを立たせた。

「おっさん!何が起きたってんだ!?」

「口より、足を動かせ!ムニエル!!」

 

マシュも同伴し、黄金の彗星が墜ちてくるのをモニターで確認した。

「まてまてまて!これってまさか!?」

三人の顔は一気に青冷めた。手には汗を握り、その彗星を拡大する。

「先輩っっっっ!!!!」

「おい!藤丸ぅぅぅ!!!!」

 

「なんでだろう……今になって。色んなことが頭を横切る。。あぁこれが──」

彼は様々な世界を冒険した。百年戦争が繰り広げられたフランス。様々な皇帝が覇権争いを繰り広げたローマ。かの征服王が夢を見たオケアノス。しかし、彼にとって本当の始まりは月に強制的に召喚されたときだ。異能といえる力のルーツを本当の意味で理解したからだ。

「指先が凍るのが分かる……今夜の月は冷たいだろうなぁ」。

 

「おい、死ぬなよ!マスターっっ!!」

「そうだぞ、貴様が死んだら!誰が地球を救うのだ!?」

藤丸の首に飾られていた魔導書・アークミネルバと彼の中に眠る龍・アワリティアが激励を送る。

「…アークさん…アワリティア…。……すま…な…い……。最期の願いも……叶えそうに……無い……。」

藤丸が赤い腕を落としそうになったその時。

その手を取る誰かがいた。

「諦めるなっ!俺にそれを教えたのは!アンタだろっ!?」

男の声が響いた。男は雷の魔術で藤丸の心臓に鼓動を熱く甦らせた。

「この魔術は!ジークか!?」

藤丸の目の前には、薄い茶髪に赤い目をした青年がいた。

青年はホムンクルスと呼ばれる人造人間だが、その身に花婿を欲した怪物の電気と竜殺しの英雄の心臓を宿している。

「他にも増援はいるぞ。」

「では、来てしまう前に始末するほかないな。」

黒い服に青いローブを首に掛けた神父が藤丸の左胸を貫こうとする。しかし、それは二つの剣を持つ赤い髪の少年によって阻まれた。

「また会ったな……言峰!」

「ほう…この肉体の男と知り合いのようだな、小僧。」

「……あのラスプーチンを一撃で退けた…?貴方はいったい?」

「俺は…衞宮士郎。ジークに言われて助けに来た。」

「…俺は藤丸リツカ。ありがとう、士郎。」

 

「様々な時空において、お前の危機を…そして人理の危機を様々な戦士たちが察知したんだ。俺が邪竜の力で様々な世界から仲間を集めたんだ。」

ジークが指差したところから、空間に穴が広がる。

一つ目の穴からは、和服に赤いジャケットを着こんだ女が出てきた

「両義式!」

「おう、藤丸か。やっとここまでこれたわけだ。……この間の威勢はどうした?」

「うるさい、ここからだ!」

藤丸は式の皮肉にツッコミを入れられる活力が残っていたことに気付かされる。

すると後ろから月の魔術機関=ムーンセルで聞いた声が聞こえた。

「セイバー!アーチャー!キャスター!頼んだぞ!」

「文明を破壊しようとする神…いや悪魔をこれから粉砕する。」

青い少女騎士と赤髪の青年、黒いスーツを着た男などと様々な異能力者・魔術師たちが

駆けつけた。

「なんだこれは?」

神の僕であるラスプーチン神父がその光景を苦悶の表情で見る。

「なんで?なんでよぉぉ!?藤丸リツカぁ!お前は何者だぁぁ!!?」

「もうアンタには散々自己紹介しただろ?……だが、これだけは言わせて貰おう。グランドオーダー……実行!!!」

人類最後のマスターを名付けられた青年・藤丸は黄金の剣を掲げ、反撃の狼煙を挙げた。

 

藤丸は皆が空想樹を相手している間に異星の神のところへ突進する。

しかし、徒手空拳の刃がそれを許さなかった。

「!!ラスプーチン!!」

「藤丸リツカ……貴様は強くなりすぎた。ここで死んでもらうとしよう。」

ラスプーチンの手刀を防いだが、衝撃を完全に止めることは出来ず落下した。

しかし、そこにいる筈の藤丸は居なかった。

「光の速度で神の元へ行ったか。少し叩いただけで逃げ出すとはな。」

「その挑発、敢えて乗ろう。」

ラスプーチンの背後には青紫色の外套を纏った男がいた。

その姿から放たれるオーラは強大な力と信念を持っていた。

「正義の味方でいたい」という信念があったのだ。

「なるほど、私が対峙しているのは貴様の分身か。」

 

紫色の軽装戦士となった藤丸は黒いスーツの男と衛宮士郎と共に並び立つ。

「アンタは……?」 

「衛宮切嗣だ……」

「じいさん…!?」

士郎はスーツの男を二度見したが、男は目の前の敵に集中するよう窘める。

「ヤツは魔術師の僕にとって、最も警戒するべき相手だ。それがサーヴァントとなったのなら尚更だ。」

「分かってる。アイツとは俺も闘ったし。ヤツは……『純粋たる悪』だ。」

ラスプーチンが借りている肉体の男について、切嗣と士郎は語り合う。藤丸はその男に近い性質を合わせ持つとラスプーチンに対する分析が深まった。

「……貴様らはそうやって。『正義』を掲げるのだな?その『正義』が誰かを傷付けようとも。」

「………そんなことはどうでもいい。私には私の使命がある。それに従うまでだよ。」

藤丸の発言を合図に切嗣はラスプーチンの背後に回り、士郎は夫婦剣を抜いた。

二人の近接攻撃を腕のみで捌いていく。そして、二人のみぞおちに拳を入れ込む。

「なんの!」

「ここだ!」

藤丸と士郎は剣を持ってラスプーチンに攻撃する。しかし、仕込型鉤爪で反撃される。

「私の魔力が入った鉤爪だ。これで流石に動けまい……。貴様らを倒して本体を追うとしよう。」

「そうはさせない。固有時制御・二重加速」

切嗣は一門の銃口をラスプーチンに向ける。放たれた銃弾はラスプーチンの腕の機能を下げた。

「ぐっ!魔力が。」

その時、ラスプーチン神父はあることに気付いた。

標的の藤丸がいないのだ。

「……なにっ!?」

「終わりだよ、『神父』さん。」

銃の引き金は引かれ、紫色の短剣は放たれた。

神父の身体は内側と外側の両方から引き裂かれ、その動きを制限されていた。

その瞬間、赤い刃によって首筋は錆色に染まっていた。

「異星のアルターエゴの討伐完了。」

そう叫ぶ藤丸の両手には錆び付いた二つの短刀が握られていた。

 

「異星の神ぃぃぃっ!!!」

「ええいっ、しつこい!!貴様が何度その黄金の姿になろうとっ!!この地球大統領には勝てないっ!!!」

冠位の英霊に認められた黄金の姿に苛立ちを募らせた異星の神は怒鳴った。

「お前はこれからもっと焦り出す。ここにもう一人聖剣使いが来る事実にな!!」

すると、青い鎧を纏った騎士王が藤丸とは別の黄金の聖剣を振るい異星の神に挑んだ。

「なっ!!?」

「不意打ちは性分ではない。だが、貴様のような外道に容赦はしないっ!!」

「やっと来たか、騎士王さん。」

二つの聖なる剣が異星の主を挟む。

冠位の王と騎士王。それぞれの持つ聖剣が呼応するように鼓動を鳴らす。

「こ、これはっ!?」

「嫌な予感っ!!」

神は液状金属で出来た槍で突き放し、聖剣使い二人を砕こうと試す。

黒い槍は死そのもののように、騎士王と藤丸に迫る。

「させるかよっ!!」

赤い髪の少年が腕に澄んだ水色をした血管を浮かび上がらせる。

「そうか…衛宮士郎!アンタのサーヴァントのサポートはそちらに任せる!!」

藤丸は自身に、士郎は騎士王に光の障壁を重ねる。

「熾天覆う七つの円環!」

「出でよ、アイギス!!」

二人の青年の声が合わさり、二つの攻撃を防ぐ。

その固さは神ですら難攻不落な城そのものであった。

「なにっ!?」

「これでも…喰らえ!!」

黄金の拳は異星の神の頬に鈍い色を付け加えた。

さらに追い討ちで騎士王は風の太刀を神にぶつけ、吹き飛ばした。

「攻撃は決まったが、今のは奴にとっちゃ不意討ちでしかない……。」

「えぇ、そうですね。しかし余裕が出来ました。カルデアのマスター、私の聖剣を貸す余裕らあります。」

藤丸は二つの剣が呼応した瞬間を思い出した。その時の異星の神は元々白い肌が青白くなるぐらいに深刻な表情をしていた。

「……騎士王の力!お借りします!!」

約束された勝利の剣と冠位の剣を掲げる。

すると、二つの剣は今までに無い以上に光輝いた。

「ぬおっ!?眩しい……!!」

「あ、あぁ……っ!」

戦場の所々から悲鳴が挙がる。光は異星の樹を崩壊させる太陽そのものであった。

「あれは人類の命の奔流…」

「命だけではないよ、ルーラー。アレは歴史そのものともいえる。」

 

ジークやカルデアメンバーそしてその他皆が見守る中、

ブリテンの騎士王から聖なる剣を拝借した冠位の王は太陽の如く輝く大きな剣を振るった。

そして、天へ掲げる。

「これは人の理の奔流…!人類の歴史はその産声を今までも!これからも!月まで届くよう美しくあげ散らかすであろう!!型月の剣<タイプムーンカリバー>!!!!」

それこそが人理の栄華を返り咲かせる聖剣の真名だ。

「私は私は……認められなきゃいけないんだぁぁっ!!!藤丸リツカぁぁぁっ!!!私を認めろぉぉぉっ!!!」

白い女が天に向かって叫ぶ。その様子は、最も恐れていたお仕置きをされた子どもの反応であった。

駄々をこねて正しいことを見ようとしないでいる赤ん坊とも取れる。

冠位の男は静かにしかし、女の肉体から離れた神に聞こえるようにいう。

「異星の神。人理を否定したてめえだけは……消えてもらった。」

藤丸は神から解放された女を腕に抱え、地面に降ろした。

 

カルデアの面々が駆け込むなか、一人の車椅子の少女がゆっくりと立ち上がる。

「先輩…!」

その顔は藤丸の行く末を案じ、居なくなろうとしている者に叶いもしない願いを投げ掛けていた。

「マシュ、ムニエル、ゴルドルフ所長、ダヴィンチちゃん、皆。今までありがとう。私はもう君たちとは居られない。」

藤丸は突然今まで支えてきたカルデアメンバーを突き放す。それに対してムニエルは怒声を挙げた。

「何言ってるんだよ……!マシュは…!マシュはな……!」

「ムニエルさん!もう、もう良いんです。」

そのムニエルをマシュが止めると藤丸は話を続ける

「ダヴィンチちゃんは──人間たちの側で彼らの行く末を見守ってくれ。」

「──」

「ゴルドルフ所長はカルデアの所長としてこのオルガマリーを保護してやってくれ。彼女も『人間』だ。」

「む、むう。にわかに信じられんが、貴様が言うからには仕方ない。」

藤丸は礼をいったあとでムニエルを見る。

「ムニエル。お前が居たから俺は人の心を持てた……そう思っているよ。」

「元からあるだろ、そんなもの……。」 

ムニエルは目を充血させながら滲んだ青空を眺めた。

「最後に──マシュ。お前は『人』が何なのかを白紙から戻ったこの世界で沢山見て学んで欲しい。何かあったら、周りを頼れ。私は君たちを──人類のことを遥彼方から見守ろう。……おっと、もう時間のようだ。」

彼は後輩たちに笑みを浮かべながら背後に現れた赤い龍の頭上に乗り、光に包まれていった。そしてそのまま天へ昇っていった。

「──さようなら。」

「なぁ、アワリティア。少し寝て良いか?」

「あぁ、良いだろう。アークミネルバはどう思う?」

「働き者のマスターだ。たまには良いんじゃねぇか。」

藤丸は赤い龍の背にしがみつくようにその瞳を閉じた。

その寝顔は微かな笑みを浮かべていた。

去らば──冠位の魔術師。

 

 




自分のなかでFGOオリジナル小説は一旦終わりました。
エピローグついでに話すと、マシュたちはカルデア解散後各々の幸せを掴む旅に。
藤丸は全ての英霊を統べるサーヴァント=グランドマスターへ成り、人間たちの行く末を見守る存在になりました。
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