空ガ晴れたら   作:ほろろぎ

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第二話 談笑:ヒーローとの語らいです!

 虹ヶ丘家の裏山に登ったましろとソラ・ハレワタール、そしてエルと名づけられた赤ん坊は、そこで「グロンギ」と呼ばれる謎の怪人の襲撃を受けた。

 そして、グロンギを倒し少女らを救ったのは、ソラと同じく異世界からソラシド市へと迷い込んだ青年「五代雄介」。

 

 そんな五代は今、ましろたちに連れられ彼女の自宅へとやって来た。

 

「おかえりなさい、ましろさん。ソラさんとエルさんも」

 

 ましろが玄関のノブに手をかける前に、彼女らの帰りを知っていたのか、一人の老婆が先んじてドアを開けた。

 ましろの祖母のヨヨである。

 

 ましろはこれまでの経緯をヨヨに伝えた。

 

「おばあちゃん! 私たち裏山で変な怪人にグワーッって襲われて、ギャーってなってた時に、この五代さんに助けてもらったの! そのあと怪人はドロドローってなって……」

「まあ、それはそれは。孫たちがお世話になりました」

「いえいえ、そんな」

 

 擬音交じりで緊張感のないましろの説明だったが、ヨヨはにこにこと笑顔で受け入れると、五代に謝意をしめした。

 手を振って大したことはしていないと謙遜(けんそん)する五代だったが、一歩間違えれば少女と赤ん坊は凄惨な最期をとげていただろう。

 あのブタ人間──グロンギとは、それほど危険な存在なのだ。

 

「立ち話もなんですから、どうぞお上がりになって」

 

 ヨヨは五代に家に入ることを進めたが、彼はこれを断った。

 

「俺旅人ですから、どこか宿を探しますよ」

「五代さん、お金あるんですか?」

 

 ソラがたずねる。

 彼女自身、この世界に来た時に日本の通貨を持っていなかったため、ましろの家でお世話になることになったからだ。

 

 五代はあっ……と声を上げた。

 

「そうえば、外国のお金しか持ってないや。日本には急に帰ることになったから、まだ換金してなかったんだ」

「だったら、ウチに泊まっていってもいいのよ」

「それがいいよ! ソラちゃんとエルちゃんも一緒に暮らしてるんだし」

「大丈夫! 調べたいこともあるし……」

 

 そう言って五代は去ろうとするが、ヨヨの一言が彼の足を止めた。

 

「でも、もうじき雨が降るわよ」

「えっ?」

 

 空を見上げるが、雲一つない青空が広がっている。

 ソラとましろも顔を見合わせ不思議がっていた。

 

「今日は雨が降るなんて言ってましたっけ?」

「ううん、予報じゃそんなことは……」

 

 ポツリ、と(しずく)が一滴地面に落ちた。

 風もないのに、どこからか現れた黒雲が、あっというまに太陽の姿を隠す。

 と、それから数秒の内に大量の雨が降り注ぎ、土砂降りの悪天候へと風景は様変わりした。

 

「さあ、どうぞ」

 

 あらかじめこうなることが分かっていた、とでもいうようにヨヨは平然とした態度を変えず、再度五代を家に招き入れるのだった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「本当にお世話になっちゃって大丈夫ですか?」

「ええ、孫たちが命を救われたのだもの。それくらい当然よ」

 

 リビングに通された五代は、改めてヨヨにたずねた。

 老婆は柔らかな笑みを浮かべ、ソラたちの方へ視線を送る。

 

「元々はましろさんと二人暮らしだったから、お客さんが増えるとにぎやかになっていいわ」

「それじゃあ、お言葉に甘えさせてまらいます」

 

 背負っていた荷物を置き、五代は一息ついた。

 他の面々もイスに腰かけ、リラックスした雰囲気が室内に流れる。

 

「それにしても……こことスカイランド以外にも、まだ別の世界があるなんてね」

「私も驚きました。五代さんは、どんな世界から来たんですか?」

 

 ましろの言葉に続き、ソラも興味津々とばかりに身を乗り出す。

 ソラシド市の様子はある程度わかってきたソラにとって、自身の故郷との違いも気になるのだろう。

 

「俺のいた世界も、この街と変わらないよ。おなじ地球の日本だからね」

「そうなんですか……。じゃあ、あの動く階段とかも」

「動く階段? あぁ、エスカレーターのことかな。俺も子供の時、初めてエスカレーターに乗る時は怖かったなぁ。乗り出すタイミングが難しいんだよね」

「そうですそうです! 足が(はさ)まれるんじゃないかと私も心配で……。では、動く人形なんかは」

「動く……人形?」

 

 ソラの言う人形について見当がつかない五代。

 ましろが助け舟を出した。

 

「ロボットのことですよ」

「え!? この世界ってロボットがいるの?」

「はい。道案内とかしてくれるんですけど……五代さんの世界には無いんですか?」

「俺のところはまだ研究中って感じで……あ、でも最近になってようやく、二本足で歩けるロボットが発表されたな」

 

 五代はそのロボットの名称を出した。

 が、あいにくましろはその名を知らなかった。

 横からヨヨが捕捉する。

 

「それは二〇〇〇年ごろにつくられたものね」

「へぇー、二十年以上も前に」

 

 言いかけたところでましろの言葉が止まる。

 さっき五代はなんと言った? 二足歩行できるロボが、最近(・・)になって開発された。

 確かにそう言った、最近と。

 だがヨヨは、そのロボは二十三年も前にすでにつくられたものだと言う。

 

「……五代さんがいた時代って、何年なんですか?」

「二〇〇一年だけど」

 

 五代はふと、部屋の壁にかけられていたカレンダーに目をやった。

 

「えっ、今って二〇二三年なの!?」

「五代さんって異世界人なうえに、過去から来た人だったのですか。スゴイです!」

 

 驚く五代に対して、ソラはどこかズレた賞賛の声をあげた。

 五代を落ち着かせるように、ヨヨが穏やかな物腰で言葉をつむぎはじめる。

 

「出会いに偶然はない。人と人がめぐり会うこと、それはいつだって必然、運命……物語の始まり」

 

 それは以前にも、ソラを連れてきたましろたちに言った言葉だった。

 五代は老婆の言葉に真剣に耳をかたむける。

 

「……俺がこの世界で、なにかやるべきことがある。そういうことですか?」

「フフフ」

 

 問いかける五代に、ヨヨはつかみどころのない笑みを浮かべるだけ。

 そういえば、とソラが声を上げた。

 

「五代さんは、裏山でなにをしていたんです?」

「ああ。それは、ソラちゃんたちを襲った怪人を探してたんだ」

「グロンギ……でしたっけ」

 

 ましろの言葉にうなづく五代。

 

「俺のいた世界は、あいつら……グロンギが暴れて、人を襲ってたんだ」

 

 五代は自らの故郷でのなりいきを語り始める。

 

 彼の世界には、超古代に人間の祖先──リントと、それを襲う怪人集団──グロンギの存在があった。

 争いを好まない種族であるリントは戦闘種族であるグロンギに一方的に虐殺され、それに対抗するためリントは一人の戦士を生み出した。

 

 戦士の活躍によってすべてのグロンギは封印されたのだが、五代が生きる二〇〇〇年になってその封印が解かれてしまう。

 (よみがえ)ったグロンギは再び活動を再開。

 五代も復活したグロンギ怪人の一体に襲われ危機におちいったが、偶然手にした超古代の遺物を身に着けたことで、戦士──クウガへと姿を変え、これを撃破した。

 

「つまり……五代さんは異世界のヒーロー!?」

「ヒーローって言われるとちょっと恥ずかしいけど、うん、まあそんな感じ」

 

 五代の話に聞き入っていたソラは、ハッとしたように声をあげた。

 それは「仲間」といえる存在を見つけたからにほかなかった。

 

 身を乗り出し、ソラは自分の秘密を明らかにする。

 

「実は私も昔からヒーローに憧れていて、この世界でプリキュアというヒーローに変身できちゃったんです!」

「プリキュアかぁ、なんだか可愛い名前だね」

「可愛いだけじゃなくてカッコいいんです! ね、ましろさん!」

「う、うん。そうだね」

 

 いつになくテンションの上がっているソラ。

 勢いよく話しかけられ、ましろは圧倒されてしまう。

 憧れているものがあって、自分がそれと同じ存在になれて、さらには似た境遇の人間まで現れたのだ。

 はしゃぐなという方が無理だろう。

 

 それからソラの質問タイムが始まった。

 

「クウガとはどんなヒーローなんですか!?」

「クワガタ虫みたいな金色の角があって、目が赤くて、体も赤くて……あ、体は他にもいろんな色になれるんだけど」

「なんと、フォームチェンジという奴ですか! それはどの様な……」

「青い色は動きが速くなる。緑は遠くのものが見えて、紫は体が硬くなって力も強くなるよ。それぞれに金色が加わると、パワーアップできるんだ」

「パワーアップですか! くぅ~、燃えますねぇ。武器も使うんですか?」

「青は(こん)っていう棒状のもので、これは中国っていう国に伝わるものだね。緑は弓で、紫は剣だよ。赤は武器が無いから、素手で戦ってた」

「なるほどなるほど」

 

 ソラは五代の答えを聞きながら、ポケットから取り出したメモ帳にクウガのデータを(しる)していく。

 

「クウガの他にもヒーローがいたんでしょうか?」

「変身できたのは俺だけだったけど、一緒に戦ってくれる仲間はたくさんいたよ。一条さんや杉田さんに桜井さん、他にも警察の人たちみんな」

「けーさつ……スカイランドにも王国の兵隊さんがいましたが、そのような人たちですね」

「お医者さんの椿さんに、科警研の榎田さん。友達の桜子さんには、クウガやグロンギの情報をたくさん調べてもらったなぁ」

「ふむふむ……」

「妹のみのりに、ジャン。おやっさんと奈々ちゃんに、神崎先生……みんながいてくれたおかげで、俺は最後まで戦えたんだ」

「五代さんの周りには、大勢の人たちがいたんですね」

 

 離れてしまった仲間を思い出し、五代はしみじみと故郷を懐かしんだ。

 

「それで、クウガが戦っていたグロンギとは、どんな相手だったんですか?」

「……とっても危険な奴らだった。あいつらゲゲルっていうゲームで、人間を殺す数を競ってたんだ。とっても沢山の人たちが殺されちゃってね」

 

 グロンギの犠牲となった人間の数は、実に三万人を超す。

 殺人事件としては前代未聞の、もはや災害といっていいほどの死者を、グロンギはつくり出したのだ。

 想像を絶する被害者の数に、ソラとましろは絶句する。

 ヨヨも沈痛な面持ちを浮かべた。

 赤ん坊のエルも、重苦しいムードになった室内の気配を察し、不安げに視線を泳がせる。

 

「でも、グロンギは全員やっつけたんですよね? スゴイですよ、五代さんは!」

 

 場の雰囲気を変えようと、ソラは無理に明るい表情をつくり言った。

 

「そ、それじゃあ次は、クウガとグロンギたちとの戦いのお話を聞かせてください!」

「……俺が初めてクウガになったのは……」

 

 五代雄介の、戦士としての激戦の数々が明かされていく。

 

 最初の戦いの相手はクモ種怪人。

 この時はクウガの力が上手く使えず一度は取り逃がしてしまったが、二戦目で戦う覚悟を決めた五代によってクモ種怪人は撃破される。

 

 その後はヒョウ種怪人、バッタ種怪人と戦いを続け、グロンギ族の中で下層に位置する「ズ」集団を一掃した。

 

 次いで現れたのは、ズより一つ上の「メ」集団。

 これをクウガは、四つの力を巧みに使い分けることで倒しきる。

 

 メより上位に位置する「ゴ」が出てきた時は、その強さにたびたび追い詰められることとなった。

 それでもクウガは仲間たちと力を合わせ、「金の力」を身に着けたことでこれらも掃討。

 

 最後に現れたのは、グロンギ族の頂点に立つ王──「ン・ダグバ・ゼバ」。

 ダグバの力は他のグロンギ族とは、文字通りけた外れのものだった。

 

 クウガも成すすべなく敗北し、五代もその圧倒的な力に恐怖を覚えた。

 それでも五代は立ち上がり、禁断の「黒」の姿となることで、ついには究極の闇をもたらす者──ダグバを葬ることに成功したのだった。

 

 五代の語る戦いの歴史を、ソラは黙って聞き入っていた。

 そして、彼女はガバッと勢いよく立ち上がるとこう叫んだ。

 

「スゴイです……五代さんは、本当にスゴイ人です! 私、ヒーローの先輩として尊敬します!」

「ははは、ありがとう」

 

 目を輝かせながら五代に握手を求めるソラ。

 五代もそれに応え、少女の手を優しく握り返す。

 

 だが、笑みを浮かべているはずの五代の表情に、ましろは小さな違和感を覚えた。

 彼の(ひとみ)が、まるで苦しみを必死に隠し耐え続けている子供のような、そんな痛々しいものに少女の目には映ったのだ。

 

「でも、何度やってもやっぱり好きになれないから、あの感触は……」

 

 独り言のように小さくもれた五代のつぶやき。

 それはやはりソラには届かず、ましろの耳にだけいやに鮮明に残されたのだった。




五代君の口調をエミュるの難しすぎィ!

井上敏樹御大も当時クウガに参加した時苦労してたらしいのに
素人が再現しようなんてねーホントムリムリムリムリ
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